フランドル楽派からシュッツまで、古楽の王道~今年前半に聴いたCDから<古楽編1>【三位一体節後第3】

 今度の日曜日(6月20日)は、三位一体節後第3日曜日。

 カンタータは、
 初期の名作、BWV21
 コラールカンタータ(第2年巻)のBWV135
 の2曲です。

 過去記事は、こちら↓

 <三位一体節後第3日曜>

    始まりはいつも Overture(BWV135他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    三位一体節後第3日曜(BWV21、135)



  *    *    *    *    *    *



 春のCDご紹介、ようやく第3弾。
 はじめは、年末年始に聴いたCD、ということで、バッハ、ブルックナー、と書いてきましたが、
 さぼっていたら、いつの間にか、今年ももう半分が終わろうという季節に・・・・。

 従って、ちょっと古いCDも混じってますが、これから何回かにわたって、集中的に書いていきたいと思います。
 今日は、古楽CDを中心に。



 デュファイ 聖ヤコブのミサ

    アンサンブル・レヴェルディ(声楽&器楽アンサンブル)


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 これまで、ルネサンスや中世のミサ曲の演奏は、アカペラが主流でした。
 純正のアカペラ・ハーモニーが、癒やし的な効果もあってもてはやされたこともありますが、
 器楽による即興的伴奏が行われていた場合もある、と想定されるものの、それらがどんなものだったのかはまったく見当がつかないので、あえて演奏しないのが、「古楽的」には正しい、
 という、まったく妙な考えが主流だったせいもあります。 

 器楽を使用しているデュファイのミサ録音も、古くはデビット・マンロウやテルツ少年合唱団などの歴史的名盤から、カンティカ・シンフォニアの超絶名盤にいたるまで、実は、これまでにもけっこうあることはあるのですが、
 これらも、基本的には、フィドルやトロンボーンなどで声部を補強しているものがほとんどでした。

 そんな中、ついに、待ち焦がれていた録音が登場。

 イタリアの、とびっきり明朗な声楽&器楽アンサンブルがやってくれました。
 フィドルやトロンボーンはもちろん、その他、リコーダー、リュート、ハープなどによる、夢のように美しい器楽伴奏に彩られた、画期的なデュファイのミサ曲です。

 基本的には、一部の声部を器楽が受け持つ、という、シャンソンやモテトゥスでよく行われている方法を、ミサにまで拡大する形で、器楽を使っています。
 聖ヤコブのミサは、デュファイのミサの中では、これまでこのブログでもご紹介してきた錚々たるミサに比べると、ずっと初期のミサなので、その分、まだ中世のモテトゥス的雰囲気が色濃く、それゆえに、無理の無い伴奏が可能だったのかもしれませんが、
 いずれにしても、美しい器楽伴奏付のデュファイのミサが聴きたい、という長年の夢が、ついにかないました。

 これを契機に、この種の録音がどんどん増えればいいのに、
 と、心から思います。

 でも、後期の大作ミサの場合は、ほとんど無駄な音がなくなっているので、
 逆に言うと、それ以上音を付け加えるスキもない、ということで、なかなかむずかしいかな?



 ビュノア ミサ「ロム・アルメ」

    カンティカ・シンフォニア


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 カンティカ・シンフォニアと言えば、何と言っても、デュファイのシャンソンから、モテトゥス、ミサにいたる超名盤の数々が思い出されますが、
 モテトゥスやシャンソンは、GROSSAレーベルの比較的新しい録音ばかりなのですが、ミサについては、ストラディバリウス・レーベルの少し古い録音しかありませんでした。
 (それでも、たいへんな名盤なんですが)

 そのカンティカ・シンフォニアが、GROSSAレーベルから、「ロムアルメ」をリリースすると聴き、
 「おおおっ!ついに、新ミサシリーズ開始か!しかも、ロムアルメ!ひょっとすると、全集化!?」
 と、泣いてよろこんだところ、
 よく見たらビュノワでした。

 まあ、ビュノワも、デュファイとともに、ロム・アルメの起源に深くかかわっていて、元祖ロム・アルメと言うべき作曲家の一人、
 それどころか、ロム・アルメのメロディが歴史上最も早く登場する写本は、特にビュノワの曲が多く収められている、「メロン・シャンソニエ」という美しい装丁の写本で、(何でもイタリアかどこかの王女様の結婚祝いとのこと)
 かつてロム・アルメに関して、そのあまりにも高度な対位法適用力から、従来の俗謡説に対し、大物作曲家による創作説が浮上したこともあり、
 もしかしたら・・・・、ということも、無きにしもあらず。
 
 そういう背景を無しにしても、十分すぎるほど美しい名曲ですし、演奏は、もちろん、息を飲むほどの完成度。
 おすすめ。
 でも、やはり、このCDがすばらしければすばらしいほど、デュファイの新盤が聴きたい。

 なお、こちらで、メロンシャンソニエのシャンソンの、リコーダー編曲版をお聴きいただけます。
 このような曲集では、何と言っても、あのシャンソニエ・コルデフォルムが有名ですが、こちらもそれに負けないすばらしい曲集。遠い幻の時代の、大ベストヒット曲集です。
 ルネッサンスの貴族ではないわたしたちには、このような曲集をまとめて聴く機会というのは、ほとんどありえませんので、たいへん貴重です。



 ジョスカン・ミサ曲全集 第1集

    ヴォーカル・アンサンブル・カペラ


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 今年のはじめにライブを聴いて感銘を受けた、ヴォーカル・アンサンブル・カペラ
 その時の記事の中でもふれた、ジョスカン・ミサ曲全集!

 その時に書いたこの団体の特性が、ここでも最大限に発揮されていて、実に「カラフル」なルブロワット。
 ルブロワットはもう何年もの間、完璧な一糸乱れぬアンサンブルばかりがもてはやされてきたので、
 いかにルブロワットと言えど、しょせんは「歌」の積み重ねなのだ、ということをあらためて感じさせてくれる。見事な出来栄えだと思います。
 まだ1集しかリリースされておらず、先は長く厳しいかもしれないけれど、なんとかがんばってほしい。

 ミサの元ウタのブリュメルのモテトゥスやオケゲムのシャンソンも収録されていて、
 そこでは、うっとりするほど美しい花井さんのハープも聴ける。

 その調子で、できればミサも器楽伴奏付で・・・・、
 と、思うけど、ルブロワットなんか、ますます難しいんだろうな。



 ブリリアント シュッツ全集(第2巻) Kleine Geistliche Concerte ほか

    Messori,Cappella Augustana


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 華やかなでカラフル、趣向をこらした演奏が次々とリリースされ、今やちょっとしたブームとも言えるバロック音楽。
 その中にあって、シュッツの音楽は、地味で何となくモノクロのイメージがあるかもしれませんが、無駄なものをはぶいたその純粋な音楽は、意外なほど近代的で、まさにバッハの源流の本流と呼ぶにふさわしいものです。
 わたしは基本的に、バッハ以外のバロック時代の作曲家はほとんど知らないのですが、その中で、シュッツは、イギリスの何人かの作曲家とともに、普段から親しんでいる特別な作曲家の一人、ということになります。
  
 シュッツの作品は膨大な数が残されていますが、Kleine Geistliche Concerte (小教会コンチェルト集)は、その最高峰というべき作品。
 戦時中の極限状況の只中、というやむを得ぬ外的な要因からではあるものの、シュッツの音楽のエッセンスそのものが形になったかのような、珠玉の曲集で、
 数人の歌手+bcという最小限の編成から、研ぎ澄まされた音楽美がダイレクトに伝わってきて、何度聴いても決してあきることがありません。
 それどころか、聴けば聴くほど、心に迫ってくる。
 この作品に関しては、前述のように合唱曲というわけではないですが、シュッツの作品を合唱で歌うことは、バッハを歌うのにも負けない、至福の体験なのでは。

 Kleine Geistliche Concerte に関しては、これまで、ヴィルヘルム・エーマンの古い全集盤、それとヘレヴェッヘの選集盤で楽しんできました。
 エーマン盤は、歌手たちの堂々たる名唄、からみあいが見事、
 ヘレヴェッヘ盤は、やはりトップ歌手の一糸乱れぬアンサンブル、リュートを中心とした器楽伴奏が織り成す純白の表現が魅力でしたが、
 現在進行中の、ブリリアント・シュッツ全集に含まれるメッソーリ、カペラ・アウクスターナの演奏は、イタリアのグループならではの明るく鮮烈な演奏で、この曲集に新しい光を当てる名演だと思います。

 既発売の第2巻には、前半のみが収録されていて、これまでそれでがまんしてきましたが、
 この度、ついに、待望の後半収録の第4巻がリリースされます。

 この曲集、後半が特にすばらしいだけに、今から楽しみ。

 もちろん、Kleine Geistliche Concerte 以外の曲も、どれもみなすばらしい。
 ちがいはよくわからないけど。(笑)


 第4巻に関する情報(HMVのページ)


 それにしても、ブリリアント、
 以前ご紹介したフランドル楽派ミサ曲集(古い録音の復刻)といい、先般リリースが開始されたヘンデルのカンタータ全集(新録音)といい、
 今や売れ筋の一部バロック音楽一辺倒となりつつある、古楽CD業界の穴を、見事に埋めるようなよい仕事をしてくれる。



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カンタータ日記・奥の院

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宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

ichi
2010年06月18日 12:20
Papalinさんのページからやってきた流れモノです。
デュファイのミサ曲のCDいいですね。欲しくなっちゃいました。

さて、いままでも時々ブログはのぞかせていただいていましたが、コメントは初めてです。音楽と関係ない話題ですが、チェブラーシュカお好きなんですね。私もDVDもってます。実は吉田久美子さんがひと時経営していたCheb Cafe(神保町の方)が職場のすぐ近くで、しょっちゅうランチに使っていました。客の少ないゆるーい感じのお店なんですが、無駄に元気がみなぎっていて、大好きな場所でした。商売はあんまりうまくないけど、センスだけはむちゃくや良い。とにかく個性的な人です。
2010年06月19日 01:16
 ichiさん、はじめまして。
 デュファイのミサ、最近は、気を失いそうになるくらい美しい演奏が、どんどん、というか、細々とリリースされています。ぜひお聴きになってみてください。

 チェブ、いいですよね。もちろん、DVD、持っています。
 Cheb Cafeには結局行かないままでしたが、わたしたちがチェブという存在を知ったのも、ひとえに吉田さんのおかげで、もうそれだけでセンスのいい方だというのはわかります。
 
 最近はゆるキャラブームですが、チェブはその上を行く「うらぶれキャラ」だと思います。そこがたまらないのですが、これまで何度かブームのきざしを見せながら、(ジブリが手を出しても)決して大ヒットしないところが「うらぶれキャラ」の本領発揮ですね。
ANNA
2010年06月28日 06:03
Noraさん、こんにちは。

はじめましてのコメントから、すっかりご無沙汰してしまいましたが、いつも楽しみに拝見しています。

ご紹介のデュファイの「聖ヤコブのミサ」、聴いてみたいと思います。

2010年06月29日 23:08
 ANNAさん、こんばんは。
 このCD、曲自体の完成度は、後期のミサに比べるとまだまだかもしれませんがまったく新しい楽器の使い方をしていて、ちょっと危険なくらい美しいです。
 考えてみれば、ANNAさんのお好きなマンロウも、ミサ「ス・ラ・ファセ・パル」などの演奏で、朗々と器楽をかぶせていましたが、このCDも含め、今の古楽演奏の豊かな成果も、そのようなマンロウが築いた土台あってのことだと思います。

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