「ツリー・オブ・ライフ」~まだまだ続く、小川さん映画

 小川さん映画(=バッハの音楽が流れる映画)、日本では先週金曜日に封切られたばかりの、最新の話題作も観てみました。

(ネタばれ、今回はたぶん無いと思うけど、ちょっと自信がありません)



▽ 名古屋熱田神宮の神木1

  あまりにも有名な、推定樹一千年の大楠。

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 「ツリー・オブ・ライフ」 THE TREE OF LIFE

    2011年 アメリカ テレンス・マリック監督作品


 親子のつながり、家族のつながりが正面からきちっと描かれている、なかなかの秀作。

 説明がまったくない、時系列的にもバラバラなコラージュ風な作風、ミクロの世界から大宇宙や銀河の世界まで、さまざまな象徴的なシーンの挿入など、ともすれば映画の手法自体に興味が行きがちだが、
 誰の記憶にも少しは重なる部分があるような、そんなごくふつうの一家族の長い長い歴史が、実にていねいにつづられている。

 そのややこしい映画の手法から、<21世紀の「2001年宇宙の旅」>(なんじゃ、そりゃ)などとも例えられてもいるようだが、
 両者は次元がまったく異なる、似て非なるもの。
 「2001年」は、筋金入りのハードSFで、そこには家族の愛など、余分なもの?はこれっぽっちも描かれてはいなかった。
 コンピューターが、人間の産み出した「子ども」でなければ、の話だが。
 また、宗教性、精神性ということで共通するのでは、という意見もあろうが、
 「2001年」はどこまでも科学的な話で、あの世界は最も宗教とはかけはなれた世界だとわたしは思っている。

 「このような家族の絆が綿々とつらなって、世界を形作っているのだ」というようなメッセージからすると、
 むしろ、ちょうど次に感想を書く予定の、「プリンセス・トヨトミ」の方にずっと近い気がする。
 こんなこと言ったら、熱烈なマリック監督のファンからは怒られるかもしれないけど。
 

 そのような家族愛を描くのであれば、意味ありげでもったいぶった細切れシーンや挿入シーンなどが何で必要なんだ?と思われる方も多いかもしれないし、実際わたしも、途中何度も早く話を進めて~、と思い、終わりの方など、いつまでやってるんだ~、とちょっと困ったが、
 そのような何気ない家族の営みにも、創造主の意思が存在する、ということが言いたくて言いたくてしかたないのだろう。
 タイトルの「生命の木」からもわかるように、旧約聖書的世界と関連が大きいのだろうが、めんどうなのでここでは触れない。よく知らないし。
 そんなこと知らなくても、まあ、だいたい楽しめる映画になっていると思う。

 そもそも、その「もったいぶった挿入シーン」自体が圧巻なのだから、何も文句が言えなくなる。
 微生物やクラゲファン、草花や樹木などの植物ファン、恐竜ファン、、巨大建築ファン、世界の辺境ファンや絶景ファン、惑星や銀河、宇宙ファンにはもうたまらないだろう。
 わたしもそれらのほとんどが何よりも好きなので、たまらなかった。
 くらげが雪のように静かに降り注いでくるシーンや、美しくも恐ろしい馬の首星雲が画面いっぱいに大きく映し出されるシーンなどには、陶然となった。



▽ 名古屋熱田神宮の神木2

  境内の森の最奥、泉のある清水社付近の巨木。  

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 あと、もちろん、音楽ファンにもたまらないだろう。
 わたしがこれまで観た映画の中では、エンド・クレジットに出てくるクラシック音楽の数が最も多いものの一つかもしれない。
 これもまた、圧巻。

 使われ方も実にこっている。
 rbhhさんの記事にも詳しいが、ここではわたしなりに印象的だったものを。

 常に厳格な支配者であろうとする父親(ブラピ)が、子どもたちにむりやり聞かせるレコードが、トスカニーニのブラームス4番、しかもパッサカリア。いかめしい・・・・。
 それに対し、子どもが自分で聞くレコードは、ピアノ版「展覧会の絵」
 父親がいない時に、お母さんと子どもたちがまぶしい緑の中で生き生きと遊ぶシーンには、「モルダウ」がかかる。
 さらに、ほんとは音楽家になりたかったこの父親、またまた子どもたちにむりやり、教会のオルガンでバッハ(トッカータとフーガニ短調)を弾いて聞かせたり、
 家族が最悪の状況に直面した時、ただひとり、ピアノに向かってモーツァルトの妙に無邪気な、それだけになおさら悲しみを感じさせるソナタを弾いたり・・・・、
(ブラピ、これだけ弾ければ十分プロになれたんじゃ・・・・)
 ・・・・といったぐあい。
 宗教曲が多くかかるが、同じ宗教曲でも、始めの方でかかるのは、とても清らかな曲(フォーレか何かのレクイエム??)で、
 ラストのクライマッククス・シーン(これが長かった)でかかるのは、ベルリオーズのティンパニの響きもすさまじいレクイエム
 ベルリオーズ、すごすぎ。
 また、マーラーの、クライマックスに向けての序奏的な使われ方もよかった。

 その他、バッハの曲では、平均律のうちの何曲かが、長調の曲も短調の曲も含めて、それぞれとても効果的に使われていた。
 また、レスピーギの「リュートのためのなんたら・・・・」というあの有名な曲が、要所要所に出てきて、まるでテーマソングみたいに使われていたのが印象的だった。
 さらに、クープランの有名なクラブサン曲(「神秘のなんたら・・・・」)も同じくテーマソングみたいに使われていたが、
 純正バロックと、近代のバロック趣味の音楽が、同じようにして使われていたわけだ。

 上記クープランだったかどうか、忘れてしまったが、(ひょっとしたら、レスピーギの方?)父親と長男の対立が始まりかけたころに、父親と次男が、あたたかくピアノとギターを合奏するシーンもよかった。

 以上、すべてうろおぼえ。まちがいがあったらごめんなさい。
 なるべく使われた音楽をおぼえておいて、後でまとめてやろう、と思ったが、すぐに断念した。
 バッハでさえも、ごちゃごちゃになってわからなくなった。
 きちっとまとめたものがあるといいのだが。


 以上、この前予想したとおり、何も考えずに、映像を見ながら、音楽を聴いてるだけでも十分見応え(聴き応え)ある映画でした。
 そういう意味で、DVD(BD)でじっくり観てみたいような気もする。



▽ セミの鳴く木々(東京都庭園美術館の庭園にて)

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