一年のしめくくり、最後の最後に浅田真央選手SP「アイ・ガット・リズム」を観た!~国別対抗戦2013

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 フィギュアスケート国別対抗戦は、シーズン最後のちょっと中途半端な時期に行われることもあり、選手たちにとっては、スケジュール的にも大変だと思うが、観る側からすると、とても楽しい大会。

 オリンピックとのからみもあり、TV局は「国の威信をかけた団体戦」などとあおっているが、世界選手権を終えてプレッシャーから解き放たれた、世界を代表する選手たちの生き生きとした演技が見られるし、そのシーズンのプログラムの最も熟練した完成形を堪能することができる。
 シーズンが不調だった選手にとっては、1年間大切に積み重ねてきた結果を見せる最後のチャンスにもなるので、その場合は、気合の入ったすばらしい演技が炸裂する可能性も高い。
 つまり、ファンとしては、純粋に「芸術的な」演技を何の心配もなく、心から楽しむことができる。 

 そして、「国別対抗」ということでは、それぞれの国のカラーがよく出た応援合戦も含めた、お祭り的な雰囲気もたまらない。


 そんな国別対抗、オリンピックの団体戦採用に伴い、この後どうなるのかは不明のようだが、
 場合によっては最後の大会になるかもしれない、ということをヌキにしても、今年の国別は、わたしにとって、特別思い入れが強い大会となった。

 今年の浅田真央選手のプログラムが、ショート、フリー、EXともに、競技的にはもちろん、芸術的にもとんでもない水準に到達していることは、ご存知の通りだが、
 わたしは幸運にも、フリー「白鳥の湖」とEX「メリー・ポピンズ」は何度か生で観ることができたのに、ショート「アイ・ガット・リズム」だけは一度も観られないでいた。
 この「国別」がそれを観ることができるほとんど最後のチャンスだった。

 そして、男子スケーターでわたしが一番好きなジェレミー・アボット選手
 今年のフリーのプログラム、「彼を帰して」(「レ・ミゼラブル」より)は、はじめから終わりまで静謐さが支配する音楽の中に、ありとあらゆる超絶技術と芸術的な動きを詰め込んだすさまじいプログラムなのだが、
 アボット選手、今年はあいかわらずの息を飲むような美しい滑りにもかかわらず、思い通りの演技ができず、四大陸や世界選手権にも出場することができなかった。
 「国別」は、そのプログラムをこの目に焼き付ける、これも、ほとんど最後のチャンスなのだった。
 これまたすさまじいプログラム、チャン選手の「ラ・ボエーム」、高橋選手の「道化師」との、「ミュージカル&オペラ対決」も楽しみ。

 と、いうわけで、女子のショートのある4月11日(木)と、男子フリーのある4月12日(金)の両日、
 それと、都民観戦招待で当選した、4月14日(日)のEXに行ってまいりました。


 正に、いろいろなことのあった、今シーズンのしめくくり。



 世界フィギュアスケート国別対抗戦 2013

  @ 国立代々木競技場第一体育館



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 4月11日(木) 大会1日目

  アイスダンス・ショートダンス、男子ショート、女子ショート


 ついに・・・・、ついに浅田真央選手の「アイ・ガット・リズム」を見ることができた。

 何となく6分間練習の時から調子が悪そうで、トリプル・アクセルも失敗してしまったけれど、以前書いたように、わたしにとっては、ワザの技術的なことはそれほど大きな問題ではない。というか、よくわからない。
 浅田選手の演技は、もはやそういう次元を超えてしまっていると思う。
 もちろん、浅田選手はアスリートの頂点を目指してこれまで血のにじむような長い戦いを続けてきたのだし、難易度の高いワザが決まった時の演技がとんでもないレベルに到達することも承知の上でいっているのだけれど。

 このプログラムはもちろんTVで何度も観てきたが、今回生で観て、浅田選手がどれだけ音楽と一つになっているかを、初めて体感することができた。
 それは、音楽そのものだった。音楽という、形の無いものを目に見えるものとして見せてくれるような浅田選手の演技。音楽そのものの魅力が、浅田選手の演技によって何倍にもふくれあがって心に響いてきた。
 ガーシュインによって生み出されて以降、ビ・バップからモダン・ジャズにいたる偉大なジャズの歴史の中を、あたかも通奏低音のように貫き続けることになる、アイ・ガット・リズムの奇跡のようなコード進行。
 そのおなじみの、しかし深く心を包み込むようなコードが悠然と繰り返される中、すさまじいスピードとキレ、そしてとびっきりの楽しさがぎっしりとつまった浅田選手の演技が炸裂するの見る喜び。
 もう、それだけで幸福。何もいらない。

 今シーズン、「アイ・ガット・リズム」、「白鳥の湖」、「メリー・ポピンズ」という、まったく性格が異なりながらもそれぞれの方向で圧倒的な完成度を誇る3つのプログラムをすべて生で体験したことは、これまでに聴いてきた名だたる大演奏家やアーティストのライブとまったく同じように、いや、もしかしたらそれ以上に、わたしの心の中で、大切な大切な記憶として残ってゆくことでしょう。


 ついでに女子ショートのことを書いてしまうと、他には、フランスのメイテ選手ロシアのソトニコワ選手鈴木明子選手が抜群によかった。3人とも、世界選手権では思うような結果を残せなかった選手。
 特に、メイテ選手の演技には心打たれた。以前に比べ、目を見張るように滑りが美しくなり、表現力も増した。音楽(マイケル・ブーブレの「フィーリング・グッド」)もぴったりとはまったのかもしれない。
 ソトニコワ選手(「スペイン狂詩曲」)には、ひさしぶりに「完璧な演技」というものを見せつけられた気がする。演技が終わるや否や、全員スタオベ。

 その他のトップ選手に関しても、フリーの演技は、そのほとんどを四大陸等ですでに観ていたのだが、今回、まだ観ていなかったショート演技を集中的に観ることができて、ほんとうによかった。

 カナダのデールマン選手フランスのギルロン=ゴリー選手等の演技を初めて観ることができたのも、収穫だった。
 デールマン選手は、演技、衣装ともにこりまくっていて(「アバター」)、それを見事に演じ切っていた。フリーは、ドヴォルザークの「ドゥムキー」というたいへんめずらしいプログラムなので、これもぜひ観てみたかった。(女子フリーのチケットは、入手できなかった)


 女子ショート以外の種目もかんたんに。


 当日は、平日につき仕事を早めに切り上げ行ったため、少し遅刻。アイスダンス(ショートダンス)の3番滑走のリード姉弟に何とか間に合った。アイスダンスは、リード姉弟も含めて、みんな美しく見応えがあった。
 特に、「サウンド・オブ・ミュージック」を演じたカナダのウィーバー&ポジェ組
 

 男子ショートは、みんな不調だったが、その中で、最年長のロシアのメンショフ選手が光っていた。
 アボット選手は4回転を回避したにもかかわらずやはりジャンプに失敗してしまったが、世界選手権等に出場できなかった分、誰よりも気合の入った演技を最後の最後まで(演技終了後まで)見せてくれた。一世一代のスナイパーぶり、しかと見届けました。
 応援合戦も誰よりも楽しんでいて、会場を盛り上げてくれた。


 応援合戦と言えば、中国代表ペア、チェン・ペン&ハオ・ジャン組のチェン・ペン選手、あのハオ・ジャン選手の新しいパートナーとなった15歳の少女。これまでTVで、演技やキス&クライでの様子を見る限り、何とも無表情で、まるでお人形そのものみたいな印象だったのだが、
 この日は、常に中国の応援席の真ん中にいて、タンバリンを両手に明るい応援をしている姿が印象的だった。あと、クーシンちゃんも。
 各国とも、アイディアいっぱいの応援が楽しかったが、中国チームが、ハン・ヤン君の得点待ちの時にやった千手観音がすごかった。
 スケーターたちの思いがけない素顔を見ることができるのも、この大会の醍醐味。
 
 応援面に関しても、これまでの大会で日本チームの応援の柱?となっていた高橋成美選手がいないと、やはり少しさびしい。一刻も早く帰ってきてもらいたい。



 4月12日(金) 大会2日目


 この日は開始が遅かったので、始めから間に合った。


 ペア・ショートから。

 まずは、初日の応援のところでちょっと触れたチェン・ペン&ハオ・ジャン組
 6分間練習では、二人、ほとんど何もせずにバラバラに滑っていて、ペンちゃんはいつもの無表情。
 年齢差もあってまだ息がぴったりと合っていないのかな、とも思ったが、本番になったら、いきなり生き生きとした演技。
 生で観ると、ワザのキレ、精度はもちろん、表現力という点でも今後大いに期待できるような気がした。ペンちゃんがどこまで成長するか、楽しみ。

 総じてペア、アイスダンスには、トップの組がほとんど出場しなかった中で、今や世界最高峰のペアとなったヴォロソジャル&トランコフ組を生で観ることができたのもよかった。
 ほんとうは、フリーの「世界最高峰のバッハ」が観たかったけれど、ショートの妙ちくりんなまでに情感豊かな「ゴッドファーザー・愛のテーマ」からも、そのすごさは十二分に伝わってきた。


 圧巻だったのが、アイスダンス(フリーダンス)

 何と言っても、リード姉弟の「(アビーロード最後の)ビートルズメドレー」
 音楽はもちろんだが、振付も衣裳も何もかも含めて、ほんとうにすばらしいプログラムだ。
 ここにきて、そのプログラムのシーズンベストの完成形をみることができた。
 この演技の場合も、音楽の情感がストレートに胸に飛び込んできた。もっともこの曲に限っては、どんな情感か、わかったものではないが。
 というか、あの天下のアビーロードの最後の大メドレーの印象が、無条件に明るく楽しい、やさしい微笑みにあふれたものに変わってしまうような演技だった。
 もともと、あれはそういう音楽だったのだ。

 その他、彫像に恋するピグマリオンをテーマにしたというウィーバー&ポジェ組(「ヒューマニティー・イン・モーション」)、「ドクトル・ジバコ」を演じたチョック&ベイツ組、などなど、
 両カップルとも、ここぞという時に見せるアクロバット的なワザも見応え満点だが、全体的に、まるで、極上のミュージカルを観ているかのような、楽しさ、美しさ。ほんとうにうっとりしてしまう。
 たっぷりと堪能することができました。
 ウィーバーさんは、この日が誕生日とのことで、お客さんみんなでハッピーバースデーを歌ってお祝い。すごく喜んでくれてよかった。


 そして、一番のお目当ての男子フリー

 ショートでは不調だったハン・ヤン君の、あまりにもしなやかな動きに驚く。
 女子シングルのジジュンちゃんやクーシンちゃんはもちろんだが、先ほど書いたチェン・ペン&ハオ・ジャン組、そして、このヤン君と、今後中国はぐっと日本をおびやかしてくるだろう。

 その後は、レイノルズ選手以下、不完全燃焼ぎみだったショートを吹き飛ばすかのような、爆演、熱演続き。あまりのハイテンション演技の連続に、我れも我れもと完全燃焼して燃え尽きる選手続出。応援合戦も、観客も、大興奮。
 特にレイノルズ選手高橋大輔選手の演技はすごかったです。
 レイノルズ選手は、完璧だった四大陸での演技、高橋選手も、熱演のあまり最後の最後に落としてしまった一枚の羽根以外はやはり完璧だった全日本での演技に、それぞれ並ぶものだったのでは。
 それを生で観ることができて、ほんとうによかった。


 さて、そんな中で、かんじんのアボット選手もやってくれました!
 あいかわらずジャンプでは乱れがあったものの、始めから終わりまで、一瞬も息をつくこともできないほどの、美しさ、しなやかさの限りをつくした壮絶な演技。ステップなど、足が氷についている時間の方が少ないように感じるほどの浮遊感。
 静けさの中に、あふれるような思いのこめられた、圧倒的な「レ・ミゼラブル」
 寄せては返す波のように魂のドラマが展開する。
 知らず知らずのうちに涙があふれそうに。


 ショートで圧巻の演技を見せてくれたメンショフ選手が、演技中に転倒、怪我で棄権してしまったのは残念でした。

 また、高橋選手の力強さとアボット選手のしなやかさを併せ持つと言ってもよい、世界王者のチャン選手、人間が力尽きる瞬間というのを見た気がした。今年、よほど力の限り戦い続けてきたのでしょう。

 2人とも十分に休養して、来シーズン、またすばらしい演技を見せてくれることを楽しみにしています。 



 ところで、この日、座った席は、2階席後方の中央、音がすごくよい。まるでコンサート会場にいるかのようだった。(前日座った1階スタンド席よりも良かったと思う。)
 なおさら、演技のすばらしさも、伝わってきたのでしょう。
 さらに、この席なら、リンク全体が一目で見渡せる。しかも、それほど遠くもない。
 スピード、滑りの緩急、空間・リンクの使い方など、TVの画面ではなかなかわからないものをすべて目で見ることができ、プログラムの世界観がダイレクトに伝わってくる。
 細かい表情、ワザの良しあしはわからないかもしれないが、このような席で観ることができるならば、絶対に生がよいと思う。



 この後、大会3日目のペア・フリーと女子フリーは、TV観戦。

 最終日のエキシビションは、都民観戦招待でチケットが当たったので、三たび代々木まで出かけてまいりました。


 長くなってしまったので、EXのことはまたあらためて。



 選手のみなさん、こんな時期にまで、気合の入ったすばらしい演技を見せてくれて、ほんとうにありがとうございます。
 エキシビションの最後のあいさつで高橋選手が言っていたように、来シーズンは、オリンピックのある大切なシーズン。選手のみなさんが、けがすることなく、万全のコンディションでそれぞれのシーズンを戦い抜くことができるよう、心よりお祈りしています。

 特に、日本勢、

 高橋選手、鈴木選手に続いて、浅田選手も、オリンピックに向けて完全燃焼する覚悟を決めている模様。
 浅田選手、TVでフリーの「白鳥の湖」を観ましたが、演技自体はいつも通りのすばらしさながら、その苦しそうな表情からは、この一年間、精神的にも、体力的にも、彼女がどれだけ極限的な戦いを続けてきたのかが伝わってきて(正にそれだけの内容のプログラム、演技の連続だった!)、胸が締め付けられる思いでした。
 その想像を絶する戦いを、彼女は、少なくとももう1年間、このままの勢いで続けようとしている。
 もちろん、こちらも、引き続き、来シーズン、力の限りの応援してゆくつもり。

 

▽ プログラム。
  右下に写っているのは、スケートゴーちゃんがするすると(ものすご~くゆっくり)滑る、ボールペン。
  毎回、休憩時間に見せてくれる、ゴーちゃん&ユリートのコラボショーも見事でした。

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カンタータ日記・奥の院

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カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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