今年の愛聴盤から・ジャズの王道(~島唄、ゲゲゲまで)【三位一体節後第25日曜日】

 あした、11月21日は、三位一体節後第25日曜日。


 カンタータは、

 第1年巻のBWV90

 第2年巻(コラールカンタータ)のBWV116

 の2曲。

 少し気が早いですが、BWV116の、しみじみとした3重奏を聴くと、今年もそろそろ終わりか、という気分になってしまいます。

 実際、11月28日は、顕現節第1日なので、今年は、この日、三位一体節後第25日まで、となります。

 
 過去記事は、こちら。↓

 <三位一体節後第25日曜>

    お気に入りのアリア6・暦の終わりに 心に染みる3重唱(BWV116)



 と、いうわけで、今年も押し迫ってまいりましたので、「今年前半に聴いたCD」改め「今年の愛聴盤から」。
 この前のバッハ・古楽編のつづき。

 今回は、ジャズ等のCD。かなり前のCDも含まれますが、今年やたらかけたCDばかり。

 ジャズのどメジャーな王道を行くCDばかりで、今さら何か書くまでもないようなものばかりになってしまった。
 でも、いいものはいいのだ。



 Sophisticated Ladies

    CHARLIE HADEN&QUARTET WEST そのほか大勢。


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 錚々たるビック・アーティストとの共演、コラボやサポートで、数々の名盤にやたら名前が出てくるヘイデン。
 このブログでも、そのような形のCDは、何度かご紹介したことがあると思いますが、
 クァルテット・ウェストは、その名の通り、西海岸の香りあふれるヘイデン自身のバンド。
 実は、もう20年以上もの間不動のメンバー(ヒギンズが亡くなってしまったため、dsのみロドニー・グリーンに交代)で続いている、ヘイデンの極めて「プライヴェート」な、心のふるさと、みたいなバンド。

 QW名義では、久しぶりのリリースとなる今回のアルバムですが、
 このアルバムも(表の顔は)、ビック・アーティスト、しかも、超豪華なビック・アーティストたちとの、コラボ盤。 

 つまり、タイトル通り、メロディ・ガルドーやノラ・ジョーンズら今をときめく若手から、カサンドラ・ウィルソンなどの大ベテラン、果ては、クラシックのルネ・フラミングまで、現代を代表する歌姫、「ソフィスケイテッド・レディ」を惜しげもなくフィーチャリングした、夢のように豪勢なスタンダード集。
(あと2人だけなので、全員書いてしまおう。あとは、あのダイアナ・クラールとルース・キャメロン(ヘイデンの奥さん)の2人が登場)

 パーカーやクリフォード・ブラウンの「ウィズ・ストリングス」を思わせる、どことなく痩せた懐かしい音色のストリングスで開始されるこのスタンダード曲集、
 ヘイデンは、力強く歌姫たちを支え、歌姫たちも、その最高のサポートを得て、心のままに、独自のファンタジーを展開する。
 時には、ヴォーカルと、驚くほどメロディックなベースとの親密なデュエットも。
 このあたりは、これまでもずっと触れてきた、バッハのカンタータとジャズとの共通性を、最高の形で聴くことができる。
 これで、悪いはずがなく、ある程度予想できたものの、予想をはるかに上回る見事さ。
 もちろん他のバンド・メンバーとの息もぴったり、新メンバー、グリーンのイキのいいパーカッションも、演奏全体にフレッシュな勢いを加えていて、なかなかよい。
 ストリングスも上品かつ必要最小限で、これは、ピアノのブロードペントのアレンジ・指揮の勝利。


 ・・・・と、これだけでも、このアルバム、今どきめずらしいくらいの、ジャズの王道をゆくステキなスタンダード曲集で、大推薦なのですが、

 この、「ソフィスケイテッド・レディ」、実は、これだけではなかったっ
 このタイトルには、もう一つ、意味があった。


 実は、このアルバムにおいて、上に書いてきたディーバたちとの共演の歌モノは、奇数ナンバーのみ。
 その間に挟まれた偶数ナンバーには、QWのとびっきりごきげんな演奏が配されています。

 その最初の曲、つまりアルバムの2曲目が、エリントンのSophisticated Ladies。
 そして、それ以降、QWの演奏は、エリントン、ベニー・グットマンから、パーカーらのビ・バップ、マイルスを経て、オーネット・コールマンにまでいたる、それこそ「ジャズの王道」の流れをトリビュートするような曲目、内容になっているのです。
 
 この演奏が、どれもすばらしい。
 はじめのSophisticated Ladiesだけは、エリントンに敬意を表してちょっとストリングスを使っていますが、
 そのほかは、どこまでもストレートな、カルテットの本道をゆく堂々たる快演。

 力強く疾走する音の奔流から、かつてのジャズ・ジャイアントたちの幻影が立ち現れる。

 
 中でも、わたしにとって涙モノだったのは、やはり最後に置かれた、

 オーネット・コールマンの BROKEN SHADOWS

 この、虹のように次々と色合いを変える魔法のようなバラード・ナンバーによって、
 本アルバムの、まるでフルコース・ディナーみたいに盛りだくさんな、でも、一本きちんと筋の通ったすべてが、完結する。


 ・・・・と、思ったら、(また・・・・?)
 これ、日本盤のボーナスだって。
 やはり、スタンダード・ナンバーやスィング、ビ・バップなどの、その他の曲にはなじみにくいという判断なのか。

 だけど、すべては、ヘイデンに向かって流れ込んで、ヘイデンの血となり、肉となっているものなのだから、いいと思うんだけど。

 と、いうわけで、必ず国内盤をゲットすべし。ちょっと割高だけど。



 JASMINE

    KEITH JARETT&CHARLIE HADEN


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 もう1枚、ヘイデンがらみのアルバム。こちらは、キースとのデュオです。
 もう10年ほど前になりますが、キース・ジャレットが長い闘病生活から復帰して、最初にリリースしたCDが、ソロのスタンダード集、The Melody At Night,With You でした。
 待ちに待ったキースの新譜、しかもソロのスタンダード集、ということで、どきどきしながらCDをかけましたが、
 聴こえてきたのは、タイトルどおり、愛すべきメロディーたちを、ただひたすらていねいに、心を込めて弾いた、という音楽、
 それは感動的な復活の喜びの歌、感謝の歌であり、大絶賛で迎えられ、ヒットもしましたが、
 そこには鋼のビートは無く、それはわたしが好きなキースのジャズではなかった。
 この時以来、完全復調したキースのソロ・スタンダードを聴いてみたい、というのは、わたしの宿願になりました。

 そして、10年の月日が流れ、今やキースが完全復活をとげ、そればかりかさらなる高みに到達しようとしていることは、みなさんご存知の通りですが、
 ここにきて、意外な形で、その願いがかなうことになりました。

 それこそが、このキース&ヘイデンのデュオ・スタンダード集、「ジャスミン」。

 ソロではありませんが、ここで演奏しているのは、キースでもあり、ヘイデンでもある、「一人の」ジャズ・ジャイアント!
 それほど、二人の息はぴったり。

 ヘイデンは、完全にキースのもう一本の腕となって、キースの音楽を何倍にも大きく豊かにふくらませています。
 かと言って、決して、単に、サイドマン的な役割に徹しているのではなく、これこそがヘイデンの天才のなせる業で、
 かつてビル・エヴァンスなんかがやったように、共演者同士が手に汗握る激しいインタープレイをくりひろげる、というのではなく、共演者と同じベクトルに向かって、次々と限界をつきやぶり、想像もできなかった次元の扉を押し広げてゆく、という、真の意味での「共演」のあり方。

 だけど、
 実は、ここでも、すさまじいインタープレイが繰広げられています。
 ただそれをやってるのは、キースの右手と左手。
 しかもこんなにも対位法的ですさまじいインプロビゼーションの応酬は聴いたことがない。
 そして、それを豊かに押し包んで、ぐんとスケールの大きな、ある意味不変的な音楽にしているのが、他ならぬヘイデンのベース、というわけ。
 
 あのパット・メセニーとの「ミズーリの空」と同様の奇跡が、ここでも再現されている。
 これは、あの名盤に並ぶようなアルバムなのでは。

 バドの「ジャズ・ジャイアント」以来、半世紀を経て、ようやくこの世界に鳴り響いた、「ボディ・アンド・ソウル」の名演。
 しかも、バドとは、「360度」異なる、キースならではの革新的な「対位法ジャズ」!

 ~ 360度異なる、と書いたのは、
   まったくちがうんだけど、結局は同じ方向を向いて、「ボディ・アンド・ソウル」の心を表現している、
   というようなニュアンスを伝えたかったんだけど、やっぱりわかりにくいな。なかなか難しい。



 長くなったので、あとは、一言ずつ。



 The Bill Evans Album


▽ ビル・エヴァンス?どこかの会社の経理のおじさんにしか見えないが。
  後期ビル・エヴァンス、演奏がどんどんすごいことになってゆくが、ご自慢?のジャケ写はビミョウ化してゆく。

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 わたしは、バド・パウエル命!で、ビル・エヴァンスを、それほど愛聴しているわけではありません。
 ただ、後期のビル・エヴァンスは、さすがにちょっと見逃せない。
 このCDも、ウワサには聞いていて、ずっと聴いてみたいと思っていたもの。
 なかなか入手困難だったものが、ついにリリースされたので、試しに買ってみたのですが、買ってよかった。

 ピアノの申し子、ビル・エヴァンスが、何を思ったかエレキピアノに向き合っている異色の一枚。
 エレキピアノの「ワルツ・フォー・デヴィ」を誰が聴きたいのか?と眉をひそめる方がほとんどだとは思いますが、
 ビル・エヴァンスの最大の特徴の一つである、現代ピアノの表現力をフルに駆使した「詩情あふれる」世界が、少し苦手、というか、すなおにその世界にひたることのできないわたしにとっては、
 彼の音楽そのもの、生のメロディーやリズム、共演者に敏感に反応して次々と繰り出されるフレーズの数々、など、彼のほんとうにすごいところがストレートに心に飛び込んできて、たまらなかった。
 やはり、この人は天才。
 今さら、何言ってんの?だとは思いますが。



 南米のエリザベス・テーラー

    菊地成孔(ペペ・トルメント・アスカラール)


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 こちらも入手困難だった名盤の再リリース。

 ヴォーカルや朗読なども効果的に加えた、どこか熱にうなされた幻のような、ひどくやるせない、世紀的な美しさに満ちたアレンジが、何とも言えずよい。

 そのある意味精密に計算されつくした、構築的な世界の中で、最後には、菊池さんの自由奔放な轟音プレーが炸裂するわけだが、相当ものすごいことになってるにもかかわらず、その世界観がまったく損なわれないどころか、その甘美な夢の世界がどんどん果てしもなく広がってゆくところがすごい。



 以下は、これまで、ライブや映画の記事に登場した、関連CD。どれもこれもたいへんな名盤。
 くわしくは、それぞれにリンクした記事参照。



 歌ぬ泉

    登川誠仁


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 ライブ記事は、こちら



 廻る命 (めぐるいのち)

    古謝美佐子

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 ライブ記事は、こちら



 「パイレーツ・ロック」 THE BOAT THAT ROCKED サウンドトラック


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 映画の記事は、こちら


 ところで、上の記事の中には書かなかったことですけど、

 この映画を観たとき、何かデジャ・ヴュみたいなものをビシビシ感じた気がしたのですが、
 ようく考えたら、その原因は、昨年ご紹介した、鈴木慶一さんのアルバム、

 シーシック・セイラーズ登場! Pirate Radio,Seasick

 でした。

 サブ・タイトルなんかまったく同じ、しかも、CDコンセプトも、ある海賊船放送局の一日の放送、という体だったような気がするが、どちらかがどちらかにインスパイアされた関係にあるのかな。



 と、慶一さんの名前が出たところで、

 最後に1枚、慶一さんがらみのとっておきのシングル。

 ゲゲゲの女房の歌

    ムーンライダーズその他


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 水木しげる大(おお)先生については、わたしもこれまで何度か記事を書いてきましたが、
 空前のゲゲゲブームの今年を締めくくる映画、「ゲゲゲの女房」が、ちょうど本日公開されました。
(映画は、朝ドラのずっと前から企画され、制作されていたもの)

 映画版、「ゲゲゲ」の音楽を担当しているのは、な、な、何と、鈴木慶一さん。(サントラは未聴)

 主題歌は、ムーンライダーズ全員(+ゲスト・ヴォーカルの小島麻由美)で、ゲゲ、ゲッ、ゲッ、ゲッ、と熱唱。
 ちょっと前にご紹介したしょこたんに続き、ゲゲゲ・ソングに新しい歴史を刻みました。
 
 それにしても、よくあることではありますが、記事を書いた大好きな人たちが、こうして次々と結びついていくのは、なんだかとてもうれしい。
 まあ、なるべくしてなった、必然ではあるけど。


 さて、このCD、もちろんゲゲゲも楽しくて最高ですが、やはり、一番の聴きものは、最後に収録された、

 くれない埠頭2010

 14分近くにおよぶ、それぞれがそれぞれなりに年をとった、現在ムーンライダーズの「くれない埠頭」。

 何か書き始めると、おそらく収拾がつかなくなるので、もう何も書きません。

 ヒットした曲を、スロー・ヴァージョンにアレンジして、ライブで演奏したり、自己カヴァーCDをリリースしたりするのは、昔も今もよくある話ですが、
 雰囲気は出やすいものの、音楽的に原曲に匹敵する完成度を達成するのはなかなかむずかしい。

 そんな中、

 ジョン・レノン(+P.スペクター)のBe My Babyに始まり、

 あがた森魚さんの「ヒロシ君のロンリー・ローラー」

 佐野元春の「アンジェリーナ」と続く、

 ”My Favorite スローヴァージョン”の系譜に、強力な1曲が加わることになりました。



 ところで、あがたさん、この頃しばらく聴きに行ってないけど、どうしてるだろ。



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

Nacky
2010年11月25日 00:28
今も涙が止まらぬ訳。。。。
こんなに素晴らしい音楽を創り、残して下さった方がいる。
その音楽を今日まで継承してきて下さった人々がいる。
そして、その音楽を今も演奏し、未来へと伝えていって下さる
沢山の人々がいる。。。。

音楽は人が創り、人が繋ぎ、人を結ぶ。。。。
この時空を遥かに超える尊い人の営みを通して、
純粋で美しく、そして温かい人の心に触れた時ほど
この世に生を受けたことへの喜びに勝るものはない。。。。
なんて、長~いイントロですが、(笑
昨日、サントリーホールに、皆川先生、磯山先生、樋口先生、
小林先生、即ちバッハ四天王が終結するという、とんでもない
イベントが開催されました。
バッハは椎名先生、マグダレーナは天羽さん、それに合唱は
中世音楽合唱団と、役者陣も錚々たる顔ぶれで、最後は、聴衆も
一緒になって、コラール「起きよ、夜は明けぬ」を献歌し
バッハに感謝の祈りを捧げました。
済みません、また、このようなところで。。。
Nacky
2010年11月25日 06:07
済みません。また噛んでしまいました。
終結→集結でした。
2010年11月25日 17:14
 Nackyさん、バッハ関係のコンサートの感想、いつも、ありがとうございます。

 残念ながら、このコンサートは知りませんでした。
 四天王揃い踏み(笑)ということで、何事が起こったかと、インターネットで調べてみましたが、これはなかなかすごいコンサートでしたね。
 そもそもタイトルの「アンナ・マクダレーナが愛した夫」からして泣かせます。
 しかも、演奏者がバッハと奥さんに扮し、皆川先生のお話+指揮のもと、演奏をまじえた物語が進行し、それに、他の3人の先生が解説を加える・・・・。
 なんでまたこんなことになったのかよくわかりませんが、何て豪華な・・・・!
 小林先生以外は、TVやラジオで活躍している方々ばかりなので、その中で、小林先生、どんな感じだったのかな、と、興味深くもあり、行けなくて残念でした。

 それにしても、椎名さんはオルガン全曲シリーズなど、大活躍なさってますが、コラール歌唱つきのその演奏には定評があるようですね。
 いつか、一度聴いて見たいと思います。
 貴重な情報、ありがとうございました。
Nacky
2010年11月30日 23:08
Noraさま

こんばんは。
そうでしたか、、、、
Noraさまのことですから、ご存知かと思っておりました。
振り返ってみますと、たしかに、事後のご報告が多いような、、、、

次回から、気になる演奏会・イベントがありましたら、
予め、お知らせ致します。

それにしても、何と贅沢なことでしょうか。。。
皆川先生の指揮、椎名先生のオルガン伴奏で、
天羽さんやゲストの先生方、そして会場の皆様と一緒に
サントリーホールでバッハが歌えた幸せを、今もこうして
噛みしめております。
2010年12月01日 22:31
 Nackyさん、こんばんは。
 すっかり仏像にうつつをぬかし、チェックを怠っておりました。(笑)
 まったくふがいないことで、今後は貴重なコンサートを見逃すようなことがないよう、より精進したいと思います。

 それにしても、皆川先生、80を超えてすでに久しいはずなのに、ますますお元気なご様子、何よりであります。
 思えば皆川先生には、バッハだけでなく、バロックをも飛び超え、遠くそのはるか昔の音楽にまで、誘っていただきました。
 樋口先生からは、暦にそってバッハのカンタータを聴く楽しみを教えていただきましたし、磯山先生のバッハ事典は、今でもバッハ鑑賞のよい指針です。
 そして、小林先生の研究にふれて、バッハその人を、ものすごく身近でリアルな存在として感じるようになった気がします。

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