映画化記念、「プリンセス・トヨトミ」と心ときめく大阪モダン建築の世界【三位一体節】

 今度の日曜日(6月19日)は三位一体節。


 カンタータは、

 初期(1715年)の、BWV165
 2年目、ツィーグラー・シリーズ最終曲、BWV176
 後期(1726 or 27?)のコラール・カンタータ年巻補完作、BWV129

 の3曲です。


 過去記事はこちら


 <三位一体節>

    クイズ・3枚の絵(BWV165、129他)+新年巻が始まるにあたってのごあいさつ



 華やかで希望にあふれた祭日が続いた春~初夏のシーズンも今日で一段落、
 来週からは、1年の後半、夏~秋のシーズンが始まり、三位一体節後第○日曜日、というようになります。

 また、バッハがライプツィヒに赴任したのはちょうど今の時期なので、バッハのカンタータ年巻もこれから始まります。
 今後ともよろしくおつきあいください。



画像




 今日は、めずらしく、読書感想文。



 プリンセス・トヨトミ 万城目学


画像




 映画公開にあわせて、ようやく文庫化されたので、早速読んでみました。
 この日をずっと、待ちに待ち続けてきた気がする。
 さっさと単行本を読めば良かったんじゃないか、と自分でも思うが、単行本、とてつもなく分厚かったんで。
 
 主な万城目作品に関しては、これまでも映画やテレビドラマとからめて感想等を書いてきましたが、
 今回は、映像作品を観る前に読むことになり、結果的によかったような気がします。


 以下、多少、ネタばれあり。


 誤解を恐れずに書けば、ストーリーがほとんどない小説。
 会計検査院の調査官が、社団法人OJO・実は「大阪国」の検査をするだけの話。
 それでは、文庫版でも500ページを裕に超えるボリュームを費やして、何が書かれているのかというと、
 ただただ、淡々と、
 会計検査院側と大阪国側のあまりにも個性的な登場人物のキャラクターが、
 大阪国の驚くべきシステムの実態が、
 そして、その舞台、夥しい数の愛すべき建築たちを含めた大阪という街の魅力が、
 徹底的に描きつくされている。
 言ってみればそれだけの小説なのだが、
 しかし、次々とベールをはがされ、次第に明らかになっていく大阪国のシステムそのものが感動的であり、
 その最後の秘密、そしてさらにその奥にあった秘密が明らかになった時、読んでいる者は魂を揺り動かされるような衝撃を受けることになる。
 ・・・・という、ちょっととんでもない小説。
(感動的、と言ったのは、大阪国の存在や目的そのものではなくって(むしろそれはとんでもないものであり、家康大好きの関東人のわたしからするとあまりおもしろくない)、一つ一つの家族にとってそれがとてつもなく大切な意味を持つ、という点において、感動的、ということ。)

 何よりも、建築好きや大阪の街を愛する人には、たまらないと思います。
 かく言うわたしも、2年前大阪を訪れたとき、そのあまりにも個性的な建築群にいっぺんで魂を奪われた身であり、
 もう始めから終りまで、あの建築群の空気までもが感じられるようで、あの大阪を旅しているような気分にひたれました。

 最後の「あとがきにかえてエッセイ」も、本編とおなじくらい読み応えあり。
 ここで万城目さん、大阪城が、国宝・姫路城などと比べて文化財的・美術的価値が低いことを嘆いてらっしゃるが、
 「戦国城郭建築」としてはそうかもしれないけど、
 ほとんど民間の力によって復元された街のシンボル的大建築であり、その後の歴史的建築物復興の端緒となったという意味で、大阪城の、昭和初期に建設された「近代モダン建築」としての価値ははかりしれない、ということをここで力説しておきたいと思います。


 あとは、早く映画を観てみたい。

 この小説の中で生き生きと描きつくされていた、密度の濃いー大阪が、そして、あの愛すべき建築たちが、どこまで映像化されてるか、楽しみなような、怖いような・・・・。
 映画には、「鹿男」TVドラマ版と同じく、綾瀬はるかさん登場。
 おそらくそのために、小説と映画では、「鹿男」以上の、登場人物の性別を超えたまったく異なる存在へのアクロバティックな置き換えが行われているようだが、それもまた楽しみなような、怖いような。
 でもそれだと、最後の「大阪国」の秘密はどうするんだろ。???
 うう、気になる。



 さて、前述のとおり、わたしは2年前、建築をじっくり見て回ることをその目的の一つとして大阪を訪れ、たちまちその魅力の虜になりました。
 
 例えばあの北船場、万城目さんも「あとがきにかえてエッセイ」でお書きになってるように、それこそ「角を曲がる度に」、宝石のような、あるいは工芸品のような、それぞれ個性的なきらめきをたたえた建築物が、次々と眼前に現われるのを見るその胸のときめき。
 わたしは、まるではるか遠い異郷を旅するかのようなわくわくする感覚にとらわれながらその地を旅し、それらの建築群にすっかり心奪われて、
 帰京してからも、旅の間に見たもの、感じたもののことごとくを記録しておこう、と、別ブログ「奥の院」に、果てしもなく、

  大阪モダン建築図鑑 ~ お気に入りの建築 大阪モダニズム編 ~

    (こちらのページの、「お気に入りの建築・大阪編」と書いてある記事)

 というシリーズを書きまくり、そして、その情熱はいまだに冷めてはいません。
 逆に言えば、ちょっと凝りすぎて、いまだに最後まで完成していない、ということでもありますが。

 せっかくなので、ここでは、その中から、「プリンセス・トヨトミ」に登場する、または関連する建築物等について書いている記事を、いくつかご紹介しておきましょう。

 登場する建築物、舞台となる建築物について深く知れば知るほど、「プリンセス・トヨトミ」の世界は、俄然生き生きとして、何倍にもふくれあがります。
 また、この小説を読むことで、大阪モダン建築のすばらしい世界に目を開かされた方もいらっしゃることでしょう。
 少しでも参考になればうれしいです。

 いずれにしても、この「プリンセス・トヨトミ」、稀に見るほど質の高い「建築小説」と言っていいと思います。
 大阪国は、その建築あってのもの。その建築こそが、大阪国であるとも言えるでしょう。従って、大阪国そのものを描いたこの小説は、建築そのものを描いた小説でもあるわけです。



 まずは、やはり、これでしょう。

 物語のキーともなっている、辰野金吾大先生の作品。

 高麗橋にある、いまだに現役の歴史的建築。
 オペラ・ドメーヌ高麗橋(こちらの記事)

 小さいながら、辰野作品の特徴を色濃く漂わせる名品。
 作品に登場するOJO本部の長浜ビル(実は大阪国議事堂入り口の一つ)は、作品中の描写を読む限り、規模といい、古風な佇まいといい、ちょうどこんな感じなのだろう。

 実際、文庫版の挿絵において、OJOビルは、曲線的なオペラ・ドメーヌ高麗橋のファサードを、そのままのっぺりと平面化した形になっている。


 そして、上の長浜ビルから大阪国議事堂に入り、「大阪国」とファースト・コンタクトをとった松平検査官が、再び地上に出たビルが、これ。

 北浜東にある、旧「某建築会社」本店ビル(こちらの記事)

 記事の後半に出てくる、現在名・ルポンドシエルビルというビルがそれ。

 ちなみにこの「某建築会社」は、大阪国議事堂建設にも深~くかかわってることになっている。
 上の記事を見ていただければ、「某建築会社」の正体?がわかります??

 
 続いては、これらの2つのビルにほど近い、中之島のモニュメンタルな大建築群を。


 地上に帰ってきた松平検査官が、夢現といった感じの放浪の末にたどりつき、大阪の歴史や建築について調べまくった、
 大阪府立中之島図書館(こちらの記事)


 そして、小説(&あとがき)中に何度も登場する、
 天下の大阪市中央公会堂(こちらの記事)

 東京駅が建築当初からはだいぶ姿形が変わってしまっているので、(現在、建築当初の姿に復元工事中。こちらの記事)
 現在、最もモニュメンタルな辰野的な建物の一つ、と言っていいと思う。

 ミラクル鳥居くんが、OJOの本部の建物を見て感じた、以降物語が急展開するきっかけとなる、「妙な感じ」、「どこかで見たような感じ」、と表現されている既視感みたいなものは、この建物の写真を見れば一番実感していただけると思う。
(この建物、実際には、原設計は、またまた出ましたあの岡田信一郎で、実施設計が辰野事務所なのだが、おそらく特徴的な意匠は、実施設計によるものと思われる)
 

 さらに、日本銀行大阪支店(こちらの記事)

 同じ辰野作品だが、雰囲気は一転して、真の大阪城・大阪国議事堂(すなわち、=国会議事堂)に通じるような、壮麗な事例。


 せっかくなので、直接物語とは関係ないですが、

 物語の真の主人公とも言える大阪の街の、「角を曲がる度に」モダン建築が現われる、という雰囲気を味わっていただくために、北船場付近の名建築をいくつか。

 万城目さんも、ぜひ内部を見学したい、と触れてらっしゃる、
 現役大阪モダン建築の最高峰、綿業会館(こちらの記事)

 かつては、ドメーヌなどと同じくレンガ造りだったが、なぜかレンガをはがして輝く工芸品のような姿に生まれ変わった、八木通商本社ビル(こちらの記事)

 作品に登場する大阪国議事堂のように、古い建築をそのまま最大限に活かす、という精神が、芸術的な次元に結実した、
 大阪証券取引所(こちらの記事)

 同じく大阪国議事堂みたいに、建物の中に入ると、別世界が広がる建物。船場ビルディング(こちらの記事)


 さて、物語の一番の舞台でもある、かんじんの大阪城(こちらの記事)

 この時は、大阪城そのものには行かなかったので、この記事の中にちらっと写ってるだけでした。

 登場人物の会計検査院検査官たち一行が、大阪の街を移動するたびに感じる、大阪の街のもう一つの側面、「水の都」の雰囲気も、合わせてどうぞ。


 おまけ、

 「大阪全停止」、すなわち「大阪国発動」の、ひょうたんのサインが高らかに掲げられた、大阪そのもの、といっていいランドマークの数々。

 通天閣(こちらの記事)

 四天王寺(こちらの記事)

 道頓堀(こちらの記事)


 そして、豊臣家と大阪城を最期まで守りぬこうとして力つきた、真田幸村終焉の地。

 安居神社。(こちらの記事。最後の方です)

 上町台地の果てしもない坂の感じ、
 街中のいたるところにさりげなく神様が鎮座する雰囲気、
 などなど、
 物語の主な情景に通じるような写真もご覧いただけます。 



 今さらながら驚いたのですが、
 以上のように、この大阪の旅、まだ、「プリンセス・トヨトミ」は未読だったにも係わらず、まるで、「プリンセス・トヨトミ」の世界をたどるような旅だったわけです。
 実は、さらにこの時、TVドラマ「鹿男 あをによし」に登場したお好み焼きがあまりにもおいしそうだったので、
 ほんとうは空堀商店街にも行こうとまで思っていた!
 結果的に、時間がなくて断念してしまいましたが。
 残念。



 おしまいに、その他の、気になる映画化、ドラマ化作品


 * 映画、ドラマの詳細は、写真を拡大し、本にかかっている帯を見てください。
 


 テルマエ・ロマエ ヤマザキマリ


画像



 阿部ちゃんが主演と聞いたときは大笑いしましたが、その後、読み返すたびに、ルシウスが阿部ちゃんその人に思えてしかたなくなってきた。
 それにしても、古代ローマ人の役をやるのに違和感がまったく感じられない阿部ちゃんって・・・・。

 考えてみれば、これも、わたしの大好きなタイム・スリップもの。
 果たして「仁」を超えるか!?

 ・・・・むずかしいだろうな。



 テンペスト 池上永一
 

画像



 池上永一の総決算とも言える壮大な歴史ロマン。
 舞台に引き続き、仲間由紀恵さんが主演。
 こちらも彼女のために書かれたような作品。問題は年齢的なものだけか。



 おー、気がつけば、「トリック」コンビだ。



そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

画像





この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

過去ログ

テーマ別記事