復活節後第6日曜日 白い花、赤い花

まずは、先週のカンタータを聴いた一口コメントから。


いずれも、ヘンスラー全集のリリング盤。


復活節後第5日曜日のカンタータからは、

2年目、ツィーグラー・シリーズBWV87の光と風の波間のシチリアーノも捨てがたかったですが、
今年は、前回までに引き続き、1年目、器楽オブリガート付コラール編曲楽章を有する「定型カンタータ」の、BWV86を聴きました。

1曲目、のびやかなテーマに基づく、そしてのびやかなバスのパートを含む、古風な合唱フーガ風なアリオーソ。
2曲目は、打って変わって、近代コンチェルト風ヴァイオリン・オブリガートが鮮やかな、アルトアリア。
バッハ先生、攻めてます。
そして、3曲目は、いつものように器楽オブリガート付きコラール。
今回は、2本の愛のオーボエとbcの見事なトリオによるオブリガートが、心にしみわたる。
レチタティーヴォの後に続くのは、一際流麗なストリングスのオブリガートが、初夏の青空の晴れやかさを連想させるテノールアリア。


そして、続いては、昇天節のカンタータ、

昇天節と言えば、名作中の名作、バッハの全作品の中でも指折りの傑作、昇天節オラトリオ、
さらには、その昇天節カンタータにも劣らぬ規模を誇る大作、後期のルードルシュタット詩華撰カンタータ、BWV43もありますが、
今年は、やはり1年目の定型カンタータ、BWV37、
それからもう1曲、2年目のツィーグラー・カンタータ、BWV128、
の2曲を聴いてみました。
特にこのBWV128、実は、偉大なるコラール・カンタータ年巻の、あのBWV127、BWV1に続く、幻の最終曲でもある超重要名曲。
この曲について、本文で触れるのはほとんど初めてとなります。

BWV37、
昇天節の季節になると、毎年奈良の仏像を思い出します。
それは、楽譜に致命的な欠落がありながらも珠玉の美しさをたたえたこの曲が、頭(と指先の一部)しか残されていないにもかかわらず、いや、だからこそ胸に迫る美を感じさせる興福寺の五部浄と、どこか似通ったところがあるせいかもしれません。
おなじみニコライの暁の明星コラール等から派生した、いくつもの例えようもなくやさしいモチーフから緻密に構成された冒頭合唱、
あたたかさと信頼に満ち溢れたテノール・アリア、
この楽章では、前述した失われたオブリガートのメロディをどのように処理するかが演奏者の腕の見せ所ですが、そこはさすがはカンタータ演奏のエキスパート、リリング、聴いている心がこのようにあってほしいと求める通りの音を響かせてくれており、欠落があるがゆえに特に印象に残る結果となっています。
そして、このシリーズの核心、器楽オブリガート付コラールは、コラール自体がデュエットで対位法的に歌われる上に、そのコラールそのものから派生した協奏曲的なbcが親密に絡み合い、ある意味コラールカンタータの誕生を高らかに宣言するような内容になっています。
続く舞曲アリアは、ロ短調の真摯な表現。

BWV128、
2本のホルンと4本のオーボエ、さらにはトランペット!
フル編成のオーケストラによる、初夏の雲一つ無い空を思わせる、「青空のコンチェルト」!
編成、構成ともに華麗な大作でながら、そこは、「長いお別れ」、昇天節の音楽。
どこまでも澄みわたる青空に、かえって胸に迫る悲しみのようなものを感じることがあるように、なぜかしっとりとした情感が印象的な曲です。

冒頭合唱は、2本のホルンと3本のオーボエが活躍する、正に天のコンチェルト、十分華やかなはずなのですが、何度もくりかえされるせつない動機が胸に迫る。
第3曲のトランペットのファンファーレ、これも、天馬空を行く天の行進曲ですが、なんだかジャズの即興みたいで、トランペットの響きが心に染み入ります。
そして、歌詞からすると、次はいつものように、喜びの舞曲でも炸裂してよさそうなのに、
ここで登場するのが、愛のオーボエをオブリガート楽器とするロ短調のデュエット!
あふれる情感に、聴いていて胸がいっぱいになる。
(このデュエットの歌詞は、ほんとうにすばらしいものです。女流詩人、ツィーグラーの、面目躍如)

以上、昇天節ならでは、聴き応え満点のたいへんな名曲だと思います。

さて、
この曲の第1曲、冒頭合唱は、
音楽も歌詞もそのすべてが一つのコラール(メロディはドイツ語グロリア)から緻密に構築されており、ちょっと聴くと、バッハがまたコラール・カンタータの作曲を開始したかのような錯覚にとらわれます。
実際には、終結コラールにはまったく異なるコラールが使われているため(このコラールがまたしみるー!)、厳密にはコラール・カンタータとは言えないのですが、バッハ自身は、コラール・カンタータ年巻編纂の際には、自信を持ってこの曲を編入しています。
つまり、作曲した他ならぬバッハ自身が「コラール・カンタータ」としているのに、後年の学者たちはそれを認めていないという不思議な現象が発生しているわけです。
と、いうわけで、このBWV128、幻のコラール・カンタータ最終曲、というとんでもない重要な意味を持つ曲なのですが、それにふさわしい内容をも併せ持った大名曲だと思います。



そして、引き続き、今日(5月24日、復活節後第6日曜日)のカンタータは、

1年目、最後の定型カンタータ、BWV44。
2年目、ツィーグラー・シリーズ、BWV183。

今週もまた、緑鮮やかな初夏、今の季節にぴったりの名作カンタータがそろっています。
1年目のカンタータ、定型カンタータ・シリーズはこれで終了、2年目、三位一体節後第1日曜日から満を持して始まる、コラール・カンタータ年巻へと続くことになります。


過去記事はこちら↓


<復活節後第6日曜>

  復活節後第6日曜(BWV44他)



凛とした白い花

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白い花、赤い花

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四月には、突如雪の花も咲いた。

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