わたしの漢詩入門・その2~第1印象・杜牧

 毎朝、教育テレビで番組開始と同時に放送している、「漢詩紀行」を観て、(もちろん録画で)
 気に入った漢詩を、後で詩集(岩波文庫版とNHKライブラリー版)で確認する、というのを日課にしています。 
 気に入った漢詩については、書き下し文を暗誦できるようになるまで、とにかく、覚えるつもりでいるのですが、なかなか・・・・。
 まあ、ゆっくりと、進めていこうと思います。



▽ 上海旅行の写真が行方不明なので、
  また、沖縄那覇の中国風庭園、福州園の写真。(去年の冬)

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 さて、始めは、李白と王維の詩集を用意したのですが、最近、杜牧の詩集も購入しました。
 TVで紹介するのも、この3人+杜甫の詩が中心です。

 それぞれ、まだほんの少しずつしか知りませんが、
 何となくぼんやりとわかってきたキャラクターも含めて、今一番気になっているのは、
 杜牧です。


 この人は、典型的な、天才型のおぼっちゃん。
 
 超エリートとしてスタートしますが、おもいっきりのんきな性格が災いして、出世はいまいち。

 時代は、晩唐。
 李白や、王維がいた盛唐に比べて、帝国には斜陽の兆しが色濃く見られるようになっています。
 もともと頭がいい人ですから、杜牧には、腐敗しきった時代に対する批判や、歴史観を反映させた硬派な大作もけっこうあるようですが、
 TVや、本で紹介しているのは、あくまでも洒落のめした感じの、軽い小品ばかり。

 とにかく、のんき。
 どんなに社会がひどくても、たとえ出世しなくても、とにかくくさることなく、深く考えずに、
 たとえそれがどんな環境であろうと、自分のいる環境を、とことん楽しんでしまおう、
 そこには、常にそんな姿勢が感じられます。
 わたしも、もちろん、これらの作品の方が親しみやすいですし、実はこちらの方こそが、杜牧の真の姿なのでしょう。



  揚 州 三 首  その一  

 煬帝雷塘土  煬帝(ようだい)、雷塘の土

 迷蔵有旧楼  迷蔵、旧楼有り

 誰家唱水調  誰が家か、水調を唱う

 明月満揚州  明月、揚州に満つ

 駿馬宜閑出  駿馬は宜しく閑より出だすべく

 千金好暗投  千金は好し暗投せん

 喧闐酔年少  喧闐(けんてん)は年少を酔わしめ

 半脱紫茸裘  半ば脱す、紫茸の裘



 煬帝は、揚州に豪華絢爛な離宮を建設して贅のかぎりをつくし、(なんと四階建ての船を浮かべて豪遊したとのこと)挙句の果てに隋を滅亡に追いやった、言わば、亡国のダメ王の典型。
 普通だったら、それを批判したり、哀れんだりするところですが、
 大歓楽街に赴任した杜牧、なんと、煬帝の栄華をなつかしみ、
 自身も大金を湯水のように使い、服まではだけさせて酔っぱらっているさまを、心の底から楽しそうに歌っています。
 こうなると、あきれるのを通りこして、むしろ、気持ちがいいくらい。

 杜牧のあまりの放蕩ぶりを心配した上司が、30人の兵卒を尾行につけ、監視させたそうです。(笑) 



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  春日茶山病不飲酒因呈賓客
  (春日、茶山にて病みて酒を飲まず、因りて賓客に呈す) 

 笙歌登画船  笙歌画船に登る

 十日清明前  十日清明の前

 山秀白雲膩  山は秀で、白雲膩(つや)やかに

 渓光紅粉鮮  渓は光り、紅粉鮮やかなり

 欲開未開花  開かんと欲して未だ開かざる花

 半陰半晴天  半ば陰り、半ば晴るる天

 誰知病太守  誰か知らん病太守

 猶得作茶仙  猶(な)お、茶仙と作(な)るを得たり



 若い頃の無茶がたたって、杜牧先生、体を壊してしまったようです。
 後年、茶どころの太守になった杜牧。
 視察と称して、管弦の楽団をひきつれて、船に乗りました。
 お祝い気分の村。谷川は美しくきらめき、桃の花も満開。
 お酒は飲めなくても、茶仙にはなれるさ、と強がります。



 とにかく、この人、愛すべきキャラクターです。



 ところで、朝の「漢詩紀行」、
 冒頭書いたように、李白や王維の詩も多いのですが、
 今日書いた杜牧を基準にして、このふたりの詩を比較してみると、とても面白くて、
 それぞれの詩人の特徴が浮き彫りにされることがわかりました。

 それについては、また次回。(いったいいつになるか)



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この記事へのコメント

2007年10月05日 19:08
 Noraさん、今晩は。お久し振りです。お書きになられた杜牧の詩、初めてです。五言古詩でしょうか。絶句と律詩ばかりを若い頃は夢中になって・・・暇ができた今、又、全てにおいて勉強をしなければ、と反省しきりです。いい刺激になりました。
 「感謝いたしますぞ」いやあ、侍言葉になってしまいました。冗談です、すみません。やっと今日、<居眠り磐音> 全巻(23巻)を読み終わりました。面白かったです。と同時にロマンと人間の本来持つべき・・・教えられました。まだまだ私は半人前以下、これからもNoraさん、はじめ諸々のブログに教えられて、人間を磨かねば・・・
 これからも宜しくお願い致します。失礼致しました。
2007年10月05日 21:31
 my favorite storiesさん。こんばんは。コメント、ありがとうございます。
 漢詩は読み始めたばかりで、右も左もわかりません。
 有名な詩には、けっこう自分の境遇を嘆くようなのが多いようですが、杜牧の場合、どんな時でも、自分が置かれた状況を楽しみ、晩年なども、ぶつぶつ言いながらも病気の家族のために地方に赴任したりして、何だかすごく、大らかでやさしいところが、キャラクター的に気に入ってしまいました。 
 ここにあげた詩ですが、本には、2つとも、五言律詩と書いてありました。と言っても、わたしには何のことやらさっぱりわかりません。(笑)
 これから、わたしも勉強しようと思います。またいろいろと教えてください。
(同じコメントが2つあったので、始めのを消してしまいました。お許しください。)
2007年10月05日 21:32
 (続きです)
 ところで、「居眠り磐音」!
 実は、my favorite storiesさんのブログで拝見し、あまりにもおもしろそうなので、即、図書館で予約しました。
 そちらのコメントにもありましたが、TVドラマをやっているようで、その影響か、なかなか順番がまわってこなかったのですが、今週やっと借りることができて、ちょうど昨日から読み始めたところです。
 読み始めたら止まらなくなって、電車の中だけで、もう半分以上読んでしまいましたが、これは、おもしろいですね!
 春風のような居眠り剣法。昼間バイトでうなぎを切っている刃を、人に向けねばならない悲しみ。
 磐音は、狂四郎とちがって、希望に燃える若者だったのに・・・・。ちょっとはらはらしてしまいます。
 ほんとに、良い小説を教えていただきました。
 これは、ぜひ続けて読みたいと思います。読み進んだら、また、コメントしますね。
ANNA
2013年12月29日 14:06
Noraさん、こんにちは。

 それほど詳しくないのですが、杜牧の詩が好きです。
以前、中国を旅し万里の長城からあたりを見渡したときに、ふーっと
思い浮かんだのが、遠い学生時代...確か高校の漢文の授業で習った
杜牧の「江南春絶句」でした。
 私が訪れたのはちょうど春でしたが詩にあるように、木々の緑に花の紅が映える季節、あちらこちらから鶯の声が聞こえてきてという、のどかな風景と杜牧の春の詩が重なったようでした。以来、杜牧は気になる詩人のひとりなのです。学生時代はそれほどでもなかったのですけれど(苦笑)

 今年も、カンタータのご案内ありがとうございました。それから素敵な建物のご紹介も!都内、身近なところにも素敵な魅力的な建物はたくさんありますね。私も街歩きが大好きなので、いろいろと参考にさせていただいています。どうぞ良いお年をお迎えくださいませ。
2013年12月29日 22:22
 ANNAさん、こんばんは。

 この漢詩シリーズ、ほんとうはバッハのカンタータのようにどんどん入り込んで、続けていきたかったのですが、いつのまにかそのままになってしまっていました。
 従って、漢詩に関しては、わたしも結局ほんのわずかしか接していないのですが、中ではやはり杜牧の詩が一番しっくりきていたような気がします。

 杜牧、いいですよね。
 李白や杜甫ほど、壮大で強烈な作品も少なく、キャラもちょっと弱いですが、ありのままの何でもない世界の美しさ、かけがえのなさを表現する言葉の感覚は、天才的なような気がします。

 こちらこそ、今年もありがとうございました。ANNAさんのコメントによって、かろうじて「カンタータ日記」の体面を保っているような気もします。
 来年こそは、もう少しバッハの記事を書こうと思います。(と、毎年言っている)
 それでは、来年もよろしくお願いいたします。よいお年をお迎えください。

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