お気に入りのスタンダードその1~ライク・サムワン・イン・ラブ

 時々、お気に入りのスタンダードをとりあげて、特にインストルメンタルの名演について書いていきたいと思います。(歌ものは、いま勉強中なので)


  ライク・サムワン・インラブ

                                      詞:ジョニー・バーク
                                      曲:ジミー・バン・ヒューゼン
                                      歌:ダイナ・ショア

    まるで、恋してる人みたい
    星を見上げてみたり
    ギターを聴いてみたり
    これはきっと恋にちがいない

                              映画「ベル・オブ・ユーコン」(’44)より


 甘ったるいバラードを書かせたら誰もかなわない、バーク&ヒューゼンコンビの代表作。
 ただ、この歌は、特徴的なメロディー運びのせいか、快速調でも妙に引き立つため、押しも押されぬ人気ジャズ・スタンダードになりました。


 この曲は、ビル・エバンスがやたら弾いていますが、
(亡くなる直前の、凄絶なラストセッションでも、もちろん弾いています)
 わたしが真っ先に思い出すのは、(いつものことで申し訳ありませんが、)
 やはり、バド・パウエルです。

 初期、全盛期のバドは、この曲に見向きもしませんでしたが、
 パリに渡ったあたりから、突然この曲を取り上げるようになり、
 デクスター・ゴードン「アワ・マン・イン・パリ」のおまけについている、有名なトリオ演奏を始めとして、多くの晩年のライブレコーディングを聴くことができます。

 曲調が、後期のバドのテンポ感に、よほどピッタリマッチしたのでしょう。

 どれも、特に大きな違いがあるわけではありません。
 でも、バドは、まるで、とりつかれたかのように、この曲を引き続けます。

 まるで、自分自身のテーマ曲であるかのように。

 この前、後期の代表盤として、
 「ブルース・フォー・ブッファマン」「アット・ザ・ゴールデンサークル」をご紹介しましたが、
 もちろんどちらにも入ってます。
 両方とも、一歩一歩大地を踏みしめて歩むかのような、ゆったりとしたテンポの、心にしみる名演です。

 甘い恋の歌が、2度と戻ることのない遠い故郷を思うかのような、郷愁の歌になっています。

 なお、バーグ&ヒューゼンコンビの他の名曲、
 「イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー」
 「ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビーム」
 どちらもやはり甘い歌ですが、いずれもバドおとくいのナンバーです。
 これらは、初期、後期にかかわらず、弾いていますね。


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 ピアノ以外で真っ先に思い出すのが、
 悲運の天才ドルフィーの、「ファイブ・スポット Vol.2」に収められた超弩級の名演です。

 あの、時が止まってしまうのではないかと思われるほどゆっくりとした、前奏のフルートとトランペット。(トランペットは、もう一人の悲運の天才、ブッカー・リトル!)
 夜明け前などに一人聴いていると、涙がこみあげてきてしまいます。
 そして、そのあとにはてしなく続く、二人のソロの飛翔。

 有名なアルバムに中で、あまり目立たない演奏ですが、わたしはこのアルバムのクライマックスだと思っています。

 ここまでくると、もう恋の歌でも何でもありません。
 これを聴いて思い浮かぶのは、やはり、この絵。
 アンリ・ルソーの「蛇使いの女」。


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 さて、この「お気に入りのスタンダード」では、
 キ-スの膨大なスタンダードシリーズの中から、その曲の演奏を聴いて、感想を書いてみようと思ったのですが、
 なんとこの曲は、キースはとりあげていないみたい。
 あの驚異の「アット・ザ・ブルーノ-ト」にもはいってません。
 バーグ&ヒューゼンの他の曲はもちろんあるのですが、
 いきなりの企画倒れになってしまいました。
                                                 (つづく)
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