最近観た邦画~「アヒルと鴨とコインロッカー」 サントラ・ディラン、「カトリ」 サントラ・シベリウス他

 GW前後に観た、DVDから。今回は、邦画を中心に。

 また、みんな音楽に関係するものばかりになりました。



 まずは、ボブ・ディランの音楽と、正面から向き合った映画から。
 バッハの音楽が登場する映画は、なるべく観るようにして、サントラ・バッハという記事を書いていますが、以前書いた ”ONCE” に続き、サントラ・ディラン第2弾、ということで。


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 「アヒルと鴨とコインロッカー」

        (2006年、中村義洋監督作品)


 原作のしかけとどんでんがえしを、いったいどうやって映像化してるんだ??
 と、以前からとても気になっていたので、観てみましたが、原作にものすごーく忠実に、見事に映像化しています。
 しかも、わかりやすく、悲しみがひしひしと伝わってくる、情感に満ちあふれた形で。

 さらに、伊坂幸太郎の作品には、ストーリーの大きな流れやテーマを重視するあまり、たまにひどく強引な、どう考えても不自然な場面というのが見受けられることがあるのですが、映画では、その不自然さをなるべく和らげようとさえしている。

 映画と言うのは、こんなふうに表現できるものなんだ、と、感心してしまいました。

 
 これは、原作でも同じなのですが、やはり一番印象的なのは、

 主人公がハナ歌でディランを歌いながら、引越しの荷物を整理しているところに、後ろからカワサキが、
 「ディランか」
 と、声をかける冒頭のシーン。

 このいかにもありがちな、使い古されたようなシーンが、
 ラストに、ものすごい重大な意味を持った、まるで奇跡そのもののようなシーンとして再現されるところでは、
 思わず、涙が、ぶわーっ。

 やはり、ディランの声は、歌は、誰にとっても、奇跡を呼ぶような、かけがえのない意味を持つ声であり、歌なのだ。


 と、いうわけで、これは、ディランが使われている映画として、とても良くできたものなのではないでしょうか。
 単なるBGMでなく、映画の内容そのものにかかわる、と言う意味でも。 

 
 「アイデン&ティティ」が映像化された際、原作者のみうらじゅんが、
 ディランは、自分の歌の映画等での使用についてはものすごく厳しいのだが、よく許可してくれたものだ、というようなことを言っていたが、これもたいへんだったのかな。
 もしかしたら、ディラン、今はもう、かなり人間が丸くなった?
 でも、「アイデン&ティティ」の場合は、怪しいディラン本人?を登場させてたから、よけいたいへんだったのかも。


 この「アヒルと鴨」でもそうですが、伊坂幸太郎が、小説の中で、音楽をとてもうまく使うことは、よく知られ
ています。


 伊坂幸太郎のデビュー作、「オーデュボンの祈り」では、バード(パーカー)の音楽が登場します。
 これも、作品そのものの内容というか、テーマ、根幹にかかわる意味を持って、とても感動的に、美しくあつかわれており、読んだ時は衝撃を受けました。
(音楽の描写そのものについては、ちょっとパーカーの本質と異なる部分が多かったですが)
 わたしは、伊坂幸太郎では、結局、この「オーデュボンの祈り」が一番好きだな。
 今でも、案山子を見ただけで、涙がでるもの。


 以前書いたと思いますが、「死神の精度」にも、バッハの無伴奏が登場します。
 この場合は、それほど作品自体にはかかわりませんが、とても印象的な小道具として、やはり美しくあつかわれています。
(こちらは、音楽そのものの描写も見事だった)

 「死神の精度」も映画化され、最近公開されたばかりですが、もし、バッハがそのまま使われてるんだったら、これもいずれ観ないとならないな。
 誰か観てないかな。


 それにしても、伊坂幸太郎は、
 ディラン、バード、そして、バッハ、
 と、たいした大物好き。
 わたしと同じだ。

 確か、ビートルズ(ジョン?)なんかも書いてたぞ。
 そういうのを堂々と書くところがすごいな。

 いずれにしても、ディランやバードなどを、その本来の巨大な姿、人生や世界に直接影響を与えるような存在として、正面から描ききっているのだから、たいしたものだ。 



 「ああ、爆弾」
 
        (1968年 岡本喜八監督作品)


 わたしは、市川雷蔵さんの「眠狂四郎」シリーズが大好きです。
 一時期、夢中になって、狂四郎の全シリーズをはじめ、雷蔵さんの映画のいくつかを観たことがありましたが、
 それらに登場する、数多くのあまりにも個性的な脇役・敵役の中でも、特に強烈に記憶に焼きついているのが、
「忍びの者」に出演していた伊藤雄之助さんです。
 行動のすべてがいちいち意味不明な、敵方の頭領を、ものの見事に演じていました。(笑)

 そんな伊藤雄之助さんが主演の映画があるのを知り、ずっと観たいと思っていましたが、最近新しくできたレンタル・ショップで発見、ようやく観ることができました。


 これは、おもしろかった!

 画期的な、狂言・浪曲、その他ジャンルを問わず、何でもありのミュージカル。
 豪華キャストによる、抱腹絶倒のノンストップ・コメディ。

 ストーリーは、組をのっとられたヤクザの親分の復讐劇なので、かなりブラック。タイトルのとおり、爆弾をはじめとする過激な小道具も登場するのですが、終始カラッとしていて、結局誰も傷つかず?得もせず、つむじ風が吹き抜けるようにエンディングを迎えます。


 画面に登場する小道具(タイプライター、お金を数える機械などなど)を、ガタガタ、カラカラ鳴らしてリズムをとって、大群衆が歌い、タップを踏んで踊りまくるミュージカルシーンが圧巻。
 最近どこかで見たような気もします。(笑)
 
 ウルトラQのゆりちゃん(=科特隊明子隊員)も、銀行の美人秘書役で登場、ほとんどミュージカルシーンのヒロインとして熱唱しています。


 それにしても、伊藤雄之助さん、やっぱり、すごい。
 何もかもあまりにも強烈で、夢に出てきそうです。


 と、いうわけで、ものすごく昭和の香りの色濃い、ベタな日本映画なのに、
 なぜか、原作のコーネル・ウールリッチ(=ウィリアム・アイリッシュ)の、(何てなつかしい!)スタイリッシュとも言えるまでにハードボイルドな、独特の雰囲気が、びしびしと伝わってくるところが、すごい。
 下手に効果をねらった、いかにもそれっぽい映画よりも、ずっとかっこいい。

 そう言えば、狂四郎も、これ以上ないくらい、ハードボイルドでした。



 「神童」

        (2006年、萩生田宏治監督作品)


 クライマックスのコンサートシーンが、あの ”Vitus” とまったく同じで、ちょとびっくり。
 でも、いかにも、と言う感じの「世界的ピアニスト」が、「これからは、この娘たちの時代だ」とか何とか言って、いきなりコンサート直前になって、主人公の成海瑠子さんに代役を押し付ける、というのは・・・・。
 飛行機を運転して、「世界的ピアニスト」の住むお城につっこんでいった Vitus 少年の方が、まだリアリティがあるぞ。
 しかも、成海さん、モーツァルトのコンチェルトを初見のぶっつけ本番で、楽譜も見ずに弾いてます。(笑)

 松山ケンイチさんも成海さんもたいへんな熱演で、その他の部分はけっこうじっくりとした作りなので、とっても残念、というか、台無し。

 それから、ジャージの少年がすごーくいい味出してます。
 わたしは、こういうやつが一番好き。


 最近の一連の成海さん主演映画では、

 「君にしか聞こえない」

        (2007年、荻島達也監督作品)

 の方がよかった。
 これも、主人公のカップルが、それぞれの音楽を取り戻す、ある意味音楽映画。
 いろいろな設定が韓国映画「イルマーレ」そのもので、こちらもびっくりなのだけど、
 二人の間の時差、という、とてもおもしろくふくらませそうな設定を、イルマーレの方は、まったく生かせていなかったのに、こちらは(イルマーレの時差が2年に対して、こちらの方は1時間)なかなかうまく使っていた気がする。



 「牧場の少女 カトリ」


 Nackyさんに、コメントで教えていただいた、アニメ。
 1910年代、シベリウスがバリバリ現役で活躍していた、激動の時代のフィンランドを舞台にした、本格的な大長編アニメです。なんと、レーニンなんかも登場。

 ハイジやフランダースの犬などの系統の、「世界名作劇場」シリーズのアニメ。

 DVDが見つからず、こりゃどうしたものか、と思っていたところ、上記の新しいショップで、1時間半の総集編というのを発見。早速見てみましたが、雰囲気だけでも十分つかむことができました。

 コメントでもちょっと書かせていただきましたが、
 森や湖、フィンランドの田園などの背景がものすごく丁寧に描き込んであり、その中を、牛が草を食み、鶴なんかが悠々と飛んでいて、まさにシベリウスの世界そのもの。
 後半、舞台は都会に移りますが、町の様子も雰囲気満点。
 テーマソングは、フィンランディアの、あの美しい賛美歌。これがさまざまな形にアレンジされて、常に流れます。
 ちょっと総集編では確認できませんでしたが、シベリウスは、その他の曲もいろいろ使われているみたい。

 シベリウスの音楽を聴きながら、フィンランドの美しい風景を見て、北欧の雰囲気にどっぷりと浸かることができます。それだけでも、価値があるかも。

 主人公カトリの愛読書が、そもそもカレワラですし。

 ストーリーは、おしんやチャングムみたいな感じ。
 ただ、時代がものすごく重苦しく、境遇も不幸のどん底なのに、この主人公、すさまじいラッキーガール。
 ピンチになると、必ず誰かが彗星のように現れて救ってくれます。
 まるで、周りの環境を、すさまじいスピードで、自分の有利な方向に持っていく特殊な能力を有しているようです。

 だから、始めハラハラしますが、慣れてくると、まったく心配なく、物語がハッピーエンドへと進んでいくのを楽しむ事ができます。

 もっとも、これは、ダイジェストだからかも。
 実際の完全版では、もしかしたら、血のにじむような苦労の連続なのかもしれません。
 とにかくたいへんな時代、境遇なのは、まちがいないのです。

 いずれにしても、機会があれば、完全版をぜひ見てみたいと思います。

 いかにもジブリ作品に出てきそうな、スピード狂の女医さんが、とてもステキ。



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この記事へのコメント

Nacky
2008年05月18日 19:40
Noraさま

「牧場の少女 カトリ」のご紹介とご感想、ありがとうございます。
美しい景色、シベリウスの音楽、アニメですが、ゆったりとした
時を過ごすことができる感動アニメです。

さて、世界名作劇場ついでに、もう1本、実は私が最も好きな
作品である「ロミオの青い空」をご紹介致します。
原作はドイツの児童文学作家、リザ・テツナー氏。
とくに音楽がどうのこうのということではないのですが、
ヨーロッパ文化の源流ともいえるイタリア(ミラノの街)が
本当に美しく描かれています。

これはツタヤさんにレンタルDVDがおいてあると思います。
よろしければ、是非、一度ご覧になって下さい。
いやいや、リンクのストーリー抜粋をお読みになるだでも
感涙ものですよ。
   ▽
http://www001.upp.so-net.ne.jp/meisaku/meisaku/romio/romio.html

2008年05月19日 21:19
 nackyさん、いつもありがとうございます。
 DVDのストーリー紹介と、プロモーションビデオ、観ました!
 こちらのページから、両方観ることができますので、興味のある方は、ぜひ、ご覧になってください。(→右URL欄→)
 これはまた、美しい絵ですね。アルプスの自然や大聖堂などが、実に見事に描きこんであります。
 ストーリーがまた、少年たちの熱い友情の物語ですごい。こんなアニメをやっていたんですね。まったく知りませんでした。
 わたしのよく行くツタヤさんは、あまり品揃えがよくないのですが、先日「カトリ」を借りたショップになら総集編だったらあるかもしれません。
 でもこれは、各巻くわしく観てみたいものです。
 原作(および作者)にも、興味がわいてきました。
かげっち
2008年06月28日 23:21
ああ、Noraさんもカトリを・・・
カレリア組曲の3曲目(行進曲)が使われていたのも覚えていますよ。
この際、カレワラも岩波文庫で入手して、どっぷりつかってくださいまし。
2008年06月29日 01:47
 かげっちさん、こちらもご覧になってくださり、ありがとうございます。 かげっちさんも、カトリ、ご存知でしたか。
 わたしはコメントで教えていただき、初めて知ったのですが、景色や音楽が、あまりにも美しくてびっくりしました。(まだダイジェストしか見ていませんが)
 カレワラは、大昔、チャレンジしたのですが、たぶん途中で挫折し、しかもすっかり忘れてしまいました。やはり、シベリウスファンとしては、読まないわけにはいかないのでしょうね。(笑)

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