最近聴いたCDから~ついに出た!ブルックナー究極の名曲名盤!【三位一体節後第25日曜日】

 今度の日曜日(11月9日)は、三位一体節後第25日曜日。

 カンタータは、

 第1年巻のBWV90
 第2年巻(コラール・カンタータ)のBWV116

 の2曲です。
 
 同日の過去記事は、こちら



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 さて、今日は、最近聴いたCDのご紹介。



 ブルックナー ミサ曲ヘ短調

        ヘレヴェッヘ、RIAS室内合唱団&シャンゼリゼ管弦楽団


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 もうずいぶん長い間、心の底から熱望し続けてきた演奏。


 いきなり、またまた、暴言をはいてしまいますが、

 これまで、ここまで真剣に誠実に、この音楽にとりくんだ演奏は、無かったのでは?

 いや、けっしてそんなことはないのですが、そう思いたくなってしまうほどの録音です。

 この演奏によって、この何よりも美しい音楽が、初めてその真の姿を表したのではないか。
 そういう意味では、グールドのゴールドベルクやクナッパーツブッシュのパルシファルなんかと肩をならべるような、記念碑的な「レコード」だと思います。

 ブルックナーの、晩年の大交響曲でもない、若い頃(実はそれほど若くはないのですが)のミサが、ゴールドベルクやパルシファルと比べられるものか、と思われた方、おそらく皆さんそうだと思いますが、だまされたと思って聴いてみてください。

 これは、彼の晩年の大交響曲に比肩するような、実にたいへんな曲です。
 わたしも、この曲は、これまで実演も含め幾度と無く聴いてきましたが、まさかこんなによい曲だとは思わなかった。


 まず、音楽自体、限りなく純粋で美しい。
 ブルックナーはまごうことなきおじさんですが、この作品には、初々しい純潔がある。
 そして、不思議なことに、交響曲ではあんなにも感じられるブルックナー特有のぎこちなさが、ここにはまったくない。
 宗教音楽の大家の作品のような風格をも併せ持っている。


 それから何よりも、ここには、彼のその後のあらゆる作品の萌芽がある。
(実際、どこかで聴いたようなフレーズが満載。2番や7番でおなじみのメロディや、モチーフも出てくる)

 このミサの森は、いつかどこかで見た風景であふれている。
 もう、いたるところに、なつかしい見覚えのある花が咲いていて、
 なつかしい風が吹き抜け、なつかしい香りに包まれる。

 彼はほんとうに、一生かけて、唯一無二の、一つのことを、言い続けていたんだな。


 そして、人間の声、合唱と独唱、それから楽器が完全に溶け合い、もはや人間が、楽器が音を出していることを感じさせないような、
 これまでの経験のすべてを投入したかのような、ヘレヴェッヘ、満を持しての渾身の演奏。

 美しさばかりでなく、彼のこれまでの交響曲録音にはあまり見られなかったような、素朴で原始的な迫力さえも、ここでは、随所で炸裂する。

 またまた暴言ですが、ヘレヴェッヘのこれまでのすべてのキャリアは、この曲を演奏するためにあったのではないか。
 そんなことない、のはわかってますが。   


 もう最近は、ずっとこればかり聴いています。
 ああ、この夢のような音楽の中に、ずっとずっとひたっていたい!

 
 それにしても、
 ミサを源泉として、そこからすべての創作を行ったブルックナー、
 ミサにすべての創作を集約させたバッハ、
 いずれにしても、彼らにとって、ミサというものがどんなにも大きな意味を持っていたことか。
 
 改めて、それを思い知らされます。

 中世・ルネッサンスから脈々と連なるミサの大山脈。
 それは、バッハという天にも届かんばかりの高峰にいたった後も、遠くブルックナーにまで連なり、
 ブルックナーは、生涯をかけてそれを独自の交響曲世界に発展させました。

 ブルックナーの交響曲にはどこかルネサンスの音楽に通じるところがある、ということは、これまで何度も書いてきましたが、それも、当然の帰結だったというわけか。



  ☆    ☆    ☆
 


 ブルックナー 交響曲選集

        チェリビダッケ、ミュンヘン・フィル(ライブ)


 チェリビダッケも、ヴァントと同じく、S君さんおっしゃるところの「精緻で完璧な、これしかないという音楽を構築」した音楽家だと思います。
 以前聴いた時は、その徹底振り、緊張感があまりにも息苦しくて、なかなかなじめないでいました。
(シュトゥットガルトのオケのもの)

 アルトゥールさんのブログで、晩年のミュンヘン・フィルの演奏がすばらしい、というのを教えていただき、今回、先入観を捨てて、無心で耳を傾けてみました。


 結論としては、決して、冷たくなく、神経質でもない、実に見事な演奏だ、と思いました。
 ただ、極めて静的で、ある意味植物的とも言える、とても特徴的な演奏。

 第9や第8アダージョにはぴったり。たいへんな名演だと思います。

 第8フィナーレなどにも、この姿勢をつらぬこうとしている。

 それはそれで、すごいことで、第2主題、あのいくつものバラバラな歌が同時に歌われるような、きわめて対位法的なテーマが、こんなに美しく響いた演奏もめずらしい。

 これが全曲にわたって徹底すればとんでもないことなのでしょうけれど、
 完璧主義者と言われるチェリビダッケにも、思いがけずゆるいところもあり、
 さすがに展開部などでは、意外と、部分的にテンポが速まったりして、他の演奏に比べれば決して速いことはないのですが、それまでが微動だにしない堂々たる大樹のような演奏だったものだから、多少おさまりの悪い感じになってるのが残念。
 ただ、多少人間くさくて、親しみがわくとも言える。

 そして、それでも、コーダなどは、これ以上はありえないくらい、堂々としめています。


 それにしても、ミュンヘン・フィルの共感あふれる音はすごい。
 おそいテンポでも一瞬もだれることなく、長い長い、永遠とも思われる演奏の始めから終わりまで、音から愛があふれ出続けています。



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 シベリウス 交響曲全集

        ペトリ・サカリ、アイスランド響


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 これもアルトゥールさんのブログで教えていただいたもの。
 ようやく聴くことができました。

 アイスランド交響楽団は、さすがに、北欧というか、北欧をはるかに飛び越えた、極北のオケ。
 澄み切った音色。あまりにも澄み切っていて、弦の合奏など、白夜の薄明にはかなくにじむ風のようです。

 それに対して、フィンランドの新鋭指揮者、ペトリ・サカリさんの表現は、ものすごーく、熱い。
 テンポはキビキビ、颯爽として、どこまでも情熱的。

 もし普通のオケだったら、ちょっと暑苦しいかな、というところですが、これが前述のアイスランド響なものだから、
 その結果、生み出された演奏は、実に透明感のあるさわやかな演奏。
 疾走感あふれ、メリハリもきわだっていて、立体的。普段はなかなか聴こえてこない声部までしっかりと聞こえてきて、単なる雰囲気でない、シベリウスの書いた音符そのものを満喫できます。
 また、へたに幽玄な感じにしようとはしない、そのような特徴から、よくあるような、1、2番とそれ以降の曲のギャップもそれほど生じておらず、全曲を等しく楽しむことができます。
 ちょっと他に無いシベリウスで、これは、必聴。

 
 なお、このコンビ、現在来日中で、ちょうど今週、シベリウスの交響曲全曲チクルスを行っている。
 しまった。すっかり忘れていた。



  ☆    ☆    ☆



 バッハ ミサ曲集 BWV234、235

        ピグマリオン


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 最近の古楽器によるバッハ演奏には、目の覚めるような鮮烈な演奏が多く、実際わたしなどもそのような演奏に惹かれるのも事実なのですが、
 これは、オーケストラも、合唱も、ソロも、
 何だかものすごく自然な、聴きなじみのある古きよきバッハ演奏を、その良さをそのままに、美しく、クリアに磨きぬいたかのような、ある意味とてもなつかしい、まるで故郷の風に包まれているような気分になれる、
 そんな演奏です。

 そういう、自然さ、という意味では、ある意味、あのヘンゲルブロックの演奏を思い出させますが、
 あちらが本家ドイツ風なのに対して、こちらは、コルボだとか、パイヤールだとか、どこか古雅で洗練されたフランス風のバッハの伝統を見事に引き継いでいるような気がします。

 それにしても、バッハのルター派ミサ曲(小ミサ曲)、ロ短調のような圧倒的な高みには到達していないかもしれませんが、ほんとうにすばらしい。(以前、小ミサについて書いた記事が、こちらにあります)
 このCDは、正に、名曲の名演奏。
 これにも、すっかりはまってしまってます。


 ところで、このCD、あざらしがびっくりしてるみたいな不気味かわいいジャケットを見て、衝動買いしたものです。
 結果的に大正解でしたが、いったいぜんたい何の絵かと思ったら、ブリューゲルの大作、「反逆天使の墜落」の部分でした。
 あまり関係ないですが、わたしは、このような、細かいものがびっしりと描いてあるパノラマ風絵画が大好きです。
 いつまでも、ながめていたくなる。



  ☆    ☆    ☆



 夜の音楽集

        サヴァール


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 サヴァールの膨大なディスコグラフィーから、「夜」にちなんだアンコール・ピースを集成した、ちょっとすてきなアンソロジー。
 ヴォーカル編と、インストゥルメンタル編の2枚組み。
 時代も中世から近代までと幅広く、名曲の名演ぞろい。
 全編からあふれる夜の香りにぞくぞくします。
 寝る前などにかけるのに、ぴったり。

 ちなみに、これも、愛するルソーのジャケットを見て衝動買いしたもの。



  ☆    ☆    ☆



 今月のおまけ


 「綺麗 ア・ラ・モード」

        中川翔子 (筒美京平・作曲、松本隆・作詞)


 以前、鬼太郎の記事で、あまりのすばらしさに思わず冷静さを失い、「恋はメロロン」のご紹介をしてしまいましたが、
 しょこたん、またやってくれました。

 何と、日本ポップス界の最強コンビ、筒美京平&松本隆の新曲です。

 心にしみこむメロディと歌詞、そして、しょこたんのまっすぐな歌声。
 とにかく、聴いてください。

 それにしても、筒美さんのメロディーは、なぜこんなにも心にしみるのか。
 独特のしなやかで美しい音の流れが、心の奥の奥まで、しのびこんできて、
 聴き終わった後には、やさしくせつない余韻が残る。
 ああ、うまく表現できない。とにかく、ワン・アンド・オンリーなのです。

 どの程度本腰を入れているのかわかりません。膨大なストックの中の1曲にすぎないのかもしれません。
 でも、やはり、筒美さんの手にかかったメロディはちがう。



  ☆    ☆    ☆
 


 10月のむちゃな買物


 The Bachpod 

 清水の舞台から思いっきりダイブして、買ってしまった。
 買ったはいいが、使い方がまったくわからず、真っ青になった。
 とにかくまずは、充電をしなくてはうんともすんとも言わないのだが、充電のためコンピュータとケーブルをつなげると、データが消えてしまう可能性があると書いてある。????
 とりあえず、普通コンセント用のアダプタを購入しました。

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 バロック・ボックス

 これは、値段ではなく、枚数がむちゃくちゃ。
 ヘンデルやパーセル、聴きまくっております。

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  ☆    ☆    ☆



 新譜情報


 シュタットフェルトの平均律第1巻

 * まずは第1巻だけだが、期待大。ワクワクする。関連記事、こちらこちらなど。


 鈴木さんの平均律第2巻

 * 鈴木雅明さんの第1巻は、チェンバロを弾いたものでは、
   アスペレンとスコット・ロスに並ぶ最高の演奏だと思います。
   正に、待望の第2巻。


 西山まりえさんのインヴェンション

 * 12月上旬リリース予定。リリースを記念して、ライブも予定されてます。
   インヴェンションは、上のシュタットフェルトの名盤が記憶に新しいですが、
   奔放な西山さんが、あの結晶化した小宇宙にどのようにぶつかるか。


 ヴァインベルガーのオルガン曲全集

 * 先日ご紹介した新発見コラール BWV1128を含む、完全全集が早くも登場。しかも、思いっきり安価。


 Thomanerchor によるBWV178 他

 * ビラー&トーマス教会合唱団のニューアルバム。
   ウルリッヒ・ベーメによるオルガンコラールが何曲か収録されていて、
   ここにも、BWV1128が収録されています。


 アンセルメのカンタータ集

 * アンセルメ、意外と好きなのです。
   管弦楽組曲は、以前聴いたことありましたが・・・・。
   抜粋等を含めると、何と7曲もやってる。ちょっとびっくりなCD。


 そして、最後はこれ

 グールド・コレクション

 * 残念ながら、とりあえずは、旧ビデオ(LD)第1集のみのリリースみたい。

   グールドが最晩年に最録音したバッハは、あのゴールドベルクだけではありません。
   同時期のセッションで、CD化されているフーガの技法を始め、
   平均律第2巻のホ長調フーガ、変ロ短調フーガ、パルティータニ長調、インヴェンションのうちの何曲か、など、
   バッハのクラヴィーア曲を代表するような名曲の数々をも再録音していたのです。
   これぞ正に、名曲の名演奏。まちがいなくわたしの、「無人島に持っていく1枚」です。
   
   これらのすごさについては、これまで何度も書いてきて、DVD化を熱望してきました。

   この度のリリースのニュースを聞き、ついにDVD化か、と喜びましたが、
   最晩年のバッハ演奏がたくさんはいっている第2集の方は、まだのようです。

   でも、これで、DVD化がぐっと現実味を帯びてきました。首を長くして待ちましょう。

   もちろん、第1集も、すごい。
   グールド指揮のBWV54なども収録。 



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

かげっち
2008年11月20日 12:24
きた~!!
アイスランド響、聴きに行けないんですよ。そうか、そうだったのか~!
(意味のないコメントですね)
2008年11月21日 00:16
 かげっちさん、こんばんは。
 わたしもすっかり忘れていたのですが、この記事を書いた後で調べたらどうやら来日中止になってしまったようです。
 どっちみち聴けなかったわけで、しかたないので、記事に書いたCDを聴きまくってます。聴けば聴くほど気に入ってきました。
2008年12月28日 14:26
こんにちは。
感想らしい感想は何も書けませんでしたが、ミサ曲第3番の記事をアップしました。素晴らしいCDをご紹介いただきありがとうございました。
2008年12月28日 19:43
 garjyuさん、こんばんは。
 記事、読ませていただきました。
 このCDは、あまり話題になっていないようなので、garjyuさんが気に入ってくださり、あのような記事にしていただいて、とてもうれしいです。
 こちらこそありがとうございました。
 来年もよろしくお願いいたします。
ANNA
2013年05月26日 17:19
Noraさん、こんにちは。

先日でかけた「オディロン・ルドン」展にて、ヘレヴェッヘのブルックナーのミサ曲へ短調のジャケットを飾る絵画、「翼のある男 あるいは堕天使」に会ってきました。思いもがけず。
 そもそもの目的は、ルドンの「眼をとじて」の原画が観たくて出かけたのでした。ここ数年、どういうわけかモデルが眼を閉じている人物画に安らぎと癒しを感じるように…いろいろな画家の作品を調べていく中で、ルドンの「眼をとじて」という絵画があることを知ったのですが、今回ようやく念願の原画に会うことができたというわけでした。

ほんとうに思いもがけない出会いでしたが、ジャケットで見慣れていたはずの原画に会うことができ、うれしかったです!
2013年05月29日 00:36
 ANNAさん、こんばんは。

 このブルックナーのジャケットは、かなり印象的でしたね。
 曲や演奏のすばらしさとともに、強烈に心に焼き付いています。
 昔は名画を使ったジャケットと言えば、ありきたりな風景画などが主流だったように思いますけど、この記事に出ているブリューゲルやルソーもそうですが、今ではCDのコンセプトに従った、なかなか凝った使い方が当たり前になっているような気がします。
 そのせいか、確かに、展覧会等で思いがけず聴きなれたCDの絵の原画に出会ったりすると、はっとしたりしることが多いですね。
 いきなり音楽が聞こえてくるようなことも。(笑)

 モデルが目を閉じている人物画、というのはおもしろいですね。たくさんありそうですが、なかなか思いつきません。わたしも展覧会等に行ったら、気をつけて探してみようと思います。  

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