古楽のわき道~メルドーやメセニーまで登場+バッハの気になる新譜【洗礼者ヨハネの祝日+三位一体節後4】

 今日、6月24日(木)は、洗礼者ヨハネの祝日。夏の到来を告げる祝日。


 カンタータは、

 第1年巻の、BWV167
 第2年巻の、BWV7
 後期のBWV30

 の3曲。

 
 夏のカンタータの祭典、と言ってもいいほど、名曲揃いのこの祝日。
 春、カザルスホールお別れライブでBCJの超名演を聴いたばかりの、名曲中の名曲、BWV30の登場です。
 明るくさわやかなこの曲で、じめじめした梅雨の気分を吹き飛ばしましょう。


 過去記事はこちら↓


 <洗礼者ヨハネの祝日>

    バッハの最後のカンタータは?その2(BWV30)
    始まりはいつも Overture(BWV7、167他)
    (参考資料) コラールカンタータ年巻 「始まりの4曲」 一覧
    お気に入りのアリア・ヨハネの祝日編 夏至の火祭・不思議なギター~BWV30



 なお、この祝日のBWV7で、第2年巻(コラールカンタータ年巻)の Overture 4部作は完結です。
 また今年も、3番目(BWV7)と4番目(BWV135)が逆でした。



 さらに、今度の日曜日、6月27日は、三位一体節後第4日曜日。

 カンタータは、

 初期のBWV185
 第1年巻の名作、BWV24
 後期のBWV177

 の3曲です。


 第1年巻、序曲的な4曲が終わったと思ったら、いきなり年巻中の屈指の名作、BWV24の登場ですが、
 後期のテキスト・カンタータ、BWV177も熟練の筆致の大傑作ですので、
 ぜひお聴きになってみてください。


 過去記事はこちら↓


 <三位一体節後第4日曜>
    お気に入りのアリア5・ロマン風マリア(BWV24他)
    三位一体節後第4日曜(BWV177)



  *    *    *    *    *    *


 
 引き続き、今年前半に、ヘビーローテーションで聴いた古楽のCDをご紹介。
 今回は、ちょっと代わったCDを中心に。



 art of love (music of machaut)

    ロバート・サディン


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 ドイツ・グラモフォンは、今も昔も、正統的・伝統的な、クラシック音楽の王道を行くブランドですが、
 以前、スティングがダウランドの歌を歌ったすばらしいアルバムがリリースされ、話題になりました。
 これはまた、それを上回るようなおもしろい企画盤。

 中世の吟遊「魔」人、ギョーム・ド・マショーのトルヴァールを、古楽などのポピュラー化や民族音楽アレンジなどで定評のあるサディンが、とびっきり楽しく聴かせてくれます。
 アフリカ、中南米、そしてもちろんアラブ・アジア系などの、ありとあらゆるワールド・ミュージック風、
 モダンで洗練されたコンテンポラリー風、
 そして、純正ジャズ、
 と、実に多彩なアレンジで、聴いていてあきませんが、どの曲もその中核にあるのは、あのマショーの、一癖も二癖もあるアラビア~~ンな、メロディー&ポリフォニー。
 どんなに奇抜なアレンジでも、「マショーの音楽」になっているところが、すごい。
 マショーがすごいんだか、サディンがすごいんだか、知らないけど。

 先ほど、ジャズだけは、~~風、という表現にしなかったのは、
 後半、ブラッド・メルドーが登場して、きちっとしたポリフォニーで演奏されるマショーのポリフォニーとからんで、立派過ぎるほど立派な「ジャズ」そのものを聴かせてくれるから。
 やはり、この人は、次元がちがう。

 しかし、古楽、しかもマショーのCDで、メルドーの名を書くことになるとは、夢にも思わなかったな。 



 Orchestrion 


    Pat Metheny


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 これは、まちがっても「古楽」ではないですが、メルドーの名が出たついでに、メセニーのCDも、ここにあげてしまいましょう。
 19世紀末のロマンを現代に復活させたCD、ということで、広い意味では、古楽スピリットにあふれてるし。
 

 ピアノ、ベース、ドラムはもちろん、ヴィブラフォン、マリンバ、オーケストラベル、その他ありとあらゆる種類のパーカッション、果ては、数十本の空き瓶やさまざまな道具を使った妙な楽器まで、
 少し変わった大規模なアンサンブルと、メセニーのギターの共演盤。

 まあ、このようなアンサンブル盤はメセニーの独壇場で、ふつうだったら、ユニークな楽器を使ってるな、ということ以外はとりたてて驚くようなことではないはずなのですが、
 今回、ちょっとちがってびっくりなのは、

 すべてメセニーが自分で演奏している、ということ。

 そしてさらには、
 だからと言って決して多重録音をしているわけではなく、
 上記のすべての楽器を自動演奏する装置、「オーケストリオン」を作り上げて、そのオーケストリオンとメセニーのギターとの共演であること。


 古今東西、自動演奏楽器の歴史は古いですが、そのゆきついた究極の姿としてあげられるのが、19世紀末ヨーロッパの「オーケストリオン」です。
 これは、機械仕掛け、全自動演奏の、大規模な移動式楽団で、当時大流行して、サーカスやさまざまなイヴェントで活躍したとのこと。
 メセニーは、子どもの頃に抱いたピアノ・ロールやオルゴールへのあこがれの延長として、このオーケストリオンを現在に甦らせたようです。 

 つまり、メセニーの言葉を真に受ければ、そこには、メセニー一人しかいないにもかかわらず、アンサンブルのすべての音は、その場で鳴っている生の音だということになります。
 そこが多重録音とは決定的に異なる点。

 それが果たしてほんとうなのか、ほんとうだとして、どのような手段を使ったのか、わたしにはわかりませんが、
 いずれにしても、ここで聴くことができるのは、唯一無二の極上の音楽です。
 
 アンサンブルは、自動演奏というのがまったく信じられないほど、いつものメセニーどおり、複雑で精緻きわまりないにも係わらず、生き生きとしてダイナミック。
 いろいろな楽器が奏でるどこかノスタルジックな響きの中を、メセニーのギターが鮮やかに駆けめぐり、歌を歌います。
 メセニーのギターも、子どもの頃の夢への郷愁ゆえか、どこかノスタルジック。
 ここ数年のアルバムでは、一番好きかもしれない。

 それにしても、あまりに見事な出来栄えから、駆けめぐるギターの音色に、それぞれの楽器が眠りから目を覚まし、次々と演奏を始めるような、不思議な幻想さえ抱いてしまう。
 実際、プログラミングされたとおりの演奏をするだけではなく、集中制御によってアドリブを行ったり、メセニーのギターに反応して音を出すような装置になっているようですけど。
  
 このアルバムに関して書かれた文章を読むと、どうしても、「オーケストリオン」そのものに関することがメインになっているものが多いようですが、この演奏のクオリティは、特筆ものでは。

 ただ、演奏がよければよいほど、いったいどういうしくみになってるんだ、という好奇心は強まります。

 何と、メセニー、現在、この「オーケストリオン」をひきつれて、世界ツアーの最中ということで、
 ちょうど、ついこの前、日本にも来てくれて、大阪、名古屋、東京で、オーケストリオン・ライブがあったようです。
 実際、この演奏を「目にした」方の感想がお聴きしたいところ。



   MONO=POLI (モノ・ポリ)

    松平敬


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 一方、こちらは、コテコテの多重録音の。

 12世紀のフランスやイギリスの初期ポリフォニーから始まって、
 マショー、ダンスタブル、ルブロワットと続き、
 バロック、古典派、ロマン派を経て、ドビュッシーやストラビンスキー、シェーンベルク、
 果ては、ケージやリゲティ、そしてブライヤーズや自作曲まで。
 ありとあらゆる時代のありとあらゆる種類のポリフォニー音楽を、すべて自分の声と打楽器のみの多重録音で、歌いきっています。

 このような多重録音をなさっている方は、ネット上にもけっこういらっしゃり、中にはリンクさせていただいてる方もいるので、企画自体については、特に驚きませんが、
 このCD、選曲がすばらしい。
 特に、中世からルネッサンスにおいては、各ポイントの代表曲を網羅していて、大きな流れがわかるようになっている。デュファイがぬけてるのが不満ですが、まあ、ダンスタブルがいるからいいか。

 それぞれの時代において、歌い方を微妙に変えているところも、芸達者。
 あと、ポリフォニーというと、全体的にほんわかふんわりまとめているように思われるかもしれませんが、
 この人、地声が妙に朗々としていて、その点でもおもしろい。

 もちろん、バッハも収録。
 
 

 おまけ、ちょっと気になるバッハ新譜



  1、ロ短調ミサ曲

        シュミット=イッセルシュテット&北ドイツ放送交響楽団ほか


 往年の大指揮者のバッハ声楽曲演奏は、なるべく聴くようにしていますが、これは、最もドイツっぽい、いぶし銀の名匠によるロ短調。
 かつて、ヨーゼフ・バルツァー指揮、ベルリン交響楽団(なんだ、そりゃ・笑)という架空名義による海賊版として出回っていた音源の、再リリースとのこと。

 
    ロ短調ミサ曲 HMVのページ



  2、パルティータ

        アシュケナージ

       
 もはや、誰の追随も許さない、すばらしいピアノによるバッハを聴かせてくれるアシュケナージが、またまたバッハ新譜をリリース。
 しかも、バッハの舞曲組曲の最高峰、パルティータ。

 昨年、シフのすばらしいパルティータがリリースされたばかりなので、はからずも、2大巨匠の競演みたいなかたちになりました。
 まちがいなくすごいんだろうけど、パルティータばかりこんなに一度に聴くのもどうかと。
 聴いた方の感想がお聞きしたいところ。


    パルティータ HMVのページ



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この記事へのコメント

2010年06月24日 17:40
Noraさん、こんにちは。
ギョームド・マショーをブラッド・メルドーが?とか、パット・メセニーの一人オーケストラもの(これは、発売時から気になっていました。)、イッセルシュテットのロ短調など相変わらず欲しがらせ上手ですね。
私の方はなかなか大量CDを購入することができず、フラストレーションがたまっております。アーノンクールのカンタータも、先日Towerで見かけたのに、結局買わずじまい。そのかわり、フレットワークのフーガの技法を購入して聴きこんでおります。
2010年06月26日 16:24
メセニーのオーケストリアンについての記事、期待して待っていました。ありがとうございます。

>駆けめぐるギターの音色に、それぞれの楽器が眠りから目を覚まし、次々と演奏を始めるような、不思議な幻想さえ抱いてしまう

ネット上で今回の日本公演を聴きに行った人の感想を読むと、”ステージ上でのメセニーの楽器たちへの視線がとても暖かく、それがすごく印象的だった”という声がけっこう共通してありますね。とてもいとおしい存在なのでしょう。そのへんがまさに彼の小さい頃のオーケストリアン体験と直結しているのでしょう。
ライブではアドリブ炸裂だったようですよ。感想の一つに、”このオーケストリアンの真髄は実は即興演奏ではないかとふんでいたが、まさにそうだった”というものもありました。
まあ、言われてみればそうですよね。メセニーが生の演奏の醍醐味を感じられないような単なる機械仕掛けの装置を作って喜んでいるわけはないのです。
でも、実際どうやっているんだろう、と考えると、イメージすらつかなくてボーゼンとしてしまいます(笑)
本当にどこまでこの人は行ってしまうんだろうか。

ちなみに週刊誌に写真付きで紹介記事がありました。
記事のタイトルは、「楽団ひとり」(笑)。
やっていることの凄さとの距離感に結構うけました。
2010年06月26日 16:48
 garjyuさん、こんにちは。
 マショーのアルバムは、garjyuさんもご紹介していらしたスティングのダウランドと同じく、アーティストがジャンルを超えた音楽にとても真剣に挑戦しているすばらしいアルバムだと思います。
 以前は、クロスオーバーものというと、何となく中途半端なイメージがありましたけど、この頃はどんどんクオリティがあがってきていて、かえって本家本元よりも心を打つようなことも多くなりましたね。
 今後も目が離せない気がします。

 アーノンクール、まだお聴きになってませんか。(笑)
 フレットワークのフーガの技法、HMVで調べたら、すごく安くなっていて、びっくり。思わずわたしの方が注文してしまいました。
2010年06月26日 17:25
 たこすけさん、どうも。
 オーケストリオン、すごいですよね。
(garjyuさんも気になってたとおっしゃってますが、必聴ものだと思いますよ)
 このアルバム、何も知らずに純粋に音楽だけ聴いても、たいへんな名盤です。当然、アルバムにおいても、アドリブに次ぐアドリブが炸裂して、それに、生き生きと、実に精緻に、不思議な音色のオーケストラ群が応え、ちょっと郷愁を感じさせるすてきな音楽をくりひろげている。
 でも、だからこそ、これがすべて自動演奏だと言われると、??なわけで、実に困ったアルバムでもあります。
 輸入盤を買ったので、ライナーはほとんど読めないし、こんなことならライブに行けばよかった。もう少し早く知っていれば・・・・。
 ライブでは、一人で演奏したようですが、機械の中に数人隠れていたんじゃないか、と密かに疑ってるんですが。
 それとも、超自然的な領域に踏み込んでしまったのでしょうか。
 まあ、そう考えてしまうほどの演奏のクオリティです。 
2010年06月27日 14:25
度々すいません。

>輸入盤を買ったので、ライナーはほとんど読めないし、こんなことならライブに行けばよかった。もう少し早く知っていれば・・・・。

実は全く同じ状況で同じ思いだったのですが…(笑)

こちらをどうぞ → http://yonakagawa.com/diary/post-212.html
10月、だそうです!
Nacky
2010年06月27日 20:05
Noraさま
遅くなりましたが、本日、やっと手に入れて「バッハに捧ぐ」を聴きま
した。
中身もジャケットも、そして何よりも発想が素晴らしい。。。
最も私の魂が揺さぶれれるパターンです。(笑
先日は、東京藝術大学の上野の森オルガンシリーズで、リストと心を共
にして参りましたが(Bachの名による前奏曲とフーガ&「泣き、嘆き、憂い、おののき」とロ短調ミサ曲の「クルチフィクスス」の動機による
変奏曲)、本日、昨年11月12日の「バッハに捧ぐ」関連日記を改めて拝読
すると、そこで、ブラームスの「一輪の薔薇が咲き」もご紹介下さって
いることに気づきました。
バッハで舞上がり、見落としてしまったのですね。
実は、その約2週間後に、都内の某礼拝堂で、正しくこの曲を聴いてい
たのです。
Noraさまが最もお好きなブラームスの作品の中の1曲でしたか。。。。
プログラムに選曲し、演奏して下さったオルガニストの方の音楽に対
する誠実さと造詣の深さに、半年を過ぎた今、改めて敬服致しました。
2010年06月29日 22:20
 たこすけさん、ありがとうございます。
 これは、ていねいでわかりやすい記事ですね。でも、読めば読むほど、さらに謎が深まるような・・・・。
 それにしても、楽器がさらにピカピカ光るとは・・・・!

 10月に追加公演ということは、オーケストリオンをずっと続けるということですね。さらに改良するとのことで、楽しみなような、怖いような。
 本人のHPを確認したら、秋にはもう日本には来ないみたいで、残念。
2010年06月29日 22:44
 Nackyさん、「バッハに捧ぐ」、ついにお聴きになりましたか。
 おっしゃるとおり、このCDは、ジャケットなども含めて、クラシックにはめずらしいような、何ともすてきな「コンセプト・アルバム」だと思います。
 シューマンのバッハへの愛があふれているのはもちろんですが、演奏しているシュタイヤーのバッハへの思いも、ひしひしと伝わってくる気がします。

 そう言えば、そのシュタイアーが、この春、満を持してバッハの大作、ゴルトベルクに挑戦して、大評判になりました。わたしはまだ、聴いてなかったので、これを機会に、聴いてみたいと思います。

 リストは、バッハのピアノ編曲ものが有名ですが、オルガン曲は、あまり聴いたことがない気がします。
 これも、ぜひ聴いてみなければ。
 考えてみれば、この人も、コラール編曲などものすごくバッハの普及に貢献していますね。
 こんなにたくさんの天才たちに支えられて、バッハはしあわせものです。

 ブラームスのオルガン曲もお聴きになりましたか。
 最も好き、と言っても、もともとそれほどたくさんの曲を聴いたことないのですけど、ピアノの小品なども、最近やたら心にしみます。

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