♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS ゾロ目CK、BWV111+新春CDご紹介1〜気合いはオリジナル以上、満を持しての編曲物【顕現節後3】

<<   作成日時 : 2011/01/23 03:04   >>

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 今日(1月23日)は、顕現節後第3日曜日。


 カンタータは、

 第1年巻のBW73
 第2年巻(コラール・カンタータ)のBWV111
 その翌年のBWV72
 後期のBWV156
 の4曲です。


 過去記事は、こちら↓


  <顕現節後第3日曜>

    冬のラルゴ・その1(BWV156他)
    顕現節後第3日曜(BWV72、111)
    顕現節後第3日曜(BWV72、111)



 BWV1056で名高い「冬のラルゴ」が曲を開く、後期のBWV156
 ミサ曲にも転用された同じく後期のBWV72
 いずれも名曲ですが、

 今回も、新しい年を迎えてもはや前人未到の境地に突入してしまっている、第2年巻のコラールカンタータを聴いてみましょう。

 BWV111。うわっ、地味だ。

 でも、これ・・・・、
 以前、「ゾロ目のカンタータは要チェック」という記事の中で、いつか必ず何か書きます、と宣言した、
 これ以上のゾロ目はない、究極のゾロ目カンタータ。

 そう、知る人ぞ知る名曲、というか、またまたとんでもない名曲の登場です。


 もとになるコラールは、ブランデンブルク辺境伯アルブレヒトによる「わが父の御心のままに」。
 このコラールは、あの「マタイ」でも印象的な使われ方をしていますが、メロディとしても、顕現節の名作BWV65など、多くのカンタータにも登場する名旋律。

 この時期のバッハのCKの完成度は、もはやただごとではない。
 一分のスキも無い名作、という言葉は、このような曲のためにあるのでしょう。
 さらに、行進曲風の晴れやかな第4曲デュエットアリアを聴くと、元気が出ること、請け合い。


 冒頭大合唱
 音楽が始まると、あれ、どこかで聴いたかな、と思う方も多いはず。
 どこかで聴いたような気もするんだけど、これだけの音楽はどこを探してもありません。
 この音楽は、バッハのあまたの短調協奏曲の行き着いた姿。
 一度聴いたら忘れないキャッチーな出だしのモチーフ、コラールが重なり合う部分のオケのすさまじい疾走感。
 バッハの短調協奏曲と言えば、みなぎる力強さが何よりの魅力ですが、その究極の完成型、正に短調協奏曲の王冠というべき楽章。

 第2曲バスアリア
 あえぐようなとぎれとぎれのbcだけの伴奏が印象的だが、それに乗って歌われるバスの歌は、やはり力強く、決然としています。
 短いけれど、そして、伴奏はbcだけだけど、いやそんな風にシンプルだからこそ、ストレートに心に響く音楽。

 ここまで、充実しきった、緊張感あふれる音楽が続いてきましたが、実は、それさえも、序章にすぎなかった。

 第3曲のレチタティーヴォに導かれて、炸裂する、

 第4曲AとTのデュエット
 この曲が、全曲の頂点でしょう。
 この曲が始まったとたん、あたりが急に明るくなり、風景が広々と広がったような気分になります。
 それまで厚い雲に覆われていたのが、突然どこまでも青く晴れ渡ったかのような。
 突然の大転換。心からの思いが厚い雲を貫いたかのような。
 この唐突なまでの大転換、大逆転こそが、バッハのカンタータの魅力の一つ。
 音楽は、典型的な舞曲デュエットですが、お聴きになればわかると思いますが、一言で言うと、
 スキップ行進曲
 空は一点の曇りも無い青空。その空高くに向かって、次々とつむじ風のように湧きあがる弦のパッセージ。
 そんな中、手を取り合って、野を超え丘を超え、どこまでもどこまでもスキップしてゆくような音楽。(こうして書くと、あまりにも能天気?歌詞はよくわからないけど、だいじょうぶだろうな)

 その後、第5曲、オーボエの伴奏が美しいアダージョ・アリオーソ付きのレチタティーヴォに導かれ、

 終結コラールが再び力強く歌われ、全曲を閉じます。


 リリング全集盤。力のある歌と器楽。第4曲の晴れ渡る爽快感が出色。



  *    *    *    *    *    *



 何回かにわけて、年末年始に聴いたCDなどをご紹介。



 まず、はじめに、何だかジャケットがよく似ている、クロスオーヴァーというか、編曲ものを2点。
 編曲ものといっても、よくある安易な企画物とはわけがちがう。
 
 まったくちがう内容ながら、どちらも、オリジナル以上に原曲を大切にした?気合い入りまくりの出来栄え。
 おそらくどちらも、長年やりたくてやりたくてしかたなかったのが、ついに実現した、という感じなのではないでしょうか。



 Reimagines Gershwin (ガーシュイン作品集) ブライアン・ウィルソン


画像



 真の天才が、本気で、しかも心から楽しんで仕事をすると、こんなものができる、というお手本のようなアルバム。


 今さら書くまでもないこと、と言いつつ、ブライアン・ウィルソン(とビーチボーイズ)の、世間一般のイメージをはるかに超越したすごさについては、ついこの前、映画の記事にからめて書いたばかりですが、
 折りしも、それを証明してあまりあるような、何ともステキなアルバムがリリースされました。


 山下達郎ばりの(というか、こちらが元祖か)すさまじい多重録音によるラプソディ・イン・ブルーで、ぜいたくで楽しいレヴューが開幕!
 山下洋輔のソロにまつわる筒井康隆の名言に「百万台のピアノが奏でるラプソディ・イン・ブルー」みたいなのがあったが、ここでは百万人のブライアンが歌っている?
 わくわくと胸高まるオープニング。ここでもう、心はがっちり鷲掴みにされてしまう。

 その後は、稀代の音楽シェフ(というより、今やすっかり「巨匠」)の手によってさまざまに料理された、おなじみの名曲の数々が、怒涛のごとく続きます。
 ストリングスを加えた豪華なオケをバックにした、まったりと甘いナンバーから、
 凝りに凝ったビックバンド・ジャズ風、フォーク・カントリー風、分厚いサウンドを縦横に駆使したロックンロール風、
(時折、フィル・スペクターが帰ってきたかと、思わずぞぞっと鳥肌が立つ。これは実は感動の鳥肌?)
 そして、もちろん、ビーチボーイズ風。
 というか、中には、ビーチボーイズにしか聴こえない部分もあって、ガーシュインってこんなの書いてたの?と思ったら、一部ブライアン先生も共作してるところもあったりして。

 それぞれの曲に、それぞれの曲のよさを最大限に生かすような、実にさまざまなアレンジがていねいにていねいに施されていて、さながら万華鏡のよう。
 しかしそのすべては、ブライアン・ウィルソンの、あの明るのにどこか郷愁を誘う超えによる、心からの熱唱に貫かれていて、完全に一本スジが通っている。
 ブライアンがどれほどこれらの歌を大切にしているかがわかるというもの。 
 しかも全体の曲順、構成も考えに考え抜かれた結果のようで、あたかも高度に完成された、一つの物語を持ったショーのように、最後まであっという間に聴きとおせてしまう。

 あまたのジャズ・ジャイアントたちの名盤名演奏でおなじみのナンバーばかりだけど、ポップスでこんなにていねいにアレンジされたアルバムはめずらしいんでは。よくは知らないけど。

 例の百万人のラプソディ・イン・ブルーが、キーをさらに高くして再び繰り返され、最高の余韻を残して、おしまい。


 楽しい時間が、すぐに過ぎ去ってしまうのが、(実際に収録時間も短い)唯一のぜいたくな欠点か。



 クリスマス・オラトリオ (ビッグバンドジャズ版)

    キングズ・シンガーズ、WDRビッグバンド
 

画像



 バッハの人気作、みんなが大好きクリスマス・オラトリオの、ジャズ・ビッグバンド版。
 しかも、一部の有名曲のアレンジではなく、抜粋とは言え、原曲の流れ、雰囲気を損なわないように、一応「全体」を通してアレンジを施した2枚組みの大作。

 当初は、当然クリスマスに合わせてのリリース予定でした。
 あの楽しいクリスマス・オラトリオのビッグ・バンド版。ニュースを聞いただけでもわくわくして、今年のクリスマスはこれだ、と思っていたところ、何とリリースが遅れてクリスマスには間に合わず、大晦日にやっと届きました。
 でも、クリスマス・オラトリオは、ご存知のように新年の祝祭日にも対応しているので、お正月に楽しく聴かせていただきました。
 この曲は、めでたいお正月にもぴったり、というのを、あらためて実感いたしました。


 実際聴いてみると、アレンジ・演奏は期待通りのすばらしさ。(まあ、予想通り、という言い方もあるけれど。)

 あの、冒頭の印象的な、「どんっ、どんっ、どんっ、」というティンパニの3連打も、「たんっ、たんっ・・・、んたたんっ、」という軽やかなシンコペーションが加えられたドラムスのリズムに置き換えられ、
 以下、原曲の祝祭的雰囲気はそのままに、より楽しく親しみやすく姿を変えたあの冒頭合唱が続きます。
 何よりもリズムに気を配った、そしてビッグバンドの楽器の特性が十分生かされるように考え抜かれた、入念なアレンジ。

 でも、大幅なアレンジが加えられているのは、ほとんどこの曲だけ。
 以前から力説しているように、カンタータとジャズのフォーマットは、ほとんど、というかまったく同じなので、
 この後に続く音楽は、もちろん、楽器や演奏の仕方、歌い方等は異なり、時には大規模なアドリブがはさまれることもありますが、アリアもレチタティーヴォも、少しも違和感を感じることなく、ちょっと弾けたクリオラ、みたいな感じで、ノリノリで楽しむことが出来ます。

 随所にきちんと挿入されているコラール。
 アカペラは、キングス・シンガーズの独壇場なので、これが特に見事。一番の聴き所かもしれない。
 バッハのコラールのすばらしさに、あらためて、はっとさせられること請け合い。

 カンタータも、こんな感じで、次々と録音してくれないものだろうか。
 ジャズ版、あるいはゴスペル版カンタータ全集なんて、めちゃくちゃ楽しいと思うんだけど。

 全曲の最後の終結コラール、
 フィナーレということもあり、器楽の演奏が特にノリノリで、めちゃくちゃ楽しいだけに、その中で突然歌われる「あのコラール」がものすごく痛切に響きわたる。
 そういう意味で、バッハの意図も最大限に生かされている。
 決して珍盤、奇盤のたぐいではなく、クリスマス・オラトリオの名盤の列にふつうに並べられて良い「名演」なのではないでしょうか。

 ただし、原曲を聴いたことない方は、必ず原曲を聴いてから聴くべし。
 その方がずっとずっと楽しめます。


 最後に、このCDも、たった一つだけ、残念なところが。
 あのクリスマス気分満点羊飼いのパストラール、第2部冒頭シンフォニア(この曲、大好きなんです)が、なぜかカットされているのだ。一番かんたんにジャズ化できると思うんだけど。
 これも、原曲(声楽)重視のあらわれか。
 
 

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
Noraさん、こんばんは。

今月の半ばに、待望のリリング・カンタータ全集が手元に届きました!
Noraさんのご案内のもと、毎日カンタータを聴いておりますよ。
今は、初めて聴くカンタータ(が殆どなので)に出逢いながら「この曲のここが好き!」を見つけるのが楽しくって。

長い間、アーリン・オジェーのカンタータアリア集を愛聴していたのですが、その中でも気に入っていたBWV199のアリアを、ようやく作品全体を通して聴くことができました。いやあ…ほんとうにすばらしい作品ですね!

Noraさんの記事を拝読したら、バッハもお気に入りの作品だったとのこと。カンタータを聴きながら、色々なことを知ることができて、本当にうれしくまたありがたく思います。


ANNA
2011/01/23 22:56
ご無沙汰していました。
最近バッハから離れ気味だったので…(^_^;)

記事に誘われてゾロ目111番をじっくり聴きました。
やっぱりバッハはいいですねえ(笑)。

典型的な第2年巻型の曲ですね。
書かれているとおり、第1曲の迫力はすさまじいですね。でも意外にコンパクト。もうちょい展開してくれてもいいのに。書いてて疲れたのかな?子どもがまとわりついていて集中できなかったとか?(笑)
第4曲、「スキップ行進曲」、歌が入ってくるあたりから自然に首が縦ノリになるわ、肩が横にゆれるわ(笑)。当時の教会の様子を想像すると微妙に面白いです。
このコラールの旋律、どこかで聴いたことがあるなと思ったら、マタイでした。なるほど。こういうのは嬉しいです。

たしかに地味かもしれませんが、いい曲ですねえ。

たこすけ
URL
2011/01/25 11:45
 ANNAさん、こんばんは。

> 待望のリリング・カンタータ全集が手元に届きました!

 おめでとうございます!(?)
 ほんとうに楽しいでしょうね。10年前を思い出します。
 どこをとっても、素晴らしい音楽がぎっしりとつまっていますからね。
 
 BWV199、オジェーの真摯な歌声がぴったりの曲ですよね。
 ただ、読んでくださったように、BWV199はバッハの大のお気に入りで、BWV82に次くらいに再演が多いカンタータ。(わかってる範囲では)
 BWV82ほどではないですけど、その都度アレンジも微妙に異なり、版がちがうとだいぶ雰囲気も異なります。
 全集をお買いになった直後ですから、なかなかすぐに、というわけにはいかないでしょうけれど、もしBWV199がお好きでしたら、いつの日か他のCDもお聴きになるとおもしろいかもしれません。
Nora
2011/01/28 00:13
 たこすけさん、こんばんは。

> 最近バッハから離れ気味だったので

 わたしも、ここのところ、バッハどころか、音楽自体それほど聴かずに、建築や仏像の世界に没入している状況でした。
 「カンタータ日記」と言ってる以上これではいかんと、新年を契機に、なるべくカンタータを聴いて感想を書くようにしてきましたが、早くも力尽きようとしております。(笑)

 それでもやはり、よいカンタータに接すると、圧倒され、夢中になって聴いてしまいますね。
 このBWV110などは、合唱をやってる方々にはものすごく人気があるようですが、何と無くわかる気がします。この冒頭合唱を、実際に歌うというのは、けっこうすごい体験でしょうね。

 「バッハのコラールを歌う」によると、このコラール、マタイ以外にも、他のカンタータにたくさん登場しているようですね。本文には最近聴いたばかりのBWV65をあげておきましたが、この場合は旋律だけが同じで、コラールとしては別のコラールになります。
Nora
2011/01/28 00:32

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