真夏の夜のピアノ曲 + 三位一体節後第12日曜日(BWV137、35、69a)

 今日は三位一体節後第12日曜日。

 カンタータは、まず、第1年巻のBWV69a
 この曲が、最晩年に、市参事会用の曲に編曲され、バッハが(作曲=補作)し、演奏した、最後のカンタータになったことは、以前書きました
 原曲においても、華やかな冒頭合唱、夏の野辺に憩うようなテノールアリアがすばらしい。
 このテノールアリア、リコーダーとオーボエの、模倣の花園。

 第2年巻のコラールカンタータはありませんが、
 そのかわり、例によって、翌年に、コラールカンタータ年巻補完目的で作曲された、
 テキスト・カンタータの最高峰、BWV137があります。
 夏の終わりを飾るにふさわしい、大カンタータ。
 全曲すべてのもとになるコラールは、賛美歌でもよく知られていますね。
 後に、シュープラー・コラール集に編纂された、第2曲、オブリガート付コラールが夢のように美しい。

 残りは、後期のBWV35
 アルトのためのソロ・カンタータ。アルトのためのカンタータ集には必ず入ってます。
 BWV17054の2大名曲に比べると、目立たないですが、もちろん、名曲。
 冒頭シンフォニア等、文字通り失われたコンチェルトの転用と考えられ、
 BWV1059が、このカンタータから復元されたことは、以前書いた通り。
 このコンチェルトの第2楽章にあたるシチリアーノが美しい。



  *    *    *



 さて、長かった夏休みももうすぐ終わり、
 ということで、今日は、この夏によく聴いた音楽のこと。
 ひさしぶりに、バッハ以外のクラシック音楽について、書きます。


 ロマン派へのチャレンジ・シリーズ。(いつの間に、そんなものが・・・・?)

 春のVnソナタに続いて、今回は、ピアノの名曲。
 例によって、みなさんに教えていただいた珠玉の作品の数々。


 春以降、この夏は、いろいろな方のブログ等を参考にして、
 ロマン派を中心にしたピアノ曲を、集中的に聴くようにしてきました。

 ここでは、その中でも、特に気に入った曲と演奏を、自分自身の記録のためにもいくつかあげておこうと思います。

 特に今年のように暑い夏の夜には、涼しげなピアノの小品がぴったり。
 もともとそのような曲の方が好みなのですが、
 特に今回は、そのような方向に傾いてしまってるかも。



1、モーツァルト ピアノソナタ全集


 単独では、グールドのトルコ行進曲や、リパッティのイ短調などの名演を聴いてはきましたが、
 春のトリオ・ソナタやVnソナタで、モーツァルトの魅力に目覚めてしまってから、やはり全集が聴きたくなり、早速聴いてみました。
 全集だと、どこを聴いても、こぼれ落ちんばかりの微笑をたたえているかのような魅力的な旋律が飛び出してきて、モーツァルトが、目立たないようなほんの小さな曲にさえ、惜しげもなく才能を注ぎ込んでいることがわかります。
 寝る前など、特にどの曲と決めずにCDを取り出し、かけると、その都度何か新しい発見がある、と言う感じ。
 したがって、いまだに、どれがどの曲か、よくわかりませんが。


 演奏は、図書館で何種類か借りて、聴いてみました。
 クラウス、ギーゼキング、ピリスの新旧両盤をはじめ、どれもさすがにそれぞれ特徴的で、名盤の名に恥じないものだと思いますが、
 わたしが一番気に入って、よく聴いたのは、意外なことに、エシェンバッハ盤でした。
 エッシェンバッハというと、指揮者としての地味な印象しか持っていませんでした。
 このモーツァルトも特に何も変わったことをしているわけではないのですが、演奏が驚くほどしなやか、特にリズムがはじけるばかりに鮮烈で、モーツァルトが盛り込んだすべての旋律が生き生きと歌われています。何度聴いてもあきません。
 この人、ものすごく、ピアノがうまい。ちょっとびっくり。


 ところで、モーツァルトと言えば、はじめに書いたVnソナタ、以前書いたように、ズスケ、オルベルツ盤に出会ってからは、もうずっとこればかり聴いています。
 これも、ちょっと聴くと何でもないのですが、聴けば聴くほど親密に語りかけてくる、というか、とにかく滋味あふれる演奏です。
 銀色に渋く光るようなズスケのVnの音色が独特。オルベルツもたまらなく味がある。
 スズケのCDは、カルテットなども探してますが、なかなか見つからないので困ってます。



2、シューベルト 3つの小品


 シューベルトのピアノ曲は、ソナタや即興曲をはじめとする小品など、これまでも、聴いてきましたが、この最晩年の3つの小品は、いつもお世話になっているアルトゥールさんに教えていただき、あまりの美しさにびっくりしたものです。
 以前にも何となく聴いたことはあったような気もするのですが、注意深く聴いたのは、今回が初めて。

 シューベルトの晩年の音楽は、晩年のシューベルトにしか書き得ない、あまりのやるせなさに思わず胸が苦しくなるような旋律美にあふれていますが、
(唯一無二という点では、まったく種類がちがいますが、あのR.シュトラウスの晩年の極美の音楽にも通じると思います)
 それが、こんなにもストレートに感じられる作品は、他には、あのクインテットくらいなのではないでしょうか。


 ピリスに、他の即興曲とカップリングした「旅人」というアルバムがあり、ステキな演奏です。
 ふだん聴くとしたら、これでしょう。

 でも、アラウが、有名な「ラストセッション」で、この曲をとりあげていて、これを聴いた時は、あまりの美しさに気を失いそうになりました。
 余談ですが、他にも、ドビュッシーの「月の光」やバッハのパルティータなどもとりあげていて、どれもこれもみな、この世のものとは思えぬほど、美しい。



3、シューマン 暁の音楽 作品133


 やはりアルトゥールさんが、御自分のブログにて、熱くシューマンのピアノ曲について語ってらっしゃるのを読んで、
 シューベルトの次は、いよいよ未知の領域、シューマンへと聴き進めました。

 なるほど、交響的練習曲や幻想曲など、偉大なベートーヴェンの後に続く「ソナタ」と言ってしまってよいほどの、第1級の天才の、堂々たる大作です。
 特に、交響的練習曲など、大傑作でしょう。これまで、これを聴いたことが無かったことが恥ずかしいくらい。
 ただ、やはり、熱い!さすがはロマン派の申し子、情熱にあふれている。
 そして、これこそ、この夏のあまりの暑さのせいだと思いますが、やはり、何度も聴くとなると、それ以外の、まるでキラ星のごとくに存在している、詩情あふれる小品の方に、どうしても手が伸びてしまうのでした。


 クライスレリアーナ、子どもの情景、森の情景、どれもこれも、詩そのもののように美しい。

 中でも、わたしが気に入ったのは、幻想小曲集、と、晩年の、暁の音楽、という連作です。

 幻想小曲集の親密さ、暁の音楽の静謐な詩情などは、他では聴くことのできないものだと思います。


 演奏は、もともとがロマンチックなので、ポリーニやアルゲリッチなど、雄弁なものより、ケンプやシフなど、どちらかと言うとやわらかな色調のものが、わたしの好みです。

 特に、シフの暁の音楽は、すずしいです。(笑)



4、ショパン プレリュード 作品28、45、ノクターン


 ついに、究極の目的でもあった、ショパンです。
 まったく未知の分野。自分からは、最も遠い、自分の世界の対極にあると思っていた世界。
 ある意味、ショパンのことをブログに書く、というのにあこがれていました。
 それが実現するとは。

 これはまったくわからなかったので、アルトゥールさんに何から何まで教えていただきました。

 ショパンを聴いてまずびっくりしたのが、聴いたことのあるメロディーがとにかくやたら登場する、ということ。
 それだけ、わたしたちの生活に、身近に浸透しているのでしょう。
 その浸透ぶりは、クラシックの作曲家の中では、1、2を争うのではないのでしょうか。

 また、ショパンというと、いかにも華麗な超絶技巧、というイメージがあったのですが、一つ一つ聴き進めていくうちに、シンプルな中に、真摯な詩情の漂うような作品が意外と多い、と、いうことがわかってきました。
 これならまったくだいじょうぶ。始めはちょっと不安だったのですが、いつのまにか、まったくふつうにショパンを聴くようになっていました。


 もちろん、ショパンの全作品を聴いたわけではないですが、
 現時点で一番よく聴くのは、プレリュードです。
 プレリュードはバッハやドビュシーなどでなじみのある楽曲ですし、1曲1曲が短いのに、実にバラエティに富んでいて、続けて聴くと、次から次へと世界が開けていって、とてもおもしろい。
 もちろん、ポロネーズやスケルッツオなど、堂々たる傑作ですが、
(特に、スケルッツオは、全曲すばらしいと思いました)
 この場合も、やはり暑さのせいか、どちらかというとシンプルで短い世界の方によりひかれたのでしょう。

 そして、プレリュードと言えば、作品28の、「24の前奏曲」ですが、
 実は、もう1曲だけ、作品45の嬰ハ短調の前奏曲、というのがあります。
 これが、ほんとうにすばらしい!
 ベートーヴェン晩年のバガテル、ブラームスこれまた晩年のインテルメッツオにも通じるような、慈しみ深き世界。
 この1曲とめぐりあえただけでも、ショパンを聴いてよかった、と、心から思います。


 それから、ショパンで、もう1曲。
 いつもコメントをいただくkohさんの、「夏の夜に聴くにはぴったり」の言葉に惹かれて聴いた、ノクターン。
 これは、ほんとうに、夏の夜のためにあるような音楽でした。
 特に、寝る前に聴くには最高。


 演奏は、どちらも、ピリス。

 プレリュードは、初期の初々しい演奏。
 ノクターンは、最近の、冷たいくらい美しく澄み切った演奏。これがまた、熱帯夜にはよい?


 ショパン、まだまだ聴いてない曲がたくさんあるので、今後も聴き続けていきます。
 ショパン、なかなか、よいです。



5、ブルックナー ピアノ曲+交響曲第7番(ピアノ・バージョン)


 さらに、kohさんからは、ショパンのコンチェルトの室内楽バージョンというのを教えていただきました。
 暑い時にロマン派のコンチェルトはどうも、と、思っていたので、これ幸いと聴いてみたら、これが実にステキ。


 弾いてるのは、ドイツ在住のピアニスト、白神典子(シラガフミコ)さん。
 興味を持って、彼女のCDを集めてみました。
(ほとんどBISレーベルからリリース)

 彼女は、モーツァルトなどのコンチェルトの室内楽バージョン(フンメル編)も録音しており、これもなかなか美しかったのですが、
 一番びっくりしたのは、ブルックナーのピアノ曲集。

 ブルックナーのピアノ曲自体はそんなにめずらしくはないのですが、
 ここにはなんと、ブルックナーの第7・アダージョのオリジナル・ピアノバージョンが、収録されているのです。
 
 第7には、ピアノやハルモニウムをフューチャーした室内楽バージョンがあり、
 LIONES ENSEMBLEのクリアな演奏のCDを愛聴していますが、
 これは、それさえはるかに上回る透明感!


 結局、暑い夏には、これ!

 と、いつもの居場所に落ち着くわたしなのでした。


 
▽ ほとんどのCDは、図書館で借りたので、今回はジャケ写はこれだけ。

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 さて、ロマン派へのチャレンジ、今後は、さらに未知で、かつ広大な領域、
 シューベルトやシューマンのリートへ、進んでいこうかと・・・・。
 どうなることでしょう。
 


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この記事へのコメント

koh
2007年08月26日 23:35
また、おじゃまいたします。

白神典子さんはモーツァルトのピアノコンチェルトの室内楽ヴァージョンもあるのですか。それは知らなかったので、ぜひ探して聴いてみたいです。

モーツァルトといえば、ケネス・ブラナー監督の「魔笛」を見ました。
歌詞とせりふは英語だし、時代背景は第一次世界大戦のころ、というので違和感があるかと思っていましたが、観ると結構ひきこまれてしまいました。

ところどころにとても美しい映像があります。
ひさしぶりに劇場(新宿・テアトルタイムズスクェア)で映画をみました。
2007年08月27日 22:40
 kohさん、またまた、こんばんは。
 ショパンは、Sクインテット伴奏でしたが、モーツァルトは、fl、Vn、Vcのトリオが伴奏です。
 わたしが聴いたのは、22番と26番のカップリングですが、22番はともかく、26番は、オーケストラが少々騒々しく感じることがあるので、もしかしたら、こちらの方が好きかも。他にベートーヴェン等もあるようです。
 シラガさんは、ただものじゃないですね。

 魔笛の映画、おもしろそうですね。
 ただ、わたしはまだ、魔笛を全部通して観たことも聴いたこともないので、この映画を観てしまっていいものかどうか。(笑)

 いずれにしても、今後は、ドイツリートとともに、モーツァルトやヘンデルのオペラにもチャレンジしていきたいので、今後とも頼りにしております。
(何だか1年位前から同じこと言ってますね)
my favorite stories
2007年08月29日 10:20
 Noraさん、おはようございます。今日は1日中家でのんびりしようと思っております。ところで・・・シューマンの <作品133> 欲しくなってしまいました。多分今日は、家内の買い物につきあわされると思いますので、途中、CD屋さんがありましたら、立ち寄ってみようかと思います。
 今、シューマンの「謝肉祭」を聴きながらこれを書いております。シューマンのピアノ曲は控えめでありながら激しく、品があり、まさに <ノーブル> と言う表現にぴったりの旋律が多いですね。
 これからもどんどん素晴らしい曲をご紹介下さい。楽しみにしております。そして私も勉強させて戴きます。
 これからも変わらぬご交誼の程宜しくお願いいたします。それでは失礼致します。
2007年08月29日 21:42
 my favorite storiesさん。こんばんは。
 今日は意外とすずしくてすごしやすかったですね。でも、これから大雨のところもあるとのこと。被害等が出ないとよいのですが。
 シューマンはほとんど初めて聴きました。
 「謝肉祭」など、「ノーブル」とは、言い得て妙ですね。天性のメロディーメーカー、というのでしょうか。
 これらの充実ぶりに比べると、作品133は、ちょっとスカスカな感じですが、暑い夜など、妙に心に響いてきました。
 こんな何でもないような曲までが、思いがけない魅力にあふれてるところがすごいですね。わたしも、他にもいろいろ聴いてみます。

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