春の便り~最近聴いたCDから+新譜リリース情報<バッハ編>【マリアのお告げの祝日+棕櫚の日曜日】

 * 3月26日追記。
   新譜リリース情報に、「ひとことコメント」を付け加えました。




 今日(3月25日)は、マリアのお告げの祝日。(受胎告知記念日)

 お待ちかねの名曲、BWV1の登場です。


 東京では、先週はずっとあたたかい日が続き、このまま一気に春に突入か、とも思われましたが、
 ここ数日は、真冬に戻ってしまったかのよう。開花した桜もびっくりしているのではないでしょうか。

 ただ、いずれにしても、春が近づいていることはまちがいなく、
 このBWV1も、ちょうど今の季節にぴったりの作品。

 レントのまっただ中にあって、春の足音が近づいていることを、もうすぐそこに春のよろこびが迫っていることを、
 暗闇を裂いて輝く明けの明星に例えて、さわやかに、そして高らかに歌いあげる大傑作。

 明けの明星を見て、清々しい気持ちにならない人がいないように、この曲を聴いて、爽快な気分に心を満たされない人がいるでしょうか。


 BWV1。カンタータ第1番。

 すべての始まり。
 もちろん、バッハが最初に書いたカンタータなどではなく、実は、コラール・カンタータ年巻(第2年巻)の最後の1曲。
 いわば、この後の受難曲に続くエンディングですが、同時に新しい物語の始まりでもあります。

 この曲に1番がつけられたのは、たまたま旧バッハ全集で最初に出版されたためなのですが、この曲を真っ先に出版したかったという気持ち、ものすご~~くよくわかる。



 ところで、バッハは、受胎告知日と棕櫚の日曜日が重なった時にだけ、カンタータを書いています。

 ですから、このBWV1は、棕櫚の日曜日用のカンタータ、と言ってもいいわけですが、
 そのようなカンタータは、もう1曲だけあります。
 ヴァイマール時代のこれも名作の誉れ高いBWV182
 こちらは、棕櫚の日曜日の方にウェイトを置いた内容になっています。

 今度の日曜日(3月28日)が、棕櫚の日曜日。そして、受難週、復活節、と続きます。

 桜の開花も、この寒さでちょっと足踏みしてるようで、今年は、桜が満開の復活節となりそうですね。すばらしい。



  *    *    *    *    *    *



 と、いうわけで、長かったレント(受難節)も、もう終わり。
 その間カンタータのお知らせが必要無いので、最近聴いて印象に残ったCDでもゆっくりご紹介しようと思っていたのですが、ほとんど何もせぬまま、現在にいたってしまった。
 そう言えば、夏休みも、8月31日まで、宿題はほっておく子どもだった。

 とりあえず、今日は取り急ぎ、この冬~早春に聴いたバッハのCDから、
 気に入って、よく聴いた代表的なものだけ、かんたんにあげておきます。

 (ベスト3+α)



  ☆    ☆    ☆



 ちょうどこれからの季節にぴったりな、ジャケットも曲目も演奏も何もかもが、春爛漫、といった感じのCDがリリースされましたので、そのCDから。



 マニフィカト BWV243&小ミサ曲ト長調 BWV235 ほか

    ピエルロ&リチェルカール・コンソート


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 待望のリチェルカール・コンソートのバッハ・ラテン語作品集。
 バッハのラテン語作品は、ロ短調ミサを頂点として、カンタータとも深くかかわる大傑作ばかり。
 マニフィカトはもちろん、小ミサ曲の1曲1曲にいたるまで、はずれが無い。
 ただでさえ曲がよいところに、ジャケットの絵そのものみたいな、とびっきり清明かつ流麗、ほがらか~~な演奏が、ぴったりとマッチ。正に、春うらら。
 だけど、基本的に土台がしっかりしていて、気合は十分、しめるところはきちんとしめている。

 昨年の春は、ヘンデルイヤー特集で、やはりリチェルカール・コンソートの、バッハとヘンデルのカンタータ&コンチェルトが仲良く1曲ずつ収められている、何とも春らしいステキなCDをご紹介しましたが、リチェルカール・コンソートの晴朗な音色は、いかにも春にぴったり。

 現在、わたしにとって、ほぼ理想的な演奏を聴かせてくれるのが、リチェルカール・コンソート。
 こうなると、いよいよ、「これまで誰も聴いたことが無い」ような、ロ短調ミサへの期待が否が応にも高まりますが、  とりあえずは、その渇望を満たすのに十分なCD。


 関連するオルガン曲も収録。
 さらに、ルネ・マルタンさん製作のDVDのおまけつき。ピエルロさん、なぜか、いつも、ボールペンで指揮してます。
 お懐かしや、のカルロス・メナさんも参加。あいかわらず美しい歌を聴かせてくれます。


 あ、もちろん、OVPPです。
 OPVV、ミサ曲の録音はよくありますが、マニフィカトは初めて聴いた。(と思う)
 冒頭合唱など、迫力十分。元気いっぱい、力強く歌う生の声がストレートに伝わってきて、むしろ合唱版より迫力があるくらい。
 この次元になると、「OVPPは音のからみがよくわかるが迫力が・・・・」なんていう時代は、とっくに去った感がある。
  

 Mr ラ・フォル・ジュルネ、日本でも皆勤賞ののピエルロさん、
 テーマがショパンでは、さすがに出番無しと思いきや、今年も大登場、なぜかヘンデルのアリア集をやるみたい。
 これはこれでよさそうだな。


 HMVのページ



  ☆    ☆    ☆



 バッハ・カンタータ集 (BWV62、45、192、140)

    トーマス・フォラン指揮、パブリック・ミュージック


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 アメリカン・ソロイスツ~モントリオール・バロックの鮮烈な系譜を見てもわかるように、実は、北アメリカ大陸は、ことカンタータに関してはたいへんな名盤の宝庫なのですが、
 また一つ、とびっきりの名盤がリリースされました。
(録音自体は、5年ほど前。レーベルが日本初上陸、ということみたい)

 色彩感が豊かな上に、見通しのよい透明感も兼ね備えていて、BWV140などの超名曲も、とても新鮮に響きます。
 前回記事にしたBCJライブの曲目ではないですが、BWV140以外は、さまざまな時期、形態の、それぞれのカンタータを代表するような、とても凝った渋い選曲。

 おなじみ、コラール・カンタータのBWV62は、コラールカンタータを代表する名品。
 芳醇極まりない大作、BWV45
 とにかく傑作の多い「カンタータの奥の院」、使途不明190番代カンタ-タの中でも、特に輝きに満ちたBWV192
 ともに後期の神品です。
 この収録曲を見ただけで、やる気が感じられる。
 特に、BWV192に関しては、CDも少ないこともあり、最高の名演のひとつと言っていいのでは。

 カンタータ入門にも最適の一枚です。

 同じメンバーによる、小ミサ曲集(こちらは全集)も同時にリリースされ、これもよさそうですが、ちょっと手が回りません。


 * 追記

 葛の葉さんからいただいたコメントにあるとおり、
 かつてブリュッヘンの名盤などで名唱を聴かせた、マックス・ヴァン・エグモントが参加している点にも注目。
 エグモントさん、74歳だそうですが、心に響く歌声には、まったく衰えが感じられません。
 これは、いよいよ、ミサも聴きたくなってきた。
 


 HMVのページ

 HMVのページ (小ミサ)



  ☆    ☆    ☆


 
 平均律 BOX

    ロジャー・ウッドワード


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 このウッドワードさんというピアニストの演奏は聴いたことありませんでしたが、オーストラリアのピアニストで、現代音楽の演奏に定評があるみたい。

 第1巻、第2巻ともに、バッハ手書きのそれぞれの表紙がジャケットになっていて、それらが、これまたステキな古書風のBOXに収納されていること、
 さらに、第2巻がCD3枚におよんでいること、
 この2点が気に入って、衝動買い。
 つまり、ほとんどジャケ買いに近い状況でしたが、思わぬ掘り出し物でした。

 第2巻がCD3枚におよぶ名盤と言えば、真っ先にバレンボイム盤が思い浮かびます。
 バレンボイム盤は、スケール雄大、極めてドラマティックな表現で、ゆっくりとした楽章はじっくりと壮重に、速い楽章は全力疾走するかのよう、その結果として、表情豊かな音楽がたっぷりと3枚にわたって記録されたわけですが、
 このウッドワード盤は、ただひたすら、じっくりとていねいに、バッハの書いたすべての音に魂をこめて弾ききった結果、3枚になってしまった、という感じか。
 もちろん、速いところは速いですが、総じてゆったり。
 しかも、現代作品の得意なピアニストらしく、音楽はどんなに遅くても、モダンなビートに貫かれ、決してもたれることがない。
 そして、何よりの魅力は、何と言っても、とびぬけて音が美しいこと。
 バッハの鍵盤曲は、美しい音で、きちんと弾きさえすれば、あとはもう何もいらない、
 例えば、ピアノならではの表現を研ぎ澄ますことなど、本来まったく必要無い、ということを、雄弁に物語る演奏。

 バレンボイム盤とほぼ同時にリリースされた、バレンボイム盤の対極にある、普遍的なもう一つの名盤、アシュケナージ盤のスケールを、さらに雄大にしたような演奏、と言ったらいいだろうか。

 この前、オルゲルビュヒラインの名盤としてご紹介した、フォクルールのオルガン全集とともに、この冬から早春にかけて、座右の名盤として、もっともヘビー・ローテーションだったセット。

 わたしは、昨年話題になったポリーニ盤よりも、断然こちらが好き。
 ポリーニ盤も、ピアノという楽器ならではの表現としては、圧倒的、誰も到達できない高みに到達してるのかもしれないけど。
 そもそも、第1巻はほとんど聴かないし。
 前述のバレンボイム盤も、ピアノとしての表現でなく、音楽そのものの表現が豊かなので、気に入ってるのだ。
  

 HMVのページ



  ☆    ☆    ☆



 最後に、バッハじゃないけど、ちょっとすてきなCDをご紹介。


 レノン&マッカートニー・オン・バロック

    エリック・ミルンズ&レ・ポレアド


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 古楽器によるビートルズ編曲ものは、あのリフキンのものが復刻され、話題になりましたが、
 これは、今日はじめにご紹介したCDのピエルロさんと並び立つ、OVPPの雄、モントリオール・バロックのミルンズさんによるもの。

 昨年のビートルズフィーバーに便乗した企画盤、と思いきや、ミルンズさん、ビートルズが大好きで、過去に3枚もCDを出していて、これはその選りすぐりのベストCDとのこと。

 選曲、演奏、ともになかなか。何かしている時などにかけておくと、とても気持ちがいい。
 このCDが、そのへんの、よくある編曲イージーリスニングCDと決定的にちがうのは、ミルンズさんの他のカンタータの演奏でもそうであるように、通奏低音が実にしっかりしていて、しかも凝っていること。
 つまり、やはり生きたビートが感じられる。
 はじめ、何でまた古楽器でビートルズを?と思ったけど、そうなると、普通の現代楽器によるイージーリスニングオケよりもはるかにロックなわけだ。

 このCD、ミルンズさんのだから購入したわけで、まさか自分が、このような編曲ものをわざわざ買うことになるとは、夢にも思わなかったが、けっこういいものだと思った。


 それにしても、こうして聴くと、はじめからバロック名曲みたいに聴こえる。
 ビートルズ、恐るべし。ポールの曲はもちろんだが、ジョンの曲も意外としっかりしている。

 ジャケットのりんごも凝ってると言えば、凝ってる。
 だけど、これ、問題ないのか?


 
 <厳選CDリリース情報>


 ヘレヴェッヘのカンタータ選集(廉価シリーズ)

 詳細は、こちら


 バッハ・ライプツィヒ大学式典用祝祭音楽集(ライプツィヒ大学創立600年エディション)

 600年!とは、びっくりですね。
 必然的に、世俗カンタータ名曲集、みたいな内容になるわけですが、
 世俗カンタータというと、あまりなじみの無いジャンルだと思いますが、この機会に、ぜひ。
 わたしは、世俗カンタータこそ、バッハ道の最後の到達点だと思ってます。
 バッハの教会カンタータの中でも、特に魅力的だと思う曲は、世俗カンタータを原曲としている場合がけっこう多いのです。
 名作中の名作、BWV198、さらに、あのクリスマス・オラトリオの原曲も聴くことができます。
 バロック・オペラのファンで、バッハにもオペラがあればよかったのに、とふだんから思ってらっしゃる方も、必聴。


 ガーディナーSDGシリーズ・合唱名曲集(アンソロジー)

 SDG巡礼シリーズの白熱のライブの中から、冒頭合唱の名曲中の名曲を選りすぐったアンソロジー。
 大指揮者ガーディナーの気合いが特に反映されるのは、やはり冒頭合唱なので、演奏も総じてすさまじいもの。
 その名も「永遠の火」。このタイトルは、もちろん、BWV34から。すごすぎる・・・・。
 アリア集などに比べると、ちょっとヘビーすぎる気がしますが、勇気と体力とのある方はぜひ。
 もちろん、BWV127は入ってないけどね。一番すごいのに。


 バッハ・アット・カザルスホール

 カザルスホールが誇るオルガンの専任オルガニスト(オルガニスト・イン・レジデンス)を、1999年以降10年にわたってつとめてきて、このアーレントによる銘器のことを誰よりも知りつくしている水野均さんによるバッハ名曲集。
 現在のカザルスホールのオルガンの音を永遠に記録するばかりでなく、曲目を見ると、バッハのオルガン曲入門CDとしても最適。
 カザルスゆかりの「鳥の歌」付。



 昨日、急遽記事を書いたため、時間が無く、今回はこれだけ。

 今後、古楽編、ヘンデル編、そして再びブルックナー編、さらにその他のCD編、と続く。(予定)



 早春の花々


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 春を待つ公園


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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2010年03月29日 19:23
FolanのCDお求めになりましたか。さすがにお目が高い、というか目ざとい。
今度の演奏会で192番もやるので、その練習のために、リリング、ロッチュ、そしてこのCDを何度も聴きました。明朗快活な演奏で、一緒に歌っていると楽しいですね。(テンポがかなり速いので、最初のうちは「待って待って」という感じでしたが)なぜかこのCDが歌いやすいと思ったら、半音低いので高い方が楽なのでした。
ところでこのCDでは、往年の名バス、マックス・ヴァン・エグモントが歌っているのも一つの話題ではないでしょうか。1936年生まれと言うことですから、今年でもう74歳。まだまだ達者なところを聞かせています。
2010年03月30日 10:59
 葛の葉さん、おはようございます。

> テンポがかなり速いので、最初のうちは「待って待って」という感じでしたが

 ご自分で実際にお歌いになると、CDを聴いた感想なども、だいぶ変わってくるのでしょうね。
 今後は、そのような視点からの感想、さらには、演奏を体験なさった上での曲の感想などもお聞かせいただけるのを、楽しみにしております。

 192番のすばらしさには、葛の葉さんの掲示板で気付かせていただきました。
 基本的に暦にそってカンタータを聴いてきたデメリットで、この曲をはじめとする使途不明曲は、あまり聴きこんでいなかったのです。
 この曲については葛の葉さんもそれまではあまり印象には無かったということで、こんないい曲がまだ眠っていたのか、と一緒に驚いた記憶がありますが、
 その192番を、今度実際にお歌いになるとは、意外な展開に、少々驚いております。(笑)
 練習がんばってください。
 BWV192、(もちろん他の曲も)多くの方に聴いていただきたいので、演奏会当日が近づいてきたら、また宣伝させていただきます。

 エグモントさん、74歳ですか!
 ちょっと記事が長くなったので、エグモントさんのことは書かなかったのですが、これはきちんと書いておくべきでした。追記させていただきます。

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