お気に入りのアリア・ヨハネの祝日編 夏至の火祭・不思議なギター~BWV30+三位一体節後第3日曜

 6月24日(日)は、祝祭日が重なっています。

 ただでさえ、カンタータがたくさんあるのですが・・・・、(しかも名曲ばかり)
 梅雨だというのに、あまり暑いので、記事を書くのも忘れてダラダラしていて、
 あぶなく間に合わないところでした。
 したがって、今日は特に乱筆乱文ですが、お許しください。

 みなさん、くれぐれも、お体等、気をつけてくださいね。



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 まずは、なんと言っても、洗礼者ヨハネの祝日


 夏の大きなお祭りです。
 ヨハネの誕生を祝うものなので、言わば、クリスマス真夏版、といった感じでしょうか。

 夏至を祝い、豊穣を祈るお祭りでもあり、いまだにヨーロッパ各地では、大きな焚き火を焚いて、そのまわりで一晩すごす風習が残っているそうです。

 夏休みのキャンプ・ファイヤーを思い出します。懐かしい。


 また、この夏至のお祭り、地方によっては、井戸や泉、噴水など、水にまつわる行事やイヴェントを行なう場合もあるようです。
 これなども、今の季節らしいですし、洗礼者ヨハネのお祭りには、よりぴったりですね。


 教会暦というのは、もちろんキリスト教の暦ですが、
 実は、このように、ヨーロッパ各地に古代から根強く生き続けてきた、土着信仰のようなものの名残りも色濃く反映されていて、
 それがさらに季節感を強め、
 さらには、バッハのカンタータにも、他ではけっして味わうことのできない特別な魅力を加えているわけですね。

 洗礼者ヨハネの祝日と、そのカンタータは、その代表例と言えるのではないでしょうか。



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 この日のカンタータは、
 第1年巻のBWV167
 第2年巻のBWV7
 最晩年の(なんと、最後のカンタータ!BWV30
 の3曲。
 もちろん、すべて特別な名曲ばかりです。



 これらの曲については、すばらしいCDをご紹介しましょう。

 エリック・ミルンズ指揮、モントリオール・バロックの
 OVPP(1パート一人方式)の最新シリーズ、
 聖ヨハネの日・カンタータ集。


 上記の3曲全曲を1枚に収めた好企画盤。
 そもそも、有名曲を並べるのでなく、このような選曲をするセンス自体がとても信頼できます。

 OVPPに関しては、いまや世界最高とも言われている団体なので、演奏ももちろん最高。
 あまりの美しさに、ただもう陶然と聴き惚れるばかり。言葉もありません。

 さらに、忘れてはならないのが、CDジャケット。

 いかにも、さわやか+力強い、滝のクローズアップ写真(絵?)。

 一昔前のLPレコードを思わせる雰囲気。

 聖ヨハネの祝日が、ちょうど今頃の季節、初夏のお祭り(夏至のお祭り)であること、
 ヨハネが水に深く係わる聖人であること等からすると、まさにぴったり。
 音楽を聴きながら、ジャケットを見ているだけで、なんとも清々しい気分になれます。
 一見ありがちなようでいて、実は内容に則して考え抜かれたジャケットです。

 ポップスやジャズには、トータル・アルバムと言う考え方がありますが、
 正にこのアルバムなどは、
 内容(曲目)、演奏、ジャケット、と、3拍子兼ね備えた、
 カンタータ界の「トータル・アルバム」と言えるのではないでしょうか。



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 洗礼者ヨハネの祝日の、3曲のカンタータについての概要は、
 BWV137、7については、先々週の記事およびそのおまけページ
 BWV30については、バッハの最後のカンタータは?その2
 を、それぞれご参照ください。


 くりかえしますが、どの曲も、初夏の水にまつわる聖人の祝日にふさわしい、瑞々しくもさわやかな名曲ばかり、


 中でも、
 BWV30 「喜びなさい!贖われし群集よ」は、
(くわしくは、上記記事をぜひご覧になってください)
 あまり指摘されることはありませんが、さきほど少し触れたとおり、現在わかっている中では、
 バッハが全曲を作曲した最後のカンタータ
 ということになります。
 世俗カンタータのパロディなのですが、そのパロディの成立時期が、最もおそいのです。


 バッハの晩年の特徴は、
 対位法の追究、
 最新様式の吸収、
 という相反する2点ですが、
 この曲の場合は、後者が顕著。
 当時の最新様式が全曲にわたってふんだんにとりいれられた力作。

 だが、そこは最晩年のバッハ、その一言では決してかたずけられない、
 聴けば聴くほど味わい深い、不思議な、不思議な、名品になってます。



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 そんなBWV30ですが、さらにその中の、第5曲、アルト・アリア、
 こんなにも、「不思議」で美しいアリアは、ちょっと他では聴けませんので、
 「お気に入りのアリア」として、ご紹介しておきます。



 このアリアは、まさに晩年のバッハでなければ書き得ない、
 珠玉の一品。

 「目を覚まして集まりなさい」と呼びかける、
 「不思議」な響きが、なんとも夢見ごこちなアリア。


 「不思議」の秘密は、
 シンコペーションのリズムと、
 当時、流行しだした、ギターの響きを模した、ピチカートの多用にあります。

 それにしても、当時最先端の技法を取り入れ、完全に自分のものとして、
 このような唯一無二の世界を構築するとは、
 バッハ、恐るべし。



 なお、このアリアに関しては、以前、聴き比べをしたので、最後にちょっとその時の感想を書いておきます。


 まず、第5曲アルトアリアの演奏時間です。(その時聴いたものだけ)

 アーンノンクール・・・・4:38
 コジェナー・・・・・・・・・5:22
 モントリオール・・・・・・5:35
 リリング・・・・・・・・・・・5:35
 リヒター・・・・・・・・・・・8:00!!


 アーノンクールは一番速いですが、フワフワとした演奏で、それほど速さを感じさせません。最も「不思議な」雰囲気なのは、これかもしれません。

 コジェナーは、歌、演奏ともキビキビした感じなので、時間の割には、速く感じます。

 モントリオールとリリングは、どちらもたいへん「のどか」。
 当然楽器も演奏法も異なるはずなのに、演奏時間がまったく同じこともあり、聴いた後の感銘が不思議と似ているのがおもしろいです。

 リヒターには、びっくり、を、とおり越して、あ然・・・・。
 アーノンクールのほとんど倍です。
 同じ「呼び声」にしても、これは、地の果てから厳かにわきあがって、世界全体を静かに覆いつくすかのようです。(少しおおげさ)
 このリヒターの孤高なまでの特殊性は、
 次週にご紹介するカンタータで、ついに爆発することになります。
 どうぞ、お楽しみに。(笑)


 結局、バッハが意識したであろう「ギターの響き」の感じが色濃いのは、リリングとモントリオールでしょうか。
 特に、始めにご紹介したモントリオール盤は、夢のような美しさで、うっとりしてしまいます。


 以上、特に参考にはならないでしょうけれど、聴き比べて、とてもおもしろかった、というお話。



  *    *    *



 さて、最後になってしまいましたが、
 今日は、ふだんどおりの三位一体節後第3日曜日でもあります。

 カンタータは、第2年巻始まりの4曲の最後の1曲、BWV135
 初期の超大作、名作中の名作、BWV21です。

 BWV21については、いまさら何も付け加えることはありません。
 こちらにくわしい解説がでています。
 また、歴史的名演の試聴は、こちらから。



 なんとか、間に合った・・・・。

 なお、絵はすべて、先日観たばかりのペルジーノ。
 どれも、晩年のやさしいペルジーノ。

 また、洗礼者ヨハネと言えば、なんと言っても、ラ・トゥールですが、
 しつこいので、もうのせません。
 ご覧になりたい方は、こちら



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カンタータ日記・奥の院

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宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

Nacky
2007年06月26日 07:38
Noraさま
おはようございます。
BWV21「Ich hatte viel Bekuemmernis」
ですか。
以前にコメントさせていただいたように、私のバッハ合唱
デビュー曲です。
ヘンデルのメサイヤや、ベートーベンの第九もいいけど、
21番もね。
ですね。
指揮は八尋和美先生、ソプラノは佐竹由美さん、テノールは
佐々木正利さん(現岩手大教授)です。
終曲の合唱は、歌っていても、あるいはCD等を聴いていて、
結構、テノールのパートが効いていることがわかります。
重い冒頭から始まり、喜びと輝きに満ちた終曲の大合唱に
至るまでのストーリー展開・・・・実際に歌っていると痺れます。
楽器としては、オーボエも結構効いてますね。
当日は、リコーダー奏者の荒川恒子先生(現山梨大教授)も
聴きに来て下さり、お褒めのお言葉をいただきました。
終曲を「アレルヤ!!」と歌いきった後は、あまりの感動で
しばらく腰抜け状態であったことを記憶しております。
2007年06月26日 21:39
 nackyさん、またまた、実際に歌った方ならではの迫力あるコメント、ありがとうございます。
 おっしゃるように、BWV21、すばらしいです。
 全曲を見ても、悲しみに沈む冒頭のシンフォニアから、最後のまぶしいばかりのアレルヤへ一直線に進んでいくような、大曲ながらまったくスキの無い、バッハがのの青春のすべてをかけたような傑作だと思います。

 それにもかかわらず、本文では、たった一言ですませてしまっていたので、コメントをいただけて、よかったです。
ANNA
2014年03月27日 08:01
Noraさん、こんにちは。

東京も、桜がほころび始めました。
街中が桜色に染まる季節が、今年もやってきましたね。

 BWV30のカンタータが大好きな私。
ご紹介のミルンズ/モントリオール・バロックの選集を求めて聴いてみました。歌唱・演奏ともに、とーってもすばらしく!
なんども繰り返し聴いております。ジャケット写真がカンタータの内容とリンクしているというのも、いいですね。おかげさまで「お気に入りのカンタータのとっておきの一枚」と出会えて嬉しいです。ありがとうございます!

 それから、BS日テレの「わが町の建築物語」放映終了してしまいましたね。こちらでNoraさんに番組の存在を教えていただいて以来、放映を毎週ほんとうに楽しみにしていたので...ああ、とっても残念です...
この番組をきっかけに、日本中にすばらしい建築を知ることができました。



2014年03月28日 14:07
 ANNAさん、こんにちは。
 これ、いいでしょう。OVPPの極致とも言える演奏。このシリーズは、ゆっくりではありますが現在もコツコツ続いていて、ついこの前ほとんど5年ぶりに第5週がリリースされたばかりです。まだ購入していませんが、曲を見ると顕現節後のカンタータ集のようで、これもジャケットが秀逸です。

 BWV30もいいですよね。BWV30はバッハの現存する最後のカンタータの一つなので、BCJの全曲完結の100回定期の曲目でした。この演奏会は聴きにいけなかったのですが、以前特別記念演奏会で聴き、記事に書いたことがあります。これがあまりにもすばらしかったので、今回もTV放送を楽しみにしていたのですが、TV放送では何とこの曲だけ省かれていて今まで聴くことができず、NHKに怒りのTELを入れようかと思っていたところ、最近ようやく放送されて聴くことができました。

 建築物語、びっくりしましたね。いつものように食事しながら普通に見ていたら、番組の最後に細川さんがいきなり、この放送が最終回になります、とさらっと告げて終わってしまったので、思わず箸を落としてしまいました。
 がっくりですが、BSのミニ番組にもかかわらず、これだけの水準のものをこんなに長く続けてくれたことにはむしろ感謝すべきなのでしょうね。

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