♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS 復活節後第3日曜日〜お気に入りのアリア・ピカンダー編、今この季節のための音楽(BWV146、188)

<<   作成日時 : 2008/04/11 23:26   >>

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 今度の日曜(4月13日は、復活節後第3日曜日。

 カンタータは、
 初期の名作、BWV12
 2年目の、BWV103
 3年目のBWV146
 の3曲。



 BWV12は、初期の有名曲の一曲。
 哀切きわまりない冒頭のシンフォニアと、
 バッハが生涯をかけて追究し、最後に、ロ短調ミサの Crucifixus に結実した、ラメントバスの最初期の例として名高いですね。
(ロ短調ミサの Crucifixus については、こちらの記事等を参照)


 2年目のカンタータは、この曲から、歌詞作家が女流詩人ツィーグラーになります。
 BWV103は、ツィーグラー・カンタータらしい、いかにも真摯な、凛とした傑作。
 ソプラーニ・リコーダーが活躍。


 打って変わって、3年目のBWV146は、ピカンダー・カンタータ。
 いかにもピカンダー作品らしい、おおらかで自由奔放な美しさが魅力。



 今日は、この曲について、ちょっとだけ書くことにしましょう。

 BWV146(カンタータ第146番) 「我ら多くの艱難を乗り越え」


 例によって、第1曲、第2曲は、有名なチェンバロ協奏曲VWV1052の、それぞれ第1楽章、第2楽章と同じ音楽をもとに作曲されています。
(ややこしい書き方ですが、正確に書くとこうなります)
 独奏はもちろんオルガンになっていて、第2曲には合唱が加わります。
 BWV1052第2楽章の合唱入りバージョン、ぜひお聴きになってみてください。

 市当局からは華美な曲の演奏は控えるようきつく釘をさされていたにもかかわらず、特に3年目以降のバッハはまったくいうことを聞かず、かつて作った協奏曲や器楽曲をどんどんカンタータに取り入れました。
 これによって、一部の階級のためだけの音楽だった協奏曲等が、一般市民が参加する礼拝で毎週のように鳴り響いたわけで、当時の人たちはどれだけ驚き、楽しみにしたことでしょう。
 バッハは堅苦しいカントル、忠実な職業作曲家のように言われていますが、とんでもない!
 後期のバッハは、少なくとも気持ちの上では、史上初とも言える完全に自由な作曲家、
 彼のの心は、完全に自分の信じるものだけに捧げられていました。

 バッハの協奏曲等のパロディの記事はこちら

 後期のバッハに関して触れている記事はこちらなどです。


 さて、協奏曲楽章ももちろんすばらしいですが、この曲に関して、真に特筆すべきなのは、この後に続く、アリアの花園でしょう。
 
 この後のアリアは、そのすべてが、後期作ならではの豊潤の極みもというべき美しさ。


 特に最後の第7曲、男声だけの舞曲デュエット
 のびやかで力強くてまっすぐで、今の季節にぴったり!

 前述のようにこのカンタータは、協奏曲楽章で幕を開けたわけですが、
 曲をしめくくるコラール前に置かれたこの舞曲も、わたしの愛するブランデンブルクコンチェルト第1番の第3楽章、どこまでも空を駆け抜けていくようなあの楽章に、なんとなく似ています。
 実際にこの楽章を冒頭に掲げた世俗カンタータもあり、(BWV207)
 この前レオンハルトのすばらしい新譜をご紹介したばかりですが、そう言えばちょっと似た雰囲気。

 先週の暴風雨で桜は完全に散ってしまいましたが、
 かわりに、いっせいに新緑が息吹き始めました。

 そんな公園の中、自転車を走らせながらこのアリアを聴いたら、あまりにもステキだったので、
 突然ですが、久しぶりに、「お気に入りのアリア」に加えてしまいましょう。

 一口に新緑と言っても、
 まぶしいくらいにきらきらと輝くものから、霞か霧のようまに淡いものまで、
 色も鮮やかな原色のものから限りなく白に近いものまで、緑だけでも百万の光と色彩の洪水のようです。

 風までが緑に染まったような中を疾走していると、ほんとうにどこまでもどこまでも、走っていけそう。
 実際は図書館まで行って、すぐに帰ってまいりましたが。

 これから5月にかけて、新緑が美しい季節が続きますが、
 このように、新芽が、世界にいっせいに湧き出てきたかのように鮮やかなのを味わえるのは、1年でもほんの一瞬、正に今だけ、もしかすると、桜を楽しめる期間よりも短いのでは。

 そんなかけがえのない瞬間にふさわしい、
 とにかく、そんな感じの音楽です。
 ちょうど今この時期にこのカンタータが聴けるように、暦がめぐってきたことに、心から感謝したいと思います。


 さて、このカンタータ、
 その他にも、しっとりとして心に染み入るようなアリアが、長調と短調、それぞれ1曲づつ。
 どちらも、聴き応え満点です。



 なお、このBWV146と同じく、ピカンダー作詞、協奏曲楽章で開始され、美しいアリアが連なるカンタータに、
 
 BWV188(カンタータ第188番) 「我、我が拠り所を」

 があります。


 これは秋のカンタータですが、やはり、たおやかな美しさを誇るアリアが魅力的。
 
 特に、第2曲、おだやかな小春日和を思わせるテノールの歌う舞曲アリアのやさしさ、慈しみ深さは、例えようもないほど。

 
 今回ご紹介のBWV146が春の代表、
 このBWV188が秋の代表、ということで、
 ピカンダーがらみの名アリアとして、あわせて、「お気に入りのアリア」に入れておきたいと思います。
 


 残念ながら、
 両曲とも、おなじみの協奏曲が登場し、とびきり美しいアリアが並んでいる割には、ほとんど知られておらず、全集以外ではなかなか聴けないカンタータですが、
 近くの図書館に全集があったり、中古ショップで分売ものを発見したりした方は、この機会に、ぜひ。

 

 ピカンダーについては、こちらの記事


 歌詞作家ツィーグラーのことも含め、この日のカンタータの詳細については、
 こちらの記事をご覧ください。
(各曲については、コメント欄の方がくわしく書いてます)


 ついでに、「お気に入りのアリア」シリーズがみんな出ている目次は、こちら
 カンタータの何を聴いていいのか途方にくれている方、
 お気楽にカンタータを楽しみたい方、
 まず、こちらのコーナーから、どうぞ。



 清々しい新芽の写真を、あまりうまく撮れなかったので、
 かわりに、先週食べた、春らしいランチ。(なんだ、そりゃ)
 どちらも、春限定のスペシャルで、とにかくとっても春らしかったので。


 いつも行く老舗イタリアンの、昨年の今頃も食べた、正に今の季節だけの春色オレキエッテ。
 スプーンでピラフのようにすくって食べるとおいしい。行儀悪いかな。
(ベーコン、きのことブロッコリー入)

画像



 これもいつも行く老舗そば屋の、春の山菜せいろ。

画像




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コメント(13件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんわ。
記事を参考に146番を改めてじっくり聴きました。
リンクされている記事も拝見しましたが、冒頭のシンフォニアはもともとがVn協奏曲なのですか。
そういえば、どことなくヴィヴァルディっぽいな、と(気のせい?)。
ぼーっと聴いていると教会カンタータであることをつい忘れてしまいますね。
カデンツァらしいものまであるし。どういうつもりだろう。実は、自分が思う存分オルガンを弾きたくなっただけだったりして(笑)。
第6曲のアリアも良いですね。

>風までが緑に染まったような中を疾走していると、ほんとうにどこまでもどこまでも、走っていけそう。
>実際は図書館まで行って、すぐに帰ってまいりましたが。

まさか、府中まで?(笑)
たこすけ
URL
2008/04/12 21:29
 たこすけさん、こんばんは。
 初期や中期の「名作カンタータ」のような緊張感はあまり期待できないかもしれませんが、このあたりのカンタータも、何だか懐が深くって、いいでしょう。
 わたしは大好きです。

 BWV1052、原曲は、Vnのためのものにまちがいない、と言われ、Vn協奏曲(BWV1052a)として録音しているCDもあったはずですが、偽作説もあります。
 いずれにしても、この記事で紹介したBWV146と188で全曲そろってしまうわけですね。

> 実は、自分が思う存分オルガンを弾きたくなっただけだったりして

 真実は、もっとひどくて、ずばり、息子にオルガンの練習をさせるためでした。(笑)
 この時期、オルガン協奏曲楽章付きや、オルガンを通奏低音でなく技巧的なオブリガートとして使用している曲がやたら多く、中には、とんでもない名曲もあるのですが、すべて息子のためです。
 ほんとにやりたいほうだいですね。

> まさか、府中まで?

 だから、府中までは、ムリだって。(笑)
Nora
2008/04/12 23:34
 たこすけさん、言い忘れてました。
 BWV164は、3曲目のアリアのオブリガートがオルガンの版と、器楽になってる版(おそらく後年のもの)とがあります。わたしは器楽のリリングの演奏が好きです。もしまだ聴いてなかったらぜひ聴いてみてください。

 ところで、カンタータの掲示板に、管理人さんがすごいコラールの楽譜をアップなさいました。たこすけさん、ちょっと興味あるのでは?
(→右URL欄→)
Nora
URL
2008/04/13 02:17
>Vn協奏曲(BWV1052a)として録音しているCDもあったはずですが

BWV1052のVnコンチェルトとしての復元版は、リフキンのCDがあります(オワゾリール)。Vnソロはスタンリー・リッチーというひとです。
例によってOVPPでの演奏です。
ほかにもあると思いますが。
koh
2008/04/13 18:27
 kohさん、ありがとうございます。
 このCDは、たぶん聴いたことがありません。
 BWV1052aは以前一度聴いたことあると思うのですが、誰のものか完全に忘れました。
 普段聴きなれたチェンバロ(やピアノ)バージョンと比べて、だいぶ雰囲気が異なっていたのはおぼえています。
Nora
2008/04/13 21:33
またまたこんばんわ。
すごいのを紹介していただきました。ありがとうございます。
興奮のあまり(笑)、録音もしてしまいました。
近々アップするかもしれません。
しかし、この曲もすごいですが、95番も聴きかえしてみると、すごい曲ですね。第1曲の後半のコラールは通奏低音の動きが異様(笑)。
とりあえず、お礼までに。
たこすけ
URL
2008/04/13 23:29
> 興奮のあまり(笑)、録音もしてしまいました

 早っ!

 気に入っていただけたようで、よかったです。この曲、CDは大全集盤しかないようなので、ぜひ、聴かせてください!
 でも、これ、たこすけさんの音程がおかしくなったと思われる恐れもあるので、気をつけて。(笑)

 だけど、器楽伴奏付のカンタータ冒頭楽章から合唱部分だけ抜き出して出版するというのもすごい話ですが、それを録音してしまうたこすけさんもすごい。(笑)  
Nora
2008/04/14 12:26
 それにしても、BWV95の冒頭合唱は、のびやかで夢見るように美しい器楽伴奏がついていますが、こんなものが隠されていたとは。
 聴いていて、何だか妙な感じはしていたのです。

 先日、新譜情報で、ヘレヴェッヘの三位一体節後第16日曜のためのカンタータ集をご紹介しましたが、(→右URL欄→)
 この日のためのカンタータは、みんな同じ、「少し異次元」の匂いがします。
 気をつけて聴いてみる必要がありますね。
 早くCD、出ないかな。
Nora
URL
2008/04/14 12:46
アップしました(笑)。

いやぁ、半日つぶしてしまった。なにかに取り付かれた気分でした(苦笑)。

> この日のためのカンタータは、みんな同じ、「少し異次元」の匂いがします

以前から161番などにそんなことを感じていました(受難コラールの異様な使い方、とか)。
この機会にあらためて聞いてみたいと思います。

たこすけ
URL
2008/04/14 13:17
 たこすけさん。
 これだとこのコラールのすごさが、とてもよくわかります。
 ほんとうにありがとうございます。くわしくは、そちらにコメントさせていただきます。

 だけど、こうなると、他の冒頭合唱のコラールも、要チェックですね。
 こりゃ、たいへんだ。(笑)
Nora
2008/04/14 15:39
BWV1052第一楽章による146のシンフォニアは、息子エマニエル・バッハによってクラヴィア協奏曲に改変されたそうですが、これのCDはありますかな
taka
2008/12/10 23:51
 takaさん、コメントありがとうございます。

> BWV1052第一楽章による146のシンフォニア

 ちょっとややこしいのですが、実は、厳密に言うとこれは逆で、今わたしたちが親しんでいるBWV1052は、BWV146やエマヌエル編曲稿よりも後にできたものです。
 まず、ソロ楽器がヴァイオリンと思われる紛失したコンツェルト(BWV1052a)があって、バッハはこの曲の各楽章を、独奏楽器をオルガンに書き換えて、カンタータBWV146、188に転用しました。
 エマヌエルによるチェンバロ編曲版もこの時点のものです。
 そして一番最後に、バッハ自身が、チェンバロコンチェルトBWV1052としてまとめたわけです。
(つづく)
Nora
2008/12/11 16:13
(つづき)
 従って、BWV1052aが存在しない現状では、エマヌエルの編曲版は、BWV164のカンタータ楽章(BWV188の方は楽譜紛失)とともに、BWV1052aとBWV1052の中間稿として、BWV1052a復原のためのとても重要な資料ということになります。

 ただ、かんじんのCDなのですが、この上のkohさんのコメントにもあるように、復原されたBWV1052aのものはいくつかあるのですが、エマヌエル版に関しては、わたしは聞いたことありません。
 何の役にもたたず、申し訳ありません。どなたか、ご存知の方がいらっしゃれば、コメントしてくださるとうれしいです。
Nora
2008/12/11 16:14

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