会場はネコと笑顔であふれ~国芳展ふたたび(後期)【三位一体節後5】

 台風6号で被害にあわれた方には、心からお見舞い申し上げます。
 これから関東、東北に接近するようなので、十分気をつけましょう。



 今度の日曜日は、三位一体節後第5日曜日。


 第2年巻(コラールカンタータ年巻)においては、コラールカンタータを代表する傑作の一つ、格調高い名品、BWV93が、いよいよ登場します。

 そして、後期のオペラチックなBWV88。 


 過去記事はこちら。↓

 <三位一体節後第5日曜>

    源流への旅11 古すぎて斬新!トロープスレチタティーボ(BWV93他)



 さて、今日から、7月のアルバム、

 まずは、やはり、この展覧会のことから。



 7月9日(土)



 没後150年記念 破天荒の浮世絵師

 歌川国芳

    @ 浮世絵 太田記念美術館

 前期 豪快なる武者と妖怪 ~「勇」「怪」「華」 6月1日(水)~6月26日(日)

 後期 遊び心と西洋の風   ~「遊」「爽」「憧」 7月1日(金)~7月28日(木)


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 前期と後期で全作品総展示替え。しかも、前期、後期それぞれの中でも、展示替えあり、という総括的大展覧会。

 左、前期ちらし。右、後期ちらし。
 クリックの上、拡大すると、主な展示作品がご覧いただけます。

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 * 以下、目録から選んだ絵をたくさん載せています。
   大きな絵を貼り付けてあるため、ちょっと見にくくなっていますが、
   クリックの上、拡大すると、よくご覧になれます。
   



 前期に引き続き、後期に行ってきました。
 


 まずは、会場に入ってすぐ、畳に座ってじっくり観ることができる肉筆画が、前期展示に続いて、がすごかった。


 異様なまでに丁寧に塗りこまれた、屋根に積もった雪のすさまじいまでのリアリズムが目を引く、「雪中屋根船美人図」
 墨で一気呵成に書き飛ばしたような、ユーモアあふれるお得意の妖怪画、「舌きり雀図」、などなど、
 どれも圧巻だったが、

 とにかく衝撃的だったのが、これ。


 「役者夏の夜図」

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 虹のようにさまざまな色に光る雲が幾重にもたなびく夏の月夜、やさしくもさやかな月明かりに浮かぶ、雄大かつ清涼感あふれる大河(海?)の風景。
 足元にくっきりと映る月の影・・・・。

 ほとんど写実洋画とも見紛うまでに、洋風技法を極限まで投入した、息を飲むほど美しい、しっとりとしたお江戸の夜の情景の中に、
 写実とは対極にあるような、豪華けんらんな衣装、オーバーな表情&ポーズを競い合う、浮世絵からそのまんま飛び出してきたかのような役者たちがずら~っと並ぶ。
 役者たちの衣装は極彩色。顔や体にまったく影は無い。

 こんなへんてこな絵はかつて見たこと無い。

 国芳肉筆という確証は無いようだが、あっぱれなまでのちぐはぐさは、感動をおぼえるほど、
 この作品、何らかの特別な機会に、上記のように実に幅広い国芳の得意技を、弟子たちが1枚の絵に集約させようとした、モニュメンタルな作品なのでは、というような空想が浮かんでしまった。



 <遊> 戯画・狂画


 会場はネコだらけ
 一体何匹いただろう。


 「其のまま地口 猫飼好五十三疋」(みゃうかいこうごじゅうさんびき)

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 「猫飼好五十三疋」を中心に、猫の絵を集めたページをつくりました。

 こちら


 「名誉右に無敵左甚五郎」

 仏画?を発見。

 彫ったものが次々と命を宿して動き出したという、伝説の名工、左甚五郎に自分をなぞらえている。
 ずらっと並ぶ神仏は、みんな役者の顔をしていて、実は、これは禁令対策の「役者絵」なのだ。

 ここにも、前回ご紹介した、傍らにネコをはべらした、かぶいたドテラの後姿が大登場!

(同種の作品に、「流行逢都絵希代稀物」があり、こちらは、書きあげた紙から、大津絵の登場人物たち(もちろん役者顔)が抜け出し、紙の絵は影になっている、という洒落た絵柄)

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 「かさねのぼうこん」

 80年ぶりに発見された今回の目玉のひとつ。
 でも、幽霊の鼻も歯も全部おしり。
 さらに、下で驚いている人は、一つの頭に体がたくさんある一種のだまし絵。

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 個人的に気に入ったのがこれ。「流光雷づくし」
 雲の上の雷様の様子。
 柄杓で雨を降らしたり、太鼓を叩いたりしているのはよくあるが、
 稲妻を研いだり、入道雲の絵を描いたりしてるのがおもしろい。
 タイトルの「流光」は、「流行」にかけたもので、当時庶民の間で流行っていた踊りや、大寺院の境内等で行なわれていたであろう物売りや大道芸などの様子をもじっている。
 真ん中で、なぜかジャグリングしてるのも、そのひとつ。

 画面の隅に、情けない雷様、発見。(左)

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 こうして見てくると、国芳には、禁令と戦おうなどという気はまったくなかったのでは、というように思えてきた。
 むしろ、禁令を利用し、どんな奇想天外なアイデアで出し抜いてやろうか、と、楽しんでいたのでは。
 そして江戸っ子たちも、わくわくしながら、それを待っていたんだろう。


 挿絵本の数々も良かった。

 シュール&おかしな絵、現代のマンガ(つげさんや諸星など)にも通じるモダンな絵満載の画集。もちろん、展示されていたのは、一部のページだけだが、全部見てみたくなった。


 大日本国開闢由来記

 神話時代から鎌倉時代までの歴史故事を描いているという。

 これは、右の人物の歩いている道が、実は巨大な神木の一部だったという、何ページにもわたる見事なしかけ。
 ああ、ほんとに全部見てみたい。

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 それと、もちろん挿絵関係にもあったが、国芳には、全体的に馬琴の「朝夷巡島記」がらみの絵が多い。
 有名な「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」もそうだが、どれも奇想に満ちたもので、これは絶対に原作も読んでみたい。



 <爽> 美人画・風俗画


 国芳の美人画はあまり人気が無かったとのことだが、

 豪華絢爛な人気花魁の絵などではなく、
 何気ない日常風景の中に描かれた、子どもやネコとたわむれていたり、ただ暑がっていたり、雨に打たれていたり、舟遊びの舟がぶつかって恐がっていたり、ふざけて笑い合ってたりする、まったく普通の女性たちが、まるで天使のように美しい。

 つまりは、現代風?


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 画面の一番左に、またまた高層ビル群発見。

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 <憧> 洋風画、洋画へのあこがれ。


 和漢準(なぞらえ)源氏 乙女

 天竺の斑足王の九尾の狐伝説を、源氏の乙女の巻になぞらえているのだそうだが、
 誰がこの絵を見て、源氏物語を思い浮かべるのか。
 だいたい、もはや、どこの世界の何の絵なのか、さっぱりわからない。

 そう言えば、ここに描かれてるお城は、ビルみたいに見えなくもないな。 

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 誠忠義士肖像 大星由良之助良雄

 ものすごく格調高い、リアルな肖像。
 版画なのに顔などには見事な濃淡が付けられ、真摯な表情が立体的に迫ってくる。

 ただ、実際の大石内蔵助がほんとうにこのような顔をしていたかどうかはわからないわけで、これでは、この絵を買った人は、妙にリアルな知らないおじさんの絵を部屋にかざることになる。
 案の定、このシリーズ、それほど人気無かったそうだ。

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 外国の銅版画などを参照して(写して)、陰影や遠近法など、最先端の洋画技法を駆使しようとしたと指摘されるが、
 陰影や遠近法などは、そのまま写そうとはせずに、独自の手法を模索し、
 銅版画などは、あくまでも、外国の動物や外国人のヘラクレス的体型、外国人ならではの独特なポーズなど、
 当時の画家たちが日常的に使っていた、いわゆる絵手本として使用していたのだということが、ようくわかった。



 洋風錦絵マイ・ベスト5


 巨大ぶちねこ?が、野良犬に思いっきりガンつけている。
 星空が美しい日常のひとコマ。

 遠景、橋のたもとにやはり高層ビル状のものが見える。何か、こんなものがあったんだろうな。
 この絵の場合は、舟の帆柱に見えなくもないが。 

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 月の光が静かに降り注ぐ、のどかな風景。
 画面左下で眠るネコがたまらなくかわいい。

 ただ、いくらのどかでも、真ん中の人物、ちょっと呆けすぎ。

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 富士山2題。


 荘厳な初日に、高層ビル群が浮かび上がる。
 こちらは、まちがいなく舟の帆。
 斜面で、初日の出を拝んでる群衆がすごい! 

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 お茶の水付近の、おなじみの風景。

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 虹。

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 観ている人、みんなが、笑顔でした。

 こんな幸せな展覧会もめずらしい。

 後期展示、7月28日(木)まで。ぜひ!



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そのほかの「記事目次」

「全体記事目次」

カンタータ日記・奥の院

浅田真央さん情報・最新版

宮沢賢治記事目次

カンタータ日記・大阪モダン建築図鑑

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この記事へのコメント

2011年07月24日 11:53
こんにちは。おじゃまします。

歌川国芳の美人画は何点か見たことありましたが、こんなに変わった作品があるとは。
「左甚五郎」の絵(これは版画ですか、それとも肉筆画?)で、中央奥の黄色い衣を着た人はキリストのようにも見えます。

「源氏乙女」は天竺の伝説を表現ということで、背景のお城はインドの宮殿を描いたのですかね。
国芳はそんな資料も入手していたのでしょうか。
2011年07月27日 01:31
 こんばんは。旅行(名古屋)に行っていて、お返事がおくれてしまいました。
 国芳の美人画、いいですよ。なんだか、躍動感があります。
 他にも、ものすごい大雨の中を裸足で走っている?絵や、思いっきりネコとじゃれあってる絵、海にもぐっている尼さんの絵、さらには、クジラの大群が押しよせている海岸を、子供を3人連れたお母さんが、ほとんど服をはだけさせて全力疾走している絵なんかもあります。
 左甚五郎の絵、これは国芳お得意の3枚つづりの版画です。
 黄色い衣の人は、頭や白毫からお釈迦様と思われますが、ほんとにキリストみたいですね。これは実際は禁令対策の役者絵で、顔を端正な歌舞伎役者の顔に描いているので、こんなことになってしまったのでしょう。
 例のスカイツリーなんかも、そういう何らかの妙な理由によるのだと思います。
 国芳は、かなりの舶来海外資料を持っていたようですが、中でも、「東西海陸紀行」という絵入りの旅行記がお気に入りだったようです。
 インドかどうかはわかりませんが、ジャングルの風景や、黒人や野生動物の絵、さらには天使やお城の絵なんかが満載で、展覧会では、同時にその本の挿絵も展示されていました。

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