映画「パイレーツ・ロック」、浜辺の少年たち登場~今年観た映画から1【三位一体節後第20日曜日】

 今度の日曜日(10月17日)は、三位一体節後第20日曜


 カンタータは、

 初期のBWV162
 第2年巻(コラールカンタータ)、またまた出ました名作、BWV180
 4年目のこれまた名作ダイヤログ・カンタータ、BWV49

 の3曲です。


 過去記事は、こちら。↓


 <三位一体節後第20日曜>

    豊穣の大地・実りの秋(BWV180、49他)
    三位一体節後第20日曜(BWV180、49他)
    秋深し、憂愁の名作カンタータ・たまにはきちんと曲目解説(BWV180)



 今日は、久しぶりに映画の話題。



 地デジ対応で、ケーブルTVが観られるようになったので、ケーブルTVで映画や昔のドラマ、スポーツばかり観ている。
 年頭に、今年はたくさん映画館で映画が観たい、などと書いたものの、映画はもっぱらTVでの鑑賞になり、映画館にはこれまで記事にしてきたようなスペシャルな映画以外は、行っていない。
 同時に、レンタルもほとんどしなくなった。
 それで十分、というか、とてもじゃないけど観きれないほど。

 映画はやはり劇場で観なくては、とは思うものの、
 古い名作映画などはもちろん、意外と新しい見逃していた映画、気にはなっていたけど、映画館に行ったり、レンタルしたりするほどでもない、と思って観なかった映画などを次々とやってくれるので、ありがたい。

 今後、そういう状況の中で観たさまざまな映画の中から、心に残ったものの極めて個人的なメモも書いていきたい。



 まずは、レンタルして観た数少ない作品の中で、最も印象深かった作品から。


 「浜辺の少年たち」の出てくる映画です。


 「小川の流れる映画」から派生した、

 「どメジャーミュージシャンの歌が流れるちょっとマイナーな映画」シリーズ。

 ディラン、ビートルズ、と続けてきましたが、今回は、ビーチ・ボーイズを含む60年代ロックが主人公というべき映画。



 パイレーツ・ロック THE BOAT THAT ROCKED

    2009年、イギリス・ドイツ合作、リチャード・カーティス監督作品 


▽ 「パイレーツ・ロック」  サウンドトラック

画像




 カーティス監督は、有名な「ラブ・アクチュアリー」の監督。
 他に、これまた有名な「ノッティングヒルの恋人」や「ブリジット・ジョーンズ」シリーズの脚本なども手がけているとのことで、このような経歴からすると、ベタな恋愛映画専門、みたいな印象。
 「ラブ・アクチュアリー」は、ちょっと前に観ましたが、音楽の使い方が効果的ですばらしく、実は、意外と気に入ったものの、何だか内容が恥ずかしかったので感想などは特に書かずにいました。

 この「パイレーツ・ロック」は、そんなカーティス監督が、自らの音楽的ルーツとも言える60年代ロックそのものをテーマに掲げ、正面から取り組んだ、痛快極まりない「音楽映画」。

 ストーリー展開などは、「ラブ・アクチュアリー」と基本的には何ら変わることなく、かなりベタなような気もしますが、60年代ロック自体がある意味強烈なインディーズ的雰囲気にあふれているため、映画全体から、何とも味わい深いB級な香りが醸し出され、かなり硬派な映画ファンの方にも評判いいみたい。


 基本的には、やはり「ラブ・・」と同じ群像劇で、とにかく出てくる人すべてが、外観も含め、60年代からそのままタイムスリップしてきたみたいで、楽しい。
 みんな、その役になりきって、舞台となる海賊(ラジオ)船に乗り込み、勝手に生活してるのをそのまま撮ったかのようなラフさがたまらない。

 実際、淡い恋の夢やぶれた主人公を、船の仲間二人がなぐさめる印象深いシーンなどは、
 台本も、何の演技指導も無く、二人には好きなように慰めさせて、主人公にも、好きなようにこたえさせたらしい。
 それでこんなすてきなシーンになってしまうのだから、キャストがどれだけ海賊船のメンバーになりきっているかがわかる。

 この後、愛すべきキャラの「シンプル・サイモン」が、やはり恋愛のこと(結婚問題)で、それどころではないとんでもない目にあうのだが、
 その時は、この二人も、もはやサイモンと一緒に音楽を聴いて、一緒に泣くしか、慰める術がなかったんだけど。

 このようなエピソードからもわかるように、とにかく登場人物全員が、いくらなんでもこれはありえないだろう、というくらいの超個性的なキャラも含めて、自然で魅力的。
 しかも、いやなやつが一人もいない。

 リーダー的存在のDJ、ヒゲ男爵も、始めは、やることなすこと何だか悪ぶっていていけすかないやつだ、と思っていたが、
 あまりにもかわいそうな「シンプル・サイモン」のために、命がけで戦ったり、ラストが近づくにつれて、大活躍、誰よりも音楽を愛する純真なやつだということがわかった。


 あとは、やはり、音楽!
 始めから終わりまで、60年代のロックンロール(解説等には、ブリティッシュ・ロックと書いてあることが多いが、アメリカのロックも含む)がほとんど絶え間なくかかり、
 しかもそれらすべてがていねいに、実に見事に扱われ、監督の音楽に対する愛情、監督はほんとうにこの映画が撮りたくて撮りたくてしかたなかったんだな、というのが、ひしひしと伝わってくる。

 全編を通じて、海賊船上で気ままに暮らすDJたちと、日常の暮らしの中で海賊ラジオを聴いて泣いたり笑ったりするイギリス中のリスナーの様子が絶えず交互に映し出され、その間を共通のロックンロールのナンバーがつないでいるのだ。

 それらのどこか懐かしくも楽しいシーンの数々を見ながら、次々とかかるごきげんなナンバーを聴いているだけでも、ハッピーになれる。



 登場するナンバーは、変に凝ったものでなく、ごくごく一般的なヒットソングが多いみたいだが、
 さすがに、ここぞというシーンでは、ちょっとすごいのがかかる。

 例えば、上記の主人公が慰められるシーン。
 これは、それまでどこかお客さん的だった主人公が、ほとんど初めて船の仲間と心をかよわせ、名実ともに、船の乗組員となる重要なシーンだと思いますが、
 ここでは、レオニード・コーエンの So Long,MARIANNE がかかる。
 これはコーエンのデビュー・アルバム(Songs of Leonard Cohen)に含まれる曲ですが、
 すでに、後のフィル・スペクターとのかかわりを暗示するかのような、
 3連音リズム&女声コーラス炸裂の、すばらしいミドルテンポのロックンロール。

 その後、海賊ラジオ局を違法とする法案が可決されてしまうのだが、それに屈することなく海賊放送を続け、文字通りの海賊船となることを、全員で決意するこれまた重要なシーンでは、
 スキーター・デイヴィスの The End Of The World
 これも、やっぱり3連音リズムの、おなじみ、大ヒットナンバー。なんて、美しい。

 「音楽があったからこれまで生きてこられた。音楽のためだったら、死んだってかまわない」
 ・・・・シンプル・サイモンの言葉。

 そして、な、なんと、
 クリスマスのシーンでは、
 ダーリン・ラブの CHRISTMAS(BABY PLEASE COME HOME)がかかってしまいます。
 もう、それだけで、涙、ぶわ~~っ。
 フィル・スペクターの高笑いが聞こえる。



 さて、ビーチ・ボーイズの曲ですが、映画のラスト、クライマックスでかかります。
 夜の北海に沈みゆく船の中、最後の瞬間まで放送を続けるべくスタジオに残ったひげ男爵が、すべてのリスナー、音楽ファンに向けて送った、感動的な別れのあいさつの後、
 最後の最後にかけるナンバーが、
 Wouldn’t It Be Nice なのです。
 単なる「ビーチ」をはるかに飛び超えて、ラブ&ピースの楽園そのものを思わせるような不思議なイントロ、
 そして、どこまでもやさしいけれど実は力強いヴォーカル。

 ふつうだったら、ここで満を持してビートルズでもかけそうなところですが、
 ここでビーチボーイズをかけるところが、この監督のすごさ。
 あのポールでさえもが恐れをなした、ビートルズ以上にビートルズらしい?中期ビーチボーイズ、ブライアン・ウィルソンのすさまじさ、正確につかんでいる。

 ここでも、もちろん、涙、ぶわ~~っ。
 何だか、スペクター系の曲ばかりで申し訳ありませんが。



 その他にも、もちろん、キンクス、ザ・フー、そしてストーンズなどなど、時代を代表する名曲満載。
 印象的なシーンは必ず音楽と結びついている。
 正に、「音楽」が主人公の「音楽映画」です。


 従って、サウンドトラックは、もう無条件におすすめ。60年代ロック満載の、豪華2枚組み。
 ジャケットも、60年代のレコードジャケットそのものみたい。レコード盤を模したCDもかっこいい。


 ・・・・ただ・・・・!!

 何と、一番かんじんの、上記コーエンの So Long,MARIANNE が、サントラに収録されていません。

 なぜだっ!!

 いろいろな大人の事情があるんでしょうけれど、上記シーンが印象的だっただけに、サントラを購入してがっくりした方、多いのでは。

 もちろん、Wouldn’t It Be Nice は、ちゃんと入っています。

 ビーチボーイズなんか、脳天気なだけじゃ・・・・、
 といまだに思ってる方、これを機会に、Pet Sounds を全部聴いてしまいましょう。
 わたしは、Wouldn’t It Be Nice のあの不思議な響きのイントロを聴いてしまうと、このアルバムを最後まで聴かずにはいられなくなります。

 
 さて、この映画にはビートルズが1曲も出てきません。
 さまざまな感想を見ると、ビートルズをあえて使わなかった点を称賛しているものが多いようですが、カーティス監督、決してビートルズを軽視しているわけではありません。おそらく使いようが無かったんでしょう。
 使うとしたら、やはり上記ラストのクライマックスしかないのでしょうが、あそこは、ぜったいにビーチボーイズの方がいいっ!
 ビートルズを軽視していない証拠に、エンドタイトルに錚々たる大ヒットレコードのジャケットが次々と映し出されるのですが、その一番最初にビートルズが出てきます。


 以上、書いてきたとおり、非の打ちどころの無いすてきな音楽映画なのですが、
 最後に、一言だけ。

 なぜ、エンドタイトルの歌が、80年代のデビット・ボウイの Let’s Dance なのか?????  



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  • パイレーツ・ロック 2009年英独 ☆4.0(5点満点)

    Excerpt: 2010/11/17 Mhb vol.1145  リチャード・カーティス監督。フィリップ・シーモア・ホフマン、トム・スターリッジ、ビル・ナイ出演。  1966年イギリス。政府は、ロックは人々の心を.. Weblog: 映画に浸れ。 racked: 2010-11-21 10:34

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