♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS BWV190番台の麗しき迷宮・カンタータ奥の院に踏み入る【マリアの訪問の祝日+三位一体節後2】

<<   作成日時 : 2011/06/30 00:41   >>

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 今週も、夏の祝日があります。

 今度の土曜日(7月2日)は、マリアの訪問の祝日。


 おなじみBWV147の登場です。
 (初期の待降節用カンタータBWV147aを改作、ライプツィヒ1年目に初演)

 それから、それに決して負けない第2年巻(コラール・カンタータ年巻)の大傑作、ドイツ語マニフィカト、BWV10


 過去記事はこちら


 <マリアのエリサベト訪問の祝日>

    マリアとバッハ〜はじめて聴くカンタータ
    アドヴェント・クランツのともしび(BWV36、61、62)
    クリスマスとバッハその2・風の中のマリア(BWV147、10)
    対位法とバッハ・その1?
    お気に入りのアリア5・ロマン風マリア(BWV10)



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 さらに、今度の日曜日(7月3日)は三位一体節後第2日曜日。


 カンタータは、

 ライプツィヒ第1年巻の、BWV75に引き続いて気合いは入りまくりの、BWV76
 2年目、BWV2

 の2曲です。

 
 過去記事はこちら


 <三位一体節後第2日曜>

    始まりはいつも Overture(BWV2、76他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    三位一体節後第2日曜日(BWV2、76)



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 さて、本格的な1年の後半、夏・秋のシーズンが始まる前、
 季節の変わり目、三位一体節に、
 今年は、

 教会カンタータ第194番 「こよなく待ちこがれし喜びの祝い」

 を聴いてみました。

 BWV190番台は、「バッハ・カンタータの奥の院」とでも呼ぶべきエリアで、演奏機会は少ないながらも、とんでもない名曲が眠っていたりします。

 以前、やはり季節の変わり目のこの時期に、演奏用途の特定されない知られざる大名作を特集したことがあって、その時に、190番台の珠玉作、BWV192をご紹介したことがありましたが、
 今回、改めてこのBWV194を聴いてみて、それに負けず劣らずたいへんな名曲であると確信いたしました。

 この曲、以前、

 始まりはいつも Overture(BWV2、76他)

 という記事でかんたんにとりあげたことはあるのですが、
 せっかくなので改めてとりあげたいと思います。


教会カンタータ第194番 「こよなく待ちこがれし喜びの祝い」 BWV194


 あまりなじみの無い曲だとは思いますが、実は、1723年(ライプツィヒ1年目)の秋、ライプツィヒ近郊のある教会&オルガンの献堂式にて、上演されたものです。(内容・歌詞もどう見てもそう)、
 従って、これまでは三位一体節用のカンタータとしてはとりあげてこなかったのですが、
 初演以降は、何度にもわたって、通常の三位一体節の礼拝で演奏されたこともあるとのこと。
(三位一体節には、ある程度幅広い、さまざまな内容の曲が演奏可能なようです)
 今年の三位一体節にこの曲を聴き、
 ここであえて取りあげたのはその理由にもよります。

 しかし、それよりも何よりも、このBWV194、ちょっと他のカンタータには無いような破格の規模と内容を誇り、正にBWV190番台、カンタータ奥の院を代表する大名曲、と呼ぶにふさわしい曲なのです。 


 第1年巻の他の復活節や聖霊降臨節の例と同じく、世俗カンタータ(BWV194a)のパロディ、
 このBWV194aも、おそらくは、ケーテン時代のものだとは思いますが、伝承が他の曲以上に不完全で、用途、内容、初演等すべて不明。
 そのため、この前書いた、ケーテンの世俗カンタータの記事でも、ほんとうだったらまっ先にとりあげたいところではあったのですが、結局とりあげませんでした。

 そんな謎のBWV194aですが、一応部分的な器楽パート譜は伝わっているため、音楽の骨子だけはある程度わかっており、
 それによると、この原曲のBWV194a
 優雅極まりないフランス風序曲に、パストラーレ、ガヴォット、ジーグなどの美しい舞曲アリアの数々がずら〜っと連なり、最後は大合唱でしめられる、という、
 正に管弦楽組曲そのもののような曲。
 しかも、合唱や歌がついている分、より豪華版。

 その魅力的な音楽をそのままに、歌詞を変え、アリアの間にレチタティーヴォを差し込み、終曲の代わりにコラールを入れ込んだのが、BWV194に他なりません。

 レチタティーヴォやコラールを入れると、全12曲という、他にあまり例が無いような大舞曲アリアカンタータ。 

 失われた「もう一つの管弦楽組曲」、しかもとびきり魅力的で豪華な作品を、ここで聴くことができる、というわけです。

 
 さて、こうして書いてくると、いかにもド派手で教会音楽としてはふさわしくないようなイメージの音楽を思い浮かべられるかもしれませんが、
(バッハの場合、確かにそういう曲も多いんですが)
 この曲に限ってはそんなことは無くて、さらに特筆すべき特徴として、全曲にわたって貫かれている、やさしく上品な佇まいをあげることができます。

 楽器編成は3本のオーボエを中心としていて、確かに豪華で充実した響きではありますが、決してハデ、というわけではありません。
 オーボエと弦の柔らかで繊細な動きが全曲を支える序曲は、威風堂々な迫力というよりも、流麗かつ柔和な雰囲気に満ちあふれ、メロディの親しみやすさも印象的。
 第3曲、この世のものならぬ美しさをたたえた、至高のバスのパストラーレ
そのままなだれ込んでゆく、平和で安らかな流れは、十分宗教曲にもふさわしい、と言えます。
 
 世俗稿の最後の大合唱こそ取り除かれてしまいましたが、終結コラール前に置かれたデュエットのメヌエットは、それを補ってあまりあるような全曲のクライマックス。
 静謐な雰囲気の中で繰り広げられる、この上なく幸福な天使のダンスを見る思いです。

 この、一種霊的な光をおびているかのような不思議〜な曲調も、実は、BWV190番台のカンタータに共通している特徴。

 ここにあげた、第3曲パストラーレと、第9曲メヌエットのデュエット、バッハの書いた最も美しいアリアの一つ、といってもいいのではないでしょうか。
 


 リリング全集盤が、音楽の真摯な美しさを前面に押して、じっくりとていねいに歌い上げた見事な演奏。

 テルデック全集盤のアーノンクールの演奏は、各舞曲のリズムを生き生きと表現した躍動感あふれる演奏。

 まあ、この曲の場合、両者の中間あたりの演奏があれば、一番いいんだけど。
 音楽が圧倒的な名曲なだけに、演奏の理想も高くなってしまいます。



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 さて、BWV190番台、カンタータ奥の院の名曲たち、
 そのほかに、この前、BWV191もご紹介しているので、
 ここでは、ついでに、
 BWV195もかんたんにご紹介しておきましょう。

 一応、結婚式用、なので、ジューンブライド、駆け込みセーフ、ということで。


 教会カンタータ第195番 「光は義(ただ)しき人のために射し出で」 BWV195


 これもちょっとすごい。ただのありきたりな曲ではありません。
 3本のトランペットにティンパニ、それに、ホルン、トラヴェルソ、オーボエ、オーボエ・ダモーレが各2本づつに、弦+bcと、
 とにかく楽器編成がやたら大きいのと、
 結婚式用という用途が用途なだけに、
 演奏される機会も聴く機会もなかなか無い曲ですが、全編をさまざまな新様式に彩られた、壮麗で華やいだ雰囲気のたいへんな名曲だと思います。

 バッハ自身は気に入っていて何度か演奏されたようで、
 決定稿は、最晩年の自筆総譜およびパート譜ですが、
 部分的は、ライプツィヒのかなり初期から存在していた痕跡があり、(この時の用途等はすべて不明)
 また一時は、名作BWV30aからの転用も含むさらなる大曲として演奏されたこともあったようです。

 3本のトランペット&ティンパニ等が大活躍する、ちょっと他に聴いたことが無いくらいの、バッハではめずらしいくらいに壮麗な冒頭大コンチェルト、
 これにはさらに大フーガまでもが加わって、とんでもないことになります。
 いったいどんなたいへんな人物の結婚式だったのか。

 3本のトランペットは、第1部の最後(第5曲)の巨大なポロネーズでも登場。
 大地から天に向かってエネルギーが吹きあがるようなフレーズが、器楽+合唱で果てしなくくりかえされる。
 まったく打ち上げ花火か。

 なお、この2つの合唱に関しては、トゥッティとソロの部分がめまぐるしく錯綜し、それが否が応にも華麗な印象を高めるばかりか、壮大さの中に精緻な美しさをも感じさせる、という、離れ業を可能にしています。

 この2つの大きな楽章にはさまれた、3つの楽章が、技巧的な最新当世様式を駆使したもので、またすごい。

 あのBWV30の舞曲を思わせる、たくさんの管楽器や弦楽器の激しく駆け回るような逆スキップリズムのフレーズがちりばめられた、中間の第3曲・バスアリアも楽しいけれど、
 その前後のレチタティーヴォにまで、技巧の限りをつくした器楽の伴奏がつけられている。
 第2曲、バスのレチタティーヴォには、bcの、疾走する下降3連音+2連音のパッセージ、
 第4曲、ソプラノのレチタティーヴォには、トラヴェルソの、はじけるような上昇パッセージ、
 そして、ソプラノの声には、オーボエ・ダモーレのやさしい響きが常につき従う。

 全曲の終りには、第2部としてコラールが歌われるが、これもただではすまない。
 ここにきて、トランペットのかわりにわざわざホルンが登場。
 音楽は大きく、そしてやさしくふくれあがります。
 しかも、これにはさらに、ティンパニ連打のおまけつき。

 
 ・・・・と、いうわけで、
 何もかにもが破格の音楽なのでした。
 しかし、その一方で、音楽は始めから終りまで、心から結婚する者を祝福しようという真摯さに貫かれている。

  
 こんな音楽ですから、CDはほとんどが全集盤ですが、
 ゾマーやピオーら花形ソプラノが大活躍する、コープマンの超名演があり、わたしは愛聴しています。



 以上、カンタータ奥の院、BWV190番台、
 恐るべし!
 あなたもぜひ足を踏み入れてみては。



 ところで・・・・、

 バッハ・コレギウム・ジャパン(BCJ)の教会カンタータ全曲演奏&録音、この6月に2011年シリーズがスタートしたようですが、完結まであとわずか、今シーズン3回、来シーズン2回で、ついにゴールとのこと。
 よくぞここまで来たものだ。

 基本的に作曲年代順に進めてきた当PJ、ここまでくるとあとはもうたいへんな曲ばかりで最後の正念場、という感じですが、
 先日行われた第60回定期でも、今日ご紹介したBWV195、それからあのカンタータ界の「不思議ちゃん」BWV192と、今回の記事のテーマであるBWV190台の、いろいろな意味でとんでもない曲が2曲並んでいる、というたいへんな事態になっていたようで、
 これでは、演奏する方も聴く方もかなりしんどいとは思いますけど、もうゴールは目の前、なんとか有終の美を飾って欲しいものだと思います。

 わたし自身は、同じ日にカンタータを3曲も4曲も聴く、というのにムリがあり、早々に定期は脱落してしまいましたが、
(カンタータを聴き始めた頃、せっかく楽しみにして行ったのに、ごちゃまぜになって結局何を聴いたのかほとんどおぼえていなかった。これでは修学旅行などで有名寺院や仏像をはしごして観るのと同じ。自分が悪いのだが)
 蔭ながら、そして心から、応援しております。



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 * 写真はすべて、ご近所のアジサイ&緑。



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