失われた明治の光と影を覗き見る~小林清親展【復活節後第2日曜日】

 ようやく本格的に春めいてきました。

 今日(4月19日、復活節後第2日曜日)のカンタータは、

 ライプツィヒ1年目、きらめく冒頭大合唱が美しいBWV104
 2年目、アリアの花園、BWV85
 後期、年巻補作のためのコラールカンタータ(全詩節テキストカンタータ)、BWV112、の3曲です。

 カンタータの世界も、春たけなわ。
 この祭日には、さまざまな年代の、正に春を代表するようなバッハの「田園カンタータ」がずらりとそろっています。

 バッハの「田園カンタータ」で、春を満喫しましょう!


 過去記事は、こちら↓


 <復活節後第2日曜>

    鋼のようなやさしさ・「田園」 パストラーレ(BWV104、85、112)
    お気に入りの仏像 奈良駅周辺編+復活節後第2日曜日(BWV104)



 今日は、春の花が咲き乱れる中訪れた、ある特別な展覧会の記録。



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 開館30周年記念 「没後100年 小林清親展 文明開化の光と影をみつめて」

  @ 練馬美術館 ~5月17日(日)まで


▽ ポスターに使われているのは、「東京新大橋雨中図」

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 小林清親の、その一目見たら忘れられないワン・アンド・オンリーの魅力をたたえた作品には、これまでトーハクや太田記念美術館で行われた「葛飾応為 吉原格子先之図 -光と影の美」等で接し、強く引きつけられてきた。

 * トーハクの小林清親の作品の記事(写真付) こちら

 * 「葛飾応為 吉原格子先之図 -光と影の美」展 @ 太田記念美術館の記事 こちら


 今回、その全生涯の作品を俯瞰する本格的な展覧会が開催されたので、早速行ってきた。


 その作品をまとめて観て、あらためて強く感じたのは、
 展覧会のポスターに「最後の浮世絵師」というキャッチコピーが見られるが、それよりも、「日本最初の本格西洋画家の一人」と言った方が近いかも、ということ。
 しかも、とびっきり鮮やかな技法と個性を身につけた本物の「画家」。
 何よりも「光線画」と呼ばれる「浮世絵」で知られる清親だが、浮世絵作成のための膨大な写生帖(水彩画)が残されており、今回展示されていたそれらの作品を見ると、20歳ほど先輩のあの高橋由一と比べても抜群にうまく、光と影の織りなすその鮮烈な表現は当時のヨーロッパの最先端の近代絵画にも感覚的に接近しているのでは?と思えてくるほど。
 そして、それを日本古来の伝統的な超絶技巧で版画化することによって、「光線画」の唯一無二の個性的な作品世界が形成されたわけだ。


 小林清親は、もともと徳川家直属の御家人。単に御家人の家系出身、というのではなく、若くして家督を譲られたので、本人自身がまごうことなき侍だった。あの徳川家茂の長州征伐にも同行している。
 写真が展示されていたが、すごい面構え。
 若い時の写真も、晩年のものも、とにかく目力がすさまじい。

 激動の幕末を徳川家とともに乗りきり、明治維新後は、徳川慶喜に従って静岡に移住、
 その後、明治7年に東京に舞い戻り、明治9年、29歳の時に、侍から突然華麗なる転身、「光線画」浮世絵で、絵師としてセンセーショナルなデビューを果たす。

 いったい、その間、何があったのか??
 何しろ上記したような驚くべき技法を自在に使う術を、いつのまにか身に付けていたのだ。
 上京してからデビューまでの2年の間、河鍋暁斎や外国人画家に絵を学んだ、柴田是真らと交流を持った、写真に関わる仕事をしていた、などなど、いろいろ言われているようだが、実はあまり定かではなく、謎に包まれているらしい。
 お江戸の侍だった男が、突如、ほんのわずかな間に、未来を先取りするような「絵師」になったのだ。
 本人の資質があったのだろうけど、こちらとしては狐につままれたような気持ちでわけがわからず、いろいろ想像をかきたてられる。
 ただ、河鍋暁斎や柴田是真等真の天才の名前が並んでいるところは、さもあらん、という気がする。


 それにしても、卓越した技巧によって錦絵化された「光線画」の光の美しいこと!
 トレードマークの夜のさまざまな灯りはもちろんのこと、朝のさわやかな光、春の柔らかな光、夏のまぶしい光、そのすべてが息を飲むほど美しい。
 描かれた風景も、文明開化の輝かしくも懐かしい都市の景観から、古き良きお江戸の名所、まったくなんでも無い街はずれや田園の一コマまで多種多様にわたり、そこに明治の人々(基本的に人物は妙にへたうま)が生き生きと生活する様子が描かれていて、失われた遠い明治時代の真景を、最高のビジュアルで垣間見ているようなぜいたくな気分になれる。

 特に、コンドル設計の元祖トーハクや銀座日報社等の本格洋館から、兜町の海運橋のたもとに建つ第一国立銀行や駿河町の三井組為替バンク新社屋等のあからさまにあやしげな擬洋風建築まで、現在では絶対に観ることができない明治を代表する建築の数々を、春の花咲き誇る風景や雪景色などの自然の光に満ちた美しい風景の中に溶け込んだ、「生きた建築」として見ることができるのが何よりもうれしい。
 さらには、個性的な近代橋や疾走する汽車、生きたビジュアルとしての明治が、ここには奇跡的に残されている。


 代表作の一つ、第一回内国勧業博覧会への出品作、「猫と提灯」に関しては、版画製作の工程がよくわかる展示が併設されており、興味深かった。
 35回摺りでやっと完成となる、おそろしく手のこんだていねいな作業。ほんの小さな部分だけの版もけっこうあるが、それを摺ることで作品は劇的に変わってゆく。
 冒頭に書いたとおり、刷りの技法は、江戸の頂点をそのまま継承しているのだ。
 
 記念碑的作品である「猫と提灯」はかなり大判だが、展示されていたほとんどの作品は一般に市販された錦絵。一つ一つの作品は小さいかもしれないけれど、そこに含まれる情報量は圧倒的であり、拡大して初めて真価がわかるところがある。
 会場内のあちこちに飾られた、巨大な拡大写真がはっとするほどの迫力。
 清親の版画は、小さな錦絵の枠には収まりきらないところがある。

 なお、版画ならではポイントとして、同じ作品で色等がかなり異なる作品がけっこう展示されていたが、状態によるのだろうか。それとも色彩を変えてある?
 トーハク等でとびっきり状態の良い作品を観ているので、あらためて驚くような作品はそれほど多くなかったが、それでも、これだけの個性的な作品が並んでいると、やはりただ者ではないことがわかる。


 ふだんあまり見ることの無い「まんが」、肉筆画などもものすごくモダン、見応えがあった。
 屏風や掛け軸は、けっこう「和」な感じ。ただ、四季折々の幽霊画など、アイディアはやはりとびぬけておもしろい。


 ところで、数年前、「ドビュッシー、音楽と美術」展で、シャルル・ラコストの「影の手」という印象深い作品を観たが、
 清親の橋の絵などは、あまりにも雰囲気が似ている気がした。何かつながりがあるのだろうか。



 ポスター・ギャラリー


▽ 「新橋ステンション」 

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▽ 「従箱根山中富嶽眺望」 

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 会場への道


 リニューアルした、幻想動物園、練馬美術の森緑地


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 さまざまな動物たちがお出迎え。


 ネリマーマ。基本的には馬だが、大根と植物のキメラ?

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 よく来たな。

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 ネリピー

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 美術館への階段にいるとんぼ。

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 ロビー。

 重厚な1877年製スタインウェイ・スクエアピアノがドーンと置かれている。
 小林清親とは直接関係無いようだが同時代の物。
 4月19日(土)には、このピアノを利用した記念コンサートが行われたはず。
 (小林ちとせさんピアノ、三宅進さんチェロ)

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 階段を登って、2階の特別展会場へ。

 手前は、「九段馬かけ」
 階段の壁面には、国芳の流れをそのまま引き継ぐかのような伝統的題材を扱った肉筆画の傑作、「左甚五郎図」
 階段を登った踊場正面には、獅子ならぬリアルなライオンの豪華絢爛な屏風、「獅子図」
 (すべてプリント)

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 以下、練馬で撮影。


 ピンクの花

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 黄色い花

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  おまけ・ 少し前、お彼岸の頃の同じ場所。

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 このモクレンの大木が、現在は・・・・!

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