新年・羊をめぐる音楽【新年ほか】

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 謹賀新年。

 今年もよろしくお願いいたします。



 新年、新年後第1日曜日(明日、1月4日)、顕現節(来週火曜日、1月6日)のそれぞれのカンタータについては、

 クリオラ後半の祝祭日 新年・顕現節周辺のカンタータ一覧

 をご参照ください。


 過去記事は、こちら↓


<新年>

    新年のカンタータ(BWV41、171他)
    「熙代照覧」の富士山、江戸城と、新年のカンタータ (BWV41他)
    クリオラ後半の祝祭日 新年・顕現節周辺のカンタータ一覧【新年~顕現節後1】

 <新年後第1日曜>

    新年後第1日曜(BWV58、153)
    クリオラ後半の祝祭日 新年・顕現節周辺のカンタータ一覧【新年~顕現節後1】

 <顕現節>

    三人の博士(BWV65、123)
    クリオラ後半の祝祭日 新年・顕現節周辺のカンタータ一覧【新年~顕現節後1】



  ☆    ☆    ☆



 今年のNHK(Eテレ)元旦恒例、新春舞楽は、

 「陪臚」でした。


 聖徳太子、さらには東大寺や唐招提寺にもゆかりの名曲中の名曲。

 鮮やかな装束に太刀に盾と鉾まで登場、後半には、「八多良拍子」が炸裂する勇壮な戦いの舞だが、その盾は炎に縁どられ、表裏には美しい花が描かれている。

 (曲目についての詳細は、こちらの過去記事

 太子から東大寺、唐招提寺等へと引き継がれた平和の精神を心に刻み、戦いの無い平和な世界が訪れることを、今年も祈り続けたいと思います。



 今年のCD聴き染めは、

 昨年末にリリースされたばかりの、オリヴィエ・ボーモンラウテンヴェルクを弾いた、バッハの器楽曲の最高峰の一つであるリュート組曲ほかのアルバム。


 ラウテンヴェルクのために書かれたと思われるBWV996はもちろん、BWV997なども、何ていい曲なんだろうとあらためて心から感じ、音楽を聴く幸福に胸がいっぱいになった。
 BWV903BWV1067のポロネーズなどの名曲の、これまで聴いたことも無いような響きの演奏も収録されていて、楽しめます。


 ジャケットは馬でした。残念。

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 また、今年のカンタータ聴き初めは、第2年巻コラール・カンタータのBWV41

 新年らしい壮麗な両端合唱と、間に挟まれた二つのしっとりとしたアリアの対比が印象的なカンタータですが、
 中でも第4曲のヴィオロンチェロ・ピッコロのオブリガート付テノールアリアは絶品。

 せっかくなので、久しぶりにコワンの演奏を聴きました。

 今年は、なるべく毎週聴くぞ!

 ・・・・と、毎年言っている??



 さて、毎年新年には、過去にご紹介した日本画等からその年の干支に関連する作品をご紹介していますが、羊にまつわる絵をさがしてもなかなか見当たりません。

 しかたないので、羊に関する音楽を何点か。



 羊が関係する音楽、何となく反則のような気がしなくもないですが、やはり真っ先に、バッハのカンタータをあげておきましょう。
 多くの作品において羊がさまざまな象徴として内容に深くかかわり、もちろん歌詞にも登場するばかりか、BWV175のようにタイトル(インチピト)にすでに羊が出てくる作品まであります。
 つい先ごろ、昨年のクリスマスの記事でご紹介したリチェルカール・コンソートのクリスマス・カンタータのCDのジャケットにも、しっかり羊が登場していますね。


 せっかくなので、「羊」という言葉が出てくるカンタータの名曲をまとめようと思ったのですが、すぐに挫折。

 ここでは、その代表として(教会カンタータではありませんが)、ヌリア・リアルのアリア集で心にしみわたる名唱が聴ける、

 BWV208 「楽しき狩こそわが悦び!」(狩りのカンタータ)の第9曲、

 「羊は安らかに草を食み」

 をあげておきましょう。

 おなじみ、新年の清々しい気分にも相通じるさわやかで幸福感にあふれる名曲です。


 また、春の復活節の直後、復活節後第2日曜日のカンタータ群は、当日の該当章句が羊飼いの話で、パストラーレ風の音楽がずらりと並んでいて、どれも「バッハの田園」ともいうべき名曲ばかりです。

 中でも、第1年巻の、

 BWV104 「イスラエルの牧者よ、聞きいれたまえ」

 は、全編まぶしいパストラーレみたいな、バッハにはめずらしいくらい屈託の無い明るい音楽、大名曲。
 本来は春の音楽ですが、もちろん「新春」にもぴったりです。

 この新春のよろこばしいひと時に、バッハの田園を楽しんでみませんか。


 左、「羊は安らかに草を食み」の名唱が聴けるヌリア・リアルのバッハ・アリア集
   (リアルのアリア集の記事は、こちら

 右、復活節後第2日曜日、「バッハの田園」カンタータと言えば、この人の演奏。
   ヴェルナーのカンタータ選集
   アルヒーフのリヒターの選集と並び立つ、エラーとの記念碑的選集。
   BWV104だけではなく、BWV85等の真摯で心打つ表現も圧倒的。
   (「バッハの田園」カンタータおよびヴェルナーの選集に関する記事は、こちら)  

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 カンタータ以外にも、そもそも、ヨーロッパ芸術音楽の根幹とも言えるミサ曲自体が、「羊に関わる音楽」に他なりません。


 左、ミサ曲ロ短調の数多いCDの中から、羊がジャケットのCDを探しました。
 合唱が鮮烈なマックス盤

 右、おなじみマタイ受難曲も、これ以上ないくらい「羊に関わる音楽」。こちらも探しました。
 アーノンクールのDVDオーディオ盤。 

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 上の両盤、ジャケットに羊は出てはいますが、どちらもあからさまに新年らしくないので、

 今年のトップには、こちらの有名なジャケットのCDに登場してもらいました。


 音楽史上最も輝かしい作品の一つ、

 ジョスカンのミサ曲、「パンジェ・リングァ」

 これは、ペレス&アンサンブル・オルガヌムとクレマン・ジャヌカン・アンサンブルの、奇跡の共演盤。
 古楽の世界では、例えばビートルズとストーンズが仲良くアルバムを作ってしまったのと同じくらい?衝撃的な「事件」だった。
 タリススコラーズ系の完全無欠なアンサンブルも良いが、(もともとそのような完全無欠な音楽でもあるので)
 こちらの共演盤における、異文化交流みたいな強烈な個性の激突の中からこそ、この世のものならぬすさまじい対位法、曲が持っている真の「美しさ」、究極の本質が鮮やかに浮かび上がる!

 ジャケットも輝かしい。(これがオリジナル盤)

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 現在は、このようなジャケットになっているようです。要注意。

 HMVの公式HP



 ちなみに、ヘンデルのイタ・カン(イタリアン・ソロ(orデュエット、トリオ)カンタータ、記事こちら)の主要登場人物たちも、神話の世界の羊飼いたちです。

 これらの音楽の雅さも、何とも新年にふさわしい。

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 以上、何となくお茶をにごしてきましたが、

 ここで、わたしにとってとても大切な「羊に関する音楽」を二つ。


 マイケル・ナイマン

 映画 「英国式庭園殺人事件」(ピーター・グリーナウェイ監督作品)サントラより

 羊飼いにまかせとけ

 ロックン・ナイマン、往年のマイケル・ナイマンバンドの、最もマイケル・ナイマンバンドらしい1曲。

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 Virgin VS

 羊ヶ丘デパートメントストア

 鈴木慶一さんプロデュースの、ヴァージンVSのオリジナルでは最高傑作と言える1枚。
 完全なるコンセプト・アルバム。

 セルフを含む数々のカヴァーで知られる、あがた森魚さんの代名詞の一つとも言える名曲、「百合コレクション」のオリジナル収録。
 やっぱり、この曲のやさしい掛け合いコーラスは、リッツとひかるでなくちゃ。

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 そう言えば、この人の指揮したオペラに、こんなのもありました。(記事、こちら

 モーツァルト 「羊飼いの王」

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 ヘンゲルブロック指揮のモーツァルトのオペラでは、つい最近、「ドン・ジョバンニ」を観ました。(ブルーレイ)

 ちょっとすごかったので、また改めて記事を書きます。


 それよりも、ヘンゲルブロック、あの日の約束を守って?また今年、日本に来てくれるみたい


 今年予定されているコンサートでは、その他にも、

 ずっと待ち続けてきたカンブルラン&読響のブルックナー(7番)

 また、今年生誕150年を迎えるシベリウスの後期交響曲(5、6、7番)を何と一夜で演奏するコンサート、
 (2月の尾高忠明&札響、12月のヴァンスカ&読響と、ちょっと探しただけで二つも!)

 などなど、

 見逃せないものがたくさん。

 特にシベリウスは、曲が曲だけに、とんでもない体験になるかも。 

 また今年も、いろいろと楽しみなことが多い一年になりそうだ。



 羊が出てくる小説。

 わたしにとっては、「羊をめぐる--」よりも、何と言っても、これ。

 「アンドロイドは、電気羊の夢を見るか」

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 最後に、美術作品も。


 トーハクの十二神将像


 典型的な鎌倉の十二神将。辻の薬師堂(現鎌倉国宝館収蔵)の十二神将、覚園寺の十二神将など、鎌倉を代表する十二神将像と、様式上のことはもちろんとして、大きさ、ポーズともよく似ている。


 全体像から、今年の干支、未神へとクローズアップしましょう。 


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 新年のトーハク仏像ルームは、この十二神将の他にも、新年らしく、七福神の中の神様等を前面に押し出した展示。

 (この展示は2015年2月22日(日)まで)


 また、トーハクでは、お正月恒例、「博物館に初もうで」も開催中。(~1月12日(月)まで)

 公式HP、こちら


 * 写真は昨年12月中に撮影したものです。



 おまけ。


 若冲や北斎なら羊くらい描いてるだろう、と思って探したが、なかなか良いものが無い。

 若冲作と言われているこちらの有名な作品に、何やら白いふわふわしたものがいるので、羊か?と思ってよく見たら、魔法使いの帽子みたいな巨大な青い角がはえている。(下の図録の部分を写した写真の真ん中あたりにいる動物。もう一方のプライスコレクションの鳥獣花木図屏風にも、この一角獣?はいて、そちらの方が角ははっきりしている)

 いずれにしても、いかにもめでたい絵なので、のせておきましょう。 

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 これまでも何度か出した、国芳の道外見冨利十二支より、

 未=三代目関三十郎の部分。周りの方々に比べ、思慮深そう?

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 上の絵もそうですが、干支全体が揃っているシリーズでは、けっこうあるんですが。


 ご近所の神社の灯篭と、(左、昨年の午と未が向き合っている)
 鎌倉英勝寺仏殿の江戸彫刻。(右)

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 最後に、日光東照宮・五重塔彫刻の未。妙にリアルな山羊にしか見えませんが。

 平和への祈りの象徴でもある東照宮の、最も平和な動物・羊。

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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

ANNA
2015年01月04日 18:29
Noraさん、あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

BWV41,171のカンタータで新しい年に足を踏み入れました。
なんて清々しく晴れやかな音楽なのでしょうか!
この音楽のような一年にしたいものですね。
Noraさんの新年記事、干支の動物にちなんだ美術品を見るのを毎年楽しみにしてます今年は羊繋がりのカンタータに、本に、CDジャケットも!羊尽くしですね。楽しく拝見しました。
ジョスカンの「パンジェ・リングァ」は、私もタリス・スコラーズで出会いました。
ご紹介のCDは持っておらず、聴いてみたいと思ってます。ジャケットデザインもオリジナル版がやっぱり素敵ですね…気長に探すとします。

元旦に「炎の体育会TVプレミアム~浅田真央ハッピーサプライズSP」でサンタに変身した真央ちゃんがフィギュア少女にレッスンする姿、それからフィギュアに寄せる思いのインタビューを観てとても幸せな気分になりました。
私も今年は、ショーを観にいきたいな~と思ってます。

2015年01月06日 11:46
 ANNAさん、あけましておめでとうございます。
 今年もよろしくお願いいたします。

 お正月はウィンナワルツもよいですが、やはりバッハの新年用カンタータもいいですよね。そう言えば、新年そのものをテーマにしたクラシック音楽というのは、他にはあまり無いのではないでようか。特に気宇壮大さなBWV171など、おっしゃるように新年の青空のような晴れ晴れとした気分にあふれています。

 羊に関する絵、あまり良いものが無かったので、今年は羊に係る音楽を思いつくままにあげてお茶を濁しました。日本人にとって、羊は他の動物ほど身近では無かったのかもしれません。干支のシリーズの一部としてはけっこうあるのですが。

 パンジェ・リングァ、こちらの演奏も、機会があったらぜひお聴きになってみてください。個性的な声、アンサンブルのぶつかりあいなので、タリススコラーズ盤等とのちがいに驚かれることと思いますが、そこから浮かび上がるポリフォニーは圧巻です。今度記事に書こうと思っていますが、廉価BOXセットなどにも入っております。

 真央サンタ、わたしも観ました!
 途中からサンタのスタイルがいきなりスリムに変化したのに気付いた子どもたちの怪訝そうな顔には笑いましたが、着ぐるみを脱いだ後のアイガットリズムの美しくしなやかな滑り、サンタになって笑顔を見せている時とは打って変わった、子どもたちに教えている時の厳しいほどに真摯な表情に、心から感銘を受けました。
 浅田選手は、やはり自分はスケートが好きなんだなと実感しています、とおっしゃっていましたが、わたし自身も、やはり氷の上の浅田選手がもっともっと見たい、と強く思い始めています。
ANNA
2015年04月02日 22:36
Noraさん、こんばんは。

アンサンブル・クレマン・ジャヌカンとペレス&アンサンブルオルガヌムによる
ジョスカンの「ミサ・パンジェ・リングァ」を念願のオリジナルジャケットのもので
入手できました。

これまでタリス・スコラーズの演奏で聴いてきたこの曲ですが、しなやかな印象の
タリス・スコラーズ、クレマン・ジャヌカンとアンサンブル・オルガヌムは、鮮烈な
印象。男声と混声と、それぞれ違った美しさがあるのでしょうけれど…
私はこちら、クレマン・ジャヌカンとアンサンブル・オルガヌムの方が好きかも
しれません。この曲が、改めて素晴らしい作品だと思いました。
素晴らしいアルバムをご紹介くださって、ありがとうございました。
2015年04月03日 23:03
 ANNAさん、こんばんは。

> 念願のオリジナルジャケットのもので入手できました。

 お聴きになりましたか!
 しかも、オリジナルの羊ジャケトを入手なさったとのこと。よかったですね。

> しなやかな印象のタリス・スコラーズ、クレマン・ジャヌカンとアンサンブル・オルガヌムは、鮮烈な印象。

 おっしゃる通りだと思います。
 一時期ジョスカンというと、まったくカゲが無いような、完璧な美しさを誇るタリススコラーズのような演奏が主流でしたが(さらにはルネッサンス音楽全体がそのような風潮でした)、このCDは、ジョスカンの神髄とも言える対位法的なすごさに改めて気づかせてくれたような気がします。
 実際にこの後は、目もさめるように生き生きとした演奏のルネサンス音楽のCDが増えました。

 このCDは泣く子も黙る歴史的名盤なので、これを機会に聴いていただいてほんとうによかったです。羊の音楽が無くて苦し紛れにのせたのですが、のせた甲斐がありました。
ANNA
2015年04月24日 13:55
Noraさん、こんにちは。

ミサ・パンジェリングァのアルバムを聴いてから、アンサンブル・クレマンジャヌカン
が私の中でブームです。とはいっても他に手元にあるのは2枚だけなのですが…
初めて聴いたのは『鳥の歌』で、次に出会ったアルバムが『フリカッセ』というタイトルの16世紀フランスのシャンソンのアルバムでした。
このアルバムで、セルミジやコストレという作曲家と出会って、ア・セイ・ボーチのギョーム・コストレのアルバムなども聴くようになったのでした。
今回のブームで、久しぶりにアンサンブル・クレマンジャヌカンのフランスのシャンソン
アルバムを聴きましたが、やはり「ビビッドな」、Noraさんがおっしゃるように目も覚めるような印象。
ともすれば同じような曲に聴こえる??この時代の音楽が生き生きとした鮮やかな印象を持って私の中に入ってきました。このビビッドな印象は、この声楽アンサンブルの個性なのかな?とても惹かれます。当分、アンサンブル・クレマンジャヌカンブームが続きそうです。


2015年04月26日 22:41
 ANNAさん、こんにちは。

 アンサンブル・クレマン・ジャヌカンの「鳥の歌」、歴史的名盤の一つですね。
 コストレやル・ジュヌなどのフランス・シャンソンのCDは、どれもみな、おっしゃるようにビビットな印象が魅力の良い録音だと思います。
 わたしは、時代的にルネッサンスよりも中世の方により惹かれるので、「パンジェ・リングァ」のコラボでは、どちらかというとアンサンブル・オルガヌムの方が身近な存在です。こちらも、初期ポリフォニーやノートルダム楽派、マショーなど、これ以上ないぐらいビビット。ヒリヤード・アンサンブル等を聴きなれた耳にはすごく鮮やかに感じらたものです。
 結局、その後、中世~ルネッサンス初期の音楽では、最後により「中庸」で自然な美しさのヴェラール&アンサンブル・ジル・バンショワにたどりつきました。今でも、アンサンブル・ジル・バンショワのブルゴーニュ・シャンソン集やデュファイのミサは、バッハ以上に大切な「心のアルバム」です。
 一方、ルネッサンス・ポリフォニーにおける「中庸」な美しさでは、やはりANNAさんもあげられているア・セイ・ヴォーチあたりが、真っ先にあげられるのではないでしょうか。これも、始めリリースされた時には、あまりの人間的な美しさに驚かされました。
 ジョスカンのミサ等では、今でもア・セイ・ヴォーチのものが一番しっくりきます。

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