♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS バッハの「第3年巻」〜BWV39、34の話題を中心に+万葉集の植物・続編【三位一体節後第1日曜日】

<<   作成日時 : 2010/06/02 00:24   >>

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 今週は、ちょっと早いお知らせになります。


 今度の日曜日、6月6日は、三位一体節後第1日曜日。


 カンタータは、

 第1年巻のBWV75

 第2年巻のBWV20

 後期のBWV39

 の3曲です。


 過去記事は、こちら↓

 <三位一体節後第1日曜>
    始まりはいつも Overture(BWV20、75他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    きちんと曲目解説〜年巻の始まり。この機会に用途不明テキストカンタータの名作を 



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 1723年の初夏に、ライプツィヒに赴任してきたバッハは、この祭日から、カンタータを書き始めます。
 つまり、バッハのカンタータ年巻が始まるのは、この祭日から。
 従って、これらのうち、BWV75BWV20は、それぞれ、第1年巻、第2年巻を開始する曲。

 もちろん、どちらも冒頭合唱は、壮麗なフランス風序曲になっています。


 最後のBWV39は、よく知られた傑作ですが、実はこの作品、フランス風序曲で開始されないものの、やはりバッハの「第3年巻」の中核部分の始まりを飾る大作です。


 カンタータ第39番 「飢えた者にあなたのパンを分け与えなさい」 BWV39


 第2年巻(コラール・カンタータ年巻ほか)をとりあえず完成させた後、ひととおり燃え尽きたか、バッハ先生、トマスカントル3年目は、極めて断続的にしかカンタータを作曲しませんでした。
 しかし、4年目に突入する1726年の初夏、突如、意を決したかのように、再びまとまったカンタータ創作を開始します。

 以前、くわしくご紹介した、ルードルシュタット歌詞集に基づくカンタータを中心に、独唱カンタータやダイヤログカンタータ、コンチェルトそのものみたいなカンタータ、果ては、既存のコンチェルト楽章をオルガン独奏に編曲してそのまま使用する、などなど、
 正に、何でもあり、自由闊達、円熟の極み、後期バッハのみが獲得し得た筆致による大傑作カンタータ群。

 こうして、BWV170BWV82BWV56などのみなさんご存知の名作カンタータが次々と生み出され、燃えたぎるような奔流は、そのまんま、あの「マタイ受難曲」へとなだれ込んでいくわけです。
 バッハの生涯何度目かの絶頂期。しかも、今度のは、まるで、何ものかにとりつかれたかのような、あるいは熱病にうなされているかのような、ちょっと恐いくらいの絶頂期。

 それが最後に行きつくのが「マタイ」なら、
 その最初を飾るのが、このBWV39に他なりません。
 もちろん、ルードルシュタット・カンタータ。

 情緒的なホモフォニー部分と精緻さの限りをつくしたポリフォニーのフーガ部分とが交錯する壮大な冒頭合唱、
 甘美極まりないOb+Vnのデュエットがオブリガートのアルト・アリア、
 ユニゾンの2つのリコーダーの響きが夢のように美しいソプラノ・アリア、
 始めから終わりまで、充実しきった大傑作ですが、
こちらの記事のコメント部分に、NackyさんがBWV39のライブを聴いたすばらしい感想があります)
 上記したような点からも、とても重要な作品です。


 ちなみに、バッハの習性?からして、なぜ序曲で始まらないのか、という疑問が無きにしもあらずですが、
 バッハ先生、前年(1725年)の暮れに、すでに年巻開始を決意した節があります。
 クリスマスの名作カンタータ、BWV110
 冒頭合唱に、管弦楽組曲第4番のあの壮麗な序曲を使用していますね。

 ただ、その後、BWV3213など、早くも第3年巻の特徴を示す傑作を何曲か生み出しながらも、創作は継続せず、
 それらの作曲を助走として、1726年の初夏、緑燃える季節に一気に炸裂した、という感じでしょうか。



 と、いうわけで、「第1年巻」から「第3年巻」まで、それぞれ性格をまったく異にするバッハの「カンタータ年巻」ですが、
 いずれも、始まるのは、今度の日曜日、三位一体節後第1日曜日から。

 カンタータを聴き始めるには、ちょうどよい機会です。

 興味のある方は、これら曲を皮切りに、バッハの、というか、西洋音楽史上最大とも言える「作品」、1年間四季折々にわたしたちの生活を彩ってくれる、豊かな季節の音楽、

 「カンタータ年巻」

 を、いっしょに聴いてゆきましょう。



  *    *    *    *    *    *



 おまけ。


 1726年〜1727年のバッハのことを書いたついでに、ちょっと、BWV34のことを。


 カンタータ第34番 「おお、永遠の炎、愛の灯火」 BWV34


 BWV34は、つい先日、精霊降臨節のカンタータ、
 キラ星のごとき名作が並ぶ聖霊降臨節カンタータの中でも、屈指の名作、ブラームスが特別愛して上演を行ったことでも知られます。
 若々しい緑が萌える今の季節ならではの情景と、タイトルどおり、愛の炎が地平の彼方まで燃えひろがってゆくようすが、ぴったりと重なり合う冒頭大合唱、
 さらに、その一面の光の中で、微かにふるえるさわやかな風のようなアリア、
 わたしにとっても、このブログにおいて初めてくわしく記事を書いた、特別な作品。


 この作品はこれまで、ケーテン時代のコンチェルト風世俗カンタータを、最晩年のバッハが、教会カンタータに書き直したもの、と言われてきました。

 ところが、この曲、

 バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)のこの夏のライブ、

 J.S.バッハ:教会カンタータ・シリーズ Vol.57 〜 ライプツィヒ時代1727〜29年のカンタータT

 のプログラムに入っています。

 はじめ、このBWV34の曲目を見て、
 おお、BCJのカンタータ・シリーズも、いよいよ終了間近か、と、思ったのですが、どうやらそうでもないらしい。
 副題には、「1727〜1729年のカンタータT」とある。
 つまり、前述の第3年巻あたりのカンタータとして、BWV34をあつかっている。

 これは、いったい?と一瞬とまどいましたが、
 実は、このようなことはよくあることで、
 おおかた、これまで推定されていたよりもはるかに早い段階で、BWV34が上演されたことを裏付ける楽譜なり何なりの資料が発見された、というようなことなんでしょうけれど、
 確かに、BWV34の完全にコンチェルト風の構成は、BWV82BWV170などに連なる作品として考えた方がしっくりくる気もする。

 もっとも、最晩年のカンタータではなくなったからといって、前述のように、第3年巻時点のバッハは、すでに作曲家として、驚くべき高い次元みに達しているため、BWV34の価値が何ら減じるものでないことは、いうまでもありません。


 バッハのカンタータは、一時期、歴史の狭間に飲み込まれ、忘れ去られ、人類の宝とも言うべきその貴重な資料は完全に散逸、
 何度も書いてきたことですが、現在わたしたちが、常に200曲ものカンタータを聴くことができるのは、大勢の研究者や演奏家のたゆまぬ努力の結果、
 バッハのカンタータは、バッハその人だけでなく、それ以降、気の遠くなるほど多くの人々によって、累々と積み重ねられてきた「作品」でもあるのです。
 その努力には、決してゴールはなく、現在も日夜、バッハのカンタータ研究は進歩し、情報は更新され、
 今後は、コペルニクス的転換さえ起こりうるかもしれません。
 それこそピカンダー年巻がごそっと出てくる、とか。
 ○○受難曲が見つかる、とか。

 従って、今回のような軌道修正は、細かいことを含めると、毎日のように起こっている可能性があり、
 これまでわたしが書いてきた内容に関しても、実は事実とまったく異なる、という事態が、どんどん増えていっている、と言っていいわけです。

 実際、BWV34については、これまで、バッハ最後のカンタータの一つ、という位置づけで書いてきましたし、
 「バッハの最後のカンタータは?」(その1その2)という特集記事にも、堂々と登場しています。


 今回は、BWV34という、重要作、有名作に関することにつき、このように新たに修正を加える記事を書きましたが、
 とても修正できない部分もある、というか、ほとんど修正しないつもり、ということを、この機会に、どうかご了承ください。

 その点についての言い訳としては、
 以前、このような記事を書きましたので、よろしかったら、併せてご覧いただければ、と思います。



 BWV34、前記のとおり、今の季節にぴったりの名作です。

 聴きなれた名作だとは思いますが、これを機会に、あらためて、ライブでお聴きになるのもいいのではないでしょうか。

 BCJのカンタータ・シリーズ、ゴールにはまだ少しありますが、ラスト・スパートに変わりありません。
 このあたりになると、もう演奏する曲のすべてが、「神品」ばかり。
 BWV34以外も、すさまじいラインアップ。

 歴史的ゴールの日まで、これはちょっと目が離せません。


 関西 6月26日(土) 神戸松蔭女子学院大学チャペル

 関東 7月2日(金)  東京オペラシティ


 一応宣伝しておきますが、切符がまだ残っているかどうかは知りません。



 * バッハのカンタータに親しむ一番の近道は、

   ・ そのカンタータが、どの季節のためのものなのかを知る

   ・ そのカンタータが、バッハの生涯のどの時期に書かれたものなのかを知る

   この2点につきると思います。

   カンタータは「季節の音楽」なので、前者は当然のこととして、
   後者については、カンタータは正に「バッハの生涯を映す鏡」でもあり、
   カンタータを体系的に聴いてゆくと、バッハの生涯、生き様が浮き彫りになって、実におもしろいのです。

   従って、このブログにおいてカンタータをご紹介する際には、
   それがいつ作曲されたものなのかを必ず明記するようにしてきたわけですが、
   その際に、「第3年巻」という区分は、使用していません。
   バッハがある程度年巻としてのまとまりを意識していたことは、上記のようにまちがいないものの、
   第1年巻、第2年巻と異なり、作曲時期が数年度にまたがっていて区分が必ずしも明確でないためです。
   1725年後半以降のカンタータについては、一括して「後期」という区分にし、
   必要に応じて、「ツィーグラー・カンタータ」、「全詩節テキスト・カンタータ」などの細かい仕分けをしているので、ご注意ください。

   これらの区分の詳細については、こちらの目次にある各記事をご参照ください。

   バッハの「カンタータ第3年巻」
   なかなかとらえどころが無く、一筋縄ではいかない点もありますが、
   何かニックネームをつけるとしたら、

   「オペラチック・カンタータ年巻」

   と言ったところでしょうか。

   バッハがオペラを書かなかったのは、やはりとても残念なことですが、
   それを補ってあまりある、どこまでもオペラ風なカンタータ群、ということで。




  *    *    *    *    *    *



 さらに、おまけ。
 ちょっとさびしいので、植物の写真を。

 以前、特集した「万葉集の植物」の続編です。



 前回、つぼみだった、エゴノキが、5月半ば、満開に・・・・!


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 おなじみひびき庵の店先にも、エゴノキがあり、
 雨の中、瑞々しく咲いていました。

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 カジノキ、続報。


 何とか花が見たくて、五月中ずっと通ったのですが、もう今年はすでに終わってしまっていたみたいです。
 前回のせた蕾状のようなものが、花が終わった状態だったようです。
 残念ですが、また来年のお楽しみにしたいと思います。


 雨の日のカジノキ。

 雨に濡れていると、その特徴的な樹の表面がさらに際立つ。
 こぶが多い不思議な樹。ところどころ、穴が開いているが、こういうものなのだろうか。

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 カジノキの花が見られなかったかわりに、

 おきなぐさの花を見ることができた。


 おきなぐさというと、真っ先に賢治の童話を思い出す。
 幻の花鳥童話集の中で、「いてふの実」とともに美しい輝きを放つ、「双子」の星。


 花を見たのは初めてだったが、こんな珍しい花だったのか。

 tonaさんによると、カジノキの花は、この花に似ているらしい。
 なるほど、この花のヒゲ状のものが、縮んで無くなったとしたら、前回のせたカジノキのワシャワシャした蕾みたいなものに似ていなくもない。

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 今回新たに花開いていた、万葉集登場植物、まゆみ


 写真で見ると、わからないかもしれないが、実は、ほんの数ミリのミクロの花。かわいい。

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 その他、初夏の植物園は、あざやかな緑と美しい花々でいっぱい。
 その他の花々については、別途奥の院に記事を書こうと思います。



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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは!!

39番数年前に歌いました。
1曲目の合唱は難曲でしたが、
歌っていて幸せになる曲で、大好きです。
このコラールは、私たちの合唱団の練習で毎回、
発声練習のあとに歌っています。
「持ちコラ」と称して(この略し方あまり好きではないのですが)
何かのときに皆で歌えるようにしています。
yocomo
2010/06/02 17:47
yocomoさまの合唱団も素敵ですね。
Noraさま、39番のアップ、ありがとうございます。
私のカミカミのコメントも、再度ご紹介いただき恐縮です。
マタイへと繋がるカンタータですか。。。。
2月14日の後、早速、ヘレベッヘのCDを購入し、ほぼ、毎朝、
通勤時にデジタルウォークマンで聴いていますが、正しく、
今が旬ですね。
初夏のライプツィヒの街。。。。
菩提樹の下の涼しげな木陰。そしてそよぐ爽やかな風のような
アリア。
抜群にカッコイイ、冒頭合唱と心が和む、終曲のコラール。
朝から、仕事に挑むための元気をいただいております。(笑い

4月になってから、たまたま、検索していたら辿りついた
pocknさまのブログです。
誠に勝手ながら、コメントでNoraさまのカンタータ日記を
ご紹介させていただいておりますが、よろしければご覧下さい。
(pocknさま、Noraさまにご紹介させていただきました)
         ▽
http://blog.goo.ne.jp/pocknsan/e/fdf644e231d53927a35f631670719629

先週末は、神奈川県立音楽堂で渡邉順生先生のヨハネを聴きました。
今週末は、東京藝術大学の上野の森コンサート(オルガン)、
西山まりえさんのチェンバロコンサートと、益々、深みにはまって
行きます。(笑い


Nacky
2010/06/02 23:41
 yocomoさん、こんにちは。
 BWV39の冒頭合唱は、曲調がめまぐるしく変わる上に、フーガ部分が複雑なので、やはり難曲なのでしょうけれど、それだけに、歌いぬいた時の喜びは大きいんでしょうね。
 BWV39のコラールは、揺ぎ無い平和な気分にあふれていて、わたしも大好きです。このような編曲は、まさに「後期」のバッハならではだと思います。
 歌う側も聴く側も幸せになれそうで、何かのときに歌える「持ちコラ」にぴったりなのでは。
Nora
2010/06/05 17:32
 Nackyさん、こんにちは。
 Nackyさんのこの前のコンサートの感想に触発されて、今年は、わたしも、BWV39をじっくりと聴いてみました。
 Nackyさんもお書きになってる、初夏のさわやかな気分を堪能することができました。ありがとうございました。
 ヘレヴェッヘの録音は、比較的初期の清冽さにあふれた演奏で、この曲にぴったりの名演だと思います。

 ご紹介いただいたサイト、拝見しました。
 Nackyさんの感想と同じく、当日の演奏の素晴らしさがよく伝わってきました。

 まだまだ、バッハの演奏会が続くようですね。
 また感想等、お聴かせください。
Nora
2010/06/05 18:42
こんばんは、ご無沙汰いたしました。

カジノキのお花、いつ咲いたのでしょうね?
来年に期待したいですね。
こんなに穴が開いていてよく生きています。
まゆみの花もきれいに撮られましたね。
本当にこの植物園は素晴らしいです。
今後も期待しています。
tona
URL
2010/06/18 23:41
 tonaさん、お帰りなさい!
 最後の最後で、たいへんな目にお合いになったようですが、無事お帰りになられてよかったです。
 もう、旅行記が始まっていて、びっくり。(尊敬)
 写真を拝見しましたが、みどりや花々や海があざやかで、今回はまた特別美しいですね。
 ゆっくりと記事を読ませていただき、くわしくはまたそちらにコメントさせていただきたいと思います。

 カジノキは、やはり一番最初に撮った写真が、花が終わった実の状態だったようですね。異常気象のせいか、かなり早かったのでしょうか。
 何とか花を見ていただきたかったのですが、残念です。
 でも、おかげ様で、賢治の童話を読み、いったいどんな花だろう、とずっと思っていた、おきなぐさの花を見ることができました。
Nora
2010/06/19 02:14

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