見事映像化された映像化困難作品~銀河鉄道の夜シリーズ特別編(スカイツリー夜景写真付)【聖霊降臨節】

 今度の日曜日(5月19日)から3日間、聖霊降臨節です。


 質・量ともに、復活節と並ぶほどのカンタータがそろっています。

 こちらの一言コメント付カンタータ一覧表を参考に、初夏のさわやかなカンタータの数々を楽しみましょう!↓

 【聖霊降臨節・カンタータ一覧】


 過去記事は、こちら↓


 <聖霊降臨節>

    お気に入りアリアその2(BWV74)
    永遠の炎、愛の源(BWV34)
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    お気に入りのアリア 「夏への扉」~BWV68、174
    バッハの「第3年巻」~BWV39、34の話題を中心に



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 プラネタリウム用作品 

 銀河鉄道の夜 -Fantasy Railroad in the Stars-

 (PREMIUM DVD-BOX)

  KAGAYAスタジオ


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 まずは、プレミアムDVDボックスというのを購入して、観てみた。


 銀河鉄道の夜を映像化する場合、風景や情景については、おそらく映像作家が全力をかけてカタチにすると思うので、ある程度の水準は確保できると思うが、
 問題はやはり人物だと思う。
 そもそも、原作を読み始めて、誰もがまずとまどうのは、
 ジョバンニ?誰?外国人?
 ・・・・なのだ。
 これまでは、登場人物をネコにしたりしてお茶を濁すこともあったが、その点、この作品はだいじょうぶ。
 そもそもプラネタリウム上映用作品のため、登場人物は一切でてこない。
 逆に自分自身がジョバンニとなって、ジョバンニの視点で銀河鉄道の世界を体験できる、というメリットがある。
 次々と現れては消える銀河鉄道の乗客たちや、カンパネルラも、姿は見えない。
 人影のまったく見えない空間に声だけ聞こえるので、銀河鉄道特有の虚無と背中合わせの空気感がひしひしと伝わってくる。


 そして、かんじんの風景や情景。
 CGを担当したのは、アーティストのKAGAYAさん。
 はじめイラストを見た時は、ちょっとラッセンっぽい雰囲気で、わたしには合わないかな、とも思ったのだが、動いているCGを見たら、殊の外すばらしかった。
 思いっきりシンプルな、絵本風のタッチにすることによって、リアルな映像を作ろうとすればするほど安っぽくなるCGの欠点をクリアし、その一方で逆にCGならではの正確な立体感、奥行きの深さなどは最大限に活かされているので、世界の広がりはやはり普通のアニメーションではなかなか及ばないレヴェルだと思う。
 画面に映し出されるすべてのものの造形、色彩が、あの銀河鉄道の結晶化されたような世界にふさわしく、その上で、原作を徹底して読み込み、可能な限り原作に忠実に、実に丁寧に作られていて、夢のように美しい。
 
 そのような壮麗な映像を背景に、かんじんのところでは、原作そのままの文章が、しっとりと優しい声で朗読されるので、もう観ているうちに、涙が流れて止まらなくなる。
 もっとも、一部、いかにも現代のアニメ風なせりふ回しがせっかくの雰囲気を壊してしまっているところもあり、また、途中のさまざまな、楽しい、そして悲しい旅のエピソードはごそっとカットされてしまっているが、全体のクオリティからすれば、それらは些細なこと。

 とりあえず現時点で、銀河鉄道の世界を「体験」するには、最適の作品だと思う。


 上記CGのKAGAYAさんは、脚本や監修まですべてを担当しているとのことだが、
 何よりも、全編にわたって、KAGAYAさんの「銀河鉄道」への愛があふれているところがすばらしい。
 
 それが最も表れている部分、そして、この作品で一番すぐれていると思った部分が、最後のまとめ。
 これだけの出来映え、当然、イマジネーションと技術と労力の限りをつくした渾身の作品であると思われるが、
 にもかかわらず、
 今のは、銀河鉄道の世界を駆け足で旅しただけだ、というように言い切っているのだ。
 そして、さらに旅を続けたい場合は、ほんとうの銀河鉄道の世界を感じたい場合は、原作を読み、そして、賢治の愛した東北の野や山や川などに、実際に接してみてください、と結ぶ。
 これによって、作者がどれだけ原作を大切にしているか、どれほど大きな愛情を込めて、原作を映像化したか、ということがわかる。


 エンドクレジット、
 銀河鉄道が走る、玲瓏たる光にあふれた美しい河原の情景が再び映し出され、
 やがて、鳥になって舞い上がったかのように、視点は上昇を始め、どんどん上がっていく。
 きらきら輝く風景は次第に小さくなり、それと同時に大きく広がってゆき、これまでの旅で見てきた蠍の火や巨大な十字架や石炭袋なども見えてきて、さらにはそれらも加速度的に小さくなってゆき、
 そして、おしまいには、それまで地上だと思っていたものが、いつの間にか壮麗なる銀河となって、空いっぱいに広がっている。
 つまり、自分が空を飛んで、高く高く舞い上がっていたはずなのに、気がついたら、実は、地上で星空を見上げていた、ということ。
 この鮮烈な視点の転換こそが、銀河鉄道の、賢治作品のキモでもある。

 その星空に、星座が現れ、星座はゆるやかに回転を始め、
 まっすぐな、美しい声で歌われる、星めぐりの歌。

 このエンディングだけでも、絶対プラネタリウムで見てみたい。


 なお、わたしが購入したプレミアムDVDボックスは、本編、解説、メイキング、対談集、サントラ、原作全編朗読等が収録された、DVD&CD4枚組セット。
 それに、美しい挿絵つき原作本もついていて、銀河鉄道の世界にどっぷりとつかることができる。


▽ さらに、おまけについていたサザンクロスゆきの切符。
  ジョバンニの持っていた、どこまでもゆける切符ではないようだ。

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 ・・・・と、感想文を書いたのが、実は昨年の夏ごろの話。

 それからというもの、きちんとプラネタリウムで観てからアップしようと、ずっと、機会をうかがっていたのだが、

 今回、GW直後にようやく見ることができた。


 プラネタリウムで観る銀河の世界の美しさ、壮大さに驚愕!

 特に蠍の火の壮麗さには魂がふるえた。
 「こんなにむなしく命をすてずどうかこの次には・・・・」
 その雄大で美しい光景を背景にして語られる蠍の言葉が、賢治の心の叫びとして心に突き刺さる。
 しかし、蠍が夜の闇を照らすまっ赤な美しい火となったように、賢治もまた、今では途方もないくらいに巨大な存在にふくれあがって、世界を照らし続けている。

 そして、
 そもそも、プラネタリウムでこの作品を観ることは、DVDとはまったく異なる体験をする、ということだった。
 映像の焦点となる部分が全天ドームのさまざまな位置に移動するので、もちろん実際は、リクライニングシートに寝そべって常に上を見上げているのだが、自分の体が上下左右に縦横に移動して、至近距離から、あるいは遠くから俯瞰して銀河鉄道の世界を漂っているような感覚を味わえる。
 時には、椅子がまるでななめ前方に傾いて、はるか上から地平を見下ろしているかのように感じる瞬間も。

 従って、上の文章に書いた、ラストの天地逆転の効果がすさまじい。
 正にミラクル体験と言ってもよい。

 DVDで観た10倍くらい感動して、涙が止まらなくなり、かなりはずかしかった。



 いずれにしても、銀河鉄道ファン、賢治ファンは必見!

 でき得るならば、プラネタリウムで。



 わたしが観たのは、こちら↓


 東京スカイツリータウン コニカミノルタ プラネタリウム 天空


 6月16日(日)まで上映予定。

 その他、東京近郊では、府中市郷土の森博物館等でもやってます。


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 以下、せっかくなので、その他の「銀河鉄道の夜」映像化の試みをご紹介。  



 銀河鉄道の夜 (NHK・BSプレミアム 80年後のKENJI ~宮沢賢治 映像童話集~ より)

  望月一扶(脚本、演出、実写&CG合成) 白組(CG)


 今年の2月から3月にかけて、NHKBSプレミアムで放送されたシリーズ、80年後のKENJIの中の一作。

 80年後のKENJIは、「注文の多い料理店」、「春と修羅」をはじめ、「やまなし」、「なめとこ山の熊」など、賢治の最高傑作と言ってもいいような選りすぐりの作品を、
 現代を代表する映像作家たちが、アニメ、実写、イラスト、写真等、実にバラエティに富んだ、それぞれが得意とするさまざまな手段で映像化したオムニバス・シリーズ。
 そもそも作品の選択が良い上に、各作品ともおおむね原作に忠実な範囲内で、工夫をこらして作られていて、好感が持てるシリーズだった。

 「銀河鉄道の夜」は、その最終日、30分ごとに分かれていた番組の前後編をまるっと使って、番組全体の総合演出ディレクターの望月氏自らが、映像化にチャレンジしたもの。
 逃げも隠れもせず、正面から堂々と作品に挑んだもので、なかなか見応えがあった。


 はじめに取り上げたプラネタリウム用作品と異なり、こちらは、実際の「銀河鉄道の旅」以外の、「現実」の人間ドラマの方に重点を置いた作品づくりがなされており、前半部がほとんどまるごと、出発までの前段部に当てられている。
 ドラマも、ジョバンニがカンパネルラのお父さんに銀河鉄道の体験を語るという形で、進行する。

 先ほど、配役自体が困難なのでは、と書いたジョバンニ役とカンパネルラ役だが、考え得る最高の配役だった。かなり年齢が上だけど。
 その二人の少年?の微妙に揺れる心のドラマを、一橋大学兼松講堂(あの「ぼくらの近代建築デラックス」の東京編で真っ先に取り上げられている異国情緒あふれる建物)、和歌山マリーナシティ、日中線記念館の列車、果ては氷川丸まで、日本中のありとあらゆるそれらしいロケ地や建物、乗り物などを駆使して、雰囲気豊かに描き出していた。

 特にカンパネルラ役の染谷将太さんははまっていた。
 以前書いたように、ちょっと前にWOWOWでウルトラセブン・デジタルリマスター版というのをやっていて、一緒にオリジナルドラマ、ネオ・ウルトラQというのも観ていたのだが、(これが実におもしろかった)
 染谷さん、このドラマの中で、ギ・ノール星の教皇の魂が輪廻した青年の役をやっていて、こちらもなかなか味があってよかった。


 後半の「旅」部分、CGは、十分美しかったけれど、上で紹介したKAGAYAスタジオ版に似ている。(あたりまえだけど)
 原作にある意味不明なもの、余分なもの(中には、それらの中にこそ、魅力的なものが隠されている場合もあるのだが)をすべて剥ぎ取り、とてもよく整理されている。
 従って、旅の「背景」にウェイトを置いた、人間ドラマ重視のドラマづくりにはぴったりとはまっていた反面、
 やや教訓めいた感じになり、原作にある、まるでほんとうの旅を体験するような楽しさ、広がり、ありとあらゆるものをぎっしりと詰め込んだような多彩さに欠けてしまったのはやむを得ないところか。



 銀河鉄道の夜 I carry a ticket of eternity

  2006年、秋原正俊監督作品


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 これは、ちょっと前の劇場用作品。

 この作品は、冒頭に書いた、なかなか映像では表現しにくい「銀河鉄道の夜」特有の現実とも虚構ともつかない作品世界の表現という問題点を、舞台を思い切って現代の日本にして、主人公も普通の名前の現代日本人、しかも女の子にするというかなり強引な力業によって、クリアしている。

 原作に対し、かなりの脚色が見られるが、全体的にていねいなつくり。
 「旅」の部分も、CG使用を極力控え、身近な材料を使って、やはりていねいにつくりあげている。



 「銀河鉄道の夜」の映像作品と言えば、あとは、歴史的な名作、有名な「ねこ版」くらいかな。

 あれは、アニメ全体の色調と、細野さんの音楽がすさまじかった。



 ちょっとちがうけど、


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 おまけ:


 スカイツリーからの夜景をまだ見たことが無かったので、ついでに、スカイツリーに登って、夜景を堪能してきた。

 さすがに、これまでに見た東京付近の夜景の中では、最もスペクタルかもしれない。東京付近ではなかなか味わうことのできない、「山から見る夜景」のスケール感がある。

 と、いうか、旅行などで、羽田に帰ってきた時に飛行機から見る郷愁あふれる夜景を思い出した。
 銀河鉄道にも通じる光の渦。


 展望 大東京の夕景~夜景

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 祝!1周年!

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