「プリンセストヨトミ」、ドラマ「テンペスト」など。~「建築映画&ドラマ」【三位一体節後9】

 今度の日曜日は、三位一体節後第9日曜日。


 カンタータは、

 第1年巻のBWV105
 第2年巻のBWV94

 の2曲です。


 今週来週と、第1年巻を中心に、夏のカンタータ、クライマックスを迎えます。

 BWV105、真夏の入道雲を思わせる雄大な大フーガ、心震える純真なアリア、
 このバセットヒェン・アリアを、バッハの書いた最も美しいアリア、と呼ぶ方も多いようです。
 レチタティーボからの後半の盛り上がりも圧巻。
 こういうのを、真の名曲と言うのでしょう。


 こちらで、往年のすばらしい演奏をお聴きいただけます。


 真夏の名曲の名演奏。

 過去記事をご参照の上、↓ぜひお聴きになってみてください。


 <三位一体節後第9日曜>

    夏空の彼方へ続くプレリュードとフーガ・きちんと曲目解説(BWV105、94他)
    真夏の幻影、あるいは「夏の夜のオペラ」(BWV45、168)



 映画の話題が続きますが、今回は、「建築」が深く関係する作品を中心に。
 すでにロードショーが終了した地域が多いようなので、この作品について、一応触れておきます。
 極度のネタばれあり。あと、以下は、映画に期待しすぎた建築ファンのうわごとなので、軽く読み流してくださいますよう。



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 「プリンセス トヨトミ」

    2011年 鈴木雅之監督作品

 
 全体的に、大きなストーリーの流れや大阪国のシステム等について、映画向きに思い切ってシンプルにしようとしていたり、いろいろな変更を加えたりしている。
 まあ、それはしかたないとして、
 その反面、細部に関しては、あの原作、万城目ワールドをなるべく映像化しようと詰め込みすぎて、とりあえずいろいろなエピソードや小道具類はちらちらっと登場するけれども、それぞれの有機的なつながりがまったく断ち切られてしまっている。
 これでは、原作の愛読者も、お気に入りの場面が登場したからといってよろこべない。本来の意味をほとんど失ってしまってるからだ。
 あの、「鹿男」のスタッフが再集結、
 原作を心から愛していて、できる限りその世界観を再現しよう、と楽しみながら作っているスタッフの気持ちは伝わってはくるが、原作未読だとわけがわからないのでは。
 小説の世界観を再現するためには、やはり、根幹的な部分を大事にしないと。
 残念ながら、観客に伝わらない、単なる自己満足のようになってしまっている部分が多すぎる。

 あれも、これも、具体例として言いたいことは山ほどあるが、最低限これだけは、言っておかねば。
 「日常生活の中では、大阪国のことは決して口にしない」、という基本中の基本の大阪国のルールが、一言もきちんと説明されていないのは、いくらなんでも大失敗だと思う。
 これでは、なぜ、こんなにも大阪国の秘密が厳重に守られ、大切にされているのか、という作品の最もキモのところの意味が不明確になってしまう。
 従って、せっかくの堤真一と中井貴一の大河ドラマ顔負けの重厚な演技も(それが必要だったかどうかは別にして)、だいなし。
 作ってる側にしたら、当然のことで、誰一人気付かなかったか、重視しなかったのだと思われるが。おそらく、原作を読んでない人が観たら、真一&貴一がなぜこんなにも熱くなってるのかがいまいちピンと来なくて、ポカ~ンだったのでは。
 それにやはり、大阪国のほとんどの国民が、大阪国が実際に発現して初めて、「ああ、大阪国はほんとうのことだったのか・・・・!」と知ることこそが、大阪国のシステムのもっともすごいところじゃないのか?
 それがまったく描かれていなかった。もしくは、原作未読の人にはまったく伝わらないつくりになっていた。

 音楽の佐橋俊彦さんは、あいかわらず、雄大で美しい音楽をつけている。
 仮面ライダークウガや響鬼以来、この人の音楽は大好き。
 実はこの人の作曲、というのは知らなかったが、NHK「みんなの体操」の音楽もよい。
 イントロを聴くと、さあ、がんばって体操するぞ、という気になり、後半疲れてくる頃には、もうひとがんばり、と勇気づけてくれる。
 今回も、あの「鹿男」を彷彿とさせるすてきな音楽が炸裂するが、
 「鹿男」では、あの大まじめだがどこかマヌケでとぼけた世界であの音楽が鳴り響いていたからこそインパクトがあったのであって、
 今回は、堤&貴一がほとんどサシで激突する、おも~~い演技バトルの背景でそんな音楽が流れるものだから、何だかとんでもないことになって、何の映画だかますますわけが」わからなくなってしまった?

 わたしは、幸い原作を読んでから映画を観にいったので、脳の中でこの部分を原作のクライマックスの部分がそのまま映像化されたものとして観ることができたので、不覚にもほろり、としてしまったが。
(結局、ちょっとは、というか、かなり感動してしまった)

 個人的には、建築物に関してほとんどこだわりの無い作品になってしまっていたのが、一番がっかりだった。
 まあ、そんなことを過度に期待する方がおかしかったのだが、原作がものすごく「真摯に、いっしょうけんめいに」建築にこだわり、あたかも建築を登場人物の一部のようにあつかっていたんで、夢を見てしまった。
 それにしても、長浜ビルディングの外観が、辰野式でもなんでもない、ほとんど雰囲気だけのセットだったのには、ほんとうにがっかり。

 と、いいつつも、旧京都市立清水小学校や、大阪市中央公会堂大阪府庁舎などなどの近代建築が、映画の大画面いっぱいに映し出されるのを見て、大興奮。
 先ほど、「建築物に関してこだわりのない作品」と書いてしまったが、
 こういうところを見ると、スタッフとしてはこだわりたかったのだが、さまざまな事情でなかなか難しかった、ということなのかな、とも思えてくる。

 映画化にあたっては、「まるでドミノ倒し」みたいな、大阪国発現の過程こそが、スペクタクルな感じで最大の見せ場のような気がするが、それがまったく描かれていなかったのも残念。
 大阪国国民のひとりひとりの顔も見える良いシーンになっただろうに。
 かわりに、発現後の、無人の大阪の風景だけが、(綾瀬はるかが走りまわるシーンとともに)えんえんと映されていただけだった。
 そもそも無人になるのもおかしなことだし、出てきた場所も通天閣や道頓堀など、ほとんど外部の者がイメージする、記号的な「大阪」だけだったことも、残念だった。

 結局、まさか、の、どこかで見たことあるたこ焼き屋大登場シーンが、一番心に残ったのでした。



 と、いうわけで、「プリンセス トヨトミ」が、「建築映画」としては、期待が大きすぎたためか、やや不発に終わってしまった観があるので、

 大阪の建築の数々が大登場する、正真正銘の、「建築映画」を、ご紹介。
 しかも、今は無き古きよき建築が、「3丁目の夕日」シリーズのようにセットやCGなどではなく、時空を超えて鮮やかに甦ります。

 正に映画はタイムマシン!


 「めし」


 大阪モダン建築ファン、大感涙映画。

 東京物語では、東京の風景そのものはそれほど描かれてはおらず、むしろ、尾道や熱海の風景ばかりが印象に焼きつくが、
 こちらは、すでに失われた、そして今もそのままに残る、遠い昔の大大阪の風景が描きつくされている。
 何と、バスで観光旅行(しかもガイドさん付)までしてくれるのだ。

 あの驚異の外観保存建築、大阪証券取引所も、バスの車窓から、ちらっと大改築以前の在りし日の姿を見せる。
 まったく変わらない勇姿に、感涙。



 その他、せっかくなので、NHKがらみで最近放送された、古きよき建築が登場するドラマをいくつか。



 朝の連続TV小説 「おひさま」


 特に主人公が少女時代を送る前半(時代的には戦前という設定)は、古建築ファンにとって目が離せない、夢のような回が続いた。

 長野が舞台なので、松本城ははじめ、あがたの森文化会館(旧制松本高等学校本館)、奈良井宿の古建築群などなど、長野の錚々たる建築が実際の舞台として登場するのはもちろん、
 何と、場所的にはまったく関係ないにもかかわらず、あの鎌倉旧華頂宮邸や土浦第一高等学校(旧校舎)など、わたしの大好きな建築が、重要な舞台として毎日映りまくり、感涙ものだった。

 特に、主人公の井上真央さんが通っていた女学校として、土浦第一高等学校(旧校舎)が、連日映りまくった。実は、これは、知る人ぞ知る、たいへんな名建築。

 野に下った帝大出身のインテリ棟梁、駒杵勤治の最高傑作、わたしがおそらく初めて心の底から惚れ込んだ建築で、言わば初恋の相手。

 ほとんど20年ぶりにその姿を見ましたが、ピッカピカの元気な姿をみせてくれました。
 震災にも耐えたみたいで、ほんとうによかった。


 今回の大震災で大きな被害のあった東北や北関東には、その他にも、たくさんの愛すべき建築が、山ほど存在しています。

 旧登米高等尋常小学校、
 山形市郷土館(旧済生館本館)、
 日本基督教団弘前教会会堂
・・・・、

 今も目を閉じればその姿が浮かぶ。
 みんな、だいじょうぶだろうか・・・・。



 あと、この前、タイムトラベル映画等の特集記事でちょこっと触れた、TVドラマ「仁」にも、
 グラバー邸をはじめとする長崎の洋館の数々、そして、現在は千葉にある、旧学習院初等科正堂など、
 魅力的な洋館がたくさん登場したことも、ここにメモしておきます。



 ちょこっとお知らせした、仲間由紀恵さん主演の

 「テンペスト」 (NHKBS)

 は、首里城をはじめ、実際の沖縄の歴史的建造物、その他沖縄の美しい風景を舞台として(ちょっとベタな)ドラマが展開し、画面を見ているだけでも価値がある。

 壮麗な首里城で繰広げられた、冊封使歓迎の儀式のシーンなど、まさかこのような光景を目にすることができるなど、夢にも思わなかった。

 さらに、セーファー(斎場)御獄までを、実際にロケに使っていたのには、腰を抜かすほどびっくりした。
 だいじょうぶなんだろうか。

 この「テンペスト」の、池上永一さんの原作は、簡易な美しい文体で美しい情景がつづられているその所々に、雅やかな琉歌がちりばめられた、正に音楽小説とも呼べる魅力作なのだが、
 その中でも最も印象深いシーンの一つに、真玉橋の修復工事竣工式に、王族神君聞得大君が即興のミセゼル(歌謡的な祝詞の一種)を歌うシーンがある。(第1巻第5章「空と大地の謡」)
 ドラマにはこのシーンが無かったようで残念だったが、そのかわり、聞得大君役の高岡早紀さんが、何とセーファー御獄のど真ん中で、ろうろうと龍王に雨乞いの歌を捧げるシーンがあるのだ。
 これを果たしてミセゼルと呼んでいいかどうかについては、わたしは判断しかねるが、
 高岡早紀さん、意外にと言っては失礼だが、ものすごく真に迫って、実に美しい声で、実際にかつて歌われていたらしい雨乞いの祝詞を、見事に歌ってたから、神様も許してくれるでしょう。

 そういうこともあり、ドラマでは、高岡早紀さんの存在感が妙に光っていて、前半は、ほとんど主人公状態。
 TVドラマ版が始まる前に、舞台版がやはりNHKBSで放送されたのを見たが、こちらもある意味、聞得大君の独壇場だった。
(こちらの聞得大君は、何と、生瀬勝久さん。何だ、そりゃ)



 同じような感じで豪華な建築等を楽しめたドラマに、

 「蒼穹の昴」 (NHKBS→NHK総合)

 があった。

 こちらは、首里城のモデル、本家本元、天下の紫禁城が舞台。
 しかし、さすがに本物は使わせてもらえなかったのか、何と、ほんものそっくりのセットとのこと。しかし、そのおかげで何もかもがピッカピカで、より豪華になったのでは。

 田中裕子さんが思わずひいてしまうくらい西太后に似ていてびっくりしましたが、衣装、登場する調度品や食べ物、ちょっとした小物にいたるまで、すべてが凝りに凝っていて、京劇をはじめ、伝統芸能シーンも満載、
 やはり、これらを見てるだけでも何ともぜいたくな気分になれて、価値がありました。

 わたしは、大学時代、アヘン戦争から太平天国、戊戌の変法運動あたりまでの、近代中国の政治思想史を専攻したので、
 大清帝国、いや、大中華帝国の断末魔の時代における、康有為(戊戌の変法の中心的存在)という人物の、帝国に対する姿勢、というか生きざまそのものにものすごく興味をもっていて、
 したがって、もちろんこのドラマでも、康有為が準主役級で登場するにちがいないと、ものすご~く楽しみにしていたのだが、
 ドラマにおいて、康有為は、思ったほどの活躍はせず、
 内容的には、ちょっとがっかりだったけど。 



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