佳境、安部龍太郎の「等伯」+またまたお知らせ

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 日経新聞、安部龍太郎の小説、「等伯」、いよいよ佳境。


 今、等伯は、あの祥雲寺障壁画(現智積院障壁画・国宝)を描いている。
 もちろん愛息であり、最大の弟子である久蔵と一緒に描いている。
 ついに、ここまでたどりついた。

 等伯、さらには狩野永徳のもとで修業し、今や天才絵師としてりっぱに成長した久蔵。
 若き才能に同じ絵師として脅威を感じ、また師匠としてはまだまだ伝えたいことも山ほどあって、激しく衝突しながらの仕事。
 しかし父親としてはこんなに幸福なことはないだろう。
 この後、等伯を待っている運命を思うと胸がしめつけられるが、今の幸福な瞬間は永遠で、それはあの障壁画に刻印されている。

 正にクライマックス。


 毎朝、日経新聞を読みながら、涙をこらえる、という妙な状況になっている。


 安部龍太郎さん、これまであまり読んだことなかったが、圧倒的な迫力とリアリティを兼ね備えた魅力的な歴史小説を書く人だと思った。

 NHK BSプレムアムで放送されていた、古田織部(&利休)が主人公のアニメ、「へうげもの」に登場していた長谷川等伯も、なかなか味のあるおやじだったが、
 この小説「等伯」で描かれている等伯も、いかにも芸術家然とした近寄りがたい人物ではなく、実に人間くさい、すぐに頭に血が上って豪胆かつハチャメチャな行動に突っ走り、同じような失敗を何度も繰り返す、まるで戦国大名さながらの、愛すべきキャラだった。
 何か失敗して壁につきあたり、やがてそれを乗り越えてついに傑作をものにする。そのくりかえし。
 等伯と言えば、一応大芸術家なんだし、今やある程度年をとって、日本美術界の頂点とも言えるところまで上りついたのだから、いかげん、芸術的な悟りみたいな境地に達してもよさそうなものだが、まったくそんな様子は無い。

 そんな等伯を、カゲで支え、助ける重要な存在として描かれているのが、はじめの奥さん(久蔵の母親)、そして、その奥さんが亡くなってしまった後、めとった2度目の奥さん。
 生い立ちや性格はまるで異なれど、どちらもともに、どこまでもやさしく温かい性格ながら、芯が強く、いざという時には、あっと驚く激しい行動や感情も見せる女性。
 いつまでもヤンチャな等伯を、常にしっかりと支え続ける彼女たちの姿も感動的。
 もちろん等伯と久蔵のきずなも丁寧に描かれているので、家族のドラマにもなっている。

 また、物語には利休などの「戦国歴史スター」も当然登場し、時には等伯の後押しをし、時には壁となって立ちふさがるのだが、
 近衛前久や前田玄以など、目立たぬ存在ながら、常に時の最高権力者から頼られ、結局戦乱の世を最後まで生き抜いて、実質的に歴史の歯車を大きく動かした武将たちが(近衛前久は公家、前田玄以はお坊さんで、純粋な武家ではないのだが)、大きくクローズアップされて、等伯のよき支援者として描かれている点も素晴らしいと思った。
 よく歴史ドラマなどにあるように、信長や秀吉などがやたらからんでくるよりも、ずっと真実味がある。


 と、いうわけで、この「等伯」、完結して単行本化したら、また改めて読み直してみたい。


 さらに、この安部龍太郎さんには、日本の歴史の中でわたしが一番好きな平安後期、中世武家国家の黎明期を舞台にした大作や、tonaさんがお読みになった、葉隠をテーマにした作品などもあるようなので、いずれ読んでみたい。



▽ 智積院大書院障壁画

 美しい庭園を見渡す大書院を飾るレプリカ。

 実物は、収蔵庫に保管されているが、もっともっと草木がわしゃわしゃと描きこまれ、すさまじい。
 
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 以前、京都・智積院を訪れ、等伯と久蔵の障壁画に感動した時の記事は、こちら


 その後、トーハクの等伯展で、障壁画と再会した記事は、こちら


 おまけ、昨年末に開催された、小説の内容ともリンクする展覧会、「長谷川等伯と狩野派」(出光美術館)の記事は、こちら



 なお、昨日もちらっと触れましたが、この春、トーハクで、ボストン美術館の所蔵する日本美術の至宝がまるっと里帰りする大規模な展覧会が開催され、そこで普段見ることのできない等伯の作品も展示されます。


 特別展 ボストン美術館 日本美術の至宝

 (詳細は、こちら(トーハク公式HP)参照)



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