声楽とギターで体感するグレゴリオ聖歌から現代まで~ギター・フェスタBAROQUE

 また、カペラを聴きに行った。でも、ギター・フェスタ。果たして、そのわけは??



画像




 第8回 Hakuju 2013

 ギター・フェスタ BAROQUE

 8/30(金) ルネサンス/デヴァイン Solo



画像




 第1部 中世ルネサンス

  ヴォーカル・アンサンブル・カペラ/荘村清志、福田進一(g)

 ・グレゴリオ聖歌、ジョスカンのモテット&シャンソン
  およびルイス・デ・ナルバエスによるビウエラ編曲(ディフェレンシアス)

 ・グレゴリオ聖歌、ビクトリアのモテットおよびビウエラ編曲(一部、歌&器楽共演)


画像



 薄暗い舞台に、福田さんが一人、ギターを抱えて座っている。

 どこか遠くでグレゴリオ聖歌の調べが聞えたかと思うと、だんだん近づいてきて、カペラ、歌いながら上手から入場。
 そのまま行列を作って歌いながら、福田さんのまわりを一回りし、そのまま下手から退場。
 聖歌が遠ざかり、聞こえなくなると、福田さんにスポットがあたり、福田さんは、たった今響いていた聖歌をもとにした舞曲をつま弾き始める・・・・。

 なかなか凝った演出。

 教会で産声をあげたルネサンスのポリフォニーが、星の野の巡礼の民、そして世俗世界へと広がり、さらに発展してゆく様子を、象徴的に現しているようにも思える演出だった。

 実際、その後、カペラが再登場し、ジョスカンの有名な「千々の悲しみ」を歌うと、福田さんがこの大ヒット曲に基づくビウエラ編曲を弾く、という具合。
 格調高く、絶対的な均衡を獲得しているジョスカンのポリフォニーが、哀愁に満ちた「歌」となって、ホールの中を流れてゆく。
 福田さんの即興性あふれる演奏が、その効果をさらに高めている。

 初期ルネサンス音楽の多様な展開を、一目で、いや、一耳で明確に把握させてくれるような、見事なプログラム&演奏だった。

 カペラが、十八番のアヴェ・マリアの、その音楽同様、一点の非の打ち所の無いすばらしい演奏を聴かせて、第1部の前半部、終わり。


 後半部は、ギターが変わって、御大・荘村さん。

 再び、カペラのグレゴリオ聖歌から始まるが、今度は、時代と場所が少し変わって、ビクトリアのポリフォニーとビウエラ編曲。

 前半部の、星の野を渡り、表情豊かになった音楽が、再び教会に戻り、集約された結果が示される。
 ビクトリアのポリフォニーは、始めから感情豊かでドラマチック。さらに、その編曲たるや、言わずもがな。
 ただただ、カペラと荘村さんの演奏に酔いしれる。

 圧巻だったのは、花井尚美さんと荘村さんの奇跡のコラボ。
 よくわからないけれど、このようなビクトリアの伴奏つき歌曲風宗教曲は聞いたことがないので、器楽編曲版に合わせて、原曲のメロディを歌ったのだろうか。
 いずれにしても、中世&ルネサンス音楽を歌い続けてきた花井さんにして初めて可能だった至芸だと思う。
 まるで、ギター伴奏つきの近代の歌曲と何ら変わることない表現力で、心に迫ってきた。
 この人の声はほんとうにまっすぐだが、とてつもなく感情がこもっている。
 そして、何よりも美しい。

 この歌曲、グレゴリオ聖歌から、派生してきた音楽が、ここに結実した、ということなのだろう。

 荘村さんの演奏も、決して感情におぼれることのない、端正で美しいものだった。
 もともと、第2部は、ビクトリアの同一曲の原曲と編曲で構成される予定だったのだが、荘村さんの話によると、ビクトリア編曲譜はとてつもなく難しくてほとんど(おそらく現代のギターでは)演奏困難なものもあるらしく、当日はかなり曲目が変更されていた。荘村さんがそうおっしゃるなら相当なものなのだろう。
 しかし、当初のねらいはしっかりと達せられていたのではないかと思う。


 このようにきちっと、ルネッサンスのポリフォニーと器楽編曲を比較して聴く機会など、滅多に無いことだろう。しかも、さらに時代をも順番に変化させて。

 そして、その一つ一つの楽曲、演奏だけを見ても、名曲中の名曲の、現代の日本で聴ける最高のレヴェルのものばかり。
 ややこしい話をヌキにしても、心から音楽を楽しめる。 
 
 得難い体験をした。



 第2部 デヴァイン Solo

  グレアム・アンソニー・デヴァイン(g)

 ・バッハ プレリュード、フーガとアレグロ BWV998

 ・ブリテン ジョン・ダウランドの歌曲による夜想曲(ノクターナル) op.70

 ・グラナドス 詩的なワルツ集


画像



 第2部は、幾分くつろいだ気持ちで、イギリス出身の、初めて聴く若い才能による、ギター・リサイタルを楽しんだ。


 1曲目、バッハ。

 冒頭のアダージョこそ、じっくりと歌っていたが、曲が進むにつれ、どんどん速く、一気呵成な書のような演奏になり、あっという間に終わってしまった。
 あまりにもスピードが速く、小さな音は聞きとれないくらい繊細なので、よほど細部にこだわらない演奏か、ともすればミスタッチかのようにも聞こえてしまうほどだったが、これは、完全に、2曲目、3曲目への腕慣らし的な要素もあったのだろう。


 2曲目のブリテンの詩情あふれる難曲を聴き、この人が、飛びぬけた演奏技術をあたり前のように身に着けていることがわかった。

 ギターの演奏で、こんなにもたくさんの種類の音がいっぺんに鳴るのを、これまで聴いたことが無い。
 時には、一体ギターのどこからこんな音が響いてくるんだ?というような不思議な音も。
 それも、とても一人の人間が奏しているとは思えないほど、たくさんの音(しかも種類が全く異なる音)が聞える。


 なお、このブリテンのノクターナルは、遠い昔の同じ「英国」の作曲家、ダウランドの歌曲に基づく変奏曲。
 そういう意味で、この日のプログラムの主旨にあっている。
 音楽は、ついに20世紀にまでたどりついたのだ。
 第1部のジョスカンのアヴェ・マリアに対応するかのように、大バッハが置かれていたのも、暗示的で心憎い。


 最後、予定では、バッハメインのプログラムだったのが変更されて、グラナドスの詩的ワルツ集が演奏された。
 ついにロマンが極まったかとも思われる、哀愁あふれる調べを楽しんで、この日のプログラム、終了。



 アンコール、

 サティのグノシエンヌ(デヴァインさんソロ)、

 ルネサンスのシャンソン「ナイチンゲール」(福田さん&デヴァインさん)



 ほんとうに意味深く、しかもバラエティに富んだプログラム構成、そして、それにふさわしい演奏。
 いかにも「ギター・フェスタ」にぴったりな演奏会だった。



 このホールは初めて。

 横長のビルの7階部分にそのまま設けられた、長いホール。(ホールとしては、縦長に長いということになる)

画像




 演奏会後、ロビーでの撮影会。

 4人の合奏でパッヘルベルのカノンを弾いているところ。

 アロハシャツの花井哲郎さん、花柄のワンピースの花井尚美さんが、くつろいで聴いていらした。

画像




 9階 スカイテラスからの夜景

画像
画像




 夏の夜の花

画像




そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

画像





この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

過去ログ

テーマ別記事