世俗カンタータのある生活2(続き) 祝!BCJ世俗カンタータサイクル開始!新年の超名曲BWV134a

 続きです。
 このシリーズ、ヘンデルのイタカンとともに、ついでにバッハの世俗カンタータもご紹介していくことにしているのですが、

 今回は、ケーテン時代の新年慶賀用カンタータ、

 BWV134a

 そうです。
 もう2月ですが、年が始まったばかり?だし、前回の序章に続く本格的な始まりの回ということもあるので、
 わたしが最も愛するカンタータの一つ、復活節のBWV134の原曲をとりあげます。



 バッハの生涯における「器楽の季節」、ケーテン時代、その中でも絶頂期とも言える1719年の新年祝賀行事用に作曲されたカンタータ。

 ケーテン時代のおびただしい数の器楽曲は、バッハの中核をなす人気曲として幅広く知られ、愛聴されていますが、当時の音楽は声楽が基本、当然、名高い器楽曲と並ぶ魅力にあふれた世俗的な声楽曲もたくさん作曲されています。
 それらは特定の機会のための音楽が多いということもあって楽譜も失われ、現在では、ほとんど演奏される機会もありませんが、幸い、失われてしまった協奏曲なども含めて、ライプツィヒの教会カンタータ(主に第1年巻)の中で、それらの多くを聴くことができます。

 BWV134aは、その中の最高峰とも言える作品の一つで、しかも、楽譜も復元されているため、実際に演奏可能。
 ただ、教会カンタータのBWV134自体がそれほどメジャーな曲ではないこともあってか、BWV134aもめったに演奏されることはありません。

 従ってCDもほとんど皆無ですが、一部全集等にひっそりと?含まれていますので、お持ちの方は、だまされたと思ってぜひお聴きになってみてください。もし全集等お持ちでない場合はBWV134でもかまいません
 はじめから終わりまで、「バッハの初めて聴く最高のコンチェルト」を聴く思い。
 音楽を聴く真の幸福を味わえます。



 それでもCDが無いよ、という方に、朗報!!

 以前、ちらっとお知らせしましたが、BCJ(=バッハ・コレギウム・ジャパン、念のため)が、来年のカンタータ全集完成!に合わせて、今年から、世俗カンタータ全曲サイクルを平行して開始するとのこと。
 とリあえずはじめは、年1回づつ演奏してゆくようですが、その記念すべき第1回目、有名な狩りのカンタータとともに、このBWV134aがとりあげられます。
(世俗カンタータも、基本的に作曲順?)

 やはり世俗カンタータを原曲とするBWV30で、(こちらはずっとずっと後年の作品ではありますけど)BCJは圧倒的な名演を聴かせてくれたばかり。(こちらの記事
 CDで聴くBCJのBWV134は、まだ真摯で敬虔な初期カンタータの雰囲気を多少ひきずっていて、わたしにとってあまりおもしろいものとは言えなかったのですが、今のBCJなら、大いに期待できる!

 もちろん、初期の狩のカンタータもいいですが、このBWV134aも、BWV208の「刺身のツマ」だなどと思わないで、ぜひぜひ大注目していただきたいと思います。


 7月14日(木) PM19:00~

 バッハ:世俗カンタータ全曲シリーズ Vol.1

  <狩りのカンタータ>

        @ 東京オペラシティ コンサートホール:タケミツメモリアル

 * 以上、東京定期 

 公式HPは、こちら

 ・・・・ちょっと宣伝が早すぎたか・・・・。


 
 音楽の内容についてまったく触れてませんでした。

 もし、上記コンサートに行かれる、という方も、予習にご参照ください。


 セレナータ(世俗カンタータ) 「日々と年月を生み出す時間は」(日々と歳月を作り成す時間は) BWV134a


 過去の年月をもたらしてくれた「時間」(過去・テノール)と、将来をもたらしてくれる「神の摂理」(未来・アルト)とが登場。両者が会話して物語を進める典型的ダイヤログカンタータ。
 
 ご領主様におかれましては、過去(古い年)には、「時間」によって、多くの恵みがもたらされましたが、未来(新年)には、「神の摂理」によって、さらに大きな恵みがもたらされるでしょう、という他愛の無い内容。
(だから演奏されないんだな。でも、音楽は最高)

 今回は、特にのせる写真などが無くてさびしいと思い、一応世俗カンタータということなので、ヘンデルのオペラ等の記事にいつもわかりやすい相関図をのせているREIKOさんにならって、それほど必要ないような気もしましたが、わたしも相関図を描いてみました。
 描いている途中から、やはり意味が無いんじゃ・・・・、という思いがひしひしひしと湧き上がってきましたが、せっかく描いたので載せます。
 わたしのはペイントなので、絵がぐしゃぐしゃですいません。

画像


 不要どころか、ますますわかりにくくなった・・・・?
 時間とか摂理とか、いかにも哲学的で高尚な感じだが、まあ、この絵みたいに他愛が無い内容だということ。
 ケーテン候、これを聴いてて、こっぱずかしくくなかったんだろうか。


 音楽は、それぞれの歌うアリアの他、中間に華麗なデュエット、終曲には豪華な合唱付。

 教会カンタータ稿(1723年初稿)では、音楽はレチタティーヴォも含めてそのまんま、歌詞も元の歌詞の流れを多少残しながらちゃちゃっと中途ハンパに直して上演。
 後年の再演稿(1731年稿)では、さすがに反省したか、レチタティーボをまるごと作りなおして、現在一般的にこちらが演奏されるようです。

 なお、パロディの際には、後半の、「神の摂理」に歌うレチタティーヴォと短調アリアを丸ごとカット。
 従って、このアリア等を聴くことができるのが、オリジナル版を聴く一番のメリットということになります。
 やはり、「コンチェルト」には、短調楽章もないとね。

 しかし、全曲の白眉は、やはり、教会稿と同じく、第4曲デュエット。
 セレナータ版では、「時間」と「神の摂理」が直接合間見える、戦いの音楽。(それにしてもすごい戦いだ)
 前回のBWV125の記事でもチラッと書いたとおり、
 わたしは、バッハのアリアの中にたまにある、
 「風に立ち向かい、仲良く手をとりあってどこまでもまっすぐに進んでゆく」、みたいなタイプのアリアが大好きで、
 この曲は、その頂点に位置づけられると言っていいと思っています。
 颯爽とした弦の響きが「戦い」を表しているようですが、もともと両者は二つで一つみたいなもの、過去と未来はつながっている。だから、これは、仲の良い夫婦喧嘩みたいなもの。
 その証拠に、歌詞の中でも、口をそろえて仲良く、「この愛すべき戦いが~」と歌っています。
 よって、上記のようなタイプのアリアと捉えてまったくおかしくないと思いますし、妙に劇的な戦いでなく、どこか親密な感じが漂っているため、教会カンタータへの転用もムリ無く行えたのでしょう。

 よく、解説等で、「戦い」とありますが、たわむれ、というか、じゃれあってる、ということですね。


 ただ、いくらムリ無いと言っても、
 ケーテン侯の宮廷の、華やかな新年の宴で演奏された音楽、貴族等の超上流階級で無い限り普通は聴けないような音楽を、一般市民が集う教会で、ほとんどそのまんま演奏したんだから、考えてみれば、市当局も市民もとまどったことでしょう。
 バッハって・・・・。
 でも、市民にとっては、そのうちに大きな大きな楽しみ、それこそ生きる糧になっていったのでは。


 バッハというと、いかにも信仰の人、堅物というイメージがあります。
 実際に、信仰の人でもあり、度を超えたがんこ者でもあるんですが、
 カンタータは、正にそれを象徴するような代表作で、すごいんだろうけど近づきがたい、と思ってらっしゃる方、多いことでしょう。
 それは、決定的な誤解です。
 
 確かに、ヴァイマール時代の初期作などは、圧倒的な完成度を誇る、真摯極まりない、そして一瞬のスキもない、大勢の方のイメージ通りのまごうことなき「宗教曲」ばかりですが、
 もし、カンタータがそんな曲ばかりだったら、わたしなどは、絶対にカンタータの世界に足を踏み入れることはなかったでしょう。
 そういう意味で、「すべてはBWV134から始まった」のでした。



 今回、わたしが聴いたのはコープマン全集版。

 世俗カンタータ全集ではなく、教会カンタータ全集のBWV134が含まれる巻(エラート盤では第10巻だった)に、おまけとして収録されています。
 この全集は、ヴォルフ教授の監修のもと、こういうややこしいのがほとんど入ってるのが魅力。

 BWV134も含め、デュエットが聴きどころなだけに、アルトがカウンターテナーなのがちょっと好みではありませんが、曲調はまさにコープマンにうってつけ。

 BWV134も、快速調で飛ばしたきびきびと美しい名演なのですが、世俗カンタータの方は、それよりもずっとゆったりとしたテンポで、情緒豊かに歌い上げた絶品。正にセレナータ。  
 はじめから終わりまで、即興性豊かに美しい音を響かせる、コープマン自身のチェンバロも聴きどころ。


 BWV134については、ロッチュさんのトマスコア盤と、リリング全集盤が圧倒的名演。こちらなど参照。



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2011年02月10日 20:09
こんにちは。
早速、134a、コープマン盤で聴かせていただきました。
デュエットも素敵だし、ギャラントなチェンバロが活躍している短調のアリアも良いですね。最後が合唱付きで盛り上がるところも充実していて、1曲聴いたあとの充実感もあります。
この曲の入っている10巻目、聴いていたつもりだったのですが、134、134aとも覚えがないのですねえ。いかんです。

今後とも、世俗カンタータのご指南も、よろしくお願いいたします。
Nacky
2011年02月10日 22:55
Noraさま
30年前ですね。「バロック音楽の楽しみ」で、皆川先生がよく「毎日
バッハの音楽が聴けたケーテンの王様は本当に幸せ!」とおっしゃ
ってましたが、その皆川先生のお話しが毎日聴ける立教大学の学生
はもっと幸せだと羨ましく先生の講義に潜り込もうと企てこと等を
懐かしく思い出しました。
その数年後、社会人になってから夢叶い先生にお目にかかることが
できましたが、、、、(笑
それにしても、REIKOさまは、どうやってあの相関図を描いておら
れるのでしょう??
勿論、Noraさまのも、イイ感じです。(笑
2011年02月12日 14:03
ガーディナーで134番を聴いています。
♪auf,auf,auf,auf~♪が頭から離れなくて困っています。
2011年02月13日 00:11
 garjyuさん、こんにちは。
 短調のアリア、いいですよね。教会稿でカットされてしまったのが残念です。ちょっと長かったんでしょうね。あるいは、歌詞を書きかえるのがめんどうになったか。
 コープマンのチェンバロも、すごいです。あまりCDが無いので比べられませんが、かなり即興的なのではないでしょうか。

 カンタータは数が多いので、わたしは、一度聴いただけでは忘れてしまうことの方が多かったです。特に何曲かいっぺんに聴くと、絶対にごちゃごちゃになりました。(笑)
2011年02月13日 00:21
 Nackyさん、こんにちは。

> 皆川先生がよく「毎日バッハの音楽が聴けたケーテンの王様は本当に幸せ!」とおっしゃってましたが、

 そして、王さまが聴くような音楽を毎週聴けたライプツィヒの人たちはほんとうにしあわあせ!
 さらに、それをCDやコンサートで好きな時に聴けるわたしたちもしあわせ!
 ・・・・ですね。
 そしてそれというのも、皆川先生や小林先生など、研究者の方々の努力の結果です。

 REIKOさんの相関図、うまいですよね。
 わたしはマウスで描いてるので、思い通りに線が弾けず、四苦八苦しております。でも、それも味があるかな、と。(笑)
2011年02月13日 00:25
 たこすけさん、ここんとこは、世俗カンタータそのまんまです。
 ライプツィヒの人たち、びっくりしたでしょうね。
 ちなみに、たいていのコンチェルトの第1楽章は、♪auf,auf,auf~って歌えますね。

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