浅田真央選手の新エキシビションナンバーは、バッハの「チェロ・スイート」(無伴奏チェロ組曲?)

※6月26日追記:公式サイトで2016/2017年シーズンのプログラム曲が発表されました。
  EX  チェロ・スイート (「Sarabande」&「Bourree I/II」) : バッハ
  FS  Ritual Dance : Falla
  SP  Ritual Dance : Falla

エキシはバッハの無伴奏チェロ組曲からサラバンドとブーレ、
何番かは発表されていないが、ブーレがあるのは、3番ハ長調(BWV1009)と4番変ホ長調(BWV1010)だけ。よく知られる3番の方か?

SP・FSはファリャの「Ritual Dance」(「恋は魔術師」の火祭りの踊り ?)

サラバンドはスペイン風舞曲なので、何と、オールスペインプログラム!


この記事のコメント欄で、たこすけさんが、ヨーヨー・マと「ボレロ」の伝説的名演技で有名なサラエボ冬季五輪の金メダリスト・トーヴィル&ディーンとのコラボによる第6番のサラバンドの映像を教えてくださいました。
できればこのようなものが観たいと思っていたところ、ブーレ付なので番号はちがうかもしれませんが、夢の演技が現実のものになるかもしれません。



  ☆    ☆    ☆



 前回の「浅田真央選手情報」のページに追記している通り、6月1日に名古屋で行われたThe Ice の記者会見で、これまでバッハの音楽とだけ発表されていた浅田真央選手の新エキシビションナンバーについて、浅田選手自身の口から「チェロ・ベースの曲」と明かされ、関係者によって「チェロ・スイート」であることがわかりました。

 バッハの無伴奏チェロ組曲は、全体としては6つの組曲(=スイート。それぞれがプレリュードと5曲の舞曲からなる)が集められた大きな曲集なので(つまり全部で36曲もある)、「チェロ・スイート」という言葉だけではそのうちのどの曲なのかは判然とはしませんが、一般的に広く知られているのは曲集の一番最初の第1番ト長調プレリュードなので、この曲が使用される可能性は高いような気がします。(個人的には3番や5番、6番のキャッチーな舞曲等も面白いとは思いますが)

 録音も、歴史的大演奏家のものから気鋭の若手アーティスト、最新の古楽演奏まで(中にはこの曲集はもともとはこの楽器のために書かれたのでは?と想定されているヴィオロンチェロ・ダ・スパッラという肩掛け小型チェロによる演奏も)、オリジナルに限定しても「これが同じ曲?」と思えるほど多種多様。
 これ以上ないシンプルなフォーマットに音楽のあらゆるエッセンスをぎゅぎゅっと詰め込んだ人気曲だけに、アレンジもやたら多く、チェロ以外の弦楽器、ギターや鍵盤楽器等はもちろん、サックスやフルートを始めとする管楽器、その他アンサンブルによるものまで印象的なものがそろっていて、特にジャズ系のアーティストは古くから好んでこの曲をとりあげてきました。
 現代では、電子楽器からヴォーカル系までその演奏の可能性は限りなく大きく広がっており、果たして浅田真央さんがどの音源で演技をするのか、現時点ではちょっと見当もつかないというのが本当のところです。

 ただ、どのような演奏、どのようなアレンジであろうと、バッハはバッハ、その核心はびくともしません。それがバッハの音楽です。しかも、無伴奏!
 浅田真央さんが無伴奏を舞う!
 バッハと浅田真央さんのコラボ。
 夢のようです。こんなに幸せなことはありません。これまでずっとこの時を待ってきたような気がします。

 バッハの無伴奏はクラシックの聖典のように扱われていますが、その本質はダンス!(ついでに言っとくと、多くのカンタータも)
 そもそもバロックの「スイート」は、さまざまな踊りの音楽を集めた舞曲集のこと。つまり近現代のバレエ音楽の源流の一つ。
 そういう意味でも、浅田さんが舞うのにふさわしい音楽と言っていいと思います。プレリュードだとしても、舞曲の導入部なんだから話は同じ。
 バッハの無伴奏と言えば、バッハ本人や大演奏家の厳めしい顔がまず浮かぶと言う方が多いと思いますが、今後は真っ先に浅田真央さんの笑顔が思い浮かぶようになれば、こんなにうれしいことはありません。
 それはバッハの無伴奏という音楽の神髄にかかわることでもあるのです。
 いずれにしても、浅田真央さんを代表するプログラムの一つになることを願ってやみません。



 * 実は有名なG線上のアリアの原曲も管弦楽組曲という「スイート」の中の1曲なので、
   チェロ・アレンジのG線上のアリアなども「チェロ・スイート」と言えなくもないわけですが、
   とりあえずここでは、「チェロ・スイート」=チェロ組曲と素直にとらえることにしました。



 <参考>

 浅田真央選手が使用するのがこんな演奏だったら、最高にかっこいいだろうな、という無伴奏チェロ組曲第1番・プレリュードの演奏を貼っておきます。
 但し、これは多重録音(一人何役もの映像)みたいなので、アイスレジェンドみたいな生演奏コラボはムリだな。

 アドリブ部分は、平均律プレリュードにのせたグノーのアヴェ・マリアを、無伴奏プレリュードにのせて自然に「歌って」いるちょっとすごいアレンジ。 

 (The Piano Guys のYou Tubeチャンネル)




 バッハの無伴奏曲は、日本では古くから「無伴奏」と言われ続けてその名が定着していますが、正確には、伴奏者がいないというだけ、すなわちソロということで、その音楽自体には、一般的に伴奏に相当する部分、リズムや和音、さらにはいくつもの声部の対位法的な対旋律までもが存在します。
 普通だったら何人もの演奏者で演奏する多声音楽をたった一人で演奏するわけで、ちょっと考えるとあり得ないようなことですが、恐らくはケーテン宮廷の娯楽音楽としてそのような音楽を書いてしまったところがバッハの恐るべきところ。
 そういう意味で、一人の人間が次々と増殖して音楽を膨らませてゆく上の動画は、ある意味バッハのソロ・チェロ・スイートの本質を見事についているように思います。

 わたしはもちろんチェロを弾くことができませんが、チェリストがソロ・チェロ・スイートを弾いていると、頭の中に、上の動画のように、もう一人の自分が、さらには三人目、四人目の自分が次々と現れてくるのでは?
 逆に言えば、そういうことが起こった時に初めて、ダンス音楽としてのこの曲が、生き生きと再現されるのではないでしょうか。



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 最後になってしまいましたが、この場を借りて、カンタータのお知らせ。


 今度の日曜日(6月5日・三位一体節後第2日曜日)のカンタータは、

 ライプツィヒ第1年巻の、BWV76、
 2年目、コラール・カンタータ第2曲、BWV2、

 の2曲。


 過去記事は、こちら↓


 <三位一体節後第2日曜>


    始まりはいつも Overture(BWV2、76他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    三位一体節後第2日曜日(BWV2、76)





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「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2016年06月08日 10:17
こんにちわ。
アイススケートとバッハということでは、
よよまがこんなことをやっていました。ご存知かもしれませんが。
https://www.youtube.com/watch?v=WOrntzRsqi0
ぼくはこれを見るたびに涙が澎湃として流れだし脱水症におちいります(T_T)

2016年06月08日 22:48
 たこすけさん、どうも。
 これ、以前玉三郎さん等とのコラボでかなり話題になったDVDですよね。
 ここに登場しているアイスダンスのカップルは、「ボレロ」の伝説的名演技で有名なサラエボ冬季五輪の金メダリスト、トービル&ディーンだと思いますが、一昨年、ザ・アイスというアイスショーで、浅田真央さんとジェフリー・バトルがその伝説的プログラムを参考にした「ボレロ」を滑り、感動しました。
 ちなみに浅田真央さんは玉三郎さんともCMで共演してます。(関係無い)

 このサラバンドは、演奏、映像とも、ほんとうに感涙ものですね。6番はもちろん、その他のコラボも全部観てみたくなりました。
 本文にも書いた通り、ほんとは浅田真央さんにも、このサラバンドみたいな5番や6番のキャッチーな舞曲、しかもオリジナル演奏で演技してほしいところではありますが、今回はエキシビションナンバーということで難しいかもしれません。
 しかし、どのような曲であろうとバッハはバッハ、心から楽しみにしたいと思います。

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