♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS お気に入りのアリア・精霊降臨節編 「夏への扉」、狩のカンタータとブランデンブルク〜BWV68、174

<<   作成日時 : 2007/05/26 01:53   >>

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 聖霊降臨節第2日のカンタータ、(2年目のツィーグラー・シリーズ)

 BWV68 「神はこれほどまでに世を愛して」

 は、あの初期の世俗カンタータの名作、「狩のカンタータ」 BWV208からのパロディを多く含むことでも、特別なカンタータです。


 具体的には、2曲のアリアすべてが、BWV208のパロディ、
 第2曲、ソプラノアリアの原曲は、BWV208第13曲、
 第4曲、バスアリアの原曲はBWV208第7曲です。
 あの、リコーダーの奏でるからくり時計のような響きがかわいらしい、BWV208第9曲が転用されていないのは残念ですが、
 この2曲は、それを補って余りあるほど、
 原曲の牧歌的雰囲気を色濃く残しながらも、大祭日のカンタータの楽章として見事に作り直された、すばらしいアリアだと思います。


 中でも、第2曲ソプラノアリアは、
 単なる過去作品の流用ではない、正に「大いなる最創造」というべき、(我ながらしつこいな)
 バッハのパロディ手腕が、最大限に発揮された名品。

 ソプラノパートが、オブリガート旋律の美しさをより生かした、とびきりキャッチーなものに書き換えられ、その上、ヴィオロンチェロ・ピッコロのパートも加えられました。
 そしてさらに、その後、
 Vn、Ob、ヴィオロンチェロ・ピッコロ + bcの、美しい器楽3重奏のリトルネッロが続きます。
 (これは、もともと「狩のカンタータ」の最後に書かれていたもの)

 ご存知のように、バッハの膨大な室内楽曲は、そのほとんどが、独奏楽器+鍵盤楽器によるもので、鍵盤楽器が2つ目の独奏楽器と通奏低音の役割を担うものばかり、
 純粋に、3種類の楽器によるトリオというのは、実はあまりありません。
 (「音楽の捧げもの」のトリオ・ソナタほか数曲のみ)

 このリトルネッロは、そのような意味でも貴重なのに、
 短いながら、各楽器の対話が胸に迫ってくるような、とびきりの美しさ!
 バッハ最高のトリオ楽章と言ってもよいのではないでしょうか。

 そして、そのリトルネッロが、このソプラノアリアの価値を、さらにかけがえのないものにしています。



 聖霊降臨節のカンタータで、ほかに有名曲からのパロディがあるものとしては、
 第2日用の、後期ピカンダー・シリーズの名作、

 BWV174 「我、いと高き者を」

 が、あげられます。

 この曲の場合、原曲は、さらに有名な、
 ブランデンブルク協奏曲第3番 BWV1048の1楽章。
 もちろん、冒頭のシンフォニアとして転用されています。


 もっとも、そのまま使用しているわけではなく、
 あの、ストリングスだけの原曲に、ホルンとオーボエのパートを付け加え、
 この大祭日の音楽にふさわしい豪華版にしていて、これは聴きものです。

 あのさわやかな原曲をベースに、縦横無尽に疾走するホルンとオーボエ。
 バッハが少し手を加えただけで、音楽がどのように生まれ変わったか、ぜひお楽しみください。

 前にもご紹介しましたが、原曲とカンタータ版を聴き比べができるCDがあります。
 イタリアの天才、アレッサンドリーニの鮮烈極まりない演奏。


 BWV174では、このシンフォニアの後、憧れに満ちたすばらしいアリアが続きます。
 このページは、アリアのページなので、一応、このアリアをご紹介しておきましょう。

 2本のオーボエが夢見るような旋律を歌い交わす、愛のアリアです。
 ブランデンブルク第3番は、緩叙楽章が無く、和音による即興だけなので、
 絶対こちらの方が聴き応えあるような気がするのですが、
 誰もこの曲のことを知りません。(涙)

 ついこの前、コメントのところに書かせていただいたBWV146と同じですね。


 上記アレッサンドリーニ盤は、もちろんアリア以降は入ってませんので、とてもさびしいです。
 この人も、ほんとにカンタータはやりませんね。
 ヘンゲルブロックもそうですが、ほんの少しでいいから、カンタータもやってほしいです。
(わたしの愛するアーティストは、なぜかカンタータに手を出さない・・・・)


画像




 さて、
 「狩のカンタータ」
 ブランデンブルグ協奏曲
 と、いまのさわやかな季節にぴったりな、
 ほんとうに、書いているだけで清々しい気分になってくる曲が、
 次々と登場しましたが、
 これで、聖霊降臨節のカンタータの雰囲気だけでも、わかっていただけたのではないかな、
 と思います。



 ところで、書いていて気がついたのですが、
 この2曲、「狩のカンタータ」ブランデンブルグ協奏曲、実は少し関係があります。
 せっかくなので、最後にそのことを少しだけ。


 ブランデンブルク協奏曲第1番 BWV1046には、BWV1046aという異稿があります。
 ヴィオリーノ・ピッコロのソロ・パートが無いため、響きが異なる他、他にもいくつかの違いがあり、初期稿とみられますが、
 これが、「狩のカンタータ」の前奏+後奏だったのではないか、という説があるのです。

 「狩のカンタータ」、たしかにレチタティーボがらいきなり始まって、おさまりが悪い気もするので、
 実際にBWV1046aをいっしょに演奏しているCDもあったはずです。

 ただ、これは確証のあることではないので、一つの試みとして、行っているだけのこと。
 もしかしたら、まったくちがうシンフォニアがあったのかもしれません。


 一方、まちがいなく、BWV1046aをシンフォニアとして使用している、
(こちらは、まちがいなく、バッハ自身による転用です)
 教会カンタータがあります。

 BWV52 「いつわりの世よ」

 つまり、この曲を聴くことによって、BWV1046BWV1046aの聴き比べができる、ということ。
 今日ご紹介したBWV174の場合ほどの、あからさまな差異は無いないですが、
 一応ちがう曲ではあるので、興味のある方は、ぜひ、お試しください。
 また、この曲は、目立たないながらも、ソプラノのソロ・カンタータの名品でもあり、
聴き応え十分です。
 参考記事は、こちら



 さて、
 これまで何度も書いてきたことですが、
 このように、
 カンタータの膨大な山の中には、
 「狩のカンタータ」や、ブランデンブルクを始めとして、
 おなじみの名曲や、それらのめずらしい異稿などがたくさん埋もれています。
 それらを探して聴いてみるのも、カンタータを聴く大きな楽しみの一つですし、カンタータ入門への近道でもあります。


 カンタータの中のおなじみの曲、については、以前、
 「カンタータの山の宝探し・その1」「2」「3」
 という記事にまとめていますので、
 よろしかったらご参照ください。



画像


  

 それにしても、この原稿を書くにあたって、あらためて聴いてみましたが、
 ブランデンブルク
 ほんとうにすばらしいですね。

 1番のホルンの響きなど、
 澄み切った青空を、真っ白な雲がゆうゆうとわたっていくのを連想させ、
 これから始まる光輝く季節へ誘うかのような、
 「夏への扉」を大きく開け放つかのような、そんな音楽です。

 1番では、わたしは、3楽章のテーマが大好きなのですが、
 残念ながら、3楽章は、カンタータに転用されてはいません。(もちろん知られている限りは)
 でも、よく似ているわくわくするようなテーマは、カンタータの中のいたるところに、たくさん登場します。



画像




 さて、この後は、教会暦も一段落して、後半へ。
 わたしもおかげさまで、何とか大きな山を越えることができました。

 でも、お楽しみはこれから。
 6月になると、バッハの新しい「年巻」が始まります。



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聖霊も驚愕? バッハ カンタータ第174番《われ心より至高なるものを愛す》/ コープマン
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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
Noraさま
おはようございます。
この週末の立て続けの記事更新には敬服致します。
ブランデンブルク協奏曲は、独特の重みのある協奏曲集ですね。
美しさの中にも緊張感が溢れているような感じが致します。
先日、ドイツのことが懐かしくなり、パブロ・カザルスが監修し、バッハ縁の地(旧東ドイツ中心)を背景にブランデンブルク協奏曲が演奏されるDVDを購入致しました。・・・特売で500円でした。
それはそれとして、ここ1週間、BWV「Auf Christi Himmelfahrt allein」のアルトとテノールのアリアが頭から離れません。
Nacky
2007/05/27 10:20
 おはようございます。
 500円、というのはすごいですね。カザルスが演奏してるのでしょうか。いずれにしても、500円で、ドイツの風景と、ブランデンブルクが楽しめる、というのは魅力ですね。わたしも探してみよう。

 それはそれとして、BWV128についてのコメント、ありがとうございます。
 このデュエット、ほんとうに、すばらしいですね。
 バッハも気合が入ってますし、(ロ短調)
 あまりテーマが美しいので、レーガーか誰かがこれをもとにピアノ曲を書いていたような気がします。(わたしは聴いたことない)
Nora
2007/05/28 09:25
 この前の昇天節の記事では、悩んだ末に、BWV37をメインに選んだので、BWV128はほとんど素通りでしたが、
 せっかくなので、かんたんにふれておきます。

 この曲も、フル編成のオーケストラによる大作ながら、なぜかしっとりとした情感が印象的な、すばらしい曲です。
 冒頭合唱は、2本のホルンと3本のオーボエが活躍し、十分華やかなはずなのですが、何度もくりかえされるせつない動機が胸に迫りますし、
 第3曲のトランペットのファンファーレも、なんだかジャズの即興みたい。
 そして、歌詞からすると、次はいつものように、喜びの舞曲でも炸裂してよさそうなのに、この、心にしみいるロ短調のデュエット!
(このデュエットの歌詞は、ほんとうにすばらしいものです。女流詩人、ツィーグラーの、面目躍如)
 実に、昇天節ならでは、の、名曲だと思います。
Nora
2007/05/28 10:17
 ちなみに、この曲をしめくくるコラールのメロディーは、
 賛美歌「おお神よ、汝、義なる神よ」 BWV398
 のメロディーで、
 様々なコラールの定旋律として使われる、わたしの大好きなものです。
 全編せつなげなBWV128は、この旋律のコラールで力強く結ばれます。
 また、この賛美歌は来週(三位一体節)また登場しますので、お楽しみに。
Nora
2007/05/28 10:26
こんばんわ。
最近はNoraさんの文章に引っ張られるようにカンタータを聴いています。
と言っても、とても聴ききれないのですが(笑)。
まあ、例えば今回の記事であれば174番だけ、とかになってしまいますが。
しかし今は読むだけで精一杯でも、いずれ何かの形で思い出したり、つながったり、曲をきくきっかけにもなってくれるものだと思います。

色々な切り口でのカンタータの世界を紹介してもらえるというのは本当にありがたいと思います。
まあ、それだけカンタータ自身が豊富な顔を持っているということでもあると思うのですが。
ただ少なくとも自分が今まで読んできた本の中では、こんなにカンタータを魅力的に紹介している人はいませんでしたね(笑)。

新しい「年巻」をひかえて、結構ワクワクしています(笑)。
ぜひこれからも力作をよろしくお願いします。





たこすけ
URL
2007/05/30 22:49
いつものことですが、目から鱗の記事です。
BWV174、こんど聴いてみます。
ありがとうございました。
Papalin
2007/05/30 23:22
 たこすけさん。ありがとうございます。

> 例えば今回の記事であれば174番だけ、とかになってしまいますが。

 わたしの経験では、むしろその方がよいような気がします。
 ムリしてたくさん聴くと、せっかくの印象が薄れてしまいます。
 また、もちろん毎週でなくても、記事を見ていただき、興味を持った曲だけ聴く、ということでも、十分なのではないでしょうか。
 また、来年、再来年に聴いても、いいわけですから。
 そんなわけで、「お気楽」な感じで、おつきあいくださるとうれしいです。

 ところで、山下和仁さんの映像!正座して拝見させていただきました。
 すごい!あんなふうにひくんですね。久しぶりに、背筋が凍りつくような感じを味わいました。
 ほんとうに、ありがとうございます。
Nora
2007/05/31 16:14
(続きです)
 山下さんの無伴奏は、新旧両盤ありますが、どちらもすごいですね。
 チェロの方は、やはり楽器独特の味わいがありますので、もちろんチェロ版を聴かないわけにはいきませんが、Vnの方は、わたしはむしろギター版の方が好きなくらいで、いつもこちらばかり聴いています。
 たこすけさんのところのコメントにも書きましたが、シャコンヌなど、あまりにもすごくって、始めからギターのための曲みたい。

 バッハの曲は、どのような楽器でどのように演奏してもよいのでは、
 というのは、まさに、おしゃるとおりですね。
 何よりの証拠は、バッハ自身やりたい放題だったことで、
 例えば、無伴奏では、BWV1006のパルティータを、オルガンを独奏楽器に、さらにtpとティンパニまで加えて、カンタータのシンフォニアにしています。
 BWV29、あの、ロ短調ミサ終曲の原曲があるカンタータですね。
Nora
2007/05/31 16:22
(さらに続きです。)
 編曲と言えば、ちょうど、たこすけさんの後に、この記事にコメントをくださったpapalinさんも、無伴奏チェロ全曲をリコーダーで吹いてらっしゃり、
 こちらで聴かせていただけます。(→右のURL→)
 楽しくて、すばらしい演奏だと思いますので、よろしかったらぜひ。
Nora
URL
2007/05/31 16:24
 papalinさん、いつもお世話になってます。
 BWV174、けっこうゴージャスな響きになってますので、ぜひ。
 それに続く、愛のオーボエのアリアも、いいですよー。

 それから、上のコメントをいただいた、たこすけさんのブログで、
 ちょうど無伴奏の編曲モノの話をしていたので、勝手に御紹介してしまいました。どうか、お許しを。

 さて・・・・、
 papalinさんには、密かにこちらの記事を御用意させていただきました。どうぞご覧になってください。
(→右のURL→)
Nora
URL
2007/05/31 16:41
174、今聴いています。
ほんとだ、ブランデンブルクと同じで、同じでないや。
こっちは渋いね。楽器をあえて減らしただけで、こんな感じになうのですね。結構好みです。
しかし、これがカンタータですか。意外です。

PS:ご紹介下さり、恐縮です。
 
PS2:シューマンの3曲目、未完のままアップしました。
  ちゃんとプロの歌をCDか何かで聴いて下さいね。
  ぺこ <(_ _)>
 
Papalin
2007/06/01 01:14
> こっちは渋いね。楽器をあえて減らしただけで、

 楽譜上は、ホルンを2本、オーボエを3本もふやしていますので、
 おそらくpapalinさんのイメージにある原曲が大編成で、
 今回お聴きになったものが小編成の上、カンタータということでホルン等をあえてひかえめにしてるのではないでしょうか。
 本文に御紹介したアレッサンドリーニ盤などは、ホルン、オーボエが炸裂し、たいへんなことになってます。
 こんなの、ほんとに教会でやったんかい、という感じ。

 バッハとしては、生活=信仰ですから、楽しいことも、みんな信仰の一部、
 普段、宮廷でしか聴けないような昔の自信作を、一般の人たちにも聴いてもらおう、と、いうつもりだったのでしょうが、市当局としてはたまったものではありません。
 バッハは頑なにこの姿勢を貫き通し、以降20余年にわたって、市当局と正面から対立し続けるんですね。
 困った人だ・・・・。
Nora
2007/06/01 10:00
はじめまして。
ご存知かもしれませんが、ヘンゲルブロックは、BWV4を録音していますね。ロ短調ミサもいいCDだったので、もっと録音を期待したいですね。
子守男
URL
2007/06/07 17:08
はじめまして。
ご存知かもしれませんが、ヘンゲルブロックは、BWV4を録音していますね。ロ短調ミサもいいCDだったので、もっと録音を期待したいですね。
子守男
URL
2007/06/07 17:08
 子守男さん。はじめまして。
 コメント、ありがとうございます。
 ヘンゲルブロックのカンタータ録音は、コメントをいただいたBWV4と、ずっと以前のBWV42のシンフォニアだけみたいですね。
 このシンフォニアも生き生きとしてすばらしいので、ほんとに残念ですが、この人は天才肌で、コツコツと順番に何かをやる、とか、まったく考えられないのでしょう。
 そのかわり、ペルゴレージのスターバト・マーテルの編曲版(BWV1083)だとか、マニフィカトのクリスマス版(BWV243a)だとか、ちょっとめずらしい曲のとびっきりの名演があるので、あまり文句は
言えませんが。
 まあ、何かの拍子に気が向いたら、突然録音を始めるかもしれないので、いっしょに気長に待ちましょう。(笑)
Nora
2007/06/07 20:41

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