舞楽とカンティガを結ぶ後白河法皇?~花に誘われお江戸巨大寺院放浪【復活節後第1日曜日】

 明日(4月15日)は、復活節後第1日曜日。

 時には華やか、時にはしっとりとした、春そのものを象徴するかのような、復活節のカンタータの雰囲気をそのまま引き継ぐカンタータが並んでいます。

 過去記事は、こちら。↓


 <復活節後第1日曜>

    「教会」コンチェルト・バッハの最高の協奏曲は・・・・?(BWV42ほか)
    桜・さくら・サクラPart 2~江戸絵画でバーチャルお花見+BWV67簡単解説  



 今回は、記事もそれにふさわしく、いかにも春らしい、東西古楽を聴きながら、お花見もした、という話。



 4月7日(土)


 ずっと寒い日が続いていた東京でも、何とか例年どおり桜が満開。

 毎年恒例、満開の桜の下で行われる舞楽を観に、芝増上寺へ。

 その後、ジョングルール・ボン・ミュジシャン登場の、東京春祭の一環でもある土曜無料コンサートを聴きに旧岩崎邸庭園に行き、帰りに花見シーズンたけなわの上野公園に立ち寄りました。


 Les Jongleurs 中世を駆けめぐる放浪楽師

  ジョングルール・ボン・ミュジシャン

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 ちょうど、増上寺、寛永寺という、徳川家ゆかりのお江戸の巨大寺院の名残をたずねる一日になりました。
 それぞれが現代東京屈指のお花見の名所にもなっているので、花と洋の東西の音楽に誘われて、春のお江戸気分を満喫。
 ジョングルールのライブでは、おなじみカンティガにまじって、後白河法皇編纂の梁塵秘抄の歌も聴いたし。あ、でも、これはお江戸ではないな。



 法然上人八百年御忌大会 舞楽奉納 大本山増上寺雅楽会

  @ 増上寺境内


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 増上寺は、この日、正に一山なべて桜の山。

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 桜に埋もれる大伽藍(東京タワー含む)

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 天気は快晴。気温はまだ低かったが、それでも昼間は陽の光がほんわかして春まっさかり。

 桜に包まれながら、春の舞楽を観る幸福。


 春庭花(しゅんていか、しゅんでいか) 左方四人舞 平舞 双調


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 しっとりと落ち着いた色彩ながら、よく見ると華麗な獅子の装飾をあしらった装束。
 それを身に着けた舞人が、輪になって、まるで花がやわらかに開いたり閉じたりするかのように舞踊る。
 その上、頭には桜の花飾りまで。
 なんて春らしい・・・・!

 音楽までもが、最近聴いた蘇香合などとは異なり、まるでこの日の青空のように明るい。
 舞いの明るさや、何よりも空や花に囲まれているせいかと思ったら、どうやらこの曲の調子が、そもそも「双調」(そうじょう)という、、西洋音楽のト長調に相当する明るいものらしい。
 年始に書いた「調子」のCDの記事でも、雅楽のそれぞれの調には細かい性格付けがなされていることに触れたけれど、
 平安時代に書かれた「龍鳴抄」という書物には、「何事も季節感が大事」、「春は双調、夏は黄鐘調(おうしきちょう)、秋は平調(ひょうじょう)、冬は盤渉調(ばんしきちょう)」と、書かれているそうだ。
 西洋のクラシック音楽でも、バロック以前には調性により厳格な性格づけがなされており、例えば、バッハの平均律や舞曲組曲などでも、ト長調と言えば、まぶしい春の陽光を思わせるような明るく朗らかな曲が多い。
 もちろん雅楽の方がずっと古いんだけど、このあたりの共通性は実におもしろい。

 ためしに、CD「調子」の「双調」を聴いてみたが、やっぱり何とも春らしい。(気がした) 


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 * この日の舞楽奉納のくわしい記事は、こちら

 * 増上寺の仏像についての記事は、こちら



 舞楽の後は、これも恒例、壮麗な練行列


 大鐘楼の鐘の音を合図に・・・・。

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 袈裟の華やかな装飾が、春を競い合っているかのようだ。

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 クライマックスの散華

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 地下鉄で、湯島へ移動。

 上野弁天池のほとりに立つコンドルの名作、旧岩崎邸へ。


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 東京・春・音楽祭 桜の街の音楽会

 旧岩崎邸庭園洋館 土曜の午後のミニコンサート ジョングルール・ボン・ミュジシャン (15時の部)


  歌、語り、ダルブカ : 辻康介

  フィドル、レベック、その他弦楽器全般 : 上田美佐子

  バグパイプ、各種笛、その他管楽器全般、ハーディガーディ : 近藤治夫

  パーカッション、口琴 : 立岩潤三(サポート・メンバー) 


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 この人たち、キャッチフレーズの「放浪楽師」よろしく、どこにでも出没し、ライブの雰囲気も実にゆる~い感じ、ちょっと見どこにでもいるような民族音楽楽団みたいなのだが、
 その実、世界でもなかなか聴けないような水準の、カンティガなどを始めとする西洋中世音楽を演奏していることを、見逃してはいけない。
 これまでも何度か書いてきたが、これほどまでに自由で生き生きとした、しかもどこかカチッとしていないあやしげな演奏、つまりカンティガの見事に「正統的」な」演奏は、なかなか聴けるものではない。

 生で聴いたのは久しぶりだが、演奏はさらにグレードアップしていた。
 器楽の扱いは、もはや変幻自在。近藤さん、上田さんともにさまざまな本格的中世楽器をまるで体の一部のようにあやつり、中盤の舞曲の時など、近藤さん、各節ごとに楽器をゲムスホルン(角笛)、クルムホルン、横笛、そしてバグパイプと持ち替えるサービスぶり。その他、テイバーパイプや、もちろんハーディガーディも登場。
 立岩さんも、さまざまなパーカッションに加え、口琴まで披露。
 わずかな間に、「耳で聞く中世楽器図鑑」を楽しめた。

 妖しくも美しい歌を聴かせる名倉さん(Vo、ハープ)がこの日参加してなかったのは残念だが、この楽団の最も重要な側面でもあるゆる~い雰囲気を一身に背負っている辻さんのトーク?も健在だった。


 新機軸としては、カンティガやカルミナ・ブラーナ、各種舞曲に交じって、さりげなく、というか当然のように、後白河法皇編纂の梁塵秘抄の歌が歌われていたこと。
 これは、例の「遊びをせんとや生まれけむ」なんかが収録されている歌謡集。
 もっとも、NHK大河の「平清盛」人気?にあやかってのことではなく、以前からレパートリーとしているようだ。

 カンティガと梁塵秘抄、まったく脈絡が無いようだが、考えてみれば、時代も歌の性格も微妙に異なるにせよ、どちらも当時の最高権力者が、身分にかかわらず当時ひろく歌われていた歌を、あまねく後世に残そうという目的で編纂したもの。この点に着目したわけで、なかなかおもしろい趣向だと思う。
 上の舞楽のところでも調性のことを書いたばかりだが、
 わたしはもともと、大好きな古いヨーロッパ中世の音楽と同じ香りを感じて日本の雅楽にも興味を持ち始めたので、これはまたうれしい発見だった。
 
 ただ、この梁塵秘抄、メロディは近藤さんがそれらしいのをつけているので、古楽のアカデミズムを尊重する方や正統的古楽演奏を重視するファンからは、ちょっとうさんくさく思われてしまうかもしれないが、
 もともと古樂の世界は、真実は霧の中の、ある意味うさんくさい、楽しければ、美しければ、何でもアリ、の世界。
 それに、カンティガと梁塵秘抄の共通点に着目して、実際に並べて歌う、というあまりふつうでは考えないことを実践してみることこそが、大いなる好奇心、冒険心に基づく、本来の真のアカデミズムなのではないか。

 かつて、ヨーロッパ古楽への時代をさかのぼる旅を始めた頃に感じていた、胸がわくわくする感覚を、今あらためて雅楽に感じている。
 その意味でも、心の琴線を大いに刺激されるライブだった。


 と、いうわけで、こちらも演奏を満喫。
 本当は、やはり桜の花咲く庭園で聴きたかった気もするが、午後遅くなり、少し寒くなって、文字通りの花冷えになってきていたので、まあ、ちょうどよかったか。

 舞楽とカンティガ、まったくちがうコンサートのかけもちのつもりだったのに、春の日の魔術か、後白河法皇という意外なところで、両者が結びつきました。


 梁塵秘抄もはいったCDを、思わず買ってしまった。(↑冒頭の写真)
 ライブを彷彿とさせる、楽しく見事な演奏。ライブのまんま、というのはよいのだが、辻さんのせりふなんかもそのまま入っていて、ライブで聴く分には楽しいけど、家で一人で聴くとなかなか恥ずかしい。


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 * 旧岩崎邸についてのくわしい記事は、こちら



すっかり花冷えの夕暮れになってしまったが、帰り、それでも花見客でおおにぎわいの上野公園に寄って、帰宅。


 ここは、全域が、浅草寺、増上寺と並ぶ、お江戸の巨大寺院、寛永寺だった。
 実際の寛永寺はかなり縮小され、上野公園の北端に静かに佇んでいるが、上野公園には今だに東寺の名残が多く、昔も今もお江戸の人々の一大歓楽スポットであることに変わりはない。


 弁天池と弁天堂。これは、風水的に京の都に近づけるべく、琵琶湖を模して造営された。

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 清水観音堂。これはもちろん、清水の舞台を模した。
 魅惑の仏像スポットでもある。花まつりの甘茶かけをやっていた。

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 他にも、上野公園には、大仏や天神様まである。


 * 寛永寺の仏像についてのくわしい記事は、こちら



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2012年05月22日 23:50
ジョングルール・ボン・ミュジシャンのKondoです。先日は岩崎邸でのコンサートにお出で下さり、またCDもお買い上げいただき、ありがとうございました。
ちょっとご連絡を取りたいことがあり、大変お手数ですが、上記URLからメールをお送りいただけませんでしょうか? 恐縮ですが、やや急ぎです。
よろしくお願い申し上げます。
2012年05月23日 22:36
 Kondoさん、コメントありがとうございます。
 新ホームページ、拝見させていただきました。(→右URL)
 楽器の紹介等、とても面白いので、後日記事の中でもご紹介させていただきたいと思います。
 今後も、いろいろな所に出没して、楽しい音楽を聴かせてください。

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