♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS お気に入りのアリアその4 天上のシチリアーノ・光の波間に漂う〜BWV87 + 復活節後第5日曜

<<   作成日時 : 2007/05/12 23:41   >>

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 5月13日は、復活節後第5日曜日。

 すっかり油断してたら、もう来週の5月17日(木)は昇天節。
 また少し忙しくなりますが、がんばっていきたいと思います。


 この日の福音章句は、
 悲しみは必ず喜びに変わるのだ、ということ。
 「求めなさい、そうすれば与えられ、喜びに満たされる」
 というイエスの有名な言葉が登場。
 カンタータ共通のテーマというべき内容になっています。


 この日のカンタータはBWV86BWV87の2曲。


 BWV87と言えば、
 何と言っても、第6曲テノール・アリア!

 バッハ最高最美のシチリアーノが、ついに登場します。
 このシチリアーノ、あまりにも美しいので、
 この記事も、「お気に入りのアリアその4」、ということにしたいと思います。


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 まずは、BWV87全曲の概要から。

 BWV87 「今まで汝らは何も」

 BWV87は、ライプツィヒ2年目、ツィーグラー作詞による第3作目のカンタータですが、
 前半こそ、例によって聖書の内容を掘り下げているものの、
(この場合は「悔い改め」ということで、ひときわ深刻です)
 後半、イエス・キリストの言葉によって、暗から明への劇的転換が訪れる、という、バッハのカンタータではおなじみの、親しみやすい構成になっていて、わたしでも自然に聴くことができます。
 実際、この曲に関しては、ツィーグラーの歌詞を、バッハ自身相当手直ししているそうです。
(どの部分、というのは、わたしにはわかりませんが)

 まさに、福音章句の内容どおりの、ある意味典型的な、
 「苦悩から歓喜へ」型のカンタータです。



 そして、その中で、かんじんの第6曲テノールアリア、シチリアーノは、
 喜びの頂点の音楽として、最後にもたらされるものです。

 ストリングスの奏でる神々しいオブリガート。
 ゆるやかで静謐なシチリアーノのリズム。

 この音楽に身をまかせていると、
 まるで、天上の海、きらきらと微光を放つ夢のように美しい波間に、
 静かに静かに揺られているような気分になってしまいます。


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 それにしても、すべてが浄化されたようなこの清らかさは、いったい何でしょう。
 受難曲の記事のところにも書いた、
 特に何のドラマもないうちに、突然すべてが浄福につつまれてしまう、人智を超えた許しのす さまじさ、のようなものを、ここでも感じてしまいます。

 バッハは、
 「聖書の内容を追究して、真理を見つけ出しなさい」
 ということよりも、やはり、
 「みんな、このように許されるのです」ということこそを、
 表現したかったのかもしれません。


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 わたしは、長調のアリアでは、

 BWV34
 BWV82
 BWV159

 の各アリアを別格だと思ってますが、
 このシチリアーノは、それに並ぶものなのではないか、と、以前からひそかに思っています。
(なぜ並べないのかというと、全曲も含めてということになると、上記3曲はやはり別格なのです)



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 CDは、リヒター盤(歌はシュライヤー)が圧巻です。
 冒頭の、ストリングスのオブリガートの響きからして、他の演奏とは、まるで次元がちがう。
 この響きはほんとうにリヒター特有のもの。ロマンティシズムの極み、
 とでも言ったらいいのでしょうか。
 特に弦の厚い響き、悠々とした歌に関しては、誰もかないません。
 神々しく光る海が、眼前に広がる思いです。

 ちなみに演奏時間に関してみてみると、
 この曲はそもそも、3分台の短い曲なのですが、(リリング等の一般的な演奏)
 リヒターはなんと、たっぷり6分もかけています。
 それなのに、まったくもたれることなく、さわやかな透明感さえ感じられる。
 リヒターは、たまにこういうのがあるんだな・・・・。


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 * 写真はすべて、以前モルディブに行った時のアナログ写真を、
   スキャンしたもの。



 さて、最後になりますが、
 もう1曲、1年目のBWV86、これもすばらしい。


 先週のBWV166、昇天節のBWV37、昇天節後の日曜のBWV44とともに、
 コラールカンタータ前夜、第1年巻の最後を飾る、名作中の名作。

 この4曲は、冒頭の聖句楽章から始まり、
 中核にオブリガート付コラール編曲(BWV147みたいな)を置く、
 充実したシリーズです。
 コラールカンタータ年巻開始前夜の、
 一定の手法に基づく作品群。
 これらは、コラールカンタータへの大いなる助走、習作なのでしょうか。


 特に次回、昇天節には、その中の最高峰、BWV37が登場。
 お楽しみに。



 (つけたし)

 これまで、カンタータの中の協奏曲だとか、パストラーレだとかいろいろ書いてきましたが、
 実は、カンタータの中には、それらとは比べものにならないほどたくさんの、
 すばらしい「シチリアーノ」が登場します。

 わたしがよく知っている方の中にも、シチリアーノをこよなく愛してらっしゃる方のがいらっしゃるので、(笑)
 シチリアーノについて、わたしがあまりくわしく書くのもどうか、と、思うのですが、
 とりあえず、現在、「バッハのシチリアーノ」を抜き出して、まとめているところです。
 ただ、そもそも何をもって「シチリアーノ」とするか、ということもありますし、
 やはりあまりにも数が多く、例によって、いったいいつになることか・・・・。



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悔い改めより赦しへ。 バッハ カンタータ第87番《汝らわが名において祈りしことなし》/コープマン
アリア主体、こじんまり、しっとり気味のカンタータです。 ...続きを見る
一年365枚 ver.6.0
2011/05/29 17:47

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コメント(3件)

内 容 ニックネーム/日時
ここに書くコメントかどうかわかりませんが、
先日ガーディナーのCDをNoraさんのセールストークに負けて(笑)買いましたが、負けてよかった(爆笑)。
素晴らしいですよ。これは。
(おそらくその素晴らしさの10分の1も実は分かっていないのだと思いますが・・・)

その中に159番がありましたがアリアが良かったですねえ。
アーノンクールのでは5分でしたが、これでは7分かけて本当にじっくりと歌い上げていました。加えて、直後のコラールの恐ろしく静かさ世界。いやはや・・・

また、やっぱり127番!
一曲目はもうこの”特別バージョン”でないとダメですね。他の人の演奏を聴いていても、あれ(!)が聴こえてくるようになってしまいました。

本当に素晴らしいCDを紹介していただきありがとうございます。
今後もさらに期待しております。

明日は87番を聴いてみようかな。幸い、リヒター盤があるし。

ちなみに、モルディブの写真、美しいですね。別世界のようですね。




たこすけ
URL
2007/05/14 23:10
 毎度ありがとうございます。
 でも、冗談はぬきにして、とってもうれしいです。

 ガーディナーもコープマンも、途中からレコード会社に見放され、自主レーベルでのリリースになってしまいました。
 それでも、コープマンは見事完結させてくれましたが、
 ガーディナーの方は、まだまだ先が遠いので、何とか応援していかないと。
 新しくリリースされる録音を聴く度に、この2000年の熱いドキュメントは、すべて世の中に出す価値がある、との確信が強まっていきます。

 と、いうわけで、これからも、どうか、よろしく!
Nora
2007/05/15 15:00
 (PS)

 モルディブの写真、見てくださって、ありがとうございます。
 これが出したくて、書いたようなものなので。

 ほんとはもっともっといい写真があるのですが、かんじんなところにわたしが写ってて、台無しに・・・・。
 こんなことなら、あんなに意味も無く写らなければよかった。

 写真にあわせて、第6曲のシチリアーノをクローズアップしていますが、
 BWV87は、どの楽章もすばらしい作品だと思いますので、ぜひ聴いてみてくださいね。
Nora
2007/05/15 15:18

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