二つの秘仏を見比べる至福 おおい・高浜の秘仏めぐりバスツアー~恒例秋の観仏行・若狭の秘仏めぐり編2

 大海原を見下ろす天空の門。


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 プロローグに詳しく書いたとおり、今回の若狭旅行の一番の目的は、おおい・高浜秘仏めぐりバスツアーに参加して、中山寺参拝を果たすことだった。

 くりかえしになってしまうが、

 ほんの数年前の三十三年に一度の御開帳(本開帳)のチャンスをのがし、もしかしたら、もう一生お目にかかる機会は無いかも、とあきらめていた青葉山中山寺の秘仏本尊、馬頭観音

 やはり多少無理をしてでも行くべきだったと後悔していたところ、

 福井県が毎秋実施(企画)している、仏像ファンおなじみ、

 「みほとけの里 若狭の秘仏 文化財特別公開」

 の対象範囲が、何と今年は高浜町まで広がって、中山寺の馬頭観音も特別公開秘仏の一つとしてバスツアーにも含まれることになったのだ。



 以下は、そのバスツアーの全体の記録。



 みほとけの里 若狭の秘仏 文化財特別公開
 
 福井県大飯郡おおい町・高浜町 秘仏めぐりバスツアー

  (おおい町観光協会、福井県観光営業部企画、(株)ミフクツーリスト企画・実施)


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 旅行2日目



 天気予報では、この日は激しい雨の予報だったのだが、朝、目覚めてホテルの部屋の窓を開けると、そこには穏やかに晴れた海。しかも、目の前に美しい虹が。

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 少し肌寒く、時折急なにわか雨があったものの、基本的には絶好の観仏日和に。

 このにわか雨は、このバスツアーの間、ところどころで何度も虹を見るという、ちょっと幻想的な体験につながることになる。



 雨が上がって喜んだのもつかの間、
 宿泊していた小浜から小浜線でツアーバスが立ち寄る若狭本郷駅に行く予定だったのだが、かんじんの小浜線が不通に。
 やむを得ず、タクシーで、バスが出発する道の駅「うみんぴあ大飯」に直接向かう。


 タクシーの車中から。早くも青葉山が見えた。

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 予定通りの出発時間に間にあったのは18人だけだったが、結局、バス会社は、電車で時間通り来られなかった人のために、バスを2台用意して途中から合流させるという丁寧な対応を見せ、ほぼ定員いっぱいの約30人全員が、無事ツアーに参加することができた。



 バスツアーの出発地。

 道の駅 うみんぴあ大飯

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 遠く、今日の最終目的地、青葉山をのぞむ。

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 いよいよ、バスに乗り込む。

 引率のガイドさんと、福井県の語り部のおじさんが同行。

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 第2集合場所の若狭本郷駅に寄った後、

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 青戸大橋を渡り、大島半島へ。

 大島半島は、昔は大島という島だったが、この橋のずっと西側の若狭和田駅あたりで、陸続きになって半島となった。
 さらに、原子力発電所建設時に青戸大橋がかけられ、島の交通の便は飛躍的によくなった。
 送電線がやたら多いのは、半島の先端に原子力発電所があるため。

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 大島半島ののどかな入り江、漁村の風景。

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 学校の隣の空き地にバスは止まった。

 ここにあるお堂が、長楽寺。(無住)
 この日は、兼任で管理をしている他のお寺の住職さんが、お堂を開けて説明してくださった。


 真言宗 高野山派 慶松山 長楽寺


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 聖徳太子創建という伝承がある古刹。

 今は小さなお堂(+収蔵庫)だけの無住のお寺になってしまっているが、その収蔵庫にデーンと安置されている堂々たる平安仏は、古くからこの地が、大陸からの玄関口として、中央と深い結びつきを持って栄えていたことを雄弁に物語っている。

 中央で造られたと思われる、大きくて風格あふれる本尊・阿弥陀如来坐像多聞天立像ももちろんすばらしいが、おそらく同じころの地方仏師作の四天王の残りの三像が、素朴で味わい深い。そして、かわいい。例えようも無く、かわいい。
 本尊の向かって右側に、重文の多聞天。
 残りの三体は、無造作にまとめて左側に並べられているが、思わず目が釘付けになってしまった。

 堂内をよく見ると、その他にも千手観音他の夥しい小さな仏像、狛犬、仏像の段片などが。


 大島半島には、この他にも、

 吉祥天、善膩師童子を脇侍とする毘沙門天ファミリー三尊像のある清雲寺、

 造立当時の古風な木組みの台座がそのまま現存する彩色の鮮やかな不動明王像のある常禅寺など、古仏・秘仏のある名刹が多い。



 再び青戸大橋を渡って、本土?に戻る。


 青戸大橋から観る青葉山。

 海では、真珠の養殖が。

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 港越しに見る青葉山。

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 若狭本郷駅の少し西にある、おおい町立郷土史料館へ立ち寄る。


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 ここでは、

 おおい町大島(畑村)の奥の堂講社に伝わる阿弥陀三尊像(特別公開)

 を観ることができた。

 奥の堂は、先ほど訪れた長楽寺のちょっと先にあるお堂。

 奥の堂の阿弥陀三尊像は、8~9等身のすらっと美しい阿弥陀如来立像と、5等身?くらいで、一見してユニークな姿の聖観音立像、十一面観音立像の組み合わせ。
 しかも、中尊の阿弥陀様より、両側の観音様の方がずっと大きい。
 両脇侍は、どちらも素朴な造形だが、向かって右の聖観音像の方は、なかなか力強くてシンプルな美しさがあると思った。


 また、

 平成26年度特別展 涅槃図Ⅱ-おおいの仏教美術-

 という展覧会が行われていたのもうれしかった。

 小浜、おおい町等の寺院から、南北朝~江戸期の十二幅もの大判でカラフルな涅槃図が
大集合。

 どれも美しくて見やすく、内容的にも個性的でおもしろかった。
 妙に色っぽい猿、鼻で花を持って?慟哭する象など、見どころ多し。
 このパターンの象は、あちこちに登場していたが、流行っていたのか。



 大島半島の仏像に関する詳しい記事は、こちら



 大島半島の魅力的な仏像を観ている間に、あっという間に昼食。


 うみんぴあに戻り、団体用の部屋にて。

 新鮮なネタたっぷりの海鮮丼とアラ汁。

 前夜も、せっかく小浜に来たのだから、と海鮮丼を食べてしまった。まあ、いくら食べてもおいしい。

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 食後、買い物タイム。少し海を見てくつろいだ後、うみんぴあを出発。

 午後は、いよいよ、二つの秘仏馬頭観音を参拝する。

 のどかな単線の小浜線の線路にそって、しばらく進む。

 バスの中で、語り部の方が、二つの仏像のちがい、見どころ等を要領よくまとめた表をもとに、拝観ポイントを説明してくれた。

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 高野山真言宗 馬居寺

  北陸三十三ヵ所観音霊場 第二番


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 聖徳太子創建の伝承を持つ古刹。

 創建伝説には、おなじみ太子の愛馬、おなじみ黒駒が深くかかわる。


 峻厳な気配が漂い、空気が凛と澄みきっている山深くに、秘仏本尊はいらっしゃる。


 この後参拝する、写実の極みの中山寺像の対極に位置する姿。素朴で原始的な力強さ。
 ほとんど抽象化されたような表情、体つき。
 体から完全に独立して、取ってつけたように垂直に立てられた右ひざ(よく見ると、かわいい)、それと完全に垂直にねかされた左ひざ。
 まるで古代の呪術的な像のようだ。中山寺像とちがう意味で、迫力満点。

 語り部さんの説明では、頭の馬が赤いのは、古いタイプで、陸上交通の守り神としての意味もあるとのこと。


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 馬居寺に関するくわしい記事は、こちら



 引き続き、最後は、いよいよ今回の旅のメイン、中山寺へ。


 青葉山が大きく見えてきた。

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 若狭和田駅。小浜線の駅は、どれも個性的。

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 青葉山を正面に見ながら、海水浴場の横をどんどん進む。

 青葉山は、側面から見ると、頭が三つ又に分かれている。

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 バスはいよいよ青葉山に登ってゆき・・・・、



 バスを降りた瞬間、息を飲むような展望が!


 真言宗 御室派 青葉山 中山寺

 北陸三十三ヵ所観音霊場 第一番


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 聖武天皇の勅願によって、天平8年に創建されたと伝えられる古刹。

 若狭富士と呼ばれる霊峰・青葉山の中腹で、今も篤い信仰を集めている中山寺は、
 若狭湾を眼下に見下ろす、すばらしい眺望の寺院だった。


 数年前に葺き替えられたばかりの檜皮葺の屋根が凛とした美しさを感じさせる本堂が、また堂々としていて見事。

 そしてもちろん、クライマックスは、その内部空間。圧巻の一言!
 バスツアーのお客さんのほとんどすべてが、堂内に足を踏み入れたとたん、わあっ!とか、おおっ!とか、感嘆の声をあげる。

 堂内で、厨子内を照らす赤く燃えるような光の中に浮かび上がる、究極の秘仏本尊、馬頭観音坐像。

 住職のお話をお聞きしている間は少し離れたところから参拝し、その後、すぐ近くまで行ってじっくりと、心行くまで拝観することができた。

 像高は78.3cmとのことで、このすぐ前に訪れた馬居寺の馬頭観音よりも一回り小さいのだが、同じくらい、あるいはそれ以上に大きく見えた。

 ただでさえ三面八臂の複雑な体系、しかも立ち上がろうとしている瞬間という難しいポーズなのに、全体のバランス、姿勢から、顔の表情、指先一本一本にいたるまで、まったく不自然なところが無く、はじめから存在しているかのよう。
 写真で観た限り、ものすごく恐ろしいイメージがあったのだが、目の前にして観ると、お顔、お身体、佇まい、そのすべてにおいて、こんなにも美しい仏像はこれまで観たことがないような気がした。
 いつもこんなことばかり書いているようだが、ものすごく強烈にそう思ったのだ。


 全身が生々しい朱色なのに対し、頭に抱く馬は、白い。語り部さんによると、これは海洋交通の守り神としての意味合いも持つとのこと。
 また、どのような経緯からそうなったかはよくわからないけれど、この馬頭観音の場合、シンプルな木組みの古風な台座の上にさらに精巧な蓮の台座が載せられているのがめずらしく、見どころの一つだと語り部さんが説明してくださった。
 その点も含めてよく観察できるように、厨子の前には台までが用意されていた。
 秘仏中の秘仏だというのに、いや、だからこそ、このような機会に参拝者にできるだけよく観てほしいという、お寺や主催者の気持ちがが伝わってきた。


 パンフの写真。

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 今にも立ち上がらんとする瞬間を見事に切り取った、迫真の表現が、写真からも伝わってくる。

 実際に目の前に立つと、正に次の瞬間にゴゴゴーッと立ち上がり、巨体を震わせてわたしたちを見下ろすのではないかと感じられる。思わず身構えてしまうようなすさまじさ。
 観れば観るほど、光の中で、まるで生きているとしか思えなくなる。

 慶派鎌倉彫刻の行き着いた形。


 拝観後は、海に大きく開いた茶室で、お茶とお菓子をいただいた。
 上に載せた写真は、茶室の席からのながめ。

 どんな庭園よりも、すごい!


 仏像はもちろん、建築、なみはずれた眺望を含む境内の佇まい、何もかもが特別だった。

 これまで訪れたあらゆる寺院の中で、ベスト10に入る、と言っていいのではないか、とも思った。


 中山寺に関するくわしい記事は、こちら




 下界に降りてくると、海ではいたるところに虹が出ていた。


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 電車が不通になるアクシデントはあったものの、大小2台のバスを連携するなど、スタッフの努力によって無事ツアー終了。
 しかも、その後、若狭本郷の電車出発まで多少時間があるので、到着が遅れて郷土史料館を観られなかった人のために、希望者のみ再び郷土史料館を案内してくれることになった。スタッフは完全に残業ということになるが、心のこもった対応だった。
 せっかくなので、午前中行ったわたしたちも同行させてもらった。



 郷土史料館は、船岡製塩遺跡公園の中にある。

 午前中は、あまり観る時間が無かったので、周辺の公園もゆっくり散策。
 

 公園内にはたくさん「うみりん」がいらっしゃったが、うみりんのいるところは必ず青葉山がよく見えるフォトスポットだということがわかった。

 この写真には、海辺のすてきな野球場が写っている。

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 海辺の散歩道。

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 美しい青葉山を眺めながら、今日訪れた寺院、出会った仏像に思いを馳せる。

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 今回思いがけず、中山寺、馬居寺と、若狭高浜町に伝わる二つの秘仏馬頭観音を拝観することができた。 

 それにしても、馬居寺馬頭観音と中山寺馬頭観音、同じ馬頭観音ながら時代も姿かたちも何もかもがまったく異なっていて、それでいて、それぞれが究極とも言える美しさと個性をたたえている。
 等しく憤怒系であるにもかかわらず、中山寺像は陶然とするような美しさが、馬居寺像は素朴なおおらかさが強烈に心に迫ってくる。
 しかし、せっかくすぐ近くにいらっしゃるのに、片や33年に一度御開帳、片や24年に一度御開帳、両方を見比べることなどありえないと思われたが、今回、このバスツアーによって、ほんの数時間の間に両者の秘仏を、じっくりと、こころゆくまで拝観することができた。

 これまでだったら、ちょっと考えられないような稀有の体験で、仏像好きには至福とも言える時間だった。

 それこそ、33年、24年と言う年月を待ってやっとその姿を参拝している方が大勢いらっしゃるわけで、信仰という側面からするとちょっと後ろめたい部分も無くは無いが、街の活性化ということからすると、やはりこのようなツアーも大切なわけで、さらには、基本的にはこのようにずばぬけて優れた仏像は少しでも多くの人に観もらいたいとも思うので、今後もこのような催しは何とか継続してもらいたい。



 バスツアーの終点、若狭本郷駅

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 この日の夜は、小浜をちょっと散策しながら、夕食。


 新鮮な刺身の盛り合わせ等を食べるが、結局、また海鮮丼を食べたのと同じになってしまった?

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 こういうバッチをつけて、各寺院をまわった。

 こういうツアーの旅はほとんどしたことが無かったが、たまにはいいと思った。

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