「立てる像」・荒野に立つ~ザ・ベスト・コレクション 近代の洋画 @神奈川県立近代美術館【復活節後5】

 今度の日曜日(5月29日、復活節後第5日曜日)のカンタータは、

 ライプツィヒ1年目のBWV86
 2年目のBWV87

 引き続き、1年目は定型カンタータ、2年目のツィーグラーカンタータ。

 BWV87、バッハお得意、長調のシチリアーノの絶品が登場です。


 過去記事は、こちら


 <復活節後第5日曜>

    お気に入りのアリアその4 天上のシチリアーノ・光の波間に漂う~BWV87



 プロ野球交流戦、毎日熱戦から目が離せませんが、

 中日2連戦、
 おととい(25日)、ダルビッシュは、またまた2桁奪三振、完投で、5連勝。あの不運の開幕戦以外は、すべて勝っている上、26イニング無失点中。
 しかも、自身ヒットを2本打ち、最後は何とフォアボールで、4打席3出塁のおまけつき。

 9回の表、そのフォアボール出塁で、ずっと塁上にいたにもかかわらず、9階裏になると、ベンチに戻らずにそのままマウンドに登り、あっという間に3者凡退にしてゲームをしめるすさまじさ。
 こうなると、もはやマンガの主人公みたいだ。

 そして、その勢いで、何とか2連勝、と思ったら・・・・、
 昨日(26日)、あえなく敗退。最終回ツーアウトから、見せ場を作ったんだけど・・・・。
 その間も、ソフトバンクは勝ち続けて、差はどんどん広がるばかり。

 セ・リーグ・チーム(日ハム戦以外の)、がんばれ!



  *    *    *    *    *    *



 今日は、5月のアルバムから。 



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 5月21日(土)
 


 鶴岡八幡宮境内の鎌倉国宝館へ仏像を観にゆき、(その記事はあらためて書きます)
 その後八幡宮にお参りしてから、いつものように小町通りの方に戻ろうとした時、
 一つのカンバンに釘付けになった。

 大切な知人に意外なところで思いがけず出合ったかのような感覚。
 このカンバンの絵は、以前、このブログを始めてすぐの頃、
 「ルソーの見た夢、ルソーに見る夢」という、何点かのルソーの絵を中心に、素朴派をはじめとするルソーに影響を受けた内外の作家の作品を集めた展覧会で観て、心に焼きついた作品。
 久しぶりの再会。ここの絵だったんだ。
 もう5年ほど経つのに、まったく印象が薄らいではいない。
 カンバンに誘われて、ふらふらと、神奈川県立近代美術館に足を踏み入れた。



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 開館60周年 ザ・ベスト・コレクション 「近代の洋画」 

  前期展示 ~7月10日(日)

  後期展示 7月12日(火)~10月10日(月・祝)


    @ 神奈川県立近代美術館


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 神奈川県立近代美術館が、1951年の開館以来60年に渡って収集してきたコレクションによって、
 独特かつ多岐にわたる発展を見せてきた日本の近代洋画の、明治黎明期から当美術館が開館した戦後までの歴史を俯瞰する展覧会。
 前期は比較的初期作品を中心に、後期は大戦をはさんだ昭和期の作品を中心に、選りすぐりの作品を展示しているとのこと。

 日本の近代洋画というと、よほどの巨匠以外は、一般的にはどうしても西洋絵画の二番煎じみたいなイメージがあり、事実スタートは西洋絵画の模倣から、という場合も多いのだが、
 注意深くそれぞれの作家の作品を観ていくと、実に個性的でバラエティ豊か、むしろ有名な画家よりも無名の画家の方がずっとおもしろいような場合も。
 その中からお気に入りの作家を見つけて、今後さまざまな展覧会等や各地の美術館等で追いかけてゆくと、美術鑑賞の楽しみがぐっと広がると思います。
 そのような、「自分だけのお気に入り」を見つけるのには、ぴったりの展覧会なのではないでしょうか。
 

 
 さて、わたしをこの美術館に誘った、カンバン(上の方)の絵は、

 松本竣介 「立てる像」


 この人は、とんでもない天才だと思う。
 美術界では、そういう評価が当然のように定まっているのかもしれないけど。

 モチーフは、工場や廃墟、橋や塔、その他むき出しのコンクリートや鉄骨などなど、自然の美しいものはほとんどなく、街や工場地帯と思われる風景ばかり。しかも昭和初期の戦中のものがほとんど。
 当然色彩も、暗く沈んだモノトーンが主流なのだが、どの建造物も心からの愛情を込めて正確に描かれており、絵を満たす空気は不思議と透き通っていて、
 さらにそこに、ひとたび人物が加わるや、画面全体から凛とした清々しさが立ち上り、
 まるで、さわやかな風が吹き付けてくるかのよう。

 この「立てる像」も、戦時中の作品とのことで、しかも、画家本人が聴覚を失っていたこと等を考えると、
 背景のモノクロームの風景が、ずしっと重い意味を持ってくる。
 その中で、主人公(自分自身?)は、ことさら何らかのメッセージを主張するわけでもなく、悲愴感や絶望感に打ちひしがれているわけでもなく、作業服?にサンダル履きという、生活感あふれるごくありきたりなスタイルで、ただすっくと風景の中に立っている。
 何という清冽な生命力、その命の美しさ。

 それにしても、なぜ、この人の絵が、あのルソーの「素朴絵」?の展覧会にまぎれていたのか。
 「ルッソォ」について書かれた本を大切に持っていたそうだし、絵によっては、確かにルソーにインスパイアされたものもあるようだが、
 (ルソーの模倣からスタートした、というのではなく、晩年に近づくにつれてルソーに接近していったみたい)
 この人、ルソーの百万倍うまい。あたりまえか。

 なお、この松本竣介、東京生まれだが、1929年に上京するまで、幼少年期を花巻・盛岡で過ごしていたとのこと。
 ということは、宮澤賢治が生きていた「イーハトーボ」にいたわけだ。だからどうした、と言われればそれまでだけど。
 花巻駅ですれ違ったことくらいはあるかも?



 もう一人、すごい人を見つけた。
 カリスマ的な人気を持っている人のようだが、わたしはまったく知らなかった。

 関根正二 「少年」、「村岡みんの肖像」


 たくさんの色をにじませてフォルムを構成するエスプリの効いた筆致ながら、一人の子どものひたむきな横顔を描いて、ものすごく真摯な印象を観るものに与える、「少年」。
 一方、くっきりと力強い正統的な油絵の手法で、モデルの女性が生きてきた年輪までをも描ききったような、絵の前に来ると思わず襟を正してしまうくらいインパクトのある肖像画、「村岡みんの肖像」。

 同一人物が描いたとは思えないほど、まったく異なる画風だが、どちらも描く人物に対する愛情にあふれ、あらゆる美化を排してわき目もふらずにその人物の内面に迫った結果、絵の人物がストレートに語りかけてくるような魔力を獲得している。

 作者の経歴を見て、画風が定まっていないのも当然だと納得した。
 作者の関根正二は、20歳で夭折しているのだ。

 このまま描き続けていたら、どんなことになったのだろう、と思うと、残念でならない。

 そして、この展覧会にわずかな作品が展示されている作家の中には、同じような作者が意外と多いのだ。
 上記松本竣介も、36歳で亡くなっている。



 その他、心に残った作品をいくつか。


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 高橋由一 「江ノ島図」 (もうひとつのカンバンの絵)

 近代洋画の父、高橋由一による、ご当地絵画。

 あの司馬江漢の方が、ずっと新しいのではないか、と思わせるような、丁寧で誠実な絵。
 わたしは、明治時代などの古い写真を見るのが大好きだが、ものすごく美しい、デジカメで撮影された明治時代の写真を見るかのような、何とも言えない楽しさ、美しさがある。

 江ノ島は、古くからの大観光地だが、潮が引いた時に砂浜をぞろぞろ歩いて渡っていたんだな。


 青山義雄 「湖のほとり」

 この絵の周辺だけ、原色に輝いているかのような色彩の美しさ。
 それもそのはず、マティスが、「この人はほんとうの色を持っている」と言ったそうだ。
 小さな牛など、描かれているモティーフの造型もかわいくてセンスがよい。


 村山知義 ヴォロージャ・ヴォローギンの肖像

 和達知男 眼鏡をかけた自画像

 MAVOで知られる村山知義と和達知男は、子どもの頃からの同級生で、おたがいライバルとして意識していたという。
 ほぼ同じ時期に渡欧して、それぞれ独自の美術活動を展開しているが、上の二つの作品は、どちらもその渡欧時に描かれたもの。特に村上の作品は、マルセイユに向かう船の中で描かれたものとのことで、何ともかっこがいい。
 異なるタッチながら、どちらの作品も、見た瞬間画面にくぎ付けになるほどのインパクト。
 その後、和達は25歳で亡くなってしまったが、村山は比較的長生きした。


 以上、数人の画家をあげたが、あとで調べると、みんなたいへんな人気作家ばかりみたい。
 そりゃそうだな、それだけふだん関心が薄かったわけだ。反省。



 この美術館は、上野の国立西洋美術館も手がけたル・コルビュジェの弟子だった、板倉準三の作品。


 2階の展示室を見終えて、階下の屋外の彫刻コーナーに降りていくと、そこに広がる光景に息を飲む。
 この美術館は、鶴岡八幡宮の源平池(西側)に面して建てられているのだが、北側の正面エントランスからは、源平池が完全にかくされていて、展覧会を見終えて初めて池の風景が視界に飛び込んでくるような導線計画になっている。


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 これも、確かに一つの浄土。
 あの、智積院などの、最高の庭園を思い出す。
 源平池は、かつての「八幡宮寺」の浄土庭園だったのだ。
 この上、一面にハスの花が咲いたら、どんなことになるのか。
 
 夏に始まる上記展覧会の後期展示では、
 松本竣介のその他の作品も、どどっと展示される
 ぜひハスの花咲く頃にもう一度訪れたい。


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 なお、この美術館、神奈川県が八幡宮から土地を借地して建てたものだが、あと数年で借地契約の期限が切れるという。
 その後の方針については神奈川県側も八幡宮側も未定らしい。
 これまで、当然ここに在るものとして横目で眺め、あまり利用することは無かったが、これからはなるべく立ち寄っていきたい。



 外に出て、八幡宮の参道脇から、再び庭園をのぞむ。
 緑の中に、美術館の建物が溶け込んでいて美しい。

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 夢中で睡蓮を撮っていたら、何かの影が。

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 よく見たら、こんな看板も。

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 その他にもいろいろな生き物が。

 先ほどのサギだろうか。

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 りす。
 木の実を果てしなく食べ続けている。顔は撮れなかった。

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 最後に、大銀杏の現状


 大切に、黒いシートで保護されているが、

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 昨年秋はたくさん残っていた葉が落ちた後、春になっても、新しい葉は、ほとんど芽吹いていないようだ。

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 大銀杏の元では、大震災支援の折鶴コーナーが。

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