今年の愛聴盤から・クラシックの王道(古典派、ロマン派、ロシアもの、近代フランスもの各一枚づつ)

 今年もまた、12月8日がめぐってきた。

 ジョンの特番などは、以前ほど多くなくなってきたので、
 今夜は、宇多田ヒカルの、無期限活動休止前の横浜アリーナ・コンサート WILD LIFE のインターネット生中継を、何気なく見ていました。
(すごい時代になったもんだ)

 本人のヴォーカルの録音を多用した、妙に対位法的アレンジが多く、
(単に「ハモる」という次元を超えた、歌詞も含めての完全な対位法で、わたしなどには実に聴き応えがあるものでした。)
 あいかわらず自由で即興性に満ちた歌い方ながらも、実はすべてが凝りに凝って造りあげられている、という、何だか不思議なコンサートでしたが、
 さすがはカヴァー好きで知られるヒカルさん、そんな中、予想通り、ジョンの歌も登場。

 Tシャツにギターという姿で登場したアンコール第1曲目。
 ジョンの(ほんんとはビートルズの、だけど、やっぱりジョンの)アクロス・ザ・ユニヴァース。

 これが、それまでの凝ったアレンジから一転、ストレートかつシンプルな原曲に近いアレンジで、
(ということは、もちろん、P.スペクターの呪いから解きはなたれた、「パスト・マスターズ2」や「ネイキッド」方向のアレンジ。ストリングスもちょっと聴こえた気がするけど、必要最小限)
 歌も真っ向勝負、まっすぐに歌いきった、心に突き刺さるような「名演」で、
 この夜で一番よかったような気がする。
 おしまいの呪文のくりかえしのところで、ちょっと疲れたか、ヘナヘナとなったけど。
 アクロス・ザ・ユニヴァースのカヴァーでは、デビット・ボウイの気合い入りまくり絶唱ヴァージョンと並ぶような、印象深いものとなりました。

 これによって、今年は、思いがけない形でジョンを偲ぶことができた。
 無期限活動休止前の、なかなかすてきなプレゼント。

 
 ジョンは、1980年に40歳で亡くなったので、今日でちょうど没後30年、今年は生誕70年です。
 生きていれば70歳か。ヨーコといっしょに、きっとそのへんをウロウロしてたんだろうな。 



 さて、
 華美音曲禁止期間恒例の、CD愛聴盤のご紹介。
 バッハ、ヘンデルほか古楽関係は、またじっくり記事を書くとして、
 今回は、それ以外の、一般クラシックCDで、今年よく聴いたものをちょっとだけ。



 ハイドン ロンドン交響曲集

    ミンコフスキ ルーヴル宮廷音楽隊


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 今年の前半に、来日演奏会のライブ映像を観て、あんまりよかったので、CDも買ってしまった。
 器楽曲の可能性を追求し、それまでの声楽中心の音楽界を、器楽中心という現在のクラシック音楽界にも通じる形に、180度変換させてしまったハイドン。
 そのハイドンが行き着いた最後の境地を示す究極の曲集、
 しかも、演奏がミンコフスキ、
 これで悪いわけがない・・・・。

 ・・・・はずなんですが、
 ハイドンの音楽が充実すればするほど、
 ミンコフスキの演奏がはじければはじけるほど、
 人間の声、「歌」がないまま、「歌」が始まらずに、そのまま終わってしまうのが、なんだかさびしくて、
 ひどい時には言いようの無い空虚感さえ感じてしまう。

 まあ、交響曲はもとをただせば序曲であり、それを筋金入りの舞台人、ミンコフスキがとびっきり生き生きと演奏しているのだから、その後に何かが始まる期待感が否が応にも高まるのは、しかたないのかもしれませんが。
 ただ、これは、完全にわたしの感覚がおかしくなってるのでしょう。
 客観的に考えれば、曲、演奏とも、文句なしのCD。


 結局、何だかんだ言って、このCDは、何かしているときや寝る前など、このCDは、一番よくかけたような気もする。
 去年のバリトン全集も同じだったが、ハイドンは、「いつもそこにある音楽」として、最適なのかも。



 チャイコフスキー&リスト ピアノ・コンチェルト 

    アリス=紗良・オットヘンゲルブロック&ミュンヘン・フィル


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 オットが聴きたかったわけでも、チャイコフスキーのピアノ・コンチェルトが聴きたかったわけでもない。
 もちろん、ヘンゲルブロックが目当て。

 キラキラとして瑞々しいオットのソロを、ヘンゲル兄さん、妙に熱血なオケで力強く包み込んでいて、なかなか聴かせてくれます。

 だけど、特に、冒頭の有名とびきりキャッチーなところなんか、オケを朗々と響かせるのはいいんですが、何だか不思議なうねり、というか、癖があるような・・・・。
 何だか、張り切りすぎておかしなアクセントをつけて歌う喉自慢のお兄さんみたいな・・・・。
 まあ、そんなことを感じるのは、わたしだけかもしれません。そもそも、この曲、ほとんど聴いたことないので、ふつうどうなのかわからないので、あまり強いことも言えない。

 いずれにしても、とにかく何をやっても普通ではすまさないヘンゲル兄さん、
 ヘンゲルブロックがブルックナーを演奏する、という、ちょっと前だったら、夢の夢の、というか、ほとんど考えもしなかったようなことが、ついに現実になりつつあるわけですが、(あるいはもう演奏したか)
 きっと、おもしろいんだろうな。

 一押しの「ブルックナー指揮者」として、真っ先にヘンゲルブロックの名を上げる日が来る?



 ウェーバー&R.シュトラウス管弦楽曲集 

    シノポリ&ドレスデン・シュターツカペレ


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 以前書いた、バレンボイム&CSOのブルックナー全集と並ぶ、最近のタワ・レコによるナイス復刻の1セット。
 シノポリさんは、わたしがこれまで一度だけ、ウィーン・フィルのブルックナーを聴いた時の思い出の指揮者。
 いつか書いた、シューマンの「楽園とペリ」やシェーンベルクの「グレの歌」、そしてこのセットのメイン、「ヨセフの伝説」など、なかなか収拾がつきにくい、巨大作品を、きちっとまとめることに関しては、この人の右に出る者はなかった。
 「ヨハネの伝説」と言えば、昨年くなった若杉弘さん&都響の名盤、R.シュトラウス/バレエ音楽全集も忘れられないが、
(「お菓子のクリーム」やクープランのクラブサン曲による舞踏組曲のなんと楽しいことか!) 
 このシノポリのセットは、それとともに、シュトラウスの隠れた名曲の魅力をたっぷりと伝えてくれた、名盤中の名盤。
(「ヨセフ」の他には、「火の消えた街」、「影の無い女」組曲などを収録。これらもめちゃくちゃ聴き応えあり。ウェーバーというのも、ふだんあまり聴いたことないが、おもしろかった。)


 ついでに、こちらが、若杉さんの「ヨセフの伝説」
 これはもう、シュトラウス・ファン必聴。
 写真は、古いDENON盤だが、こちらも、最近、タワーから復刻。

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 昨年末か、今年のはじめ。NHKで、若杉さんが指揮した、マーラー8番の映像を見た。
 室内楽的と言っていいほど、細部にまで神経が行き届き、きちっと整理されながらも、歌にあふれたすばらしい演奏だった。
 シノポリと同じく、途方も無いような大曲を、見事に演奏していたんだろうな。もっと聴いていればよかった。



 ピレネーの太陽 ~セブラックほかVn作品集

    ジェラール・プーレ(Vn)、深尾由美子(P)


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 セブラックのピアノ曲は大好きで、フォーレのピアノ曲、歌曲とともに、わたしにとってはなくてはならない、かけがえのない音楽です。

 古くはドワイヤンの名盤から、舘野泉さんの全集まで、さまざまな演奏で楽しんできましたが、
 このようなVn曲があるのは、知りませんでした。

 ほんの数曲だけですが、タイトルの「ピレネーの太陽」どおり、南欧の大気そのものを感じさせるような、美しい名品だと思います。
 これを聴いていた夏、7月は、ツール・ド・フランスの月で、ピレネーの美しい風景を舞台にしたすばらしい戦いを見てきたので、なおさら感慨深い。

 演奏がまた、音楽にふさわしく、香り豊かなもので、すばらしい。

 ピアノの深尾さんは、セブラックのスペシャリスト。
 おなじみのピアノ小品も同時に収録されていますが、それらを聴けば、この人がどれだけセブラックの音楽を自分自身の音楽としているかがわかるというもの。
 他にピアノ曲集等あれば、ぜひ聴かねば。

 そして、さらにすごいのが、Vnのプーレさん。
 実に南欧らしい、明るく美しい、何ともたまらない音で、音楽の有する香りをさらに馥郁たるものにしている。
 この方が、栄光の「フランスのVn」の系譜を確かに引き継いで、完全に自分のものにしていることは、余白に収録された、フランスVn音楽の名曲の数々を聴けば、明らか。



 一般のクラシック音楽はこんなところだろうか。
 なんだか、たいせつなのを忘れてるような気もするが、とりあえず、今思い出せるものだけあげておきました。



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この記事へのコメント

2010年12月09日 23:10
また今年も巡ってきました。12月8日ですねえ。
>生きていれば70歳か。ヨーコといっしょに、きっとそのへんをウロウロしてたんだろうな。
多分、日本によく居着いていて、”本当にそのへん”をウロウロしていたような気がします。
2010年12月12日 03:25
 たこすけさん、今年ももうこんな季節になってしまいましたね。
 バッハの亡くなった日はよく忘れてしまいますけど、この日だけは忘れられません。
 何と、30周年だそうで。
 あれだけの人ですから、その30年の間にどれだけのこと(まぬけなことも含めて)をしてくれたろうか、と想像すると、今でも残念でたまりません。

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