バッハの源流への旅・その8~デュファイ・ミサとシャンソン、「ス・ラ・ファセ・パル」

 「ス・ラ・ファセ・パル」(「わたしの顔が蒼いのは」)

 SE LA FACE AY PALE

 * 昔の教科書などでは、「セ・ラ・ファセ・パル」となってるものがあり、
   そのまま使ってたのですが、(歌もセ~~、と聴こえるのが多い)
   フランス語の発音は「ス」で、CD検索などの際も、こちらが一般的なので、
   修正しました。



 シャンソン「ス・ラ・ファセ・パル」は、
 あの異郷の幻影、禁断の果実、ブルゴーニュ・シャンソンを代表する名曲。
 ヨーロッパ中で歌われたギョーム・デュファイの大ヒット曲です。
 もちろん恋の歌。
 とろけるように甘いメロディー。
 ちょっとだいじょうぶ?と思ってしまうくらいのハードな歌詞。
 「わたしの顔が蒼いのは」、あなたのことを思うあまり、もう死にそうなくらい憔悴してるから、というわけ。(笑)

 ちょっと聴くと、高音部のメロディーが目立ちますが、この時代のシャンソンの主旋律はテノール。
 ただ、テノールを強調する必要は無く、各声部がからみあう響きを楽しむシャンソン、というイメージです。

 その歌にこめられた思いが、現代のわたしたちへも、ストレートに伝わってくる、おそるべき普遍性を持った、魔法のような音楽。
 告白しますが、わたしは気分が高揚するといつも、鼻唄で、これ、歌います。


  デュファイ シャンソン「ス・ラ・ファセパル」 楽譜



 一方、ミサ「ス・ラ・ファセパル」は、音楽史上ほとんど初めての有機的な統一性を有する通作ミサ。
 セバスチャンという大海に続く長い長い川の源泉です。

 デュファイは、なんと、上記大ヒットラブソングの主旋律(つまりテノール旋律)を、敬虔なる宗教大作の全曲を貫くテーマにしてしまって、抒情美あふれる音楽をつくりあげました。
 デュファイが、力づくでルネッサンスの扉を押し開いたことを、高らかに告げる、記念碑的傑作です。
 
 以前の記事にも書きましたが、デュファイのミサの魅力は、
 例えば、ずっと暗闇しか知らなかった人が、窓を開け放った瞬間に感じるような、ある種特別な清冽さだと思います。
 その音楽史上でも唯一無二の感覚が、最も強く感じられるのが、このミサのキリエ冒頭ではないでしょうか。

 デュファイにミサについては、これまで、

 ロム・アルメ
 アヴェ・レジナ・チェロールム

 と、順番に記事にしてきましたが、これはその第3弾。
 もしかしたら、1番、聴きやすいかも。


 おなじみNAXOS MUSIC LIBRARYで、ディアボルス・イン・ムジカのすばらしい演奏を試聴することができます。
 (各曲30秒だけになってしまいますが、必ず「15分無料体験」をお選びください)

  こちらからどうぞ!

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    なお、会員の方は、
    カタログ番号 ALPHA051 で検索してください。

    トラック2が、ミサ「ス・ラ・ファセ・パル」のキリエです。
    トラック1は、入祭唱、つまりお祈りみたいなもの。おまちがいなく。

 それでは、わずか30秒ですが、デュファイのすばらしい風に吹かれてください!


  デュファイ ミサ「ス・ラ・ファセパル」 楽譜     



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この記事へのコメント

2007年06月16日 19:08
初めまして、以前よりこちらのHPを拝見させて頂いておりました。
なんとデュファイの「ス・ラ・ファセ・パル」の事を書いて下さって感謝感激です。 この曲は存じていましたが、メロディーしか知らずにいました。今拝見させて頂いて解説および対訳の一部を知ることが出来ました。
とても大好きなデュファイの作品なので、嬉しかったです。ありがとうございました♪これからも寄せて戴きますねどうぞよろしくお願いします。m(_ _)mペコリ
2007年06月16日 23:21
 fiore musicaleさん、はじめまして。
 デュファイについてのコメントをいただき、こちらの方こそ、感謝感激、です。デュファイ、ほんとにすばらしいですよね。
 「源流の旅」などと言いながらも、いつまでもデュファイのことばかり書き続けてきて、ほんとによかった。

 ところで、「対訳の一部」とおっしゃってますが、実は、わたしが書いたのは勝手なイメージの大意で、このままの歌詞は、出てきません。
 お詫びに、歌詞を全部のせておきます。(→右URL欄→)
 ただ、わたしは英語も仏語も自信無いので、ご自分で訳していただかないとなりません。(笑)
 これはもちろん、シャンソンの歌詞で、ミサの方は通常文そのままです。もし、まだお聴きになっていなかったら、ぜひミサも聴いてみてくださいね。では、これからもよろしく。
こんにちは。 歌詞のアップお手数お掛けいたしました。早速保存させて頂きました。嬉しかったです。

シャンソンもミサも両方がカップリングされているのは、マンロウの芸術という4枚目のCDで所持しておりました。その演奏はシャンソンの方が(3声部のオリジナル版)で演奏されています。ミサの方はマンロウ指揮、ロンドン古楽コンソートの演奏です。ミサもとても綺麗なアカペラで進んで行きますね。シャンソンのオリジナル盤は、そこはかとなく感じられる中世の単旋律音楽から2声になり、マショーの登場そしてこの偉大な作曲家ギョーム・デュファイによって、彼らに続く素晴らしいルネッサンス作曲家とともに J.S.Bachが誕生したのだと思うと、遙か1000年という音楽の歴史を感じずにはいられませんでした。
早々のレス感激です。有難う御座いました^^。
2007年06月18日 00:12
 fiore musicaleさん、こんばんは。
 すばらしいCDをお持ちだったのですね。
 マンロウは、残念な亡くなり方をしてしまいましたが、今わたしたちが、こんなに身近に古い音楽に親しむことができるのは、彼が道を切り開いてくれたからに他ならないと思います。

> 遙か1000年という音楽の歴史を感じずにはいられませんでした。

 マンロウは、たった一人で、あまりにも遠くまで時間を遡りすぎてしまったのかもしれません。
fiore musicale
2007年06月18日 23:31
ディビッド・マンロウさんってお若くして亡くなったみたいですね。
お若い写真しか見られません。
CDは、中古CDで梅田で見つけました。Noraさんが、アンサンブル・ジル・バンショワのCDを見つけられたように、嬉しかったです。
Noraさんが仰る通り。彼がいなかったら、きっと中世からのあの響きは聴けなかったのでしょうね。
レスご丁寧に有難う御座いました。
2007年06月19日 23:56
 こんばんは。
 今後は、デュファイ以前の音楽のことも書いていきたいと思ってますので、よろしかったら、どうぞおつきあいください。
 では。
それは願ってもみない事です。Noraさんの音楽の歴史に対する思いは、こちらのHPを拝見していまして、西欧音楽の進化の凄さを感じました。Noraさんのように知識豊富ではなくまだまだ駆け出しのクラシックファンですが、中世音楽がどのように素晴らしい歴史を持っていたのか辿って行くのが私の楽しみでもあります。今はマンロウのCD等でそれを体感しているだけなので、良いCDがあればご教授下さいね。ありがとうございました♪
2007年12月10日 00:04
たこすけです。こんばんわ。
こちらのブログで、このページにリンクさせていただきました。
事後報告になってすいません。
おまけに楽譜を使わせていただきました。
何か不都合があればおっしゃってください。
すごく大雑把な演奏をアップしちゃいました。すいません(笑)。
2007年12月10日 19:21
 たこすけさん。どうも。
 演奏聴いて、思わず涙ぐんでしまいました。(おおげさじゃないよ)
 ほんとうにありがとう。
 演奏、わたしは少しも大雑把だとは思いませんが、
 もともと大雑把な音楽なので、特にきちっとする必要もないのでは、とも思います。
 もちろん、こちらからもリンクさせていただきますので、お許しください。
2007年12月12日 10:07
Noraさん、こんにちわ。
質問させてください。
今回の録音は上にあった楽譜を印刷して使わせていただきましたが、こういう楽譜はどこで手に入れたらよいのでしょうか?
もしフリーで入手できればなお良い(笑)のですが。
また、輸入版のCDを導かれるままに(笑)いくつか入手したのですが、言葉がわからないので解説が読めない・・・
「西洋音楽史」関係の本などを何冊かぱらぱら見て、デュファイの全体像についての概括的な話は読んだりしたのですが、Noraさんの記事に出てくるような個々の曲についての詳しい解説、背景説明などは例えばどういう本にあるのでしょうか。
もし教えていただければ嬉しいです。

時間のある時で結構です。急ぎではないし、そんなにすぐに消化もできないので。
ぜひよろしくお願いします。


2007年12月12日 10:19
質問だけではあれなので、曲を録音しての感想を一つ。

三声の絡み合いがただ聴いているだけよりもはるかにスリリングでした。特に最後の6小節。あおられます。自然に打楽器系は裏打ちになってしまうわけです。当時どういうテンポで演奏されていたかはわかりませんが、これは踊れますよ(笑)
あと、カウンターテナーが難しかった。通奏低音ではないのですね。どうも一番下にあるとそうしたものととらえがちなのですが。かなり苦労しました。
でも楽しい曲です。やっぱりこの曲は貴族の「酒池肉林」だけではもったいないですね(笑)。

2007年12月13日 01:01
 たこすけさん。どうも。
 コメント欄、小さいので、記事書きます。
 ちょっと(しばらく?)待っててね。
2007年12月13日 11:51
まじですか。
どうもすいません。お手間取らせてしまって。
でも楽しみにしています。
2007年12月15日 12:56
 一応記事をアップしました。
 ごらんのとおり、質問へのお答えより、たこすけさんの演奏へのリンクがメインになってしまいましたので、あまりお役に立たないような気が・・・・。(笑)
 ごめんなさい。
ANNA
2010年05月18日 10:32
Noraさん、はじめまして。
バッハを筆頭とした古楽が大好きなANNAと申します。

過去の記事から失礼いたしますね。
こちらで 大好きなデイヴィッド・マンロウの名前を
見つけ嬉しくて思わずコメントさせていただきました。

学生時代を含め7年ほど バッハの合唱曲を中心に
イタリア、フランスのバロック期のの宗教曲を歌って
いました。今は子育ての都合などで歌うことをお休み
していますが、「いつかまた きっと!」と夢見てCD
を聴きながら自主練習中?です。デュファイ、私も
大好きなんです。心が安らぎます。

以前、合唱団に入っていたとはいえ、まだまだ聴いた
ことのない未知のカンタータが沢山あります。
こちらで、勉強させていただきながら、少しずつ聴いて
いきたいと思っております。
よろしくお願いいたします。
2010年05月20日 01:41
 ANNAさん、こんばんは。

 デュファイ、名前だけは有名ですが、実際に愛聴したり、ましてや歌ってらっしゃる方等は、ごく限られてると思うので、コメントをいただいて、とてもうれしく思います。

 カンタータは、わたしはもっぱら聴く専門ですが、
 バッハファンの方の中には、やはり、聴いているうちに自分も歌いたくなる方もいらっしゃるようで、そして、実際に歌ってみた方の感想をお聞きすると、曲に対する見方などが大きく変わってくるみたいです。
 そういう意味では、こちらこそ、いろいろと貴重なご意見をお聞きできたら、と思いますので、よろしくお願いいたします。 

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