♪バッハ・カンタータ日記 〜カンタータのある生活〜

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zoom RSS 海のデュファイ、花のデュファイ。鎌倉で聴くスラファセパル〜ヴォーカル・アンサンブル カペラ定期

<<   作成日時 : 2016/07/21 19:45   >>

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 以前鎌倉でデュフィを観て、海とデュフィについての記事を書いたことがありました。
 上の写真も、いかにも「海とデュフィ」という感じですが、今回はデュフィではなくデュファイ、わたしが最も愛する作曲家、あのデュファイです。
 海沿いの街、鎌倉で聴いたデュファイ。
 「海とデュファイ」というと意外な組み合わせのように感じる方も多いと思いますが、実はこれがなかなか・・・・?? 



 7月17日(日)


 ヴォーカル・アンサンブル カペラ定期公演 2015/2016シーズン

 グレゴリオ聖歌とルネッサンス・ポリフォニーによるミサ形式の演奏会

 スラファセパル〜デュファイの名作ミサ曲

  ヴォーカル・アンサンブル カペラ

  @ カトリック由比ヶ浜教会


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 シャンソン「スラファセパル」(わたしの顔が青いのは) (最小の3声部での歌唱)

 ミサ「スラファセパル」 (三位一体節のミサの再現の中での歌唱)

 (途中クレドまで終わったところで、20分の休憩あり)

 <アンコール>

 モテトゥス「花の中の花」 Flos florum

 シャンソン「スラファセパル」(わたしの顔が青いのは) (全員での歌唱)



 とにかくすばらしいデュファイ体験だった。


 開演15分前、わたしが到着した直後に、主宰の花井哲郎さんの熱意あふれるレクチャーが始まった。
 あまり一般的とは言えない音楽の魅力を少しでも伝えたいという気持ちがあふれている。
 さまざまな新説?もふまえ、なんでまた恋のシャンソンのテーマがミサに使われることになったのか、
 そして、必要な声部のメンバーによる実演を交え、シャンソンのテーマが実際にどのようにミサに使用されているか、などなどについて、実にわかりやすくていねいに説明。

 わたしは長谷から急いで歩いてきて、汗だくになってしまっていたので、教会の外で汗を拭いたり水分を補給したりして体勢を整える。


 開演時間ちょうど、淡いステンドグラスの光が漂う堂内に、とびっきり美しいシャンソン「スラファセパル」がいきなり響き渡る。
 そこから演奏会が始まった。

 必用最小限の3声部での歌唱。
 花井尚美さんは、ふだんの宗教曲における歌唱とはまるでちがって、ドキッとするほど表情豊か。
 ブルゴーニュ・シャンソンの絢爛豪華で華麗、それでいて郷愁を誘うめくるめく世界を、この1曲だけで堪能。あたかも時空を超えた異郷を映し出す万華鏡をのぞきこんでしまったかのような、ブルゴーニュシャンソンならではの気分を満喫できた。


 シャンソンが終わると他のメンバーも加わり、華やいだ雰囲気がしんっとしずまりかえる。
 いよいよ、ミサ「スラファセパル」
 例によって典礼形式、実際のミサの再現の中にデュファイのミサ曲が組み込まれて歌われる。
 グレゴリオ聖歌やシンプルな祈りの節からデュファイの作品に移行すると、突然「音楽」は堂内いっぱいにふくれあがり、炸裂する。
 この形式での演奏会の場合、やはりこの瞬間がたまらない。
 何か大きなエネルギーのようなものが堂を満たすのだ。

 そして、
 これはデュファイならではのことなのだが、この後、音楽が進むにつれ、ふと気が付いてみれば、さらに堂の壁も天井も何もかもががらんと消え去っていて、果てしない空間いっぱいに、例えば大海原のようなものが悠々と広がっているかのように感じられる瞬間が、幾度も幾度も現れる。
 これがデュファイなのだ!
 霧に覆われた中世において、ルネッサンスの扉を力強く開け放ったデュファイの音楽なのだ。

 一人一人の歌手の個性が際立ちながら、しかもそれが見事に一つの塊となって胸に迫ってくるカペラ特有のいつもの演奏が、そんなデュファイの良さを、現代に生きる音楽としてしっかりと伝えてくれる。

 さて、ミサ「スラファセパル」の持つ途方も無い広がりを大海原に例えたけれど、これは決してわたしの主情的な比喩ではなく、実はちゃんとした理由が存在する。
 ミサ「スラファセパル」の基になっているシャンソン「スラファセパル」。
 この曲は御存じのように、ゆったりと揺蕩うような旋律で始まりながら、次第に特徴的なリズムが生じてきて、ラストはリズムの饗宴とも言える激しいリズムの交感、盛り上がりを見せて終わる。その後の音楽フォーマットのルーツとも言える、とてもよくできた楽曲。
 従って、このシャンソンの定旋律が何度も繰り返されるミサも、
 <ゆるやかな波のような部分→細かいさざ波のような部分→激しい波濤>
 というサイクルが、幾度も幾度も繰り返されることになり、その独特のリズム、それに基づく複雑極まりない対位法が、正に海そのもの、海の雄大さを連想させるのだ。
 しかも、長丁場であるグロリア、クレドにいたっては、その定旋律が3倍、2倍、等倍の音価で繰り返されるので、究極の対位技法と相俟って、そのリズムのダイナミズム、「海っぽさ」はより際立つことになる。

 花井さんが紹介している、スラファセパルがもともと宗教的な暗示を含む曲だった、あるいは後年のデュファイが過去のシャンソンに宗教的な側面を見出してミサに引用した、等の説は、デュファイ(あるいはそれに続く大作曲家たち)が、この他にもほとんど宗教的な意味合いの無い世俗シャンソンを平気でミサに引用していることからすると、後世の学者視点からの意味付け、図式化の部分が大きいような気がしなくもないが、「青い」聖骸布との関係等、確かに想像力をかきたてられる魅力的な説ではある。
 いずれにしても、宗教的な意味合いの有無に係らず、青、海などの歌詞が全体にちりばめられた原曲シャンソンを可能な限りふくらませたこのミサ曲、実に海そのものを連想させるような、広がり、壮麗さを誇る大名曲であり、それをあらためて体験させてくれる名演奏だったと思う。

 いろいろと理屈っぽいことを言ってきたが、この「海」の連想、演奏会前に長谷寺に立ち寄って、美しい夏の海をゆったりと眺めてきたことも大きく影響しているにちがいないことも、書き足しておく。

 また、長い典礼の間、ゆるやかにうつろってゆく、ステンドグラスから差し込む夏の光。
 遠く響く蝉の声。
 これらも、このような教会の演奏会ならではのぜいたくな演出となっていた。

 鎌倉とデュファイ、得難いコラボ、かけがえのない体験がまた一つ増えた。


 アンコール、

 1曲目は、デュファイのモテトゥス「花の中の花」
 こちらは、堂内に色とりどりの花々がいっせいに咲き乱れ、身体中が花に埋もれてしまうかのような濃密さ!
 これも、長谷寺周辺の小さな寺で観た、夏の花々の印象か。


 そして、最後は、再び、シャンソン「スラファセパル」。  アンコール1曲目の華やいだ雰囲気そのままに、今度は出演者全員(8人)で。にぎやかに。
 めちゃくちゃ楽しくて、美しくて、涙が出そうになった。
 決して、「楽しい」という歌詞ではないんだけど。



 1曲のシャンソンから、あらゆるかけがえのないもの、美しいものがぎっしりとつまったような、歴史の先駆をなすミサ曲を造り上げたデュファイ。
 そのすさまじさを実体験できるような演奏会だった。 
 われらがバッハも、たった1曲のコラールから、「コラール・カンタータ」という大きな宇宙を創造しつづけたが、正にその源流がここにあることを、強烈に体感することができた。

 1曲の珠玉のシャンソンに続いて、それが幾度となく繰り返されながら、可能な限りの展開が繰り広げられる大作が奏され、最後は再びはじめのシャンソンによってしめくくられる。
 はからずも?そのような形になったこの演奏会、
 何かの曲を思い出さないだろうか。
 そう、ゴールドベルク変奏曲。バッハがその生涯をかけて到達した大曲の一つ。
 このシャンソン、わたしにとってはもちろん始めから特別な曲だが、長大なミサを聴き終えた直後に改めて聴くと、その楽しさ、美しさ、力強さがさらに深く深く心に刻み込まれる。
 これこそ、ゴールドベルク効果。
 花井さんがそれを意識していたのかどうかはわからないけれど。
 この演奏会で初めてシャンソン「スラファセパル」を聴いた方がいたとしても、ミサ「スラファセパル」を聴いた直後、2度目に聴いた時には、このシャンソンが「特別な一曲」としてその心に響いたのではないだろうか。
 そのような点からも、デュファイとバッハの共通点、この二人がが同じ山脈の二つの壮麗な高峰であるということを、改めて思い知ることができた。

 

 スラファセパルを始めとするデュファイの名作、名演奏等に関しては、以前続けて書いた「バッハの源流への旅」をご参照ください。

 このブログの古楽記事の目次の下の方に、関連記事が並んでいます。



 出演者全員で見送ってくださった。アットホームな雰囲気。

 教会は、後ろの方数列を除いてほぼ満席状態。
 日本において、しかも鎌倉で、デュファイのコンサートにこんなにもたくさんの方が訪れたということが、たまらなくうれしい。

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 カトリック由比ヶ浜教会


 静かな住宅地の中の教会。

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 海の寺


 長谷寺


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 海光庵からの海のながめ。


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 海にズームすると、ウィンドサーフィンや船の帆がいっぱい。抽象画のようだ。

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 もう一つの海の寺・光明寺

 由比ガ浜と材木座をはさんだ向かいに、海に向かって立つ巨大な三門&本堂が見える。

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 花の寺


 長谷寺、収玄寺


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 デュファイまつり!?

 今日の花井さんの歌を聴く限りものすごく期待できるし、「デュファイまつり」というタイトル、わたしが行かないでどうする?と思わず思ってしまったが、
 デュファイのシャンソンを2時間もずっと座って聴くというのは果たしてどうなのか??という気も。
 いずれにしてもスケジュールが合わない。残念。
 楽器が加わると、ブルゴーニュ・シャンソンの雅で幻想的な雰囲気はさらに倍増するので、今回の演奏会でスラファセパルが好きになった、という方にはおススメ。

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