宋風仏の最高峰、常楽寺の秘仏・文殊菩薩像と海風わたる寺の仏像たち~10月の鎌倉 黄昏の海をゆく

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 久しぶりの鎌倉。



 鎌倉国宝館の「北条時頼とその時代」展に、何とあの鎌倉宋風仏の最高峰の一つ、常楽寺の秘仏・文殊菩薩坐像がおでましになっていることを知り、先週の週末、取るものもとりあえず、急遽行ってまいりました。
 会期は今度の日曜日まで。あぶなかった。かけがえのない機会、とんでもなく貴重なまたと無い機会を、みすみす見逃してしまうところだった。

 その後は、せっかくなので、極楽寺から由比ヶ浜、大町・材木座を経て光明寺まで、秋の気配色濃い鎌倉の海に近いエリアを歩き、最近はなかなか訪れることの無かった、小さくてあまり一般観光客は訪れない、しかし個性的・魅力的な仏像を有する海沿いの寺の数々を回ってきました。これらの寺で観ることのできる仏像について詳細は、あらためて奥の院に書いておきます。

 途中、誰もが認める最高の鎌倉宋風仏であるとともに、海のゆかりの仏像の代表でもある鎌倉大仏に、約10年ぶりくらいにお会いしてきましたので、その写真も。



 10月19日(土)



 直通の湘南ライナーで、国宝館開館時間に合わせ、鎌倉到着。

 バスで、大学前まで行き、国宝館に直行。



 没後750年記念特別展

 「北条時頼とその時代」展

  @ 鎌倉国宝館 ~10月27日(日)


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 時頼の功績として、北条執権体制の完成とともにあげられるのは、何といっても、日本で初めての本格的禅宗道場・建長寺を建立し、鎌倉禅宗文化の礎を築いた、ということ。
 従って、そもそもこの時頼展、全体的に、鎌倉独特の禅宗文化・宋風文化の黎明期の鮮烈極まりない息吹を感じさせる、わたしにとってたまらない内容だった。
 さながら、あの建長寺宝物風入れの出開帳的ともいうべき圧巻の展示内容。


 そして、建長寺がらみ、時頼がらみの、強烈なインパクトの仏像たち居並ぶ中で、ぽつんと座っている、どちらかと言うと小ぶりな仏像。
 それが、目的の常楽寺の秘仏・文殊菩薩坐像

 まわりに並ぶあからさまに異国風な仏像たち、さらには鎌倉のあちこちに現存するあの魅力的な遊戯坐仏などに比べると、ちょっと見、何でもないようだが、目の前でじっくりと観ると、他のどの仏像よりも宋風、遊戯坐風。
 精神的な究極の遊戯坐。
 見れば見るほど、その美しさ、優しさ、はかなさ、そしてはかなさゆえの強さが心に染みてくる。
 ぼんやりとそこだけ光を放っているかのように感じられてきて、やがてその魅力に心を支配され、仏像の前を離れられなくなってしまう、そんな仏像。
 見つめているうちに、さながら、月光を思わせる静謐な光の中に浮かぶ、実体の無い、霊的なものを見ているような気さえしてきた。

 イメージとしては、浄光明寺の勢至菩薩に限りなく近い。対極にある存在として、快慶の醍醐寺三宝院の弥勒菩薩や東大寺俊乗堂の阿弥陀如来が思い浮かぶ。
 そのようなことからも、わたしがこれまで見た仏像の中でも、最も美しく印象深いものの一つ、と言ってしまっていいかもしれない。


 会期終了間際に気づき、間に合って本当に良かった。
 ほんとうに貴重な、かけがえのない体験をすることができた。この仏像の真価は、すぐ近く、最適な光の中でじっくりと対峙しなければ、見えてこないような気がする。

 会期終了までほんの数日しかないが、仏像好きの方は、必見!!!


 * 「北条時頼とその時代」展および常楽寺・文殊菩薩像に関する詳しい記事は、こちら
 

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 紅葉前の八幡宮・大銀杏の状態。

 狛犬君が守っている。

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 東大寺と八幡宮の名が並ぶ、力強い旗が海風にはためく。


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 まだ午前中の早い時間。

 目的の展覧会を見終え、後はどこに行こうかと、わくわくした気分になる。
 天気も、雨を覚悟していたが、まだもっていて。時折薄日もさし、暑いくらい。

 せっかく良い仏像を観たことだし、普段あまり行かない海沿いのお寺の仏像を回れるだけ回ることに決める。



 混み始めた小町りを横目に、裏道から、鎌倉駅の江ノ電乗り場へ向かう。


 右は、いつか記事に書いた、大観音寺大仏頭ゆかりの、鉄の井

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 以前記事を書いた扇川。

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 江ノ電で、極楽寺到着。



 極楽寺坂切通しの方へ。


 急な極楽寺坂切通し。左側の崖に上ってゆく道が、成就院の参道。

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 真言宗大覚寺派 普明山成就院


 鎌倉三十三観音霊場第21番札所


 急階段を登り切った頂上に、成就院は建つ。

 頂上に到達すると、いきなり海風が吹きわたり、眼前に息を飲む展望が開ける。

 写真に写っている長い階段は、反対側、長谷方向からの登り口。
 両側には262株のアジサイが植えられており、あまりにもにも有名な海とアジサイの絶景ポイントとして、季節には大変なにぎわいになる。


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 しかし、成就院は、仏像ほか、貴重な文化財を有している歴史ある寺でもある。
 正に、潮風の香りが濃厚な、海の仏像の宝庫。

 本尊不動明王像をはじめ、千手観音像、地蔵菩薩像など。
 本堂の窓から中をのぞくと、たくさんの仏像らしき影が並んでいるのが見えるが、残念ながら、内部は非公開。

 そのかわり、四季を通じて美しい植物が絶えることのない庭のあちらこちらに、仏像のレプリカ等が安置されている。
 中には、材木座の補陀洛寺にあるモダン彫刻みたいな文覚上人像にそっくりのレプリカも。
 わたしは本堂内を拝観したことが無いが、同じような像がここにもあるらしい。


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 遠く光明寺の大屋根がのぞめる。

 今日はあそこまでゆけたら、と思う。

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 朝から何も食べていなかったので、海を眺めながら、ブランチ。
 江ノ電の駅で購入した鎌倉コロッケパン。(食べてしまったあと)

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 極楽寺坂を下りきったところにある、何ともロマンチックな、星月の井(星の井)と虚空蔵堂(明鏡山星井寺)
 成就院の管理する寺院。


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 堂内をのぞくと、装飾の美しい大きな虚空蔵菩薩立像がまつられているのが見える。
 その他、極彩色の地蔵像ほか、小さな仏像多数。



 少し行くと、元禄年間創業の力餅家がある。

 いかにも手作りの老舗。
 名物の力餅は、赤福を甘く、素朴にしたようなあんこ餅。

 ひさしぶりにいくつか購入し、途中、おなかがすいたら食べた。
 何十年前と変わらぬ店構え、味。

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 力餅家の角を左折し、長谷へ続く味わい深い裏道、御霊小路へ。



 すぐに、御霊神社(権五郎神社)の鳥居にぶつかる。

 鳥居のすぐ前を江ノ電が通る、有名な撮影スポット。
 わたしもチャレンジしてみました。

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御霊神社(権五郎神社)

   
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 神社ではあるが、ここでもすばらしい仏像?を拝観できる。

 社務所にことわり、収蔵庫に入ると(志納100円)、
 鎌倉七福神の一つ、布(ヴェール)に包まれた大迫力の福禄寿像と、有名な面掛行列の十面を拝観することができる。



 そのまま裏口から、長谷方向へ続く御霊小路にぬけられる。

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 小路をぬけると、もうそこは長谷観音。


 10何年かぶりに、大仏まで足を延ばす。

 鎌倉ならではの最高の宋風仏であるとともに、究極の海の仏像でもある。


 浄土宗 大異山高徳院清浄泉寺


 鎌倉三十三観音霊場第23番。


 江戸期、増上寺第36世法主祐天上人によって復興。

 その後は、光明寺の奥之院(末寺)として位置づけられている浄土宗寺院。


 国宝・阿弥陀如来坐像(鎌倉大仏)


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 詳しい記事、写真は、こちら



 その後、由比ヶ浜大通りを下馬へ。



 その後、下馬の交差点からスタートし、小町大路からそのまま南の海に向かって大町を貫く大通りに沿って、
 「鎌倉の下町」、海辺の寺を、一気に十数カ寺回る。


 国宝館の特別展で観てきたばかりの北条時頼ゆかりの仏像のある寺、ちょっと他では観られないような個性的な仏像のある寺、見事な阿弥陀如来像のある時宗の寺々、そして、頼朝や政子、平重衡等ゆかりの歴史ある寺々、などなど、

 小さいながらも個性的で魅力あふれるお寺ばかり。


 詳しい記事は、こちらをごらんください。



 途中、大町交差点で、ちょっと遅いランチ。

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 今日の観仏の最終目的地。


 鎌倉でも有数の仏像の宝庫、

 真言宗大覚寺派 南向山補陀洛寺


 鎌倉三十三観音霊場第17番札所


 今や鎌倉でもほとんど残存しない頼朝公と直接かかわりのある由緒ある寺院で、文覚上人の開山。

 かつては七堂伽藍をほこる大寺だったが、「たつまき寺」の別名通り、再三災害に襲われ、現在は、ここも、ふつうの民家のようなお寺。


 左、補陀洛寺への道。
 
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 しかし、右上写真の入り口に建つ「頼朝公祈願所」の石碑が示す、由緒深い歴史を物語るかのように、鎌倉でも有数の仏像の宝庫。

 素朴な平安仏の十一面観音像、迫力満点の江戸仏の不動明王像薬師三尊像地蔵半跏像、など。
 いくつかの弘法大師像や、文覚上人像なども必見。

 また、こちらにも、平重衡ゆかりの品が伝わる。何と、平家の赤旗。

 お堂の外からのぞくと、堂内におびただしい仏像が並んでいるのが見える。
 お寺の人にお願いすれば、拝観できたはずだが、今回は時間が遅かったので、そのまま寺を後にした。



 今回の観仏行をスタートさせた成就院と同じく、真言宗大覚寺派、文覚上人の像のあるお寺で、盛りだくさんの仏像巡礼終了。



 大通りの突き当りは、海。


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 午前中、遠く成就院からながめた、海と向き合う雄大な光明寺の三門。(写真、左すみ)

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 今日のゴール。


 浄土宗 大本山光明寺


 鎌倉三十三観音霊場第18番札所

 鎌倉二十四地蔵第22番


 (蓮乗院:鎌倉三十三観音霊場第19番札所、千手院:鎌倉三十三観音霊場第20番札所)


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 光明寺にたどりつき、極めて駆け足でしたが、今日の観仏行、ひとまず終了。

 折しも、現在、金沢文庫では、特別展「東大寺」が開催中。

 あの重源様が快慶(東大寺公慶堂の地蔵菩薩)をお連れして、いらっしゃっているので、時間はそれほど無いが、ごあいさつだけでもしておこう、と、小坪からバスで逗子に向かい、さらに京急で金沢文庫に向かう。

 公慶堂地蔵菩薩は、言うまでも無く、俊乗堂阿弥陀如来と並ぶ快慶の最高傑作。
 午前中、常楽寺弥勒菩薩を見た時、快慶の阿弥陀如来像が思い浮かんだので、改めて快慶の作品に触れ、午前の感動を確認しておきたい、

 ・・・・とも思ったのだが。

 実際、金沢文庫に着いてみると、あとちょっとのところで時間切れ。

 残念だがしかたない。またの機会に。



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