そして福永武彦に還る。期待の指揮者、ダウスゴーのシベリウス~シベリウス巡礼最終回【復活節前8】

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 シベリウスの生誕150年だった昨年実施したシベリウス巡礼、年をまたいで、いよいよ最終回!
 ほぼ1年前の春の札響を入れると、シベリウスのコンサートもこれで7回目、今回は、中でも最も聴きたかった、期待の指揮者のライブ。
 


 新日本フィル 第552回定期演奏会 <トリフォニー・シリーズ>

 シベリウス 組曲「レンミンケイネン」ー4つの「カレワラ」伝説 op.22

 ニールセン 交響曲第5番


  トーマス・ダウスゴー指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団

  森 明子(イングルッシュホルン)

  @ すみだトリフォニーホール


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 ダウスゴーさんは、デンマークの作曲家&指揮者。
 これまでブルックナー2番のCD(記事、こちら)、シベリウス5番ほか交響曲の名曲が収録されたブルーレイ(記事、こちら)等を聴いてきて、その名前はわたしの心の中でとても大きくなっていた。

 幸運にも、ヘンゲルブロック、ネゼ=セガン、ド・ビリーの実演を聴くことができた現在では、最も実演を聴きたかった指揮者だったと言ってよい。

 そのダウスゴーさんが日本のオケに客演し、しかもシベリウスを演奏すると言うので、昨年の「シベリウス巡礼」の締めくくりのつもりで聴きに出かけた。



 シベリウスの「4つの伝説曲」


 シベリウス生誕150年の昨年中は、「絶対音楽」である交響曲を中心に、実にさまざまなシベリウスの演奏を聴き、実に多種多様な現代のシベリウス演奏を体験、それぞれがかけがえの無い魅力を持った最高のシベリウスであることを確信し、そのことを記録もしてきた。


 今回聴く「4つの伝説曲」は、ど真ん中の「北欧のシベリウス」。
 しかも、演奏は、フィンランドではないものの、同じ北欧デンマークの天才指揮者、ダウスゴーさん、
 最後はもうややこしいことは考えずに、ベタな「北欧のシベリウス」をただただ堪能しようと、わくわくしながら演奏会にのぞんだ。
 そして、期待以上のぜいたくな時間を味わうことができた。


 正に北欧の指揮者ならではの、共感に満ちた表現。

 「トゥオネラの白鳥」におけるオーボエは、新日本フィルの森明子さん。
 冷たく澄み渡りながらも憂いに満ちた響きが最高!始めから終わりまで、一瞬もその佇まいを崩すことなく吹きぬいた!
 その絶品のソロに、まるで絶えず色彩を変化させるオーロラのように常に表情を変えながら、やさしく、そして幽やかに寄り添うオケの美しさ!
 

 わたしにとって、「トゥオネラの白鳥」と言えば何と言っても福永武彦だが、「死の島」とそのさらなる源流とも言える堀辰雄等にまで連なる世界をどっぷりと堪能。
 初めて「死の島」を読んだ時の胸がしめつけられるような情感が鮮やかに蘇ってきた。
 そうだ、シベリウスというのは、わたしにとって、そういう作曲家だった。
 久しぶりに割と文学に親しんでいた学生時代にタイムスリップしたような気分。
 もうはるか昔のことだ。

 ほぼ1年にわたるシベリウス巡礼を、最高の演奏でしめくくることができました。



 そして、ダウスゴーさんの音楽への「共感」が、さらにマックスまで増幅したのが、ダウスゴーさんと同郷のこの作曲家だった。

 ニールセンの5番など、まったく聴いたこと無く、実はおまけのようなつもりで演奏にのぞんだのだが、
 演奏会におけるクライマックスは明らかにこちらの方だった。


 ニールセンの5番


 この曲は初めて聴いたので、曲自体について少し詳しく記録しておく。


 第1楽章。

 シベリウスか、あるいはブルックナーを思わせる印象的な開始。
 突如おなじみの風景が立ち現れ、思わず胸が高鳴る。

 しばらくはその冒頭のモチーフが支配的な清々しくも穏やかな部分が続き、聴いていて、ああ、ニールセンもいいな、とうっとりと聴いていたが、
 やがて小太鼓を始めとする軍楽隊的なリズムが湧き起り、激しく嵐のような場面に。
 作曲当時のニールセンに大きな暗い影を落としていた第一次世界大戦を暗示しているのだろうか。
 嵐のような場面が終わると、朗々としたコラール風の音楽が始まり、対位法的に絡まり合いながら、これでもか、これでもか大きく盛り上がってゆく。
 それとともに再び小太鼓等も加わるが、この小太鼓が、まるでフリージャズのドラムスを思わせるような即興的かつ激烈なもので、そのリズムにあおられ、音楽全体もえらいことに。
 その頂点で、ドラムスが最後の激しい連打を叩き終えると、音楽はまだ続いているのに、ドラム奏者は突然立ち上がり、舞台からスタスタ立ち去ってしまう。
 これはいったい??と見守っていると、音楽は静まり、静謐な和音が繰り返される中、遠くで、また激しいドラムの音が。
 このドラムの音は、激しさはそのまま、どんどん遠ざかってゆき、やがて聞こえなくなると、舞台で奏されている和音もちょうど空中に消え去るように途絶え、第1楽章、終わり。

 とても面白かった。CDで聴いても良いとは思うが、これは生の舞台で聴くべき音楽だろう。


 第2楽章。

 これまた、ちょっとピントがはずれたブルックナーのスケルツォみたいな音楽で始まる。

 その後、古風だが躍動的なテーマによるフーガ、静謐な弦のテーマによるやはり対位法的な部分。
 これらは、バッハのオルガン曲を少々近代的にした感じ。また同時に、ベートーヴェンのカルテット、あるいはブルックナーの5番や9番のフィナーレのフーガを思わせ、わたしなどはゾクゾクしてしまった。

 最後に、複雑なリズムと調整を離れたモチーフによる混沌としたクライマックスとなり、コーダでは、それらをむりやり一つのリズム、和音にまとめあげて、エンディング。


 ・・・・と、こうして思い出すままに書き連ねてみると、まったく取り留めのない感じで、実際たいへんな難曲だと思うのだが、
 ダウスゴーさん&新日フィルの演奏は、まるで誰もが知っている大名曲の大演奏といった感じで、決然と、感動的に響きわたっていた。
 同郷デンマークの代表的作曲家の作品である。作品そのものが完全に血となり肉となっている上に、ダウスゴーさんの指揮の技術、音楽を表現する情熱も桁はずれなのだろう。
 新日本フィルも、よくそれに応えていて、とにかく迷いの無い堂々とした演奏だった。
 これまで幾度か聴いたブルックナーやシベリウスの演奏で印象的だった、新日本フィルならではの突き抜けた響き、呼吸の深さも完全にプラスに働いていた。



 ダウスゴーさんの指揮について


 遠目で見ると、頭が大きく、手足が細い。ルパン三世の次元みたいな体系。


 アグレッシブ、情熱的に奏者と直接対峙。

 中腰、前のめりになって、視線と言うか、顔をそのまま次々と、グワッ、グワッと奏者の方に向ける。ダウスゴーさんが「ガン見」したあたりから、印象的なモチーフが立ち上り、それが絡み合ってゆくのは、「観ていて」たまらなくおもしろい。
 指揮台の隅から隅まで絶えず移動し、指揮台の角に半分足をはみださせて立ち、さらに体を前倒しにするので、指揮台から落ちないか、何度か本気で心配になった。
 いっそのこと、ヘンゲルブロックみたいに(最初の来日時)指揮台を取っ払ってしまえばいいのにとも思う。
 決してスタイリッシュではないが、音楽の造られてゆくさまがよく見えるので、ある意味ビジュアル系の指揮者なのでは。


 ただ、これだけだと、ダウスゴーさんの指揮の本質にはまったく触れていないことになる。

 ダウスゴーさん、このように、指揮姿だけ見るとまごうことなき熱血系なのだが、その音楽は、根本的に驚くほど精緻、実に見通しが良い。
 常に作曲家としてのまなざしが演奏を貫いている。これは一番はじめにダウスゴーさんの音楽(ブルックナー2番)を聴いた時に最も感じたことでもあるが、そのことが上記したように、ニールセンの超難曲をとてもよくできた大名曲として響かせている。
 4つの伝説曲の繊細さ、透明感もただ事では無かった。
 そして、そうした精緻さが始めにあった上で、実際に会場に鳴っている音は、誰にも負けないくらい気持ちがこもっていて、情熱的なのだ。
 ものすごく分析的で精緻な演奏をする人はよくいる。一方、ものすごく情熱的な演奏をする人もよくいる。
 しかし、これほど精緻でありながら、熱き血が通い、熱のこもった演奏をする人は滅多にいないような気がする。
 ダウスゴーさん、すべてを見とおすような作曲家の目と表現者としてのあふれる情熱を奇跡的に兼ね備えた、稀有の存在なのだ。

 これは、以前ご紹介した、シベリウスの5番も入った交響曲名曲集のブルーレイ等によって、ぜひご自分の目で、耳で、体験してほしい。


 あふれる情熱、音楽の完成度、いずれも超一流。
 この日はけっこう空席が目立っていたが、(おかげでゆったりのんびりとライブを楽しめた)
 いずれ、この人の演奏会は常に超満員と言う日が必ず来ると思う。


 特に、シベリウスの前半が終わって帰ってしまう客が目立ったが、上記したような名演奏を聴き逃すとは 、実にもったいない。



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 いつもの店で腹ごしらえ。

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 開演時間までホテルで時間つぶし。


 ジャズライブ開催中。

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 すみだ北斎美術館オープンを記念しての、北斎の展示。

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 今日は、ズームで。


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 シベリウスの4つの伝説曲の記事なので、雪の写真を。


 雪の盛岡から帰ってきたら、東京でも雪になった。


 雪の数日後の植物園。


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 雪はかなり残っていたが、シモバシラの氷はちょっとの差で溶けてしまっていた。

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  ☆    ☆   ☆



 最後になりましたが、カンタータのお知らせ。


 今度の日曜日(1月31日、復活節前第8日曜日)のカンタータは、

 初期のBWV18
 ライプツィヒ1年目のBWV181
 2年目(コラール・カンタータ)のBWV126

 の3曲です。

 第2年巻、コラールカンタータ、輝かしいフィナーレ、BWV1に向けて、いよいよクライマックス!


 過去記事は、こちら↓


 <復活節前第8日曜>

    復活節前第8日曜(BWV126他)
    復活節前第8日曜(BWV126他)
    究極のトロープス・コラール(BWV126)



 また、2月2日は、バッハのカンタータの中でも屈指の名曲がずらりと並ぶ、御存じマリアの潔めの祝日。

 カンタータの王冠、BWV82を筆頭に、生涯のそれぞれの時期のバッハが、渾身の力を込めて書いた錚々たる作品群。

 【マリアの潔めの祝日・カンタータ一覧】 (一言コメントつき)

 をご参照の上、あなたの大切な1曲を見つけてください。


 過去記事は、こちら↓ 

 <マリアの潔めの祝日>

    マリアとバッハ~はじめて聴くカンタータ
    お気に入りのアリアその3(BWV82)~夕映えのR.シュトラウス
    シメオンの涙~マリアの潔めの祝日 【潔めの祝日・カンタータ一覧】
    お気に入りのアリア・潔めの祝日編 とっておきの1曲(BWV157他)
    カンタータの名演を試聴してみましょう!(BWV82他)
    カンタータの祭典!!マリアの潔めの祝日&五旬節
    雪のエストミヒ
    バッハ入魂!BWV125





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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

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カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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