最近観た世界の映画から~「らくだの涙」ほか+三位一体節後第5日曜日+ヨハネの祝日

 これから7月の始めにかけては、大きな祝祭日が連続して、カンタータも名曲が目白押し、
 カンタータファンにとっては、正に、「夏のカンタータの祭典」!

 まず、今度の日曜日(6月22日)は、通常通り、三位一体節後第5日曜日ですが、
 その2日後の6月24日(火)が、洗礼者ヨハネの祝日です。


 三位一体節後第5日曜日のカンタータは、

 第2年巻、コラール・カンタータのBWV93
 後期作のBWV88
 の2曲。

 コラール・カンタータの最高峰、BWV93については、昨年気合いを入れて書きました。こちら


 次に、ヨハネの祝日のカンタータですが、

 第1年巻のBWV167
 第2年巻のBWV7
 最晩年の(なんと、最後のカンタータ!)BWV30
 の3曲。もちろん、すべて特別な名曲ばかりです。 

 BWV30については、こちらこちら、いたるところで書きまくっています。


 どちらの祝祭日についても、たいへんな名曲ばかりですので、
 ぜひ、過去記事を参照していただき、お聴きになってください。



  *    *    *



 今日は、最近見た映画(DVD中心)の感想メモ。

 なぜか、ちょっと変わった、世界のいろいろな国の映画が並びました。



▽ DVDで、パンフ等が無いので、絵を描いてみました。

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 らくだの涙

        (2003年、ドイツ映画、ビャンバスレン・ダバー&ルイジ・ファロルニ監督作品)


 最近、モンゴル・フェスタなどでたくさんモンゴルの歌を聴く機会があり、モンゴルへの郷愁にも似た思いが募ってきたこともあり、観てみました。
 
 ドイツの映画学校で知り合ったという若い男女の監督の共作ですが、女性監督のダバーさんは、モンゴル出身だそうです。
 そういう意味で、ドイツ映画ではありますが、実質的にはモンゴルの映画と言っていいでしょう。

 砂漠とらくだが死ぬほど好きな方(砂漠はともかく、らくだの方は、いらっしゃるかどうかわかりませんが)、
 必見です。
 もういや、というほど、堪能できるでしょう。


 モンゴルの砂漠地帯の、ある遊牧民家族の生活を、じっくりと追い続けたドキュメンタリー。

 らくだの繁殖期。
 難産の末、ようやく生まれた白いらくだ。
 ところが、難産だったためか、お母さんらくだは乳をあげようとしません。
 遊牧民家族はなんとか乳をあげさせるようにしようとしますが、頑なにいやがるお母さん。
 どんどん弱っていくかわいそうな白らくだ。
 (このあたり、どうしても、愛媛のとべ動物園のホッキョクグマ、ピース君を思い出してしまいます。白いし)

 子どもたちは(見ているわたしも)心配でたまりませんが、おとなたちはさすがに困惑しながらも泰然と構えています。
 もともと物事に動じないのでしょうが、最後には、必殺の奥の手があるから。
 
 やがて、遊牧民家族、「しかたないな」と言って、
 ついに、その必殺技、モンゴルの砂漠に代々伝わる儀式、「フースの儀式」を決行することにします。
 か、かっちょえー。

 この「フースの儀式」、子どもに乳をあげようとしない母親の動物に、歌を聴かせ、乳をあげさせるようにするもの。
 遊牧民にとっては死活問題に係わるとても重要な儀式です。
 その動物によって、歌や方法などが異なり、成功率は、なんと百パーセント、とのこと。
 そのかわり、乳を飲むまで、長い場合は何日も何日も、歌は続くそうです。
 
 この映画でも、その奇跡の瞬間が実際にとらえられています。
 ドキュメンタリーだけど、これ以上ないような、正にあ然としてしまうようなファンンタジー。すごい。

 と、いうわけで、クライマックスは、何と言っても、儀式の歌のシーン。
 遠くに純白の山脈が連なる以外には、まったく何も無い砂漠を、風にのってゆうゆうと流れる
 馬頭琴の調べと歌声。

 お母さんらくだの目から涙が零れ落ちたのと同時に、わたしの目からも涙が・・・・。(何だ、そりゃ)

 そういう意味で、これは、馬頭琴と民謡が主人公と言える音楽映画。

 
 それにしても、モンゴルの平原、空、流れる雲、嵐!ほんとうにすごい!!
 その中に溶け込むようにして暮らしている、遊牧民家族の、何気ない日常を追った、その他のシーンも、飄々としていて、すばらしい。


 はるかな街まで、らくだに乗って、馬頭琴奏者を迎えに行く、幼い兄弟の大冒険、
 この一件によって、念願のTVが観られるようになるところなど、
 少し前のチベット映画、「ザ・カップ」なんかを思わせる。


▽ この前のアフリカン・フェスタもらくだだらけでした。
  らくだの顔は、ようく見ると、オランウータンみたい。めちゃくちゃかわいいです。

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 僕と未来とブエノスアイレス EL ABRAZO PARTIDO

        (2003年、アルゼンチン映画、ダニエル・ブルマン監督作品)


 今度は、南米、アルゼンチンに飛びます。
 アルゼンチン映画と言えば、なんと言っても、パタゴニアの「ボンボン」が強烈でしたが、
 おもしろそうなのがあったので観てみました。 


 ブエノスアイレスの、ちょっとうらぶれた La Galeria(この場合は、古い共同ビルの商店街)を舞台にした群像劇。

 大戦中にポーランドから逃げてきた、移民ユダヤ人街が舞台で、ちょうどポーランド系ユダヤ人の監督が、自分自身のルーツを見つめなおした作品ということでしょうか。


 この映画、まず、登場人物が、みんな、飛びぬけて魅力的。
 映画の冒頭、主人公の視点で、「ガレリア」の各店舗と住人たちが紹介されますが、どの店、人物とも、雰囲気万点、味があって、それだけでにやにや、わくわくしてしまいます。

 そんな個性的で、一癖も二癖もある登場人物たちの中にあって、主人公は、超マジメ青年。
 けっこう年はいってるようなのに、まるで少年みたい。結局、こいつが一番、曲者?

 父親は主人公が生まれた頃、出て行ってしまい、母親と兄との3人暮らし。
 建築家になる夢は挫折し、
 母親は、どこかの「スケベ親父」と仲良くしておしゃれやダンスにうつつをぬかし、兄は怪しげな商売をしていて失敗続き。
 かわいい恋人とも別れてしまい、現在つきあってる?つもりのインターネットショップの女主人の周りには、妖しげなパトロンの影がちらついている。
 そんな現実から、「ガレリア」から逃げ出したくて、主人公はポーランド国籍をとって、ヨーロッパに移住することだけを考えている。それで実際に準備も進めて、いつでもヨーロッパに行ける状態になるのだが、だけど、いつまでも「ガレリア」にいる。


 物語は、「ガレリア」の名誉をかけた、荷物運び競争大会?に向けて、じわじわとおかしく進んでいきますが、
 そのクライマックスの大会当日、なんと、実にスーパーなお父さんが、ガレリアに帰ってきて・・・・。

 それにしても、大会でお父さんを見かけた時の、それからその後、ついに二人で再会した時の、主人公の行動。
 こいつ、バカです。そして、お父さんも。
 大笑い+ちょっと涙。

 
 登場人物、みんなステキですが、
 わたしは、
 荷物運び競争の代表になった、兄貴の会社のラモン君、
 ガレリアの風水ショップのキム夫妻、
 が、大のお気に入り。
 あと、主人公がふられた(ふった?)元カノのエステラがものすごくかわいい。

 また、インターネットショップ店店主に、好きな時間の単位は?と聞かれた主人公が、
 「ルストルムス」(5年間)と答えたのが印象的。

 それから、さすがにアルゼンチン映画、タンゴっぽい音楽が、どれも皆、すばらしかったです。
 最後、クレジットとともに流れるテーマソング、誰が歌ってるかわかって、びっくり。

 
 いろいろと複雑な背景や社会事情があるのですが、
 結局見終わって、基本的には、わたしたちと何も変わらないんだな、というのが、もっとも強く感じたこと。
 舞台の「ガレリア」、池袋かどこかの裏通りの商店街だ、と言っても通用するでしょう?
 ラビとかはいるものの、商店会(町内会)のごちゃごちゃしたやりとりなんか、日本とまったくいっしょなのでは。


 最後に、一言、
 邦題は、これでいいのか?
 まあ、こういう内容ではあるんだけど。   



 火星人メルカーノ

        (2002年、アルゼンチン映画、ホアン・アンティン監督作品)


 もう一つ、アルゼンチンの作品。こちらは、めずらしいメイド・イン・ラテンのアニメ。
 ラテン系のアニメ、ということで、色鮮やかなのんびりしたアニメを想像してましたが、
 大都会が舞台のちょっとどぎついアニメでした。色彩は鮮烈ですが。
 ラテン国家のもうひとつの側面ではあるのでしょう。


 後から冷静になって考えてみると、ストーリーなど、あの「E.T.」とほとんど、というか、まったく同じなのですが、
 あまりにもブラックなテイストで、見ているときはそんなこと思いもよりませんでした。

 でも、宇宙人(火星人)のメルカーノ氏は、E.T.より、断然、かわいい?
 舞台のブエノスアイレスの大都会の描写が殺伐としているだけ、宇宙人、放浪者ならではの悲しみ、哀愁も、ひしひしひしひしと胸に迫って、圧倒的。

 故郷に帰れず途方に暮れている孤独な火星人、メルカーノ氏と、インターネットを通じて友情で結ばれ、大人たちの手からメルカーノ氏を救い出そうとする少年は、「E.T.」の子どもに比べるとあまりにもふてぶてしく、はじめ、なんじゃ、こいつは、と腹が立ちますが、だんだんとかわいく、かっこよく見えてきて、思わず応援したくなってくる。
 いや、ならないな。やっぱり最後まで、ふてぶてしい。

 それにしても、ここで描かれているブエノスアイレスの街、
 上記「僕と未来とブエノスアイレス」と比べると、誇張している部分もあるのでしょうが、ほんとうに恐ろしい。
 そのハードな街を舞台にして、ふにゃふにゃとやわらかそうな火星人メルカーノ氏がぺしゃっとやられてしまいそうで(案の定、ひどい目にあってしまうのですが)、見ていて心配で、ハラハラドキドキします。

 そして、それに比べて、火星の街の、なんて美しく、楽しそうなこと!
 それに、みんな、おどろくほどいいかげん。しかもものすごく力強い!

 結局、そんな火星には、地球はかなわなかった、という壮絶なエンディング。


 全体的に、ブラックでシニカルな作りの中、
 メルカーノ氏と少年がいっしょに作り上げた、バーチャルの星々の世界の映像、
 つかまって実験台にされてしまったメルカーノ氏が、故郷の幻影を見る時に流れる火星の歌?
 などなど、も、ぞくっとするほど美しい。



 運動靴と赤い金魚

        (1997年、イラン映画、 マジッド・マシディ 監督作品)


 最後は、何とイランの映画。
 rbhhさんのブログでちらっと見かけた作品を、近くのCDショップで見かけたので見てみました。


 メイン舞台の昔ながらのアラブの街を始め、
(貧しい街なのだろうけど、建物や細かいところの装飾などが、歴史を感じさせてものすごく美しく、ちょっとディズニーシーのアラビアン・コーストを思い出してしまった)
 高層ビル群や、度肝をぬかれるような高級住宅地、
 そして、オアシスのきらめく湖のほとり、
 などなど、
 現代イランの実にさまざまな風景の中を、
 運動靴を履いた子どもたちが、パタパタと、
 そして、お父さんが自転車で、ぜいぜいと、
 とにかく常に走り回っているような映画。

 その映像を見るだけでも面白いと思います。

 主人公兄妹の妹が、ものすごーーーーくかわいい。かわいいを通り越して、美しい。
 すごく小さいのに、一番しっかりしていて、よく働き、すねたり、はにかんだり、大人の女性みたいなしぐさを見せる。
 でも、なんだかんだ言って子どもなので、どうでもいいことで泣いてしまう。
 なんて、けなげ。

 それにくらべて、兄&父の男性陣の情けないこと・・・・!
 兄はものすごく頭がいいのですが、なぜ、それを実生活にもっと役立たせない?
 なぜ、靴のことで、妹にあんな苦労をさせる?自分は自業自得だけど。

 そんな兄も、妹のために最後はがんばるのですが・・・・。

 まあ、最後は、結果的にめでたしめでたし、で、兄もまあ、がんばったね、という、
 こうして書いて振り返ってみると、まったく何でもない話なのですが、ものすごく味があって、夢中になって観てしまいました。


 イランなど、日本とは、人種も歴史も宗教もまったくちがうし、イランならではのいろいろ問題もあるのでしょう。
 上の「僕と未来とブエノスアイレス」の時みたいに、もちろん、簡単には言い切れないけれど、
 子どもなんかは、基本的にはみんな同じような体験をして、大人になっていくんだな、
 などと、もっともらしいことをしみじみ感じてしまった。
 もちろん、実際どうかは、わかりませんが。
 少なくとも、ここに登場するひとたちの気持ちは、100%理解できます。



 最後に、近況報告。

 Nackyさんに教えていただいた、アニメ、「ロミオの青い空」
 近くの品揃えの悪いショップになぜか全巻そろっていたので、今、順番に見ています。

 とにかく絵がすばらしい。
 ミラノの街、
 特に、「煙突掃除夫だけが見ることができる世界」、=煙突を抜けた屋根の上に広がる青空、
 の描写がすばらしい。
 これこそ、ルネッサンス!デュファイの音楽そのもの。

 ストーリーも、見始めたら、やめられなくなり、今ちょうど半分、
 「黒い兄弟」と「狼団」の最終決戦が近づいているところで、えらいことになっています。

 これは、原作も読んでみたい。また、図書館を探そう。 



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

Nacky
2008年06月22日 20:25
Noraさま
こんばんは。
カンタータ日記にも関わらず、「ロミオ」を大々的に取り上げて
いただき、大変恐縮というか、光栄に存じます。
ミラノの真っ青な空。。。。
まあ、バッハも憧れていたイタリアですから、
許してもらえるでしょうか??? (笑

以外と悪役のジョパンニが良いヤツなんです。
というか、主役だけでなく全ての登場人物がみな
魅力的です。

これから、終盤に向け、ハンカチをいっぱい
ご用意下さい。(爆

Nacky
2008年06月22日 20:26
訂正です。以外と→意外と です。
失礼しました。
2008年06月23日 22:12
 Nackyさん、こんばんは。
 カンタータ日記にもかかわらず、カンタータの記事がほとんど無くて、こちらの方こそ恐縮です。(笑)
 いつもおもしろい作品を教えていただき、ありがとうございます。この「ロミオ」はまったく知りませんでした。小さなショップにも全部そろってるくらいですから、根強いなファンが多いのでしょうね。

 ジョバンニ、いまのところ極悪ですが、すでになかなか魅力的です。
 アルフレドはかっこいいですが、いかにも破滅型天才で、心配です。このようなタイプは、普通どこかひねくれてるものですが、実に善良な人格者なところがなおさら心配です。
 ロミオは、あのカトリよりも打たれ強いようなので、もう心配するのはやめました。いずれにしてもこの先が楽しみです。

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