お気に入りのスタンダード マックス・ローチ追悼特別編~恋ってどんなものかしら?
8月15日、マックス・ローチさん(ds)が亡くなられたそうです。
83歳。早く亡くなる方の多い(特に昔は)ジャズメンの中にあっては、大往生といっていいのでしょう。
錚々たる歴代のジャズ・ジャイアントと共演し、錚々たるアルバムにその名を登場させてますが、
(振り返ってみると、あれも、これも、と、実に驚くばかり!)
何と言っても、
バドとバード、この2大巨星の、
超天才であるがゆえにあまりにも壊れやすかったガラスのような精神、
実際常に、破滅へ、破滅へとひた走った悲しい魂を、
絶えず力強く支え、数々の奇跡のような名演を実現させたくれた、ジャズ史上類まれな高潔の人として、
わたしは、ローチの名前を絶対に忘れることはないでしょう。
彼もまた、そびえたつジャイアントでした。
1950年代初頭、ローチは、一人の青年と出会います。
まばゆいばかりに明るくトランペットを吹き鳴らす、やはり高潔な魂を持った青年、ブラウニー。
そのまるで少年のような、心優しき青年に、ローチは一目惚れし、
二人の出会いは、やがて、
ドルフィー=リトルのバンドとともに、ジャズ史上に燦然と輝く双頭コンボ、
クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットへと結実します。
もしかしたら、この頃が、ローチにとって、最も幸福な時期だったかもしれません。
この明るく力強いバンドは、ひょっとしたら、
わたしたちが聴いたこともないような、「来たるべきジャズ」を、わたしたちにもたらしてくれるはずだったのもしれません。
他ならぬローチとブラウニー自身が、その夢に胸を膨らませていたことでしょう。
しかし、ブラウニーのあまりにも早すぎる死によって、その機会は永遠に失われてしまいました。
やはりドルフィー=リトルのバンドがそうだったように、
ブラウン=ローチ・クインテットも、ほんの一瞬のあまりにもまぶしい光芒を放ち、時間の渦の中に消えてしまいました。
ブラウニーに死をもたらしたのは、もちろん、薬でも精神疾患でもありません。
不運な交通事故でした。
この事故で、バドの実弟であり、あまり目立たないながら実はクインテットにとって無くてはならない存在だった、リッチー・パウエルも命を落としています。
あまりにも偉大な兄の名に臆することなく、着実に自分の道を歩んでいた途中での事故。
彼もまた、明るく強い若者でした。
バドの、「アイ・リメンバー・クリフォード」の凄艶のことは、以前書いたような気がします。
ローチとブラウニーの共演は、すべてが、超ド級の輝かしい名演です。
これまでにご紹介した「4月の思い出」などにも、すばらしい演奏がありますが、
ここでは、ローチに敬意を表し、
わたしの最も愛する作曲家、コール・ポーターの最高傑作、(つまり、わたしが最も愛するスタンダード・ナンバー)
「恋とはどんなものかしら?」
を、あげてしまいましょう。
ポーターは、思わず胸がしめつけられるような、郷愁あふれる、不思議なメロディーを書く人でした。
品のよいエキゾティシズム、というか、とにかく、ワン・アンド・オンリーのメロディーメーカー。
大富豪の御曹司。世界中を旅して、民族音楽を取材しまくって、誰も真似できないような旋律の数々を生み出しました。
この曲はそんなポーターのはじめの大ヒットであるとともに、
その特徴が最大限に発揮された代表曲。モロッコの古い歌にインスパイアされたとのこと。
いかにも、そんな感じ。
ブラウン=ローチ・クインテットが、この曲のあふれんばかりの魅力を、最大限に引き出し、さらに大きくふくらませてくれています。
曲、アレンジ、演奏(アドリブ)の3拍子が見事にそろった、
完っ璧な演奏。
とにかく、理屈ぬきで、かっこいい!
何だか、ハメットやチャンドラーなどの、古き良きハードボイルドの世界を、思い起こさせてくれます。
特別な旅立ちの時にでも、聴きたいような音楽です。
なお、この演奏には、ソニー・ロリンズも参加しています。
この頃から、彼も正規のメンバーに加わり、
ここにいたって、バンドはついに、史上最強と言っていい体制になったのですが、
その矢先の事故でした。
その後のソニー・ロリンズの活躍は、みなさん、ご存知の通り。
不滅の聖典、サキソフォン・コロッサスが、事故と同時期に録音されたのも、暗示的です。
ドラムスは、もちろんローチ。ローチあっての「サキコロ」です。
以上、ローチの周辺の人たちの話ばかりになってしまいましたが、
これらの人たちは、すべて、ローチがいたからこそ、輝いた、ということ。
何だか、今さらわたしが書くまでもないような、あたりまえの記事になってしまいましたが、
何か書かずにはいられませんでした。
ほんとうにありがとうございます。
ご冥福をお祈りします。
恋ってどんなものかしら?
詞:コール・ポーター
曲:コール・ポーター
歌:フランシス・シェリー
♪ 恋ってどんなものかしら?
恋って、なんて、クレイジー
その謎をといてくれるのは、誰?
ミュージカル 「ウェイク・アップ・ドリーム」(’30)より
またまた、すさまじい超訳ですみません。(by Nora)
83歳。早く亡くなる方の多い(特に昔は)ジャズメンの中にあっては、大往生といっていいのでしょう。
錚々たる歴代のジャズ・ジャイアントと共演し、錚々たるアルバムにその名を登場させてますが、
(振り返ってみると、あれも、これも、と、実に驚くばかり!)
何と言っても、
バドとバード、この2大巨星の、
超天才であるがゆえにあまりにも壊れやすかったガラスのような精神、
実際常に、破滅へ、破滅へとひた走った悲しい魂を、
絶えず力強く支え、数々の奇跡のような名演を実現させたくれた、ジャズ史上類まれな高潔の人として、
わたしは、ローチの名前を絶対に忘れることはないでしょう。
彼もまた、そびえたつジャイアントでした。
1950年代初頭、ローチは、一人の青年と出会います。
まばゆいばかりに明るくトランペットを吹き鳴らす、やはり高潔な魂を持った青年、ブラウニー。
そのまるで少年のような、心優しき青年に、ローチは一目惚れし、
二人の出会いは、やがて、
ドルフィー=リトルのバンドとともに、ジャズ史上に燦然と輝く双頭コンボ、
クリフォード・ブラウン=マックス・ローチ・クインテットへと結実します。
もしかしたら、この頃が、ローチにとって、最も幸福な時期だったかもしれません。
この明るく力強いバンドは、ひょっとしたら、
わたしたちが聴いたこともないような、「来たるべきジャズ」を、わたしたちにもたらしてくれるはずだったのもしれません。
他ならぬローチとブラウニー自身が、その夢に胸を膨らませていたことでしょう。
しかし、ブラウニーのあまりにも早すぎる死によって、その機会は永遠に失われてしまいました。
やはりドルフィー=リトルのバンドがそうだったように、
ブラウン=ローチ・クインテットも、ほんの一瞬のあまりにもまぶしい光芒を放ち、時間の渦の中に消えてしまいました。
ブラウニーに死をもたらしたのは、もちろん、薬でも精神疾患でもありません。
不運な交通事故でした。
この事故で、バドの実弟であり、あまり目立たないながら実はクインテットにとって無くてはならない存在だった、リッチー・パウエルも命を落としています。
あまりにも偉大な兄の名に臆することなく、着実に自分の道を歩んでいた途中での事故。
彼もまた、明るく強い若者でした。
バドの、「アイ・リメンバー・クリフォード」の凄艶のことは、以前書いたような気がします。
ローチとブラウニーの共演は、すべてが、超ド級の輝かしい名演です。
これまでにご紹介した「4月の思い出」などにも、すばらしい演奏がありますが、
ここでは、ローチに敬意を表し、
わたしの最も愛する作曲家、コール・ポーターの最高傑作、(つまり、わたしが最も愛するスタンダード・ナンバー)
「恋とはどんなものかしら?」
を、あげてしまいましょう。
ポーターは、思わず胸がしめつけられるような、郷愁あふれる、不思議なメロディーを書く人でした。
品のよいエキゾティシズム、というか、とにかく、ワン・アンド・オンリーのメロディーメーカー。
大富豪の御曹司。世界中を旅して、民族音楽を取材しまくって、誰も真似できないような旋律の数々を生み出しました。
この曲はそんなポーターのはじめの大ヒットであるとともに、
その特徴が最大限に発揮された代表曲。モロッコの古い歌にインスパイアされたとのこと。
いかにも、そんな感じ。
ブラウン=ローチ・クインテットが、この曲のあふれんばかりの魅力を、最大限に引き出し、さらに大きくふくらませてくれています。
曲、アレンジ、演奏(アドリブ)の3拍子が見事にそろった、
完っ璧な演奏。
とにかく、理屈ぬきで、かっこいい!
何だか、ハメットやチャンドラーなどの、古き良きハードボイルドの世界を、思い起こさせてくれます。
特別な旅立ちの時にでも、聴きたいような音楽です。
なお、この演奏には、ソニー・ロリンズも参加しています。
この頃から、彼も正規のメンバーに加わり、
ここにいたって、バンドはついに、史上最強と言っていい体制になったのですが、
その矢先の事故でした。
その後のソニー・ロリンズの活躍は、みなさん、ご存知の通り。
不滅の聖典、サキソフォン・コロッサスが、事故と同時期に録音されたのも、暗示的です。
ドラムスは、もちろんローチ。ローチあっての「サキコロ」です。
以上、ローチの周辺の人たちの話ばかりになってしまいましたが、
これらの人たちは、すべて、ローチがいたからこそ、輝いた、ということ。
何だか、今さらわたしが書くまでもないような、あたりまえの記事になってしまいましたが、
何か書かずにはいられませんでした。
ほんとうにありがとうございます。
ご冥福をお祈りします。

詞:コール・ポーター
曲:コール・ポーター
歌:フランシス・シェリー
♪ 恋ってどんなものかしら?
恋って、なんて、クレイジー
その謎をといてくれるのは、誰?
ミュージカル 「ウェイク・アップ・ドリーム」(’30)より
またまた、すさまじい超訳ですみません。(by Nora)
この記事へのコメント
ローチには、いくら感謝しても足りないくらいですね。わたしも、ひさしぶりに<サキコロ>を聴いてみることにします。暑い時に、熱い音楽、たまにはいいかもしれません。
ところで、わたしの性別・年齢等はご想像にお任せしますが、わたしがあまりCOOLでないことだけはまちがいありません。(笑)
実は、アルトゥールさんのブログにコメントなさってるのを見て、以前から、貴ブログも拝見させていただいておりました。特に、サリンジャーやフィッツジェラルドなどのアメリカ文学や、ジャズのことなど、あまり書いてる方がいないので、感激しておりました。こちらこそ、よろしくお願いいたします。