一人残らず救ってみせる!秋の文化財ウィーク~お気に入りの仏像・阿弥陀仏の諸相編【三位一体節後22】

 明日(11月8日)は、三位一体節後第22日曜日。


 秋も深まってまいりましたが、カンタータもそれにふさわしい名品が並びます。

 第1年巻のBWV89

 コラール・カンタータ(第2年巻)は、BWV115
 ヴィオロンチェロ・ピッコロが大活躍、2つの美しい短調アリアがならぶ、今の季節にぴったりの名カンタータ。

 さらに後期のBWV55、バッハ唯一つの、テノールのためのソロ・カンタータ。


 過去記事はこちらこちら

 BWV115については、この前のBWV180とともに、くわしく書いています。

 こちら



  *    *    *    *    *    *



 なぜか、ヘンデル。
 一応、今日の記事の後の方に出てきます。



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 先週の11月3日は、文化の日。
 今年も、東京文化財ウィークをはじめ、文化財の一般公開を中心とするイベントが行われましたが、
 京都や奈良、博物館や展覧会の名宝もいいいけれど、身近なところに何気なく埋もれる文化財を再発見して親しもう、ということで、わたしも行ってまいりました。



 いたばし文化財ふれあいウィーク(2009)

 長徳寺 阿弥陀如来立像 (志村地区・~11月8日(日)まで)



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 長徳寺は、鎌倉初期に真言宗寺院として再興された記録が残る、都内でも有数の歴史を誇る古刹。
 かつては丈六の大日如来を本尊とし、街道筋の大寺院として信仰を集めてきましたが、大戦の空襲で全焼。

 戦後、堂宇を再建し、不動明王(焼け残った?)を本尊として新たに再出発しましたが、その際に寄進されたのが、この阿弥陀如来立像。


 文化財ウィークがらみでは、これまでも、数多くの魅力的な仏像に出会い、その都度記事にもしてきましたが、
 今回は、特にすごかった・・・・!



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 1メートルを少し越えるくらい。小学生の子供くらいの大きさか。
 それほど大きな仏像ではないが、それでもどっしりとしていて存在感は十分。
 関東に多い、体のいたるところに美しい木目が残る、典型的な一本造り作りの仏像。

 かつて、平泉中尊寺に安置されていた、という伝承があるそうだが、
 それはともかくとして、

 気の遠くなるような年月を耐え抜いてきた証として、厳かなまでに黒々と変色した体の色、
 顔だけでなく体躯も含めて、一見すると、限りなくやわらか、かつ穏やかな佇まいだが、見る方向、距離によってはさまざまに変化するその表情、
 それらすべてが相俟って、静かに、しかし力強く放たれている気配のようなものは、平安期の由緒ある仏像ならでは、と言っていいのではないか。


 それにしても、こんなところに、こんな名品があったとは・・・・。

 しかも、この時、拝観に訪れていたのは、わたし一人だけ。
 写真撮影もOKで、これだけの仏像と一対一、静かな秋の夕暮れを過ごすことができました。



▽ 毎年恒例の文化財カード(クリックし、拡大すると、くわしい説明を読むことができます)

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 長徳寺阿弥陀如来立像を拝観した時のこと、また、それ以外の文化財ウィークに関することは、
 奥の院の方にくわしい記事をのせます。
 ぜひご覧ください。

 こちら



 さて、この仏像もそうですが、最近は、数多くのすばらしい阿弥陀仏と出会う機会がありました。
 春の旅行で感銘を受けた、四天王寺の雅楽も、そもそもは阿弥陀仏の極楽浄土を地上に再現しようとしたものに他なりません。



 「無量寿経」によれば、阿弥陀如来は、もともとは法蔵比丘という修行僧(菩薩)でした。
 彼は、釈尊と同じくインドの王子でしたが、苦しみの絶えることない衆生を救うべく、王位を捨てて修行僧となり、48の大願を成就させることを誓いました。(48の誓願)
 彼は、衆生救済のために、五劫という気が遠くなるほど長い間苦しい修行に耐え抜き、ついに48の誓願すべてを成就させて、阿弥陀如来となり、西方極楽浄土を打ち立てました。

 ちなみに、五劫というのは、落語「寿限無」に登場する「五劫のすりきれ」で有名。
 一劫は、3千年に一度下界に下りてくる天女の衣が岩をなで、それが積み重なって岩が擦り切れてなくなってしまう期間。
 五劫とは、それ×5ですから、ほとんど無限とも言える期間ということになります。

 つまり、阿弥陀浄土とは、衆生のかわりになって果てしない苦行を受けた阿弥陀如来自身によってもたらされたものなのです。
 よくわかりませんが、このあたりはキリスト教とも通じる部分であるような気がします。


 以上のようなことから、阿弥陀如来は、病気の苦しみを取り除いてくれるという東方瑠璃光浄土の薬師如来とともに、数ある如来の中でも、特に庶民の信仰を集めている如来と言えます。 
 また、あまねく万民を救済する、というその性質上、阿弥陀如来の仏像は実にさまざまな形態で表現されていて、観仏という見地からしても、もっともユニークでおもしろい仏様です。



 せっかくなので、ここでは、最近、もしくはこれまでに見てきた仏像、さらには、一度はぜひ見てみたい仏像をあげながら、阿弥陀仏のさまざまな諸相を、かんたんにご紹介しましょう。



 阿弥陀仏の諸相


 
 1、通常の阿弥陀三尊像


 通常、阿弥陀如来は、観音・勢至両菩薩を脇侍として従え、周囲をきらびやかなさまざまな装飾で荘厳され、極楽浄土に鎮座している状態を表す形でまつられる。

 仏堂自体、あるいは周囲の池などの庭園も含め、極楽浄土を再現している場合が多い。

 あまりにも有名な平等院鳳凰堂などが、代表例。
 平泉の中尊寺金色堂なども有名だが、池などの庭園は無い。そのかわり、毛越寺に、それを補って余りある見事な浄土庭園が現存する。

 今年の早春に観た、中尊寺展の記事


 また、最も古く、素朴な阿弥陀三尊像の名品としては、
 法隆寺大宝蔵院の、伝橘夫人厨子の阿弥陀三尊像があげられる。
 これは、厨子全体に、極楽浄土の装飾が描かれていて、見事。

 思いがけず、初夏の阿修羅展で観ることができた。こちら



 2、阿弥陀来迎像


 天空より来迎した瞬間を表した像。

 京都三千院往生極楽院の三尊像が代表例。

 この種の像では、両脇侍が、極端な前かがみの姿をしており、今まさに来迎して地上に降り立つ瞬間をあらわす。

 春の旅行で行った四天王寺にも、両脇侍がまるでスキップしてるように、片足を跳ね上げているおもしろい像がある。
 わたしはこれを密かにスキップ観音と呼んでいるが、この時は残念ながら見られなかった。

 四天王寺の記事はこちら


 もっとも来迎像の場合は、彫刻よりも、仏画の方が一般的。

 はるか山脈の彼方から、阿弥陀三尊が巨大な姿を見せている、山越阿弥陀図
 さまざまな楽器を手にした華麗な二十五菩薩を従えた、豪華絢爛な阿弥陀二十五菩薩来迎図
 などなど、バラエティ豊か。


▽ 稀代の風流子・英一蝶が、最晩年にたどり着いた境地、見るも鮮やかな阿弥陀二十五菩薩来迎図。
  これぞ、天のオーケストラ!
  (先日の展覧会の記事は、こちら。)

  * 大きな絵が貼り付けてありますので、クリック&拡大の上、ゆっくりとごらんください。

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 なお、阿弥陀二十五菩薩来迎像には彫刻例も数多く、今年の初詣に行った九品寺山門には、おびただしい数の彫像がまつられていた。記事はこちら。写真もあります。


 (追記)

 その後、すばらしい阿弥陀二十五菩薩来迎像(彫刻)、あまたの華麗な来迎図に決して負けない、華やかで楽しい大群像です。

 即成院(京都泉湧寺塔頭) 阿弥陀二十五菩薩来迎像 こちら



 3、五劫思惟阿弥陀如来像


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 決して、ふざけた絵を描いたわけではない、ほんとうにこういう像なのです。 

 上に記したように、衆生救済のため、五劫という気が遠くなる長い間苦しい修行を続けた結果、髪も伸び放題伸びて、こんなになっちゃった、という姿、つまり、阿弥陀如来誕生の瞬間を表しています。

 東大寺勧進所のものが有名。

 このイラストは、やはり東大寺付近の五劫院という小さなお寺の像を模写したもの。

 関東では、やはり九品寺の釈迦堂に安置されているはずだが、初詣のときは、確認できなかった。残念。


 同じく菩薩の時の思惟像としては、広隆寺(記事こちら)などの弥勒菩薩半跏思惟像が圧倒的に有名だが、
 弥勒菩薩がかっこうよく足を組み、「考える人」ポーズをしているのに対して、
 こちらは、あまりにも庶民的?
 でも、そこがまた阿弥陀如来ならでは。

 この五劫思惟像、よく、アフロ阿弥陀、などと呼ばれ、親しまれているが、
 わたしは、密かにヘンデル阿弥陀と呼んでいる。


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 4、みかえり阿弥陀像


 往生に導く際、ちゃんとついてきてるかどうか確かめて、後ろを振り向いている?

 事例は少ないが、禅林寺永観堂のものが名高い。
 なお、この永観堂には、上記山越阿弥陀図の名品もある。


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 5、九体阿弥陀像(九品仏)


 あらゆる立場、境遇の人々をあますところなく救うべく、(経典にある9通りの往生すべてを導くことができるように)
 異なるさまざまな印相を結ぶ阿弥陀如来を、九体並べた像。

 9体もいるが、もともとは、一体の阿弥陀仏。
 つまりは、分身の術みたいなものか。
 
 9体そろっている事例は少ないが、浄瑠璃寺のものが有名。
 浄瑠璃寺は、山に囲まれた池のある浄土庭園も美しい。


 今年の初詣に行った、九品寺にも、江戸期の仏像ながら、巨大な9の阿弥陀如来がそろっており、
 それぞれ3体づつをまつる、3棟のどっしりしたわら屋根の仏殿が並ぶ様は壮観。 



 (追記)


 6、その他、驚愕の阿弥陀像


 その他、実際に見た、ちょっとびっくりの阿弥陀像
 何よりもご覧ください。


 東京板橋 安養院 紅頗梨色阿弥陀如来坐像 こちら


 奈良 璉珹寺 秘仏・女人裸形阿弥陀仏 こちら



 ☆ おしまいに、わたしの愛する阿弥陀如来像、ベスト3。(なんだ、そりゃ)



 第3位 鎌倉高徳院 阿弥陀如来坐像

 おなじみ、鎌倉大仏。
 その巨大さ、顔、全身の美しさもさることながら、
 少し前かがみになった姿勢、下界のすべてを見つめるようなまなざしが、阿弥陀如来の本質を表現していて、見事。


 第2位 東大寺俊乗堂 阿弥陀如来立像

 阿弥陀像と言えば、「安阿弥陀仏」こと、快慶。

 この像は、孤高の金泥マイスター、快慶ならではの、世界一美しい衣をまとった仏像。

 (実物未見。)

 (追記)

 その後、東京国立博物館で開催された、「特別展 東大寺大仏 天平の至宝」にて、実物をついに拝観。感動! 記事は、こちらこちらこちらなど。


 第1位 兵庫浄土寺 阿弥陀三尊像

 俊乗房重源と快慶、最強師弟コンビによる、あまりにも有名な、浄土堂も含めての最高傑作。(未見)

 最先端の現代建築家や空間作家も裸足で逃げ出すような、鮮やかな朱の柱のみで構成された、シンプルかつ壮大な堂内空間に、超然として並び立つ、黄金の3体の巨像。

 夕刻、背後から差し込む日没の光に浮かび上がる姿は、正にこの世のものとも思えない。(らしい)



 * その他、関東には、鎌倉浄光明寺の宝冠阿弥陀三尊像、(記事、こちら
   願成就院浄楽寺の、運慶全盛期の諸仏など、すぐれた阿弥陀如来像が多い。



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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

かげっち
2009年11月09日 19:31
「一人残らず救ってみせる!」パワフルですね~
カンタータ・ブログの中でこういう記事を見ると、最近人気があるらしい
「聖・おにいさん」というコミックを思い出します。
もうご覧になりましたか?
イエスと仏陀がバカンスで立川にルームシェアして暮らすというお話・・・
2009年11月13日 02:22
> 「聖・おにいさん」というコミック

 以前、TVか何かで紹介してるのを見ましたが、残念ながら読んでません。
 そう言えば、この頃は、よほどのことがない限りは、まんがを買って読む、ということはなくなってしまいました。
 けっこう、おもしろいのもあるんでしょうね。

> カンタータ・ブログの中でこういう記事を見ると、

 このブログでは、カンタータについても仏像にについても、個人的な問題になりかねない宗教的な部分についての記述は極力説明程度の最小限にとどめ、あくまでも音楽作品、美術作品、として取り扱う姿勢でいます。
 美術館や博物館で、西洋の宗教画と仏像を同時に観ても、それほど抵抗のある方はいないと思いますが、カンタータと仏像の記事が並んでいると、やっぱりちょっとごった煮的になってしまいますね。(笑)
 カンタータは、それだけ、特殊な(特別宗教的な)音楽、というイメージが根強いのかもしれません。(まあ、それはそうなんでしょうけど)
かげっち
2009年11月17日 13:29
茶々を入れたみたいですみません。私もマンガを買うことは皆無だったのですが、これだけは最近夫婦ではまっています(笑)
2009年11月19日 10:34
 かげっちさん、機会があったら読んでみようと思います。
 最近買ったのは、記事にも書いた、TVドラマ「仁」の原作ですね。
 これはマンガもなかなかいいのですが、ドラマの方がよりしっかりと作られている気がします。

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