♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS 三都の旅・4〜お気に入りの仏像 奈良駅周辺編(少しマニアックな徹底ガイド)+復活節後第2日曜日

<<   作成日時 : 2008/04/04 23:53   >>

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 今度の日曜(4月6日)は、復活節後第2日曜日。

 カンタータは、
 1年目、「バッハの田園カンタータ」といわれるBWV104
 2年目、まさしくアリアの花園、BWV85
 後年の、年巻補作のためのコラールカンタータ、BWV112
 の3曲です。
 3曲とも、今の季節にぴったりのたいへんな名曲。
 ヴェルナーの心にしみる名演があります。

 過去記事はこちら

 みなさん、バッハが用意してくれた春の野辺で憩いましょう!



 さて、今日は、三都旅行記の続き。
 いよいよずっと書きたかった仏像編を始めます。
 今日のカンタータ、BWV104を始め、バッハの音楽もちょっと登場させるつもりですので、ぜひご覧ください。



  *    *    *



 言うまでもなく、奈良・京都は、仏像ファンにとって、夢の「まほろば」、理想郷です。

 そもそも、駅のごくごく周辺だけでも、
 奈良には、東大寺、興福寺、新薬師寺
 京都には、東寺、三十三間堂
 など、何十体もの国宝彫刻の名品を所蔵する大寺院が密集していて、手間と時間をかけずに、気軽にそれらの名作を鑑賞できるのがうれしいです。
  
 昔なじみの仏像たちとできるだけ再会しよう、というのが、旅の大きな目的でしたが、
 今回は、それほど時間に余裕が無かったので、それら近場のお寺を中心に、かたっぱしから回ることにしました。



▽ 興福寺 八部衆のうち、五部浄像

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                        (岩波書店「八部衆と十大弟子」より)



 それにしても、仏像がたくさんあるのはありがたいのですが、一方で困った側面があるのも事実です。

 例えば、興福寺の国宝館には、一体一体が人類の貴重な遺産といってもいい仏像がキラ星のごとく並んでいるのですが、行ってはみたけれど、仏像が多すぎて、結局有名な阿修羅像くらいしか記憶に残っていない、という方、けっこういらっしゃるのではないでしょうか。

 京都の広隆寺の霊宝殿もそうです。あまりにも有名な弥勒菩薩半跏思惟像の他にも、実は、15体ものすばらしい国宝仏像が安置されているのですが、思い出される方は少ないのでは。

 三十三間堂についても、もし東京のお寺に、あの1千体の千手観音、あの二十八部集のうちの一つでもあれば、たいへんな寺宝となるでしょう。ところが、圧倒的な数の中に埋もれているため、一つ一つは印象に残りにくい。

 
 実際、同行した相棒に、どの仏像が心に残ったか聴いてみたところ、あまり、たくさん見すぎてごちゃごちゃになってしまった、との答え。
 わたしの懇切丁寧な熱い説明つきでこのザマです。(かえって説明が不要だった?)
 
 結局、どんなにかけがえのない価値を持っていようと、それらがあまりにもたくさん存在すると、一つ一つはなかなかクローズ・アップされず、逆にとっつきにくくなってしまう、ということ。

 そう、カンタータと同じ、です。


 そこで、この記事では、誰もが知っていて語りつくされている阿修羅像や弥勒菩薩像など以外の、それほど知られていない仏像で、わたしが以前から気に入っていて、今回あらためて拝観してあらためて惚れ直した仏像のことを、書いていきたいと思います。


 
 なお、ここでは、仏像を完全に美術作品としてとらえていますので、信仰の対象とされている方にとっては不適切と思われる表現もあるかもしれません。どうかお許しください。

 また、基本的に仏像は撮影禁止で、本の写真も当然著作権等があってよほど古くないとのせにくいため、イメージをつかんでいただくために、なるべく音楽作品等にたとえるようにしました。
 音楽ファンの方も、どうかご覧になってくださるとうれしいです。




 それでは早速、今回訪れた順に。
 全体の行程については、こちらの記事を参照なさってください。

 あくまでも、自分のためのメモですが、
 今後、奈良・京都に行かれた方が、仏像の山を前にして、どこから見ていいか途方に暮れた時など、少しでもお役に立てればいいのですが。



  *    *    *



 奈良



 1、東大寺


 東大寺には、大仏はともかく、
 戒壇院四天王像
 三月堂不空羂索観音像、日光・月光菩薩像、梵天・帝釈天像
 などなど、よく知られた天平のすばらしい国宝仏が集中していますが、
 それらは、あまりにも超然としていて、
 また人気があって人であふれていることも多く、なかなか、仏像と静かに対峙する、というわけにはいきません。

 そんな中、わたしが一番好きで、必ず行くのが、
 四月堂(正式には三昧堂)です。
 三月堂の真向かいにちょこんと建っている、朱塗りの小さなお堂です。ほとんど知られていなくて、たいていの人は、素通りするか、ちょっと拝んでいく程度ですが、中に入って、拝観することができます。しかも、無料。


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 堂内に入ると、狭い空間全体を満たすかのように、オレンジ色の、やわらかで暖かなものが立っていて、息を飲みます。

 東大寺四月堂(三昧堂) 千手観音菩薩立像

 太っているといいくらい肉付きの良い体躯、
 ユーモラスといっていいくらいおだやかな表情、
 ほとんど首もありません。
 それらを見ているだけでもあたたかい気持ちになりますが、圧巻なのが、その42本の「手」です。
 よくあるように、単に数をそろえただけではありません。
 一本一本、腕から指の先までのすべてがやはり肉付きがよく、まるでほんとうに生きているかのように表情豊かで、見るものをやさしく抱きかかえるかのように堂内全体に伸びています。

 2メートル60センチを超える巨像ですが、威圧感はゼロ。
 まるで、大きなあたたかいものがユラユラと動いているかのようなイメージ。 

 やさしい春風のような、フワフワとした雲のような、
 向かい合っているとどんどんホンワカポカポカしてくる、ちょっと他に無い仏像です。


 今度の日曜日のカンタータ、BWV104は、バッハの田園カンタータと言われ、のどかな、やさしい光にあふれるような名作ですが、
 この仏像、ちょうどそんな感じ、と言ったらいいでしょうか。


 ほがらかな光が次々と湧き上がってきて、最後には空間全体を満たすかのような、冒頭合唱の大フーガなんか、正にそのもの。



 2、元興寺


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 元興寺は、日本最初の寺院、あの飛鳥寺を、平城京造営時に移転させたもので、東大寺、興福寺と並ぶ大寺院として栄えましたが、今は、奈良町の静かで美しい街並みの中に佇む、まるで民家のような、小さな庶民のお寺です。

 元興寺の極楽坊(僧坊・昔の大学みたいなもの?)は独立してすぐ近くにあり、そこには奈良建築を代表するような見事な建物が残っていますが、それは、また、建築の記事でくわしくご紹介します。

 そして、こちらのおおもとの元興寺の方にも、奈良の仏像の最高峰とも言える見事な仏像が残されています。(制作されたのは、平安初期。典型的な平安仏です)

 元興寺 薬師如来立像

 薬師如来立像では、何と言っても、京都神護寺のものが有名ですが、
 あちらが力に満ちて、圧倒的な迫力なのに対して、こちらは、あくまでも静謐な、大きなエネルギーを内に内に凝縮したような美しさ。
 あちらがデフォルメの極致なら、こちらは均整の限りをつくした美。
 ひたひたと迫ってくるものの大きさでは、決して負けてはいません。


 例えて言うなら、神護寺の像がリヒターの演奏なら、元興寺の像はBCJの演奏、と言ったところでしょうか。


 こちらは、奈良国立博物館にあずけられてますので、今回は拝観しませんでしたが、機会があったら、ぜひごらんになってください。



 なお、元興寺極楽坊の方にも、宝物館があり、
 阿弥陀如来像如意輪観音像聖徳太子像などのすぐれた像がありますが、ここはやはり、なんと言っても建物でしょう。宝物館にもすばらしい「建物」があります。乞うご期待。



 3、興福寺


▽ 鹿の模様がかわいい興福寺国宝館入り口

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 興福寺国宝館と言えば、まず、誰もがあの阿修羅像を思い浮かべると思いますが、
 ここにあるキラ星のごとき仏像たちの中心的存在、最高傑作は、まちがいなく、旧食堂の本尊だった、千手観音菩薩立像です。

 興福寺国宝館(旧食堂) 千手観音菩薩立像 

 国宝館は、もともと食堂のあった場所に食堂を模して建てられているので、
 食堂の本尊だったこの像は、実質的にも、ここの本尊。
 5メートルをゆうに超える巨体は、もちろん国宝館中最大でもあります。

 この記事の始めに、ちょっと変わった千手観音をご紹介しましたが、
 この国宝館のものは、正統的な千手観音の最高峰ではないでしょうか。

 興福寺焼き討ち後の鎌倉初期の作ですが、とにかく、これだけの巨像にもかかわらず、すべてにわたって均整がとれているのは、さすが写実主義を極限まで追究した鎌倉彫刻ならでは。
 表情や全身の佇まいの超然とした様も、思わず身震いするほど。
 また、裳の模様などには、復古的な様式もふんだんにもりこまれ、全体の格調の高さを揺ぎ無いものにしています。

 あまりにも整然としているので、ちょっと見ただけでは、ただの大きな観音様か、と思われる方が多いと思いますが、
 見れば見るほど、全体から細部にまでおよぶ美しさに引き込まれていき、次々と新しい発見があって驚かされます。

 興福寺復興の象徴として、当初、奈良仏師の伝統を一身に受け継いだ伝説の仏師、成朝(運慶の父の兄弟子)が中心となり、以降、若くして亡くなったと思われる成朝の意志を引き継いだ慶派の仏師たちによって、なんと50年の長きにわたり、当時の最先端技術を結集して、彫像された、とのこと。


 その巨大なスケール、
 伝統ある奈良仏師と最先端の鎌倉仏師の共作、復古的な様式美から、最新の写実主義まで、それまでのあらゆる技法を結集させ、長い時間をかけて磨きに磨きぬかれてつくられ、
 さらに、細部から全体にいたるまでまったくスキがない、
 と、言う意味で、仏像界のロ短調ミサ、と言ったら、言いすぎでしょうか。




 というわけで、これまでに、二つの魅力的な千手観音をご紹介しましたが、実は、今回の旅で、もう一体、とびっきりステキな千手観音を見ています。
 この後に続く、京都編、広隆寺のところでご紹介します。お楽しみに。



▽ 立ち並ぶ興福寺の建物。現在、中金堂を復元建築中。
  手前に見える東金堂にも、魅力的な仏像が、いっぱい。

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 さて、興福寺国宝館には、忘れてはならない仏像がまだまだあります。
 その筆頭が、「仏頭」でしょう。

 興福寺国宝館 仏頭(旧山寺本尊)

 もとは旧山田寺の講堂本尊の、巨大な白鳳仏で、やはり興福寺再興の折、奈良に運ばれ東金堂本尊とされました。
 室町時代、落雷で東金堂が炎上して以降、行方不明になっていたのですが、昭和初期に頭部のみ発見され、500年の眠りからさめました。

 
 この前ご紹介した、東京深大寺の白鳳仏ととてもよく似た美しい顔です。

 向こうの方はとても小さな像。
 少年のように華奢な感じがはかなげで、それがまた独特の魅力ですが、
 こちらは、頭だけでもたいへんな大きさ。
 表情も、堂々として、威厳にあふれている。何事にも微動だにしないような力強さを持った、大仏像ならではのお顔です。

 顔だけでも、見るたびに、心身ともに吸い込まれてしまいそうになります。
 全身像はどれほど超然としていたことでしょう!


 わたしは、顔しかないこの仏像こそ、最も美しい顔をした仏像なのではないか、と思います。
 奈良を訪れるたびに必ず会う、大好きな仏像です。
  

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                        (昔もらったお寺のパンフ?より)



 
 最後に、やはり破損の激しい仏像ですが、この国宝館の中に、あらゆる仏像の中で、わたしが個人的に最も愛する仏像があるので、ご紹介しておきます。

 興福寺国宝館 八部衆のうち、五部浄像

 あまりにも有名な阿修羅像と同じ、八部衆像のうちのひとつですが、
 初めて見た時、阿修羅そっちのけで、こちらの方に釘付けになってしまった。
 阿修羅像の表情は確かにすさまじいです。足のあたりの孤独感、さびしさも、恐ろしいほど。
 でも、この像の阿修羅像ほどストレートでない、かすかに憂いをたたえた表情。
 冠の象の完全な無表情との対比。
 体が無いがゆえの無限とも言える寂寥感・・・・。

 愛するあまり、冒頭にのせてしまった。ぜひ、ごらんください。



 これらの破損してしまった仏像を見ると、否が応にも、バッハの、楽譜の欠落した、いわゆる復元カンタータの数々(詳細はこちら)や、ブルックナーの第9番などの未完成作品など(詳細はこちら)を思い出してしまいます。
 完全でないがゆえに美しい、決して地上では鳴り響くことのない音楽。




▽ 破損した仏像と言えば、真っ先に思い出す。
  今回は見ませんでしたが、
  日本のミロのヴィーナスとしてあまりにも有名な唐招提寺如来像

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                        (JTB「奈良大和路の仏像」より)



 以上奈良の仏像を見てきましたが、
 奈良を回って気がつくのが、意外と鎌倉期の遺産が多いということ。

 前記した興福寺千手観音や、有名な東大寺の仁王様(↓)など、みんなそう。
 これは、源頼朝が、戦乱で荒廃した南都・奈良の復興に全力を注ぎ、以降鎌倉幕府がその意志を継いだためです。
 まあ、東国の王の力を誇示するため、というのもあったのでしょうが、奈良は、鎌倉と並ぶ坂東武士の都でもあるのです。



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 巨大な仁王様の裏には、
 こんなに小さな獅子?が。



  以下、京都編へ、続く。


  これは、シリーズ化の予感・・・・。




















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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちわ。素敵な旅だったんですね。
当面の予定はないのですが、一度は仏像めぐりなどをゆっくりしてみたいものだとは思っていました。むちゃくちゃ参考にさせていただきます(日本語がおかしい?)。
しかし、さすがですねえ。
音楽にたとえながら仏像を語り、結果的にそれが音楽自体の素晴らしい解説になっている。
まあ、「たとえ」というのはそういうものかもしれませんが。
すばらしい記事だと思います。
個人的には、「仏像界のロ短調ミサ」という表現が、言わんとすることとは別に、字面的にかなりツボにはまりました(笑)。
続く記事も楽しみにしています。

たこすけ
URL
2008/04/05 12:51
こんばんは。おじゃまします。

Noraさんは仏像にも大変お詳しいのですね。わたしなど、仏像のあるまわりの環境は大好きなのですが、個々にはどれがどれやら。

今回は西ノ京には行かれなかったということですが、残念でしたね。薬師寺と唐招提寺の周辺は、そのたたずまいがすばらしいと思います。
ただ、昔は薬師寺の西塔もまだ再建されていなく、両寺院とも建物の古びた感じがなんともよかったのですが、その後改修で極彩色に塗られて、ちょっとがっかりもしました。
それでも、西ノ京には他にはない独特の雰囲気がありますので、つぎの機会にはぜひいらしてください。
koh
2008/04/05 18:13
 たこすけさん、どうも。

 仏像の記事にコメントをいただき、とってもうれしいです。
 思いっきり、建築を音楽に例えた「凍れる音楽」のマネしてしまいました。

 仏像、いいですよねー。機会があれば、ぜひ見にいってください。仏像についても熱く語りましょう!
 ここにご紹介したものだけなら、1日で十分に見られます。
 でも、行かれる場合は、これだけでなく、有名なものも見てくださいね。有名なものは、やはりそれだけのことはあります。
 一応、ここにあげたお寺に行けば、大メジャーなものもちゃんと見られるようにしておきました。
Nora
2008/04/05 18:43
 kohさん、こんばんは。いつも、ありがとうございます。

 奈良は、西ノ京、斑鳩、飛鳥、室生路など、みんな好きですが、今回は、涙を飲んで、すべて断念しました。
 特に西の京はやはり大好きで、薬師寺の長い再建工事中に何度も訪れました。
 わたしも、はじめは、堂塔の再建には否定的で、なんでこんなバカなことを、と思ったのですが、
 残された生涯のすべてを再建に捧げた最後の「法隆寺宮大工」、西岡常一棟梁の執念を知り、また、以前の仕事の関係で、建築の現場などを見せていただいて、考えが180度変わりました。

 回廊や講堂なども含め、すべてが完成してからは、まだ一度も訪れていません。
 現在行なわれている唐招提寺の大改修が完成した暁には、ぜひ訪れて、生まれ変わった西の京を、この目で見てみたいと思っています。
 
 ところで、薬師寺の日光・月光菩薩が、今東京に来てますね。背中側からも見ることができるそうなので、絶対に行かなくては、と思っています。
Nora
2008/04/05 19:28

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