バッハと夏とタイムマシン~サントラバッハ・夏休み特別編+三位一体節後第12日曜日
北京オリンピックも始まり、来週お盆休みという方も多いと思います。
世の中夏休みということで、今日は、青春ドラマやアニメを中心に。
CDや小説なども、ごちゃごちゃご紹介してますので、夏休みでヒマな少年少女のみなさんは、どれでもいいからぜひ手にとってみてください。
って、誰も見てないな。
わたしにとって、夏とタイムマシンは切っても切り離せません。
それは、この2大名作のせい。
左、「夏への扉」 ロバート・A・ハインライン 福島正実・訳
右、「夏のタイムマシーン」 筒美京平&田口俊 川村英二・編曲
(よい子のみなさん、これが昔のCDシングルだ!
この曲は、なんと10分以上もあるので、レコードでは12インチEP盤でした)
ほんとうは、これらの作品について書きたいところです。
特に、「夏への扉」は、小説だけでなく、映画、音楽も含めた、あらゆる作品の中で、わたしが最も愛する作品の一つ。
メンデルスゾーンではないですが、
「これだけあれば、わたしは生きていける」。
また、筒美京平は、わたしが最も愛する作曲家。バッハよりも好き、かもしれない。
「夏のタイムマシーン」は、あまり知られてませんが、「真っ赤な女の子」、「半分少女」の後を継ぎ、筒美京平渾身の小泉今日子3部作の最後を飾る、超大作。
でも、書き出すと、何ページあっても足りず、きりがないので、もう、書きません。
今日は、この究極の2大名作にはさまれ、真ん中に写ってる作品について。
やはり、夏とタイムマシンを題材にした、ちょっとすてきな映画。
2つの作品に比べれば、まったくなんていうことはないのですが、たまたまバッハの音楽も使われているので、今日はこの作品をご紹介します。
もうてっきり書いたものとばかり思ってたのですが、自分のブログには書いてなかった。
「サマータイムマシーン・ブルース」 Summer Timemachine Blues
(2005年、本広克行監督作品)
映画は、理屈ぬきに、無条件に楽しい青春ドタバタコメディです。
ああ、こんなこと、あった、あった、(?)
と、笑って観れて、
どこか懐かしくて、見終わった後、たまらなくせつなくなるような、すてきな映画。
主演の瑛太さん、上野樹里はもちろん、個性的な脇役陣がみんな抜群によい。まるで即興の舞台を観ているよう。
それもそのはず、これ、人気の舞台の映画化とのこと。
それでいて、なんと言っても、この映画、タイムトラベルものならではの、精緻な伏線や細かいしかけが、始めから終わりまでびっしりと張り巡らされていて、こだわりの遊びやギャグなども満載。
で、DVDボックスについている特典映像を観てからまた本編を観ると、観れば観るほど次々と新しい発見があって、何度でも楽しめるところが最高です。
使われているバッハの音楽は、これまたベタなのですが、平均律の有名なハ長調プレリュード。
主人公カップルが、二人きりになったりするシーンで必ず、聞こえるか聞こえないかくらいの音でかかるんですが、ありがちな曲ではあるものの、なかなか効果的に使われていました。
ピコピコした未来風の音が少し付け加えられたアレンジになっていたようですが、ロマンチックなアヴェ・マリアよりずっといいかもしれません。
それにしても、バッハのピアノ曲、特に練習曲には、ほんとうに、郷愁を誘われてしまいます。思い出とか、記憶に直結する何かがあるんでしょう。
ところで、
映画の中で、ひょんなことからタイムマシンを手に入れたSF研の仲間が、どの時代に行くか話し合うシーンがあります。
大騒ぎしたあげく、結局24時間前(笑)に行くのですが、(こいつらバカです)
わたしなら、迷うことなく、1723年のライプツィヒです。
ちょうど夏の始めに、バッハがやってきます。
おそらく、行ったら最後、そのままもう、帰ってこないでしょう。
でも、よく考えたら、言葉が通じないだろうから、第2候補の江戸にしようかな。
あ、だけど、冷静になってみると、他にも行きたいところが山ほどある。困った。
さて、上記「夏への扉」を別格として、
タイムトラベル小説で忘れられないのが、以下の3作。
左、 「ふりだしに戻る」 ジャック・フィニィ 福島正美・訳
中央、「時をかける少女」 筒井康隆
右、 「蒲生邸事件」 宮部みゆき
この中で、「時をかける少女」は、
ジュブナイルとはいうものの、人物描写も情景描写も何も無い、ほとんどあらすじだけみたいな、
筒井康隆にしては、ダメ小説の見本みたいな作品ですが、
そのあらすじ自体があまりにも普遍的ですさまじいいため、
読む方が勝手に想像力を働かせてあれこれ肉付けしてしまい、読む度に最後は号泣してしまう、という、
非常に腹立たしい作品です。
したがって、原作に忠実に、ていねいに肉付けして映像化するかぎり、悪かろうはずもなく、事実、これまで何度も映像化されたものは、映画であれ、ドラマであれ、どれもこれもすばらしく、心に残る作品ばかりでした。
最近も新たにアニメ化され、話題になったものの、キャラクターの絵があまり好きなタイプでなかったので、どうしようかと思っていたのですが、
なんと、バッハのゴールドベルグが使われているらしい、との情報を耳にし、
(あと、毎週見ていた、ドラマ「ハチワンダイバー」の受け師さんが主人公の声をやっている、とのことだったので)
今回、観てみました。
「時をかける少女」
(2006年、細田守監督作品)
原作に大きく手を加えてますが、基本的な流れは意外に原作に忠実。ただし、ちょっと今回は、いろいろな意味でふくらませすぎ、つめこみすぎ。意気込みはわかるけど。
何よりも、主人公の女の子が、いかにも大人がつくりあげた少女、という感じ。一見天真爛漫で元気がいいが、とにかく無神経で、わたしが最もきらいなタイプ。まあ、それでいろいろと痛い目にあい、後悔する、ということみたいですが、観ていてちょっと厳しかった。
ただ、風景などの絵が、とにかく飛びぬけてすばらしい。
ちょうど今頃の季節、まぶしい夏の、学校や、緑の庭、何気ない街角、
タイムスリップのシーン、クライマックスの時が止まったシーン、
などなど、
これまでに見たことがないほどの、圧倒的な美しさ。
この絵を見るだけでも、「時をかける少女」の世界にどっぷりとつかることができて、ファンにはたまらない。
しかも、クライマックスの舞台は、なんと、あの上野の国立博物館。
わたしの愛するユリノキまでが、とびっきり美しく描かれて大登場。
それだけで不覚にも涙が出てしまった。
ゴールドベルクは、
主人公が放課後の実験室に行く有名なシーンで、アリア、
始めのタイムスリップのシーンや、主人公がやけくそになって何度もタイムスリップをくりかえすシーンで、快速調のはじめの変奏がかかります。
これも、なかなか効果的でした。
同じ筒井康隆原作のアニメでは、
「パプリカ」
(2006年、今敏監督作品)
の方がよかった。
原作は、あの伝説的名作、「七瀬」シリーズの流れをくむ、これまた圧倒的な名作。
これこそ、真の筒井康隆だ!
夢の中でだけ存在する、「夢探偵」、パプリカが大活躍する、ちょっとせつない、サイコ・ファンタジー。
映画も、原作に比べ、まとまりすぎ、の感もあるが、なかなかのデキ。
主人公の千葉先生と、その夢の中での分身、パプリカ、
まったく違う声なのに、同じ声優さんがやってるみたいでびっくり。
超メタボの天才先生の声が、飛雄馬=アムロそのものなのにもびっくり。
あと、先週も書きましたが、
平沢進の音楽も、妙に懐かしさを感じさせるテクノで、すばらしい。
特に、オープニングと同じ音楽をバックに、美しいボーカルで、沖縄風?のメロディーが歌われる、エンディングの、
「白虎野の娘」。
公式HPで、試聴できます。こちら。
そう言えば、「七瀬」シリーズも、タイムトラベルものでした。
せっかくなので、「七瀬」シリーズを含め、
タイムトラベル小説の、とっておきの隠し玉をご紹介。
左下、「七瀬ふたたび」、「エディプスの恋人」 筒井康隆
左上、「夕ばえ作戦」 光瀬龍、「人類のあけぼの号」 内田庶
この2作は、「SFベストセラーズ」シリーズ。
ジュブナイルだが、どちらも、「時をかける少女」とは比べものにならないくらいの見事さ。
「夕ばえ作戦」は、現代にやってきた忍者が大活躍。ハットリ君じゃないよ。
「人類のあけぼの号」は、「夏への扉」を少年少女向きにわかりやすくまとめてくれたような作品。(笑)
右、 「六道遊行」 石川淳
石川淳全集(筑摩書房) 第10巻収録。表紙には何も書いてないので、扉を開いて撮影。
これは、少年少女のみなさんにはちょっと刺激が強すぎるかもしれない。
この人の文章には、心からあこがれてました。
少しでも近づこうとしました。まったく実を結んでないけど。
右、 「八月の博物館」 瀬名秀明
ついでに、ちょっと関係ないですが、
冒頭の「夏のタイムマシーン」にちなみ、夏のCD名盤3選。
左、 Summer Runninng 「駆けめぐる夏の足音」 マーク・ジョンソン&パット・メセニー
中央、Le Cafe de la Plage ムーンライダーズ
右、 ウェーベルン全集 Vol.2 (「夏風の中で」収録) ブレーズ、ベルリン・フィル
最後に、さらにあまり関係ないですが、
アニメつながりで、
「ロミオの青い空」。
ついに、全巻、通して見終わりました。
いやー。すごかった。
最後の2巻は、大げさでなく、ハンカチ、が手離せません。ハンカチ、というよりタオルが必要です。
でも、これ、毎週リアルタイムで観てた方は、たいへんだったんじゃ。
わたしだったら、続きが気になって気になって、仕事(勉強)が手につかなかったでしょう。
とにかく、
「この病んだ世界に神がお贈りくださった大切な宝物」、
アルフレドがすごすぎる。
とてつもない天才で、意志が強く、その上、高潔な魂の持ち主。けんかも強い。
子どものくせに、その清らかな精神は、誰もが平等で、楽しく暮らせる世界を常に志向してやまない。
しかも、実は、国王とツーカーに話せるほどの立場。
彼みたいな人物がいて、そして、ちゃんと大人になっていたなら、ほんとに世界は変わったのではないか、と思えるほど。
ただ、ムリしすぎで体を壊したのが、致命的弱点ということになってしまいました。
それに対して、ロミオは、どう見ても単なるお調子者。
アルフレドと異なり、やたら健康ですが、
優れているところと言えば、本人がすぐ思い悩む割には実はやたら打たれ強くて、能天気なまでに前向きなところと、恐ろしいほど強運なところぐらい。
作中で、ビアンカなどが不思議に思ったのと同じく、なんでまたアルフレドは、このアホロミオをこんなにも大切に思ってるんだろう、と不思議でしょうがなかったのですが、
最後の最後、その秘密が明かされます。
アルフレドの回想の中のロミオ、確かにすごい。
いったい何がすごいのか、言葉にしたとたんに安っぽくなるのであえて書きませんが、
ロミオのすごさは、実は始めから、とてもていねいに描かれていたのです。
ロミオ、ごめん。君以上に、アルフレドにふさわしい少年はいませんでした。
アルフレドを助けてくれてありがとう。
登場人物では、個人的には、街の不良、ジョバンニとニキータが好きです。
結局、ジョバンニがいなければ、ロミオもアルフレドも何もできなかった。
ジョバンニの目が黒いうちは、ミラノの煙突掃除少年たちは、安心でしょう。
あと、ニキータ、いつも、アンジェレッタやビアンカなど、華やかなお嬢さんの影で、いじらしすぎ。
それにしても、「カトリ」もそうでしたが、この「ロミオ」も、絵がほんとうにすばらしい!
物語が進むにつれて、夏から、秋、冬、と移り変わってゆくミラノの街、大聖堂、空、
そして、春、ロミオが長い長い旅を終えて、ついに帰っていくアルプス、
みんな、美しい。
音楽もなかなかです。特に、始めと終わりのテーマソング。
誰が歌ってるのか知りませんが、こういう、高音になるにつれ、まるでガラスみたいに硬質化し、透き通っていくような声、大好きです。
往年の斉藤由貴みたいな。
斉藤由貴・・・・。
「卒業」も、「初戀」も、もちろん、筒美京平。
懐かしい。
今日は、何から何まで、ノスタルジックな記事になってしまった。
* * *
さて、また最後になってしまいましたが、今度の日曜日(8月10日)は、三位一体節後第12日曜日。
カンタータは、まず、第1年巻のBWV69a。
(最晩年にBWV69に改作。「バッハの最後のカンタータは?」参照)
第2年巻のコラールカンタータはありませんが、
そのかわり、例によって、翌年に、コラールカンタータ年巻補完目的で作曲された、
テキスト・カンタータの最高峰、BWV137があります。
あと、後期の、オルガン・コンチェルト付、アルトのためのBWV35。
この3曲、ちょっとすごいラインナップです。
ぜひ、過去記事等ご覧いただき、お聴きください。こちら。
世の中夏休みということで、今日は、青春ドラマやアニメを中心に。
CDや小説なども、ごちゃごちゃご紹介してますので、夏休みでヒマな少年少女のみなさんは、どれでもいいからぜひ手にとってみてください。
って、誰も見てないな。
わたしにとって、夏とタイムマシンは切っても切り離せません。
それは、この2大名作のせい。
左、「夏への扉」 ロバート・A・ハインライン 福島正実・訳
右、「夏のタイムマシーン」 筒美京平&田口俊 川村英二・編曲
(よい子のみなさん、これが昔のCDシングルだ!
この曲は、なんと10分以上もあるので、レコードでは12インチEP盤でした)
ほんとうは、これらの作品について書きたいところです。
特に、「夏への扉」は、小説だけでなく、映画、音楽も含めた、あらゆる作品の中で、わたしが最も愛する作品の一つ。
メンデルスゾーンではないですが、
「これだけあれば、わたしは生きていける」。
また、筒美京平は、わたしが最も愛する作曲家。バッハよりも好き、かもしれない。
「夏のタイムマシーン」は、あまり知られてませんが、「真っ赤な女の子」、「半分少女」の後を継ぎ、筒美京平渾身の小泉今日子3部作の最後を飾る、超大作。
でも、書き出すと、何ページあっても足りず、きりがないので、もう、書きません。
今日は、この究極の2大名作にはさまれ、真ん中に写ってる作品について。
やはり、夏とタイムマシンを題材にした、ちょっとすてきな映画。
2つの作品に比べれば、まったくなんていうことはないのですが、たまたまバッハの音楽も使われているので、今日はこの作品をご紹介します。
もうてっきり書いたものとばかり思ってたのですが、自分のブログには書いてなかった。
「サマータイムマシーン・ブルース」 Summer Timemachine Blues
(2005年、本広克行監督作品)
映画は、理屈ぬきに、無条件に楽しい青春ドタバタコメディです。
ああ、こんなこと、あった、あった、(?)
と、笑って観れて、
どこか懐かしくて、見終わった後、たまらなくせつなくなるような、すてきな映画。
主演の瑛太さん、上野樹里はもちろん、個性的な脇役陣がみんな抜群によい。まるで即興の舞台を観ているよう。
それもそのはず、これ、人気の舞台の映画化とのこと。
それでいて、なんと言っても、この映画、タイムトラベルものならではの、精緻な伏線や細かいしかけが、始めから終わりまでびっしりと張り巡らされていて、こだわりの遊びやギャグなども満載。
で、DVDボックスについている特典映像を観てからまた本編を観ると、観れば観るほど次々と新しい発見があって、何度でも楽しめるところが最高です。
使われているバッハの音楽は、これまたベタなのですが、平均律の有名なハ長調プレリュード。
主人公カップルが、二人きりになったりするシーンで必ず、聞こえるか聞こえないかくらいの音でかかるんですが、ありがちな曲ではあるものの、なかなか効果的に使われていました。
ピコピコした未来風の音が少し付け加えられたアレンジになっていたようですが、ロマンチックなアヴェ・マリアよりずっといいかもしれません。
それにしても、バッハのピアノ曲、特に練習曲には、ほんとうに、郷愁を誘われてしまいます。思い出とか、記憶に直結する何かがあるんでしょう。
ところで、
映画の中で、ひょんなことからタイムマシンを手に入れたSF研の仲間が、どの時代に行くか話し合うシーンがあります。
大騒ぎしたあげく、結局24時間前(笑)に行くのですが、(こいつらバカです)
わたしなら、迷うことなく、1723年のライプツィヒです。
ちょうど夏の始めに、バッハがやってきます。
おそらく、行ったら最後、そのままもう、帰ってこないでしょう。
でも、よく考えたら、言葉が通じないだろうから、第2候補の江戸にしようかな。
あ、だけど、冷静になってみると、他にも行きたいところが山ほどある。困った。
さて、上記「夏への扉」を別格として、
タイムトラベル小説で忘れられないのが、以下の3作。
左、 「ふりだしに戻る」 ジャック・フィニィ 福島正美・訳
中央、「時をかける少女」 筒井康隆
右、 「蒲生邸事件」 宮部みゆき
この中で、「時をかける少女」は、
ジュブナイルとはいうものの、人物描写も情景描写も何も無い、ほとんどあらすじだけみたいな、
筒井康隆にしては、ダメ小説の見本みたいな作品ですが、
そのあらすじ自体があまりにも普遍的ですさまじいいため、
読む方が勝手に想像力を働かせてあれこれ肉付けしてしまい、読む度に最後は号泣してしまう、という、
非常に腹立たしい作品です。
したがって、原作に忠実に、ていねいに肉付けして映像化するかぎり、悪かろうはずもなく、事実、これまで何度も映像化されたものは、映画であれ、ドラマであれ、どれもこれもすばらしく、心に残る作品ばかりでした。
最近も新たにアニメ化され、話題になったものの、キャラクターの絵があまり好きなタイプでなかったので、どうしようかと思っていたのですが、
なんと、バッハのゴールドベルグが使われているらしい、との情報を耳にし、
(あと、毎週見ていた、ドラマ「ハチワンダイバー」の受け師さんが主人公の声をやっている、とのことだったので)
今回、観てみました。
「時をかける少女」
(2006年、細田守監督作品)
原作に大きく手を加えてますが、基本的な流れは意外に原作に忠実。ただし、ちょっと今回は、いろいろな意味でふくらませすぎ、つめこみすぎ。意気込みはわかるけど。
何よりも、主人公の女の子が、いかにも大人がつくりあげた少女、という感じ。一見天真爛漫で元気がいいが、とにかく無神経で、わたしが最もきらいなタイプ。まあ、それでいろいろと痛い目にあい、後悔する、ということみたいですが、観ていてちょっと厳しかった。
ただ、風景などの絵が、とにかく飛びぬけてすばらしい。
ちょうど今頃の季節、まぶしい夏の、学校や、緑の庭、何気ない街角、
タイムスリップのシーン、クライマックスの時が止まったシーン、
などなど、
これまでに見たことがないほどの、圧倒的な美しさ。
この絵を見るだけでも、「時をかける少女」の世界にどっぷりとつかることができて、ファンにはたまらない。
しかも、クライマックスの舞台は、なんと、あの上野の国立博物館。
わたしの愛するユリノキまでが、とびっきり美しく描かれて大登場。
それだけで不覚にも涙が出てしまった。
ゴールドベルクは、
主人公が放課後の実験室に行く有名なシーンで、アリア、
始めのタイムスリップのシーンや、主人公がやけくそになって何度もタイムスリップをくりかえすシーンで、快速調のはじめの変奏がかかります。
これも、なかなか効果的でした。
同じ筒井康隆原作のアニメでは、
「パプリカ」
(2006年、今敏監督作品)
の方がよかった。
原作は、あの伝説的名作、「七瀬」シリーズの流れをくむ、これまた圧倒的な名作。
これこそ、真の筒井康隆だ!
夢の中でだけ存在する、「夢探偵」、パプリカが大活躍する、ちょっとせつない、サイコ・ファンタジー。
映画も、原作に比べ、まとまりすぎ、の感もあるが、なかなかのデキ。
主人公の千葉先生と、その夢の中での分身、パプリカ、
まったく違う声なのに、同じ声優さんがやってるみたいでびっくり。
超メタボの天才先生の声が、飛雄馬=アムロそのものなのにもびっくり。
あと、先週も書きましたが、
平沢進の音楽も、妙に懐かしさを感じさせるテクノで、すばらしい。
特に、オープニングと同じ音楽をバックに、美しいボーカルで、沖縄風?のメロディーが歌われる、エンディングの、
「白虎野の娘」。
公式HPで、試聴できます。こちら。
そう言えば、「七瀬」シリーズも、タイムトラベルものでした。
せっかくなので、「七瀬」シリーズを含め、
タイムトラベル小説の、とっておきの隠し玉をご紹介。
左下、「七瀬ふたたび」、「エディプスの恋人」 筒井康隆
左上、「夕ばえ作戦」 光瀬龍、「人類のあけぼの号」 内田庶
この2作は、「SFベストセラーズ」シリーズ。
ジュブナイルだが、どちらも、「時をかける少女」とは比べものにならないくらいの見事さ。
「夕ばえ作戦」は、現代にやってきた忍者が大活躍。ハットリ君じゃないよ。
「人類のあけぼの号」は、「夏への扉」を少年少女向きにわかりやすくまとめてくれたような作品。(笑)
右、 「六道遊行」 石川淳
石川淳全集(筑摩書房) 第10巻収録。表紙には何も書いてないので、扉を開いて撮影。
これは、少年少女のみなさんにはちょっと刺激が強すぎるかもしれない。
この人の文章には、心からあこがれてました。
少しでも近づこうとしました。まったく実を結んでないけど。
右、 「八月の博物館」 瀬名秀明
ついでに、ちょっと関係ないですが、
冒頭の「夏のタイムマシーン」にちなみ、夏のCD名盤3選。
左、 Summer Runninng 「駆けめぐる夏の足音」 マーク・ジョンソン&パット・メセニー
中央、Le Cafe de la Plage ムーンライダーズ
右、 ウェーベルン全集 Vol.2 (「夏風の中で」収録) ブレーズ、ベルリン・フィル
最後に、さらにあまり関係ないですが、
アニメつながりで、
「ロミオの青い空」。
ついに、全巻、通して見終わりました。
いやー。すごかった。
最後の2巻は、大げさでなく、ハンカチ、が手離せません。ハンカチ、というよりタオルが必要です。
でも、これ、毎週リアルタイムで観てた方は、たいへんだったんじゃ。
わたしだったら、続きが気になって気になって、仕事(勉強)が手につかなかったでしょう。
とにかく、
「この病んだ世界に神がお贈りくださった大切な宝物」、
アルフレドがすごすぎる。
とてつもない天才で、意志が強く、その上、高潔な魂の持ち主。けんかも強い。
子どものくせに、その清らかな精神は、誰もが平等で、楽しく暮らせる世界を常に志向してやまない。
しかも、実は、国王とツーカーに話せるほどの立場。
彼みたいな人物がいて、そして、ちゃんと大人になっていたなら、ほんとに世界は変わったのではないか、と思えるほど。
ただ、ムリしすぎで体を壊したのが、致命的弱点ということになってしまいました。
それに対して、ロミオは、どう見ても単なるお調子者。
アルフレドと異なり、やたら健康ですが、
優れているところと言えば、本人がすぐ思い悩む割には実はやたら打たれ強くて、能天気なまでに前向きなところと、恐ろしいほど強運なところぐらい。
作中で、ビアンカなどが不思議に思ったのと同じく、なんでまたアルフレドは、このアホロミオをこんなにも大切に思ってるんだろう、と不思議でしょうがなかったのですが、
最後の最後、その秘密が明かされます。
アルフレドの回想の中のロミオ、確かにすごい。
いったい何がすごいのか、言葉にしたとたんに安っぽくなるのであえて書きませんが、
ロミオのすごさは、実は始めから、とてもていねいに描かれていたのです。
ロミオ、ごめん。君以上に、アルフレドにふさわしい少年はいませんでした。
アルフレドを助けてくれてありがとう。
登場人物では、個人的には、街の不良、ジョバンニとニキータが好きです。
結局、ジョバンニがいなければ、ロミオもアルフレドも何もできなかった。
ジョバンニの目が黒いうちは、ミラノの煙突掃除少年たちは、安心でしょう。
あと、ニキータ、いつも、アンジェレッタやビアンカなど、華やかなお嬢さんの影で、いじらしすぎ。
それにしても、「カトリ」もそうでしたが、この「ロミオ」も、絵がほんとうにすばらしい!
物語が進むにつれて、夏から、秋、冬、と移り変わってゆくミラノの街、大聖堂、空、
そして、春、ロミオが長い長い旅を終えて、ついに帰っていくアルプス、
みんな、美しい。
音楽もなかなかです。特に、始めと終わりのテーマソング。
誰が歌ってるのか知りませんが、こういう、高音になるにつれ、まるでガラスみたいに硬質化し、透き通っていくような声、大好きです。
往年の斉藤由貴みたいな。
斉藤由貴・・・・。
「卒業」も、「初戀」も、もちろん、筒美京平。
懐かしい。
今日は、何から何まで、ノスタルジックな記事になってしまった。
* * *
さて、また最後になってしまいましたが、今度の日曜日(8月10日)は、三位一体節後第12日曜日。
カンタータは、まず、第1年巻のBWV69a。
(最晩年にBWV69に改作。「バッハの最後のカンタータは?」参照)
第2年巻のコラールカンタータはありませんが、
そのかわり、例によって、翌年に、コラールカンタータ年巻補完目的で作曲された、
テキスト・カンタータの最高峰、BWV137があります。
あと、後期の、オルガン・コンチェルト付、アルトのためのBWV35。
この3曲、ちょっとすごいラインナップです。
ぜひ、過去記事等ご覧いただき、お聴きください。こちら。
この記事へのコメント
myさん、うれしいコメント、ありがとうございます。わたしも気持ちはすっかりタイム・スリップして書きました。
もともと、海外のSFやミステリが好きだったのですが、「七瀬ふたたび」などを読んだ時は、日本にもこんなにすばらしい作品があったのかと、わたしも驚きました。超能力者の孤独、悲しみ、みたいなものを描かせたら、海外にも「バットマン」や「ハルク」などのすぐれた作品はあるものの、日本の作品が一番のような気がします。
「龍は眠る」もたまらなく悲しかったですね。
小説は好きで読んでるだけですが、わたしは英語がまったくダメなので、フィニィやハインラインなど、myさんのように原文で読めたらどんなにかいいだろう、といつも思います。
でも、どちらも、福島正美さんの、原文に迫る(とわたしは勝手に思っている)すばらしい訳があるので、ほんとうに幸せです。
スタンリィ・エリン!なつかしいですね。「鏡よ。鏡」なんかも好きでした。
短編では、アメリカ人ではないですが、ロアルド・ダールなども好きで、よく読みました。
小説のことは、書き出すときりがないし、何よりも詳細をすっかり忘れてしまってる場合が多いので、あまり書かないようにしてるのですが、こうして書いてみると、いろいろと思い出したりするので、いいですね。
今後もたまには書いてみたいと思いますので、よろしくお願いします。
それではまだまだ暑い日が続きますが、くれぐれもお体をお大事になさってください。
因みに福島正美さん・・・もう眠くなってしまいました。お休みなさい。じいさんはしょうがないですね。
そうです、そうです。「南から来た男」、ありましたね。
ダールは、「チョコレート工場」から、「オズワルド叔父さん」ものまで、幅が広くて好きでした。
最近また映画化されて、けっこう話題になった、「チャーリーとチョコレート工場」も、実は、けっこう好きです。
こんばんは。
「カンタータ日記・夏休みバージョン」、良いですね~。
ロミオ、ついに完遂されましたか!!
ありがとうございます。
私も、最後の2巻(8話分)は今でも時々借りては、
タオルを握りしめて、
ジョバンニの「勝負は永遠に預かっておくぜ!!」。。。。
のシーンに痺れたり、ダンテとの別れのシーンに号泣しています。
歌は、笠原弘子さん。
音楽プロデュースは若草恵さんです。
ナレーションも素晴らしいですし、音楽スタッフも大変充実しています。
そうそう。夏休みモードですが、私、バッハもサボってはいませんよ。
先月27日に杉並公会堂で福島章恭先生の指揮による「東京ジングフェライン」のミサ曲ロ短調を聴いて参りました。
ロミオもバッハも同じですね。
作品が素晴らしいのは勿論ですが、こういったものを創り出すことができる
「人間」の存在に感動します。
つづく
「サマータイムマシン・ブルース」のセンスも大好きです。
時をかける少女(NHKの少年少女ドラマシリーズ)を最初に観た中学生当時は、とにかくラベンダーの香りのするものは避けていました。(爆
「七瀬ふたたび」とか、NHKつながりですが、以前もご紹介させていただいていたかな???。。。。。
新田次郎さん原作の「つぶやき岩の秘密」も是非、ご覧になって下さい。
大きなレンタルショップにはDVDかビデオがおいてあると思います。
それから、松本隆さん+筒美京平さんのコンビが好きです。
「空へ。。。」(ロミオの青い空;オープニング)
▽
http://jp.youtube.com/watch?v=5dHVRviYp-U&feature=related
わたしもすっかり夏休みモードですが、見習って、次週はちゃんとカンタータの記事を書くことにしました。
ロミオの最後の2巻は、どこを見ても、涙ぶわー、ですね。わたしが一番やられたのは、アルフレドが、「最後にあと少しだけ力をください」と言ったところです。立ち上がって何をするのかと思ったら、あのキメのポーズ。
もう半分あきれながら、涙で画面が見えなくなりました。
(冷静に考えてみたら、アルフレドも、完全に破滅型の天才ですね。)
いずれにしても、心に残る作品になりました。教えていただいてありがとうございます。笠原弘子さんの名前もおぼえておきます。けっこう有名な方なんでしょうね。
NHKの「タイム・トラベラー」はほとんど記憶に無いのですが、なぜか、ケン・ソゴルがものすごく怖い、という印象は残っていて、ラベンダーを避けていたNackyさんのお気持ちは、なんだかとてもよくわかる気がします。(笑)
ビデオがほとんど残ってないとのことで、あとから最終話だけちらっと見たことがあるのですが、確かにこれは、子どもが見たら怖いでしょうね。
少年少女ドラマシリーズ、みんな観たいです。
「つぶやき岩」もウワサには聞いた事があります。余談ですが、テーマソングを歌ってる石川セリさんも、大好きです。
出ました、筒美&松本コンビ!
最後に、ちらっと「卒業」のことを書きましたが、反応してくださってありがとうございます。
この二人、わたしは、好きどころか、史上最強のソングライターだと確信しております。いつか何か書きたいと思ってるのですが、あまりにも大きな存在なので、果たして書けるかどうか。