森と海の仏たち~「みちのくの仏像」展(+オルガンとボート) @トーハク

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 1月の最後の日、ついに行ってまいりました、「みちのくの仏像」展!



 1月31日(土)


 特別展 「みちのくの仏像」

  @ 東京国立博物館 本館特別5室 ~4月5日(日)まで


 (同時期開催)

 特別展 「3.11大津波と文化財の再生」 ~3月15日(日)まで)


▽ 昨秋撮影した看板

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 東北6県の広大な地域から、それぞれの県を代表するような名仏中の名仏が一堂に会した、正に一期一会の仏像展。
 オールスター有名仏ばかりなので、これまで開催された仏像展等で観たことのある、おなじみの仏像たちも。
 しかし、数はそれほど多くはないものの、厳選された、思いっきり個性的で貴重な東北ならではの仏像たちが、コンパクトな会場に高密度かつ実に効果的に展示されている様子は圧巻の一言、個々の仏像を観たことがある人でも必見!
 以前円空展でも同様のことを感じたが、東北の豊かな森がそのままトーハクの中に出現したかのような、独特の空気感の展覧会だった。


 わたしにとっては、6年前の特別展「平泉-みちのくの浄土」で観たことのある仏像もかなり重なっていたが、以前の記事は平泉のことがメインになっているので、今回はなるべくたくさんの仏像についてかんたんな感想を。


 まず、展示会場に足を踏み入れると、いきなり、正面にいらっしゃった岩手・天台寺の聖観音菩薩様と再会。この方は、もはや何度めかは判然としない。
 東北の仏像の大きな特徴の一つでもある樹木崇拝が、目に見える形で結実しているこのあまりにも有名な鉈彫像のことは、さすがに以前の平泉展の記事でも細かく書いている。
 今回改めて、すぐ近くで四方から拝観したが、全体の造形や頭や衣の造形など見れば見るほどモダンで、知らなかったら、今回の展覧会でも最後に登場する円空の時代、いやそれ以降の作品じゃないかと見まがうだろう。見ようによっては中近東あたりの古代像みたいにも見える。
 保存状態も抜群でとても平安仏とは思えないくらい。

 それに続いて、
 同じく天台寺の、一目見たら忘れられないユニークな相貌の、上記聖観音とはまた異なる鑿跡が美しい如来像
 山形・吉祥院からいらっしゃった、頭が大きすぎたり小さすぎたりする千手観音ほかの菩薩群等、
 否が応にも「樹木」を強く感じさせる仏像が続く。


 その導入部をくぐりぬけ、空間が大きく開けた瞬間に、思わず息を飲む。

 早くも、東北三大薬師様が総登場!

 福島からは、勝常寺の国宝・薬師如来様
 宮城からは、双林寺の薬師如来様
 そして岩手から、黒岩寺の薬師如来様

 千葉もそうだったが、東国・東北は、薬師如来の王国、
 その中から3県を代表する薬師如来様が勢ぞろい。
 勝常寺像はどっしりとしてまるで銅像みたい。いかにも親分、といった雰囲気で、元興寺像や神護寺像がどかっと座ったようなイメージ。とても頼りがいありそう。
 双林寺像は木造としての特質が最大限に生かされたやさしく暖かな造りで、表情は厳しいものの、どちらかというと女性的。この像は、東日本大震災(余震)でかなりのダメージを受けてしまったが、美しく修復され、蘇ったとのこと。
 黒岩寺像は古代の石像風か。どこか日本最古の仏像の一つでもある飛鳥大仏を思わせる風情が感じられる。シンプルで古風だが厳格な表情、貞観地震と東日本大震災、2度にわたる超巨大地震に耐えた力強さがみなぎっている。
 これら3体の特徴的な薬師如来様が、これまた特徴的なそれぞれの両脇侍を従えて、対峙していらっしゃる。
 正面の勝常寺像、
 そのやや前方、左右のはじに向かい合うようにして、双林寺像と黒岩寺像、
 東北三大薬師三尊に三方を囲まれた、歴史的とも言える、ちょっとありえない空間。

 3体の視線がぶつかり合う中央に立てば、たちまち元気いっぱいになりそう。


▽ 黒岩寺像 

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▽ 勝常寺像(左)と双林寺像

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 さらに、その背後を振り向けば、勝常寺像の真向かいには、

 成島毘沙門堂の奥方様(伝吉祥天像)秋田小沼神社の観音様、どちらも頭に不思議なものをのせた、ぽっちゃり・超スリムの美仏コンビ。

 たくさんあった腕が失われて前方に向けた2本だけが残り、まるで押し相撲をしているような印象的なポーズの伝吉祥天像の頭上には、何と2体の象の頭が、
 そして、観音像の頭上には、かわいい頭巾をかぶったニコちゃんマークみたいなもの(解説には「雪ん子みたい」とあった)が、
 それぞれ乗っているのに注目。

 東北を代表する美人仏と言われる伝吉祥天像については、以前の平泉展の記事にくわしく感想を書いています。
 この像、観ていると、ほんとうにあたたかい気持ちになってくる。
 早く、旦那様?の成島毘沙門天が観てみたい!


 この空間を過ぎると、後半。


 またまた超モダンな2像、

 青森・恵光院の女神坐像毛越寺の有名な訶梨帝母坐像(鬼子母神)。
 特に、女神坐像は、これまで観たどの神像に比べても、生き生きとしている。

 続いては、山形・本山慈恩寺から、カラフルでド迫力な、純正統的慶派十二神将
 そのうち、丑神、寅神、卯神、酉神の、とびっきり造りの美しい4体。
 これも、絶対に観たかったもの。
 4体ともやたらかっこいいが、よく見ると、衣裳や履物等、かなり個性的。


 それらに見とれながら進んでいくと、ふと、背後にすさまじい視線を感じる。

 振り向いて、思わず立ち尽くす。
 そこには、観たことも無いような素朴な姿の巨像が。

 宮城・給分浜観音堂の十一面観音立像
 ある意味、これが今回の展覧会で一番インパクトがあった。
 よく持ってきた、もとい、よくいらっしゃってくださったものだ。

 牡鹿半島の先端に安置されている、どこまでも大らかな海の観音。
 お堂が高台に位置しているため、津波の被害はまぬがれた。
 大きな手で大きな蓮の花を持っているが、頭上のたくさんの顔も、まるでその蓮の花のように放射状に広がっている。しかもそのチューリップみたいな頭が大きい。途方も無く大きい。大きな花が二つ。
 そしてよく見ると、頭の先からは、光の塔のようなものが突き出ている。こんなものはこれまで見たことも無い。

 と言うわけで、全体的に突っ込みどころの多い、あからさまに妙なバランスの異形の像だが、優れた像の常として、正面からきちっと見上げると、不思議な美しさを感じる。うっとりしてしまうほど。
 また、全身にそのまま残された木目も、新築の家の柱みたいに清々しい。
 実に、東北の海際に一人立つ巨樹を思わせる一体。


 そして、大充実のこの仏像展、ラストには、円空仏が並んでいる。

 円空にしては丁寧な造りの3体。
 いつものように不思議な微笑みをたたえて、お見送り。


 一応、展示されていた全仏像について、書けたかな?

 会期は4月まで。もう一度、行きたい。この空間に身を置き、呼吸したい。



 「みちのくの仏像」への道(オルガンとボート)


 訪れたのは、都心でもこの冬初めての積雪があった日の翌日、よく晴れわたったが風の冷たい1月最後の日。

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 玄関前には、ボートが。

 仏像展と同時開催されている「3.11大津波と文化財の再生」展関連の、岩手県立高田高校海洋システム科の実習船「かもめ」
 大津波後2年間太平洋を漂流した後、アメリカカリフォルニア州クレセントシティで、びっしり貝類が付着した状態で発見された。

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 玄関ホールの様子も普段とはちがう。

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 玄関ホール正面階段踊り場には、オルガン。

 三省堂機械標本部によって製造された陸前高田市立博物館所蔵のリード式オルガン。(明治末~大正初)こちらも津波によって致命的なダメージを受けたが、美しく修復された。

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 修復リードオルガンコンサート


 壮大な玄関ホールのど真ん中に、オルガンが鎮座していて、教会みたいな雰囲気。

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 この日(1月の回)の担当は、作曲家でピアニストの中村由利子さん。

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 トーハクの雪景色


 トーハクを訪れたのは、1月の最後の日。
 この日も、まだ少しだけ、雪が残っていた。

 この前日(1月30日)の通勤時は激しい雪でどうなることかと思ったが、幸い昼になる前に雨に変わり、この時は大したことはなかった。

 本日(2月5日)も、東京を含む広い範囲で雪となっているが、被害等無ければよいのだけど。


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 空はどこまでも青く。

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 テラスへ。

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 なぞの足跡

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 注:ここからテラスの下に下りることはできません。



 折しも浮世絵ルームで展示されていた春信の雪の絵。

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 トーハクから外に出ると、まだ遠い春を感じさせるような花々が。

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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

マール
2015年03月23日 12:48
ついに、いってきました。東京国立博物館。みちのく仏像はもちろん、常設展も素晴らしくて
なんか、頭の中が飽和状態になってしまいました。私の脳内の許容スペースを完全にオーバーしてしまいました。楽しい場所ですね~ずっといたいような場所でした。今度はいつ上京できるかわかりませんが、また行きたいです。いろいろ教えていただいてありがとうございました。
2015年03月24日 21:54
 マールさん、こんばんは。
 おー、ついに行かれましたか。トーハク、気に入っていただけたようでうれしいです。

> 頭の中が飽和状態になってしまいました。

 わかります、わかります。わたしも何度も行ってようやく観るツボみたいなものがわかってきました。それがわかってくると、季節ごとに展示内容も変わるので、行くのが楽しくてしかたなくなります。今は年間パスを常備し、HPや公式ツイッターなどで観たいもの、気になるものが出品されるとピンポイントで観にいくようにしていますが、その目的のところに行く途中でまた思いがけない掘り出し物を見つけたりすることも。
 ぜひまたの機会にもいらしてください。

 みちのくの仏像展、すごかったですね。
 これからもなるべく多くの仏像を観て、感想を書いてゆきたいと思いますので、よろしくお願いします。
 、  

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