♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS お気に入りのアリア・クリスマス編その1 青く透明な光〜BWV151

<<   作成日時 : 2006/12/16 15:56   >>

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 バッハのクリスマス・カンタータの予習。
 あとは、膨大なクリスマス・カンタータの中から、いつものように、お気に入りのアリアをいくつかご紹介して、お茶をにごすことにします。



 まず、真っ先にあげないといけないのが、

 BWV151 「甘き慰め、わがイエスは来ませり」 〜 冒頭ソプラノ・アリア

 これは、クリスマスに限らず、バッハのあらゆるアリアの中で、最も美しいものの1つ。


▽ まだ暗く冷たい北極柱(トールキンのクリスマス・カードより)

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 暗闇に覆われた大地に、光がさしこむかのように、フルートのオブリガート旋律が奏されます。
 それは、太陽光線のように明るい光ではありません。
 やっと地平線を浮かび上がらす程度の光かもしれませんが、それでも月明かりや星灯りのように、さやかで慈しみ深い光、青く澄みきった光です。
 ソプラノが、光を迎えるように、陶然と歌い始めます。
 フルートとソプラノは、やわらかくからみあいながら、通奏低音上を、静かに静かに流れていきます。

 クリスマス。
 キリストは誕生したばかりです。夜明けはこれからです。
 まばゆいばかりの音楽でお祝いするのもいいですが、
 このように、静かだけれど、確実な幸福をかみしめるような音楽こそ、クリスマスにはふさわしいような気もします。



 さて、演奏ですが、
 このアリアのオブリガートは、バッハがかいた、最も即興的な旋律のひとつ。
 実際にさまざまな装飾が加えられることもあります。
 たゆたうようなフルートとヴォーカル、それと通奏低音との絡みを聴いていると、最上級のジャズのインプロヴィゼーションでも聴いているような錯覚に陥ってしまいます。

 フルート、インプロヴィゼーション、そして夜明けの音楽、となると、やはりドルフィーを思いだしてしまいます。
 もちろんドルフィーのCDがあるはずもありませんが、
 ドルフィーの吹くこの曲が聴いてみたい。
 ドルフィーはこの曲を知っていたでしょうか。



 実際にCDで聴ける演奏も、名演奏にめぐまれています。


 まず、ガーディナーのSDG巡礼シリーズ、最新盤がたいへんな名演です。
(クリスマス・カンタータ集)
 ライブならではの即興的な演奏が、ほとんどジャズそのものと言ってもいいくらいですが、それでいて、きちんとバッハの心を伝えているのはさすが。

 今年は、バッハの新発見アリアBWV1127のCDが、ガーディナー、BCJ、コープマンと、あいついで発売され、話題にもなりましたが、
 そのガーディナー盤の余白にも、このBWV151のアリアがはいっています。


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 このBWV1127は、2分くらいのメロディーの、歌+器楽演奏のセットを1節として、(つまり1節4分ほど)それを歌詞だけ変えて12回も繰りかえす有節歌曲で、
 BCJ盤など、まさかとは思いましたが、50分ほどかけて全曲を歌っていて、資料的価値はともかく、いったい誰が聴くんでしょ、と、思わず突っ込みたくなってしまいます。
 それに対して、ガーディナー盤は、3節だけ(12分ほど)歌っていて、まあ、ちょうどいいくらいなんですが、それだとCDのほとんどが余ってしまうわけで、その余白をSDG巡礼シリーズのダイジェストというか、ハイライトにしているわけですね。

 発売時には、
「ほとんどが安易な編集音源で、実質12分ほどしかないCD」などと、さんざん悪口を言われたようですが、
 実際は、とんでもない!

 ここに収録された曲目と順番を一目見れば、この、「バッハ・カンタータ巡礼より」と名づけられた「余白」が、どれだけ考え抜かれたものであり、どれだけかけがえのない価値を持つものであるか、わかります。
 けっして、安易にただ有名曲を並べただけのものではない。
 真に価値のある最高の名曲ばかりが、あたかも1曲のカンタータを構成するかのように配置されている。
 しかも、実は発売時点では、すべて未発表の音源で、今後のSDGシリーズの予告編ともいうべきものだったのです。
 録音は、未編集の録ったままのもののようですが、
(つまり、レギュラー盤とは、少し感じがちがいます)
 2000年という年に、世界中の教会をまわってカンタータ全曲!を録音したという、ガーディナーの決意のようなものが、かえってストレートに伝わってくるような気がします。

 カンタータの名曲集やアリア集は、けっこうありますが、これはその中でも、これは特に高い水準のものなのではないか、と、わたしは思います。

 特に、いよいよおしまいになって、
 このBWV151のアリアが登場し、
 あの、「アリアの王」と称すべきBWV159のアリアがそれに続き、同じくBWV159のコラールでしめくくられる部分では、必ず涙がこぼれてしまいます。

 というわけで、これから、このBWV151のアリアを聴いてみよう、また、カンタータの入門をしてみよう、という方には、声を大にしてこの「予告編」盤をおすすめします。
 SDG巡礼シリーズは比較的高価なのですが、このCDはそれほどでもありません。

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 最後に、あと1枚だけ。長くなってしまったので、かんたんに。
 ブリテン指揮のもの。
 ブリテンは、あのベンジャミン・ブリテン。
 はじめの音からして、凡百の演奏とは次元が異なります。
 歴史に名を刻んだ大家だけに許されるような、格調高い名演中の名演です。
 このような大音楽家が、日常的にバッハのカンタータを演奏していた、ということに感動してしまいます。

 そう言えば、ブラームスも、よくカンタータを演奏していたようで、
 以前ご紹介したあのBWV34を、周到な準備の上で演奏したこと、(1875年)
 BWV150にインスパイアされて、最後の交響曲を完成させたこと、
 などはよく知られています。
 さらに、新ウィーン学派の天才たちとカンタータとの関係は、以前書いたとおりです。

 こうして見ると、職業指揮者よりも、作曲サイドの音楽家の方が、カンタータとのかかわりは深いようです。
 フルトヴェングラーやカラヤンがカンタータを指揮した、などという話はあまり聞いたことがありません。
 実際はどうだったんでしょうね。

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんわ。いつもすいません。
今回はBWV609がらみでBWV151の曲について少し書いたので、こちらとリンクさせていただきました。
自分的には”バッハがコラールをこんな編曲をしています”だけでは物足りなく、”さらにこの曲を実はこっちの曲でさらにこんな風に活用しています・・・”云々、こんな感じで整理をしていければよいと思っていて、Noraさんの記事へのリンクは本当に利用させていただいています。ありがたいことです。
不都合がありましたがおっしゃってください。
たこすけ
2009/06/16 22:33
 たこすけさん、
 いつもリンクしてくださり、ありがとうございます。
 早速、BWV106のエレキバージョンともども、「しかえしリンク」をさせていただきます。
 それにしても、川端先生の本はすばらしいですね。たこすけさんがおっしゃるように、バッハの全作品が、コラールを中心に有機的に深く結びついている、ということが、実にわかりやすく、まとめてあります。
 以前は、バッハ事典や自分で作ったメモを、いちいち照らしあわさなければならなかったのですが。
Nora
2009/06/18 00:04

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