三種類のアラベラ+NHKクラッシック放送感想~今年前半おさらいディスク&TVその2【三位一体節後5】

 九州地方では梅雨が明け、東京も梅雨明け間近か。いよいよ夏本番。
 サッカーW杯は終わってしまいましたが、夏と言えば、ツール・ド・フランス。
 現在、激戦の真っ最中。


 前半の見せ場の一つ、第5ステージで、雨の石畳の前についに力尽きたフルーム。
 あまりにも過酷な条件に、有力選手が次々と遅れてゆく中、ペースを乱すことなく堅実な走りを続けたマイヨジョーヌのニバリ、
 前半最大のクライマックス、ヴォージュ3連戦、ニバリは一時マイヨジョーヌを手放したものの、これまた過酷なヴォ―ジュ最終ステージ(第10ステージ)で、他を寄せ付けない圧巻の走り!
 再びマイヨジョーヌを獲得、大きなアドヴァンテージを持って前半戦を終えた。
 ここでは、フルームに続きコンタドールまでもがリタイヤを余儀なくされた。
 コンタドールのリタイヤは直接的にはアクシデントによるものだったが、その前日の第9ステージで、逃げる二人のトニーにはわき目もくれず、コンタドールとニバリは二人だけの激闘を繰り広げていた。最後までコンタドールの背後にぴったりとくっついて、不敵にプレッシャーを与え続けたニバリ。底知れぬ凄味すら感じられたその様子からすると、ニバリが完全に勝負に競り勝ったような印象はぬぐえない。
 (だからこそ、アルプスでの二人の対決、そしてフルームを交えての戦いが観たかった・・・・!)

 これら、第9・第10ステージの、ニバリのすさまじい走りを観る限り、もうマイヨジョーヌは決定か??とも思えてしまうが、まだアルプスステージ等がまるごと残っている。
 リッチー・ポートもしっかりとニバリの背後にくっついているので、個人的には応援したい。
 また、こちらも早くもポイント賞決定か??とも思えるサガンだが、まだ一度もステージ優勝をしていない。
 総合争いの大物たちは脱落したが、スプリンターに関しては、第1ステージでリタイヤしてしまったカヴェンディッシュを除けば、主力選手たちはだいたい健在なので、サガンVSキッテルを始めとする選手たちとのスプリント合戦からも目が離せない。


 と、いうわけで、フルーム、コンタドール、カヴェンディッシュと、大スターのいなくなったツールですが、まだまだお楽しみは続くのだ。



 さて、今度の日曜日(7月20日、三位一体節後第5日曜日)のカンタータは、


 第2年巻(コラールカンタータ年巻)、早くも登場、究極のコラールカンタータの1曲、BWV93
 こちらも、いかにも真夏到来、という感じ。

 そして、もう一曲は、後期のドラマティックなオペラ風、BWV88。 


 過去記事はこちら。↓


 <三位一体節後第5日曜>

    源流への旅11 古すぎて斬新!トロープスレチタティーボ(BWV93他)



 もうかなりたってしまいましたが、七夕の絵や写真


 春信 「七夕の短冊を書く美人」

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 神田神社の七夕飾り。

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  ☆    ☆    ☆



 今年前半の音楽体験をふりかえる、おさらいディスク&TV放送、

 お次は、ド・ビリーの名演で体験したばかりの名曲、「アラベラ」。



 その後、2種類の「アラベラ」を聴き、これで、全部で3種類のアラベラを観たことになります。



 R.シュトラウス アラベラ

  ウィーン国立歌劇場 2012 ヴェルザー=メスト指揮、ベヒトルフ演出


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 さすがウィーンのシュトラウス、やはり別格。颯爽としてスタイリッシュながら、甘美な情感がこぼれ落ちてくるような名演だと思う。
 室内楽的とも言える精緻さを伴った、オーケストラの響きの美しさがとにかくただごとではない。この点は結局音楽自体もすごいのだが、その音楽の美点をこれ以上ないくらいに生かしきっている。
 ワルツ等の豪華な雰囲気も極上。
 とにかく、音楽的には、考えうる限りの最高最美の演奏だと思う。
 
 しかし、配役も含め、劇的なおもしろさという点では、ド・ビリーの演奏も十分勝負になっていた。
 そして、ゴールデン・スランンバーの風、ということでは、ド・ビリーの方が明らかに上。
 これは、音楽の内面への深い洞察、共感、室内楽的表現にさらに磨きをかけたゆえのことか。



 この他にも、NHK・BSプレミアムで、以前お知らせした、ティーレマンの最新ライブも聴いた。


 ’14ザルツブルグイースター音楽祭ライブ 歌劇「アラベラ」 (ティーレマン指揮、ドレスデン国立歌劇場)


 予想通りの、ド真ん中、正攻法の圧倒的な大演奏だった。

 舞台や衣装はシンプルだったが、さすがにお金がかかってていそうで高級感満点。しかし、空間構成は平面的で、普通の室内。新国立劇場の方が上下、建物の内外の広がりが感じられ、独特の雰囲気があった。
 キャストについても、前の記事でも書いたように、真の主人公は完全にズデンカちゃんなので、アラベラ役のフレミングは立派すぎ、目立ちすぎ。新国立劇場の方が、全体的に配役のイメージがぴったりで、物語の展開にも自然に入っていけた。
 とは言え、フレミングの歌は圧巻で、個々の歌で観ると、やはりタイトルロールのアラベラの歌がどれもこれも美しく、また優れているので、これは無条件で聴きもの。
 そのフレミングの歌をはじめ、ティーレマンの堂々たる指揮等の音楽を含めて、舞台の迫力、豪華絢爛さは、何だかんだ言っても、圧巻、の一言。生で観ていたら、桁違いの感銘を受けたに違いない。
 このフレミング&ティーレマンのコンビでは、以前に、’11年のザルツブルグ音楽祭における演奏会方式での単独アリア(1幕最後のモノローグ)の演奏がとびっきり魅力的で、いつか本物の舞台を観てみたいものだ、とずっと思っていたのだが、その期待にたがわぬ演奏だった。(ただし’11年のオケはウィーン・フィル)


 ただ・・・・

 しかし、ゴールデン・スランバーの風ということに関しては、さらに希薄に感じてしまうところがおもしろい。
 そして、この「ゴールデンスランバーの風」こそが、わたしにとってのシュトラウスのキモなのだ。

 (「ゴールデンスランバーの風」について、意味不明だという方も多いと思いますが、ド・ビリーの「アラベラ」の記事を参照)



 なお、同時に放送された、ドキュメンタリー 「リヒャルト・シュトラウスとそのヒロインたち」(2014年 ドイツ)は、番組のラストが、’04年のルツェルン音楽祭における、アバドさんの指揮する「4つの最後の歌」(歌はここでもフレミング)で締めくくられていた。
 魂がふるえるような名演だった。思えば、この頃から、アバドさんは、前人未到とも言える領域に踏み込んでいったのだ。
 この映像は初めて観たのだが、ブルーレイなどは無いんだろうか。いずれにしても貴重な映像を観ることができた。(このドキュメンタリー、他にも貴重映像満載)



 以上、生の新国立劇場も含めて、短期間に3種類の「アラベラ」を聴くことができたわけだが、
 どれも、まったく異なる演奏ながら、音楽の核心にせまる演奏。

 やはりこれは、とんでもない名曲だということを、思い知らされた。

 なぜこの曲、もっと知られていないんだろう。



 次は、理科大の演奏を聴いて、今さらながらすっかり心奪われた、シベリウスの2番


 聴きのがしてがっかりだった、ヤルヴィおじいさん&N響の演奏会が、やはりクラシック音楽館で放送された。

 しかも、その翌週は、これまたR.シュトラウスプログラム!大好きな「ヨセフの伝説」

 2番は、後期曲に決して負けない圧倒的名曲の名演。

 R.シュトラウスに至っては、何とすでに、ゴールデン・スランンバーの風、吹きまくり。
 やはり、ヤルヴィおじいさんは、現役の指揮者では、最もかけがえのない存在だと思う。今回のようにまぬけに聴き逃すことなく、もし日本に来てくれたら、なるべく聴きに行こう。



 それでは最後に、恒例になりましたが、
 この場を借りて、それ以外のNHKのクラシック番組で、印象的だったものを。個人的なメモ。



 まずは、クラシック倶楽部


 ミクローシュ・ペレーニ親子による、ブラームスのチェロソナタ。
 以前やはりクラシック倶楽部で、ピリス&メネセスのベートーヴェンのソナタを聴いて、そのあまりにも親密な音楽上の対話に感銘を受けたことがあったが、それに並ぶ新密度だったように思う。親子だからあたりまえか。
 おとうさんのソロのブリテンの無伴奏も見事な演奏だった。

 ペレーニは、アンドラーシュ・シフとのベートーヴェンのソナタも有名だが、そのシフのリサイタルも、クラシック倶楽部では常連。
 今回のメンデルスゾーン&シューマンのプログラムも印象的だった。
 インタヴューで、メンデルスゾーンの魅力について力説していたが、演奏した「厳格な変奏曲」は、その話通りの
たいへんな名曲だと思った。
 古典的な外面の内に、静かな情熱が、蒼い燈火のように燃え続ける、典型的なメンデルスゾーンの短調作品。 途中、突然夢見るような長調に変わるところが美しい。
 シューマンでも、メンデルスゾーンとはまたちょっと異なる、ほの暗いロマンが炸裂。
 このように、演奏がどうのこうのではなく、曲そのもののすごさしか書きようがないのが、シフなのだ。
 そういう意味で、アンコールのバッハなど、もはや孤高の境地。


 東京・春・音楽祭のライブの、マルリス・ペーターゼンのR.シュトラウスの歌曲もよかった。シュトラウスの歌曲は、とにかく無条件に良い。
 東京・春・音楽祭では、キウヒシュラーガーのR.シュトラウスを何よりも楽しみにしていたのだが、曲目が変更された上に、キルヒシュラーガーさん自体も病気のために来日中止になってしまった。それを補ってあまりある充実度だった。
 NHKで放送されたR.シュトラウスの歌曲では、同じくクラシック倶楽部で放送されたサンドリーヌ・ピオーの清楚な歌声や、’09年バーデンバーデンのライブの、メストレのハープ伴奏で歌ったダムラウさんの名唱が忘れられないが(この時はドビュッシーやフォーレもすごかった)、
 それに負けない情感あふれる名演だと思う。

 その他にも、最近は、先の東京・春・音楽祭の最新ライブが続々と放送されるのがうれしい。


 クラシック倶楽部では、たまに、さまざまな地方の公演も、その地方の風景等を交えながら放送してくれるので、毎回楽しみにしているのだが、
 最近放送した、弘前における滝千春(Vn)&金子三勇士(P)デュオのライブもよかった。
 それぞれが得意とするプロコフィエフ(二人の競演でVnソナタ)、バルトーク(ピアノソナタ)の演奏もさることながら、わたしの大好きな弘前の歴史的建築を始めとする風景も、演奏に花を添えていた。


 それにしても、クラシック倶楽部、基本的に再放送が多すぎ。
 せめて再放送の場合はそう表示してもらいたい。



 N響定期を中心に、内外のオーケストラのライブを放送するクラシック音楽館


 前に書いたネゼ=セガン&フィラデルフィア管のように、来日オケのすばらしい演奏も聴けるが、やはり、毎週のようにN響の定期が聴けるのがよい。

 まず、最近すばらしかったのは、モーツァルトのピアノ・コンチェルト。

 ルドルフ・ブッフヴィンダーの20番(1773回定期)と、ティル・フェルナーの22番(1777回定期)。
 ブッフヴィンダーはベートーヴェン、フェルナーはバッハがダントツにすばらしいと思うのだが、そのようなそれぞれのピアニストの特性が曲調にぴったりマッチしていたためか、どちらの演奏も、音楽を聴く至福にどっぷりと浸かることができた。

 フェルナーの伴奏をしたのは、あのネヴィル・マリナー。何だか懐かしい名前だが、今やすっかり押しも押されぬ巨匠になっていて、その柔らかでありながら堂々としたサポートあってのフェルナーの名演だったと思う。
 マリナーは、ちがう日のドヴォルザークも(1776回定期)、フレッシュと言っていいくらいの生き生きとした演奏だった。それでいて、大きな滋味にあふれている。
 そう言えば、マリナーには、BWV82に、BWV159、BWV170という、誰もがバッハのカンタータの最高峰と認める3大名曲の、考え得る最高最美の演奏を収録した、正にカンタータCDのベストオブベスト、とも言うべきアルバムがある。
 今のマリナーなら、どのようなバッハを聴かせてくれるのだろうか。

 一方、ブッフヴィンダーの伴奏をしたのは、ファビオ・ルイージ
 ブッフヴィンダーの場合、弾き振りのイメージが強いが、ルイージの丁寧で誠実な演奏も、なかなかよかったと思う。
 同じ日のメインは、ルイージのブルックナー9番だったが、これも真摯で心にしみる響きが印象的だった。
 普通だったら、思わず引いてしまうような、何とも重苦しいニ短調プログラムだが、両曲とも静かな気持ちでその美しさにひたることができた。


 ブルックナーでは、ポーランドのマレク・ヤノフスキの5番が特にすばらしかった。
 明るくしなやかな響きによる、明快で美しいフーガ。
 5番は(ブルックナーの曲はどれもそうなのだが)、厳粛で壮大な雰囲気だけの曲ではない。


 また、シベリウスでは、これも前回書いたヤルヴィおじいさん以外にも、尾高忠明による、4つの伝説曲全曲という、すばらしく堅実な名演があったことも記しておく。
 N響、他のオケに比べると何となく優等生的で特色が薄い感もあるけれど、指揮者によっては、これだけしっかりとしたブルックナーやシベリウスなどを聴かせてくれるのだから、やはりたいしたもの。
 今後も注目していきたい。



 プレミアム・ステージ


 アバドさんの最後のルツェルン音楽祭のことは、何度も書いてきた。

 ルツェルン音楽祭と並ぶ大音楽祭と言えば、ザルツブルク音楽祭、
 上記のように、早くも今年のザルツブルク音楽祭のライブを観ることができたが、
 昨年(’13)のザルツブルク音楽祭のラインナップもすごかった。
 
 グスターボ・ドゥダメル指揮、ベネズエラ・シモン・ボリバル・ユース・オーケストラによる、祝祭的なマーラーの8番、
 これまたある意味モニュメンタルな、デュトワ指揮、N響の日本の管弦楽曲と幻想交響曲、
 いずれも熱演。
 オペラでは、実際の飛行場格納庫全体を利用して、歌手たちがあちこちを移動して一つの舞台をつくりあげ、それを生放送する、という、史上初めての「テレビ・オペラ」による「後宮からの誘拐」というのがあった。
 もちろん曲はすばらしいし、なかなかおもしろかったが、今では演出もここまでやらなければならない状況なのか、と、ちょっと複雑な思い。


 その他、
 ’13年のボリショイ・オペラの「イーゴリ公」、
 同じく’13年の、あのチェスキー・クロムロフ劇場の「オルフェオとエウリディーチェ」、
 今年、「アラベラ」の前に上演されたコルングルトの「死の都」、
 などなど、どれも楽しめた。
 イーゴリ公など、素朴な土の香りが少ない代わりに豪華絢爛。実際に観たオペラを、ちがう劇場、違う演出で観る楽しみは、何物にも変えられない。

 これらのライブが、自宅で気軽に楽しめるのだから、ありがたい。


 プレミアム・シアターでは、バレエ公演も多いので、最後に付け加えておく。

 かなり前になってしまうが、パリ・オペラ座バレエの「ス・ザバランス」(マリ・アニエス・ジロ演出)のことはもう書いたろうか。リゲテイなどの現代曲といっしょにブルックナーのミサ曲が使われていたのが印象的だった。

 最近では、バッハのお膝元、ライプツィヒ・バレエ団の「チャップリン」(マリオ・シュレーダー演出)がめちゃくちゃおもしろかった。チャップリンの映画の音楽は、フィギュアスケートでも使用されることが多いので、そういう意味でも興味深かった。

 他には、’13マリインスキー劇場の「白鳥の湖」(3D映画にもなったもの)、同じく’13年の英国ロイヤル・バレエの「ドン・キホーテ」など、これもすでに観たことのあるバレエのちがう舞台を楽しむことができた。



 プレミアム・シアターではないが、バレエでは、NHK恒例のバレエの饗宴’14もよかtった。
 ここでも「ドン・キホーテ」(第1幕)をまるっと観られたほか、ベートーヴェンの交響曲第7番(全曲)など、おもしろい演目も。
 「3月のトリオ」、「The Well-Tempered」は、バッハの曲を使用。(「3月のトリオ」は無伴奏、「The Well-Tempered」はタイトル通り平均律(第2巻))
 どちらも、チェロ奏者とピアノ奏者が舞台に登場し、実際の演奏に合わせて二人の男女が踊るというもの。
 「3月のトリオ」、音楽は無伴奏のソロだが、チェリスト&二人のダンサーが織りなす作品なので、トリオ、ということか。

 日本人が上位独占して話題となった、ローザンヌ国際バレエコンクールでも、課題曲にバッハのアルマンドか何かが使われていた。ふしぎ発見!で浅田真央選手が観たウィーン国立歌劇場のバレエでも、バッハが使われていたし、バレエ界では、ちょっとしたバッハブーム?
 また、ローザンヌ国際バレエコンクールでは、他にも課題曲にシベリウスのVn協奏曲が使われていて、あのリズミカルで独特な旋律に合わせて若いダンサーたちが躍動する姿は、見応えがあった。



 最後に、

 最近N響にも客演し、NHKのクラシック音楽館(旧特選オーケストラライブ)でも、個性的で元気いっぱい、わくわくするような演奏をきかせてくれたロリン・マゼールさんが、お亡くなりになりました。
 昨年のちょうど今頃、ブルックナー3番のトンデモ名演??のCDを聴き(記事、こちら)、これからが本当に楽しみだったので、とても残念です。
 ご冥福をお祈りします。





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