わたしの漢詩入門・その1

 いつもお世話になっているアルトゥールさんや、ほかのみなさんのブログで、
 最近、漢詩を紹介する記事を読ませていただき、すっかり感動してしまいました。

 記事やコメントによると、みなさん、学生時代に少し漢詩にふれてらっしゃるようですが、
 わたしは、ろくに勉強しなかったので、せいぜい杜甫や李白の名前を知ってるくらい、
 漢詩自体を鑑賞したことなど、ただの一度もありませんでした。

 つまり、まったくの白紙と言ってよい状態で、初めて漢詩に接したわけですが、
 みなさんがご紹介されている漢詩は、どれもこれも、まるで美しい音楽のよう、
 すっかり心奪われて、わたしもちょっと、漢詩を読んでみることにしました。


 とりあえず、
 アルトゥールさんご推薦の李白と王維の詩集(岩波文庫版とNHKライブラリー版にしました)をちょっとづつ読み、
 NHK教育テレビで、毎日、朝一に、(なんと5時!)「漢詩紀行」というミニ番組をやっているのを発見したので、」それを観ていくことにしました。

 「漢詩紀行」では、中国語の朗読を実際に聴くことができます。
 原文は、まるで、ほんとうの音楽みたい。
 書き下し文は、江守徹さんなどが、たまに気合入れまくりで読むんで、思わず笑ってしまったりするんですが、原文は、中国人の方が、どちらかというと、感情を込めずに読みます。
 それでも、言葉の発音自体が、軽やかな内容の時は、軽やかに、壮重な内容の時は壮重に聴こえるのです。びっくり。


 さて、こうして、少しづつ順番に、漢詩に接していくことにしたのですが、
 気に入った漢詩については、書き下し文を暗誦できるようになるまで、とにかく、覚えるつもりでいます。
 みなさんのブログを読んで、暗誦こそが、漢文を楽しむ一番の方法のように感じたからです。
 そして、暗誦できるようになった漢詩について、自分自身の記録の意味でも、このブログにて、ご紹介していきたいと思います。



▽ 大昔、上海に行ったことがあります。
  ほんとうはそのときの写真でものせたいのですが、どうしても見つかりません。
  しかたないので、沖縄那覇の中国風庭園、福州園の写真。(去年の冬)

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 今回は、その第1回目。


 まずは、「漢詩紀行」で見た漢詩から。
 これは、目にしたとたん、聞いたとたんに、心に焼きついてしまい、忘れようにも忘れられなくなってしまった漢詩です。
 すごくかんたんで、書き下し文など、不要なくらい。

 しょっぱななのに、李白や王維などではありません。
 彼らは唐代の大詩人ですが、そのずっと後、明代初期の高啓の作。

 高啓は、有能な高級官僚でもありましたが、疑い深い太祖朱元璋の猜疑がかかるのを恐れ、地方に隠匿、詩作に励んだそうです。
(最後は、処刑されてしまった)



  尋 胡 隠 君    高啓

 渡水復渡水  水を渡り、また水を渡り、

 看花還看花  花を看、また花を看、

 春風江上路  春風、江上の路

 不覚到君家  覚えず、君の家にいたる。



 ほら、もう覚えたでしょう。(笑)

 かんたんなだけでなく、20個の漢字から、実にさまざまなことを想像してしまいます。

 いくつもの川をたどる、旅の情景。
 咲き乱れる花や、その他もろもろ、川辺の春の美しい情景。
 ゆっくりとそれらに触れる作者の姿。
 いつしか、胡さんの家の前にたどりついた時の作者の気持ち。
 家の前に一人立っている作者の姿。
 作者と胡さんのこれまでのこと。
 これからのこと。

 また、これは絶対にちがいますが、
 もっとロマンチックに考えれば、
 長い紆余曲折の「旅」の果てに、結局、「君」のところに・・・・、
 なんて、読み方も。(ドラマの見すぎ?)
 
 いずれにしても、すごい。


 朗読は、こう聞えた。
 注:正確な発音は、おそらく、まったく異なるでしょう。


 ♪ トゥン スェー フー トゥン スェー

   カン ファ クヮン カン ファ

   ツゥン フン テャアン シャン ルー

   プー チー タァオ チェン ジャ



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 もう一つ、覚えました。
 今度は、王維詩集(岩波文庫)から。
 漂白の自由人、李白などとちがい、「宮廷詩人」。
 宮廷音楽家はわたしにはおなじみなので、思わず親近感を覚えます。
 まだ少ししか読んでませんが、
 とても雅やかなイメージ。ひとつの情景を淡々と描きつくす詩が多いような気がします。
 ある意味、地味ですが、とても美しい。



  相 思

 紅豆生南国  紅豆、南国に生じ、

 秋来発故枝  秋来たって故枝を発く。(ひらく)

 勧君休采擷  君に勧む、采擷を休(や)めよ。

 此物最相思  此の物、最も相い思わしむ。


 <Nora超訳>
 紅豆は、南の国の植物、
 秋になると、古い枝が、新しい実をつけます。
 君、花を摘み取るのは、およしなさい。
 この花は、物思いの花なのだから。



 紅豆は、真っ赤な花を咲かせるつる草で、
 遠く離れて亡くなった夫を思って嘆き死んだ女性の生まれ変わり、という伝説があるそうです。
 
 伝説の宮廷歌人、李亀年の愛唱歌で、
 最晩年、長沙にたどりついた李白が、李亀年本人から、歌い聴かされたそうです。
 どんなメロディーだったんでしょうか。

 ところで、この詩、
 「秋」を「春」、
 「休」を「多」にしたバージョンもあるそうです。

 紅豆は、春になると実をつける。
 君、たくさん摘み取りなさい。
 これは、物思いの花。

 と、いうわけです。

 2文字ちがうだけで、まったくイメージが変わり、
 一気に、ぱーっと明るくなりました。
 これもすごい。



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この記事へのコメント

2007年07月27日 20:21
Noraさん、凄い!
超訳までじっくり読ませていただきました。
漢詩紀行まだ続いているのですね。
朗読を聞いて書かれるところもなかなか熱が入っていますね。

ずっと前、小倉の朝日カルチャセンターで漢文講座を受けたことがありました。楽しかったですね。さされるのが恐かったけれども。
家に岩波書店の「中国詩人選集」16冊と第2集15冊、それに東洋文庫の「唐詩300首」3冊があって全部読んだのですが、もうすっかり忘れました。ちょっと刺激されました。
2007年07月28日 07:42
 tonaさん、おはようございます。
 漢詩紀行は再放送かもしれませんが、(江守さんの声も若い?)毎日楽しみです。詩の内容にあった景色も紹介してくれますし。
 とにかく初めてで、読み方などまったくわからないので、できたら講座にでも行きたいところですが、さされるのは、確かにこわい。(笑)
 でも学校でもやったはずなので、ほんとうにちゃんと勉強しておけばよかったです。漢文に限らず、英語でも数学でも。

> 岩波書店の「中国詩人選集」16冊と第2集15冊、それに東洋文庫の「唐詩300首」3冊

 そんなにたくさんあるものなんですか。すごい!なんだかワクワクしてきました。カンタータどころではないですね。暗唱できたらすてきだな、と、思うので、ゆっくりと読んでいきたいと思います。
2007年07月29日 18:15
Noraさん、こんばんは。
私は漢詩は唐詩と陶淵明くらいなので、高啓という人は全然知りませんでした。宋や元明の時代にも良い詩があるのだろうと思います。クラシックでいうと、バッハ以前のあまり注目されない時代にたとえばオケゲムのような作曲家がいたように、漢詩にも唐以外にも良い詩人がいたのだろうと思います。そういう詩を見つけていくのはこれからの楽しみだろうと思います。
王維は良いですよね。あっさりしていて身近なようで、玄妙でもあると思います。
2007年07月30日 15:31
 アルトゥールさん、こんにちは。
 高啓の詩は、漢詩紀行を初めて見たときにやっていた詩で、李白や王維のような深みには欠けるのかもしれませんが、かんたんな割には大きな世界が広がっているように感じられ、何だか気に入り、おぼえてしまいました。
 ただ、今後はなるべく系統立てて、やはり李白や王維ら、唐詩から、おぼえていきたいとは思ってます。

 ただ、漢詩紀行は、時代もバラバラ、たまに李白などもやるものの、たいていほとんど聞いたこともない人の詩ばかりなのですが、どれもけっこう魅力的なので困ってしまいます。
 美しい映像と朗読つきなので、ついフラフラと引き込まれてしまうのでしょう。

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