超話題作にも小川は流れる。「告白」ほか、日本映画特集。【復活節後第4日曜日】

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 GWも終盤ですが、みなさん、いかがお過ごしでしょうか。


 あした(5月6日)は、復活節後第4日曜日。


 カンタータは、

 1年目のBWV166
 2年目のBWV108

 の2曲。

 
 2年目のカンタータは、先週からツィーグラー・シリーズが始まりましたが、
 初年度のカンタータも、今週から、2年目のコラール・カンタータに向けての実験作、
 器楽オブリガートコラール付の「定型カンタータ」シリーズが始まります。


 くわしくは、下記の過去記事をご参照ください。↓


 <復活節後第4日曜>

    風薫る5月のVnソナタ(BWV108)
    「166番」と四月の思い出(BWV166)



▽ 夜の植物園

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 今日は、久しぶり、小川さん映画(=バッハの音楽が使われている映画)の記事。


 GW、いろいろと出かけて疲れたら、自宅でゆっくり映画鑑賞、映画を通じてバッハを楽しむ、というのはいかがでしょう。


 * 小川さん映画目次はこちらをご覧ください。↓


   小川の流れる映画(サントラ・バッハ)



 告白

     (2010年 中島哲也監督作品)


 原作、映画ともに大ヒットした超話題作。
 特に映画版は、賛否両論の反響を巻き起こし、数々の映画賞も受賞したので、今更、ですが。

 しかも、以下の記事は、今年のはじめに書いたものなので、なおのこと、今更、です。


 わたしは「嫌われ松子の一生」が大好きで、「夏時間の大人たち」から、「パコと魔法の絵本」まで、ほとんどの中島作品を観てきましたが、
 今回の「告白」は、あまりにもテーマが重苦しいようなので、どうしたものかと思っていたところ、元祖・小川さん映画のrbhhさんの記事で、実はこの映画が小川さん映画だということを知り、とりあえず観てみました。


 * 以下、ネタばれあり。注意。


 内容は、現代社会においてすっかりパターン化してしまったかのように頻繁に起きている、まったく救いようが無いさまざまな問題シーンを、ただひたすらに、まっこうから描ききったもの。
 松たか子さんが演じる女教師が演じる復讐劇。
 復讐の第一歩の場面からして恐ろしい。観る前は、これくらいのことをじっくりと描いてるのかな、想像していたが、とんでもない。それははじまり、文字通りの序章にすぎなかった。
 思いをうまく伝えることができない人間たちがぶつかりあって起きる恐ろしい悲劇の連鎖。
 これまでの「ファンタジー路線」からすると、180度方向変換したようにもとらわれがちかもしれませんが、
 これまでの作品でも、ファンタジー色のオブラートに包まれてはいるものの、けっこうどぎつい内容が、まったくさりげなく、平気で描かれていたので、(そのあたりが好きなのだ)
 まあ、そんなに驚くようなイメージ転換ではないようにも思えます。

 
 それよりも、
 いつもの中島監督の代名詞、けばけばしくもどこか懐かしい総天然色で、極限まで動きが誇張された映像が炸裂するカラフル&ミラクルワールド、
 それが、今回はすっかり影をひそめ、その独特の映像センスは、画面の世界を重く沈んだものにすることに費やされていて、何よりもそれが印象的。
 ただ、
 グレーや濃いブルーが支配する、重く陰鬱な作品世界の中に、美しい雲の映像、特に夕焼け雲の映像が、徹底して挿入されます。その他、桜、雨、水しぶきなど、自然の事象については、渾身の気合で、撮影技術の限りを尽くして、美しく、色鮮やかに撮っている。
 また、少年Bの下村少年の回想のところだけ、色彩と言い、テンポといい、いつもの中島調なのは、このシーンがあまりにも残酷だからか。

 そして、映画の中でも最も悲しくやりきれないシーンで、せつせつと流れて、やさしく心にしみるのが、レディオヘッドの「ロスト・フラワーズ」。
 これは、初めて聞きましたが、なんていい歌なんだろう、と思った。
 この映画の中で一番よかった。

 さらに、全編にわたって、まるで通奏低音のようにくりかえしくりかえしかかる、バッハのコンチェルト BWV1065のラルゴ(シンセサイザー・アレンジ・バージョン)の清らかさ!。 
(これは、名作カンタータ、BWV156の、冬のラルゴ)

 中島監督は、「絶望の果てにある命の輝きを描きたかった」と言って、テーマ曲をロスト・フラワーズに決定したそうだが、バッハの音楽や美しい夕焼け雲の映像など、すべて、この映画においては同じような意味を持っているように思える。 


 あと、映像的には、時間逆行と逆回り時計のシーンのすさまじさが、特に心に残った。

 これは、最後までほとんど救済や解決の無いこの映画で、持っていき場の無いいやな気持ちを吹き飛ばしてくれるような、心を動かす力を持った映像。


 松たか子演じる先生もインパクトがあった。
 ちょっと感傷的になったりすると、すぐに、・・・・ばかばかしい、とその気持ちを打消し、何か言った後は、・・・・なあーんてね、と言葉をにごす。
 観ている側からすると、とにかくこの先生の存在自体がオブラートに包まれているようで、いろいろと想像力がかきたてられ、よくある手法ながら、うまいな、と思った。

 映画のラストも、・・・・なーんてね。どこからどこまでが「なーんてね」なのか。


 なお、ここにも芦田愛菜ちゃんが出ていた。愛菜ちゃん、この映画で鍛えられ、女優として開眼したか。


 さて、中島監督の次回作は、何と、「進撃の巨人」とのこと。
 はたしてどうなることか。



▽ 雨の屋上庭園

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 以下、小川は流れてはいませんが、印象に残った日本映画から。



 筒井康隆作家生活50周年記念映画

 七瀬ふたたび

     (2010年、小中和哉監督作品)


 ものすごく楽しみにしていて、その期待の大きさのほどを熱烈な記事にもしたNHKのTVドラマ版が、何と無く不完全燃焼で終わってしまったので、(決して悪くはなかったが、期待が大きすぎた)
 その直後の映画化の話は、少し冷静に受け止めて、結局観たのも、レンタルが解禁されたつい先日のことだった。

 小中監督という人は知らなかったが、あの懐かしい大島弓子さんの「四月怪談」の人らしい。
 その後、SFチックな作品を中心に撮ってきたようだが、もうそれだけで、「七瀬」にはふさわしい気もする。


 第4話「ヘニーデ姫」、最終話「七瀬 森をはしる」を中心にして、それ以前のエピソードについては、回想のかたちでところどころにはさまれるという構成は、よく練られていて、1時間40分の映画としてとてもよくまとまっていた。
 ヘニーデ姫の話は大好きなので、これはうれしかった。

 そのような構成にすることによって、第1話冒頭の、あの印象的な夜汽車の名シーンも、モノクロの幻想的なシーンとして描かれていて、これまで観た中では、一番美しく、原作のイメージに近かったように思う。

 主演の芦名星さんも、「ふたたび」で突然絶世の美女に変身していた「ニュー・七瀬」にぴったり。

 原作の最大のポイントである、滅びゆく者たちのせつなさ、やりきれなさもよく出ていたと思う。
 目的のためなら、平気で人の命を奪い、仲間をさえも犠牲にする部分がちょっと気にはなったが、それも、むりやりこじつければ、七瀬たちが絶望的な結末に向けてひた走っていることのあらわれ、と言えなくもない?

 物語の終わらせ方は原作とはかなりちがうが、最終兵器・最後の切り札、タイムトラベラー・サトエリを最大限にうまく使っていて、よく考えられていたと思う。
 上記のハリウッド映画的、あるいは手塚まんが的な身勝手さをも含めて、うまく再出発をして、新しい未来をつくりあげてくれればよいが、と思ってしまった。


 ただ、かんじんの、七瀬が空を飛ぶクライマックス・シーンや、敵の親分との脳内バトル?シーンなど、CG部分がちょっとチープ?で、さらにこれがお涙ちょうだい的な音楽とあいまって、全体的に、ちょっと2時間サスペンスみたいだった。
(上記敵の親分が吉田栄作というのも、2時間ぽい。悪い意味じゃなくて・・・・、いや、これじゃ、悪い意味だな)
 実はこれは、致命的?



 さて、今回、この映画について書いたのは、ついこの前まで、TBS系の深夜ドラマで、

 堤幸彦監督の、家族八景

 を放映していたこともあって。

 原作は、エスパー七瀬が主人公のシリーズの第1作で、「ふたたび」の一つ前の話とは言え、あくまでもありきたりな家族の日常が舞台の、まったくちがう種類のものなので、あまり期待はしていなかったのだが、
 これが意外とおもしろかった。
 あれ、こんな話だったっけ、とは思うが。



 さて、「家族八景」、「七瀬ふたたび」、と言えば、NKKの少年ドラマシリーズ。

 少年ドラマシリーズと言えば、Nackyさんおすすめの「つぶやき岩の秘密」をついに観ることができました!
 またあらためて、感想書きます。


 
 武士の家計簿

    (2010年、森田芳光 監督作品)


 昨年から今年にかけて、堺雅人さん主演の映画を何本か観た。

 以前サントラをご紹介した「ゴールデンスランパー」でも独特の味のある演技を炸裂させてらっしゃったが、
 その他にも、
 「南極料理人」、(堺さん、最近TVドラマ「南極大陸」でも、南極に行っていた。相当縁がある?)
 「クヒオ大佐」、などなど、
 ジェトコースター的逃走劇の「ゴールデンスランパー」以外は、いずれも淡々と時間が経過する中で、登場人物たちの心の微妙な動きがじわじわと伝わってくるよううなわたし好みの映画で、大満足だった。
 そういう作品世界の中で、堺さんが果たしている役割は決定的で、みんな監督が異なるのに、各作品からは共通する堺カラーみたいなものが感じられるのがすごい。
 あの常に静かに微笑んでいるような顔がやはりポイントで、(まさに謎の微笑み)
 表情をほんの少し動かしすだけで、というか極端に言えば、目の色をかすかに変えるだけで、怒りや悲しみが、大げさな演技をする役者さんよりもずっとストレートに伝わってくるところが強み。
 ただ、逆に、笑っていても、心の底から楽しそうに笑っているようには見えないところがあるのだが、これがまた、独特の哀愁をかもしだしている。


 一番最近見た、「武士の家計簿」は、そんな堺さんの特徴が最も生かされた傑作だと思う。
 原作、というか、基になる新書(武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新)がかなり話題になったので、江戸好きのわたしとしては、絶対見なければ、と思っていたのだが、期待をはるかに上回る出来栄えだった。

 江戸末期の加賀藩御算用者・猪山直之を中心に、その父親、息子、3代にわたる「算盤侍」としての日常生活を描いた作品。
 物語としては、武家ならではの膨大な出費に傾きかけた家計を立て直すべく、当時の武士階級としては珍しい「節約生活」を家族そろって敢行することが中心になっていて、その他も、お救い米の不正を正そうとしたり、成長した息子の成之が幕末の動乱に巻き込まれたり(何と大村益次郎も登場)、と、多少の「波風」はあるものの、基本的には、わたしたちと何ら変わることない、ごく普通のありきたりの日常、
 それが、江戸時代の金沢の美しい四季の情景とともに、ていねいに、ただひたすら淡々とつづられてゆく。

 こうなると、もう堺さんの独壇場で、何でもないような当たり前のことが、一つ一つ積み重なってゆくと、こんなにもずっしりとした感動に繋がるのか、と驚かされる。
 もちろん、この点は、森田監督の手腕でもあり、若くして亡くなってしまったことが今さらながら悔やまれる。(本作品は、森田監督の最後から2番目の作品。)
 
 映画の全編にわたって、物売りの声、鳥の声、虫の声、などなど、江戸時代ならではの音が散りばめられ、それがピアノ中心のサントラとともに、なんとも言えない、詩情あふれる作品に仕上がっている。

 最後に、算盤をはじく手のアップのシーンが何度も登場するが、これが、天才ピアニストの演奏シーンみたいに美しい。
 算盤をはじく、凛と澄み切った音が、江戸時代の北陸・金沢にこだまする。


 堺さんは、時代劇では、昨年末に、NHKBSの歴史ドラマ 「塚原卜伝」にも主演していた。
 ここでは、例の静かな謎の微笑が、天下の剣豪の凄味につながり、なかなかすごかった。
 栗山千明さんの好演も光っていた。彼女はやはり時代劇が似合う。


 その他には、堺さん、今季のドラマ、「リーガル・ハイ」でも、怪しさを炸裂させている。
 ものすごく地味にイメチェン?したガッキーとのコンビもなかなか。
 「鍵のかかった部屋」の、佐藤浩市と、やっぱりものすごく地味~にイメチェン?した戸田恵梨香のコンビも、同じく弁護士コンビ。
 あとは、「ATARU」の、北村一輝&栗山千明の濃い~刑事コンビなど、
 今クールのドラマは、味のあるコンビがたくさん登場していて、楽しめる。



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 小川の流れる映画(サントラ・バッハ)



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

Nacky
2012年06月24日 21:41
Noraさま

こんばんは。
こちらへのコメントが遅くなって申し訳ありません。
うっかり見落としておりました。
大変失礼致しました。
ついに「つぶやき岩の秘密」をご覧になられたのですね。
ご期待にそえたのかどうかわかりませんが、
是非、ご感想をおきかせ下さい。

12.06.24
Nacky
2012年06月26日 22:05
 Nackyさん、こんばんは。

 CDショップにて、セールで激安になっていたのを発見し、しかもポイントでゲットすることができたので、とてもラッキーでした。
 ぞくぞくするような設定や謎、それを乗り越えて大人への階段を登り始める少年時代を、とてもていねいに描いた作品で、Nackyさんのおかげで、少年ドラマシリーズの王道を行くような作品をまた一つ観ることができました。
 石川セリの歌も、とてもノスタルジックでよかったです。
 最近、他にも古いドラマをけっこう見たので、また夏休みくらいに、まとめて記事を書きたいと思います。
 どうもありがとうございました。

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