かけがえのないプレゼント~ヘンゲルブロック・ライブ試聴記【降誕節】

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 いよいよ、クリスマス。

 12月25日(日)から3日間、降誕節です。


 カンタータは山ほどあるので、こちら↓をご参照ください。


    クリスマスとバッハその3 【降誕節カンタータ一覧】


 過去記事もたくさんあります。こちら↓


 <降誕節>

    クリスマスとバッハその1(クリスマス・オラトリア、マニフィカト)
    クリスマスとバッハその2・風の中のマリア(BWV147、10)
    クリスマスとバッハその3 【降誕節カンタータ一覧】
    お気に入りのアリア・クリスマス編その1 青く透明な光(BWV151)
    お気に入りのアリア・クリスマス編その2 悲しみを見つめる視座(BWV57他)
    バッハの最高のクリスマス音楽は・・・・
    またまたきちんと曲目解説・クリスマス編~BWV110 これこそ、クリスマス音楽!
    謹賀新年、いきなり曲目紹介~BWV191を巡る初夢。バッハはいかにロ短調ミサを書き始めたか。



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 今年も、ヘンゲルブロックからのクリスマスプレゼント。

 以前お知らせしたラジオ放送の感想です。



 第一夜、ヨハネその他のプログラムからして、すでに圧巻だった。


 バッハ ヨハネ受難曲 BWV245 (前半)

 Bernd Alois Zimmermann:
  Ich wandte mich um und sah an alles Unrecht, das geschah unter der Sonne,
  Ekklesiastische Aktion für 2 Sprecher, Bariton und Orchester  

 バッハ カンタータ第60番 BWV60


  ヘンゲルグロック指揮、NDR響か


 まるでガラス細工のように繊細、かすかな波紋が静かに広がってゆくようなオケの前奏。(実演をお聴きになったrbhhさんは「薄い氷の表面をなでるような演奏」と書いていらっしゃる)
 それが突然熱を帯び、沸騰するかのように盛り上がると、魂の叫びのような合唱が炸裂する。
 この合唱がこんなにも激しく表現されたのは、かのカール・リヒターの演奏以来聴いたことがない。
 現代オケならでは、そしてヘンゲルブロックならではのダイナミックレンジ。ロマンの極み。
 このまんまの調子でヨハネの第1部が一気に演奏される。

 ヨハネが第1部しか演奏されなかったのが残念だが、この後、すさまじくけたたましい、ほとんどパントマイムか演劇みたいな現代曲(Zimmermannという人の何たらという曲。上のクレジット参照)が続く。この曲?のおしまいに、力強い金管の斉唱による聞き覚えのある特徴的なコラールが奏され、そのままBWV60(カンタータ第60番)になだれこむ。
 そう、金管のコラールは、BWV60の終結コラール。BWV60が始まる予告?前振り。
 もちろん、BWV60の原曲にはそのようなものは無い。あるいは、「現代曲」の最後がそのようになっているのか。

 このコンサートは、始めから終わりまでヘンゲルブロックならではのトータルコンセプトに基づいて全体が構成されていて、ところどころに(何を言ってるのかはわからないが)ナレーションも加えられている。
 もしかしたら、Zimmermennの曲(劇)に、バッハの曲を組み込んだ、ということか。
 演奏のプランもそれに従っていたようで、音楽は、緊張感がまったくとぎれることなく、大河の奔流のように突き進み、最後の最後に、BWV60の終結コラール、あのアルバン・ベルグの白鳥の歌となった名コラールによって、名状しがたい安らぎがもたらされて、全体の幕が閉じられた。
 ペテロの否認のところでぶっつりと断ち切られる、まるで悲しいトルソのようなヨハネ、
 この世の終わりのように混沌とした「現代曲」、
 そして、ラストのBWV60という曲、この曲は、もともと前の2曲に相通じるカオスのような世界から音楽が立ち上がり、「恐怖」(アルト)と「希望」(テノール)が激しくぶつかり合う様子が徹底して展開されるダイヤログカンタータなのだが、最後の方のアリオーソ付きレチタティーヴォでキリストの声(バス)が響きわたるや状況は一変、終結コラールにいたって、絶対的な平安の中に終息する。
 この終結コラールは、それまでのすべてのカオスをまるっと受け止め、大いなる平明をもたらされるし得るような力を持っているのだ。
 そのことを十二分にふまえた上での、この特異なプログラムだったのだろう。
 そして、それを見事に証明する、指揮者・演奏者一丸となった、安らかな微光が放射されるような渾身のコラール演奏だった。


 実にヘンゲルブロックらしい、意欲的なプログラム。
 


 それから、第二夜、待ちに待った生放送のクリオラ。


 バッハ クリスマス・オラトリオ BWV248 (第1部、第4~6部)

  ヘンゲルブロック指揮、

    バルタザール・ノイマンアンサンブル&合唱団


 朝の4時からでしたが、この日は休日だったこともあり、もちろん生で聴きました。(途中で力尽き、後で録音したのをじっくり聴いたのたけど)

 現代オケの機能を200パーセント駆使したヨハネに対し、こちらは、もはや、ヘンゲルブロックの体の一部、手兵、バルタザール・ノイマンアンサンブル&Chor。

 ヨハネの濃密かつ研ぎ澄まされた演奏に比べ、始めのティンパニのあまりの素朴さにちょっと拍子抜けする。
 合唱も少人数。
 が、そんなことが気になったのも、始めだけ。
 古楽器モードのヘンゲルブロック、正に無敵、不可能無し。アンサンブルもソロも合唱も、完全に極上の楽器と化して、彼の心のまま、気の赴くまま。
 むしろ、古くて美しい、まるで懐かしい絵本のようにひなびた響きは、よりクリオラの世界にふさわしい。
 何よりも、こちらの方が、彼のやりたいことがそのまま音としてほとばしり、芳醇なクリオラの世界がめまぐるしく展開、音楽の花園がいっぱいに花開いて、この日の演奏もあっという間に終わってしまった。

 祝祭的でクリスマスの雰囲気いっぱいの前半部が一部カットされていたのは残念だが、音楽的により充実している後半部を全部やってくれたのが何よりもうれしかった。

 合唱やレチタティーヴォの緊張感や劇的迫力とアリアの美しさやコラールの穏やかさとの対比がすばらしく、
 特に、第Ⅳ部の不思議な響きのエコーのソプラノ・アリア、第Ⅴ部の充実しきったトリオ・アリア、第Ⅵ部のバッハ後期ならではのスケール豊かなソプラノ・アリアなど、聴きどころともいうべきアリアが、歌手(バルタザール・ノイマンの場合おそらく楽団員)の歌唱も含めて心から楽しめた。


 そして・・・・、

 すっかり満足したところに、アンコール!

 やっぱりこの人はアンコールがすごい!
 あまりにも聴きなれた曲の、まったく初めて聞くような驚くべき演奏。
 何と、BWV147のコラール

 これまで聴いた中で、最もリズミカルで躍動的、まるで飛び跳ねるよう、ほとんどダンス音楽そのものの鮮やかなオブリガートに、
 やはり、これまで聴いた中で、最も静謐な、やさしさの滴り落ちるかのような合唱。
 両者が奇跡的に一つに溶け合うのを目(耳)の当たりにした時、この曲の真の美しさ、バッハの心が、初めて心に突き刺さってきたような・・・・。まったく今更何言ってんだか、とは思うが、そう感じたんだからしかたない。

 ちなみに、BWV147、はじめに作曲された時は、ちょうど待降節のカンタータでした。
 その時にはまだ、この有名なコラールは無かったけど。


 すさまじい拍手は鳴りやまず、アンコールはさらに続いた。
 メンデルスゾーンのモテット、Denn er hat seinen Engeln Befohlen
 このメンデルスゾーンもすばらしかった。こんな美しい音楽は聴いたことがないっ、と思うほどだった。
 後から考えれば決してそんなことがあるはずないのだが、この時はほんとうにそう思ったんだからしかたない。
 最近、たこすけさんやrbhhさんの影響でよくメンデルスゾーンを聴いてるので、この曲、知っていて、大のお気に入りになってました。
 感激してしまった。



 実際にこのコンサートをお聴きになった、rbhhさんの感想は、こちら
 ドイツの美しい12月の様子が伝わってきます。
 午前4時の、まだ夜明けも遠い寒々しい東京には、花火もホットワインもありませんでしたが、すばらしいクリスマスプレゼントになりました。



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 立教大学のクリスマス


 ゲート。

 暗い山のような2本のヒマラヤ杉に、

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 いっせいに灯がともる。

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 チャペル。

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 趣のある名建築ですが、学食です。

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 ゲートの絵。

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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2013年01月02日 15:39
Noraさん、遅ればせながらメリークリスマス&ハッピーニューイヤーです。
昨年中はお世話になりました。

バッハのカンタータですが、リリングの全集が安価でしたので購入してボチボチ聴いてはいますが、なにせ曲が多い!(笑)
少しづつマイフェイヴァリット・カンタータを増やしてゆきたいと思っていますよ。
今年もどうぞよろしくお願いします。
2013年01月02日 16:55
Noraさん
新年おめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

「クローリとティルシとフィレーノ」の記事をアップ(これは大作なので、時間かかりました)しましたが、Noraさんの書かれた記事にリンクさせていただきました。
2013年01月03日 18:20
 ハルくんさん、あけましておめでとうございます。
 リリング全集盤、ゲットなさいましたか!
 以前申し上げたことがあったかもしれませんが、リリング全集は、ドイツ中のバッハを愛する腕利き奏者や名歌手たちが、リリングのもとに終結して完成させた名全集です。決してハデさはありませんが、どこを聴いてもいぶし銀とも言うべき名演奏家の名演奏ばかりで、きっとハルくんさんも気に入られると思います。
 これからこれらの演奏を聴いて行くことができるとは、うらやましささえ感じます。「マニフェスト」にかかわらず(笑)、ぜひマイペースでお聴きになって、また感想等おきかせください。
 それでは、今年もよろしくお願いいたします。ブログの記事、楽しみに拝見させていただきます。
2013年01月03日 18:28
 kohさん、あけましておめでとうございます。
 昨年中もいろいろとお世話になりました。
 おー、「クローリとティルシとフィレーノ」、ついにアップなさいましたか!
 おなじみのメンバー(笑)総出演の、お正月にふさわしい大作ですね。
 早速kohさんの訳を拝見しながら、あらためて聴いてみたいと思います。
 わたしも、今年こそ、がんばって世俗カンタータの記事を増やしたいと思っておりますので、引き続きよろしくお願いたします。
  
 
rbhh
2013年01月22日 14:48
Noraさん
素晴しい記事ありがとうございます。それぞれのコンサートの場面が目の前にあざやかに蘇りました。ヨハネの出だしはNoraさんのおっしゃる通り、まるでガラス細工のようでしたね。そしてBWV60の最後のコラールが特に印象深かったです。最後は合唱団員の半分か3分の1くらいだけで歌っていました。

クリスマスオラトリオ(日本ではクリオラと言うですね。ドイツではWOです。)も本当に素晴しかったですね。ご指摘の通りソロは合唱団員が分担して歌ってました。アンコールにはもう絶句してしまいました。呼吸が止まるかと思ってくらい。最後のメンデルスゾーンはこれ以上の演奏はない!といえるくらいでした。
こうして同じ演奏を聴いて感動を分かち合えて本当に幸せです。
今年もいろいろご指導よろしくお願いします!
2013年01月24日 10:43
 rbhhさん、
 昨年は、rbhhさんのおかげでたくさんのすばらしい演奏を聴くことができました。心から感謝しています。
 それにしても、距離的に遠く離れていながら、同じコンサートを同時に体験することができるとは、すごい世の中になったものですね。
 もちろん生でお聴きになっているrbhhさんとパソコンの音で聴いているわたしとでは根本的にちがうわけですが、その辺は想像力で補うことができます。
 そして、コンサートの後で、rbhhさんの記事で実際にどんな感じだったかを知り、rbhhさんがどのようにお感じになったかを読むことができたのは、コンサートそのものと同じくらい感動的な体験でした。
 さらにヨハネ他のコンサートも、あまりにも個性的なプログラムだったので、事前にrbhhさんの記事を読まずに音だけ聴いていたら、舞台で何が起こっているのか見当もつかず、あんなに自然に受け止めることはできなかったかもしれません。
 ほんとうにありがとうございます。こちらこそ、今年もどうかよろしくお願いいたします。

 小川さん映画の記事、大喜びでリンクさせていただきました。
 今年こそ、わたしもがんばってよい小川さん映画を発見したいと思います。なんだか毎年言ってる気がしますが。

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