かくして古代に帰結する。安田靫彦展~初夏に観る近代日本絵画・その1【復活節後5】

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 今日(5月1日、復活節後第5日曜日)のカンタータは、

 ライプツィヒ1年目のBWV86、
 2年目のBWV87、

 先週と同じく、1年目は定型カンタータ、2年目はツィーグラーカンタータとなります。
 BWV87、初夏の新緑の輝きにも通じる、光り輝くシチリアーノの登場です。 

 
 過去記事は、こちら↓


 <復活節後第5日曜>

    お気に入りのアリアその4 天上のシチリアーノ・光の波間に漂う~BWV87



 カンタータに連動するかのように、周囲の風景も初夏のきらめきに満ちてきました。

 そんな中、この頃は魅力的な近代日本絵画の展覧会が数多く開催されているので、それらの記事を順番に。



 安田靫彦展

  @ 国立近代美術館 ~5月15日(日)まで。


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 「いざ竹橋」の印象的なポスター。

 頼朝好きのわたしも馳せ参じました。

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 会場に入ってすぐに、15、6才時を含む10代の少年時代に描かれた作品の密度の濃さ、迫力に驚かされた。
 一瞬でこの人が天才だということを思い知らされた。

 しかし、その後画家として成長してゆくと、一本一本の線がどんどん重みを増してゆくのに反比例して、線そのものの数は減少し、余白が多くなってゆく。
 余白が雄弁に物語ることこそが日本美術の神髄だとは思うのだけれど、わたしは安田靫彦の余白に何だかさびしい「無」を感じてしまった。
 法隆寺金堂壁画の影響が大きいとのことで、あの線、余白を創出したいという気持ちはわかるのだが。
 もっともこれは、わたしの修業不足、感受性の乏しさのせい、という可能性も多分にある。

 例えばユニークな「風神雷神図」
 宗達の「風神雷神図」の余白にはさまざまなものが漲っている。見えない風や電気等のエネルギー、大気や宇宙そのものの気配みたいなものがびしびし伝わってくるのだが、この安田安田靫彦の「風神雷神図」の場合、わたしには目に見えるものしか見えなかった。
 原初的な形を模索した結果という風神雷神の姿も、何だかあざとく感じられてしまって、トーハクで観た今村紫紅の風神雷神の無垢さからは程遠く思えた。

 「黄瀬川陣」にしても、目の前にすると、余白の空虚さばかりに気をとられてしまった。(もっともこの作品に関しては屏風を平らにしての展示だったせいかもしれないが)
 とは言え、(これはすべての作品に言えることだが)、衣裳の装飾の美しさはただごとではない。特に花々のモチーフ。
 ちなみに、画家は梅が大好きで、晩年は庭にたくさんの梅を育てていたそうだが、梅の絵がまたやたらとうまいのだ。どの梅も思わず息を飲むほど。こんなにうまい梅の絵はこれまで観たことが無いくらい。
 いずれにしても、頼朝公をよくぞここまで美しく書いてくれたものだと思う。
 一つだけ疑問。頼朝の籠手等の蝶の装飾、確かにこの時代にふさわしい品格があり、美しいのだが、蝶ははあからさまに平家を連想させる。これでいいのだろうか。安田靫彦の時代考証の徹底ぶりは誰もが評価するところなのだが・・・・。それとも何か意味を持たせているのだろうか。

 そんなことを考えながら、作品をたどってゆくと、
 最晩年になって、画面に密度の濃い背景がどんどん戻ってきた。
 しかもファンタジー豊かで壮麗、そしてあたたか。
 登場人物を描く線もさらに自由に生き生きと躍動し、美しい夢のような背景に溶け込む。
 このあたりの作品は、ただただ圧巻の一言。
 画面が豊かになればなるほど、余白が多かった頃に比べ、真の「透明感」も増してゆく。
 最晩年の古代画はどれも、はじめに感じたこの画家の天才が見事に結晶化した、かけがえのない傑作だと思う。


 横山大観が題字を書き、安田靫彦以下錚々たるメンバーが東京の名所の風景を書き連ねた、画帖形式の「東都名所」が興味深かった。
 川端龍子の「日比谷」、長野草風の「金龍山」など、今では失われてしまった東京の風景を、生き生きとした筆致と工夫をこらしたアングルで堪能することができた。
 「金龍山」の幻のような十二階の影が、美しかった。



 すごすぎる兄弟


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 所蔵作品展で見かけた、兄弟二人の関係者の方。(文覚上人。荻原守衛「 文覚」)

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 今度は、前田青邨の頼朝公(「洞窟の頼朝」)に会いにゆきたい。

 

 MOMATコレクション

 特集 「春爛漫の日本画まつり」

  こちらも、~5月15日(日)まで。


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 これがまたよかった。

 安田靫彦以外の日本画オールスターの画家が勢ぞろい。

 それぞれの画家に対する安田靫彦のコメントが添えられているのがおもしろかった。


 正に春爛漫。川合玉堂 「行く春」

 春が去ってゆく、というより、春の行軍という感じ。

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 今村紫紅

 あいかわらず、紫紅らしい、ぽわーんとした作風。「のどかさの極北」としか言いようが無い。
 あまりにも若い「最晩年」の作品。

 「春さき」

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 と、思ったら、隣には、こんな作品も。

 「時宗」

 堂々たる歴史画。この日観た(安田靫彦作品も含む)歴史画の中で、最も心に迫ってきた。
 僧は無学祖元と思われるので、建物は円覚寺だろうか。
 これも鎌倉ゆかりの一コマを描いた一枚。

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 こちらも、晩年の、

 「印度旅行スケッチ」

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 やはり、わたしは無条件に紫紅が好きだ。


 小林古径 「極楽井」

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 菱田春草 「賢首菩薩」。春草は、小展覧会と言っていいほど、多くの作品が出ていた。

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 「雀に鴉」 「林和靖」

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 春、というより、夏のきらめきを感じさせるような、おなじみの洋画。

 左、和田三造 「南風」。右、南薫造 「六月の日」。

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 関根正二 「三星」。やはりうまいと思う。とてつもなくうまい。

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 美術館から観る風景。

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 竹橋周辺。

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 ゴジラ

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 ニューオープン、東急プラザ・銀座


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 屋上庭園。

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